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第127回 サンテグチュペリと私

こんにちは、楳林です。庭のタンポポや雑草が一気に成長してきました。でもイラクでの3人の人質事件が重くのしかかっています。

先週、1つの記事が目に留まりました。「星の王子さま」を書いたフランスの作家で、第2次大戦中の1944年7月31日、コルシカ島の連合軍基地から偵察飛行に出たまま消息を絶ったアントワーヌ・ド・サンテグチュペリの墜落地点が特定された。仏マルセイユ沖で見つかった航空機の残骸が、製造番号からサンテグチュペリ搭乗機と断定されたためだーという記事です。

私にとっては思い出深く、また自分のキャリア観の原点にある作家なのです。そこで今回は彼について触れてみたいと思います。私が彼の本に出会ったのは28歳の時。当時私は、新聞記者として福島県内を車で飛び回っていましたが、同時に自分探しの真っ最中でもあったのです。

そんな時期、偶然、本屋さんでサンテグチュペリの「星の王子さま」を手にしていました。いつの間にか童話に縁のなくなっていたのに、気がつくと、買っていたのです。それはとても不思議な感覚として今でも覚えています。

で、驚いたのです。何だか自分の体験に似ていたからです。そこで「人間の土地」「夜間飛行」「南方郵便機」「戦う操縦士」「城砦」など彼の著作を片っ端から買ってきて読み耽りました。「書いてあることの多くを自分は内的体験している」「一体これは何なんだ!」。

彼は郵便飛行の最中、サハラ砂漠で墜落事故を起こし、喉の渇きと戦いながら救いを待つ中で何かをつかんだのでしょう。彼の本を読んでいた頃、私は取材で駆け回りながら、一方では恋愛に悩んで“愛の砂漠”にいたり、山形県内の山中で車の30メートルの転落事故(奇跡的に無傷でしたが)を起こしたり、ともがいていた自分にとって、次の一文はぴったりの感じでした。

「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだ」「家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」(星の王子さま)

また、下北半島の恐山を1人旅していて自殺願望の女性に出会ったのもその頃でした。

「しかし今宵、わが愛の砂漠のうちを歩みながら、私は涙に濡れた一人の少女に出逢いました。・・・そのとき、彼女の苦悩が私の目を奪ったのです。主なる神よ、もし彼女の苦悩を拒むなら、私は世界の一部を拒むことになり、私の仕事を完成したことにはなりますまい。もちろん私の目的から逸脱してよいというのではありません。しかし、あの少女もまた、世界のしるしなのです」(城砦)。

彼の著書から私が1冊の本を選ぶとすれば「人間の土地」という小冊子です。そこには不時着した砂漠での体験を通して獲得した彼の人間観や自然と人間の関係、そして友愛や職業の意味などが伝わってきます。私にとってのキャリアやコーチングの源にある考えとほとんどつながっています。

「僕を悩ますのは、その凸でも、凹でも、醜さでもない。言おうなら、それは、これらの人々の各自の中にある虐殺されたモーツアルトだ。薔薇を育てる園丁はいても、少年モーツアルトを育てる園丁がいない」「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、初めて人間が作られる」(人間の土地)。

これは半分冗談ですが、ある時彼の年賦を見ていて気がついたのです。彼は1944年7月31日に亡くなり、私は2年後の7月31日に生まれている。当時は彼の魂の一部を自分が引き継いでいるような感じさえしたものです。もっとも後に7月31日生まれで同じことを言う人がけっこういて恥ずかしくなりましたが・・・(笑い)。

いずれにしても彼は作家である前に、最後まで飛行機家として生きたんだなと思います。先週の記事をそんな意味で私にとっては感慨深いものでした。

さて、約2年半続いた、キャリアコーチングも、いよいよ次回が最終回となりました。そこで次週のエクササイズです。

●「あなたにとって、このキャリアコーチングは、何だったでしょうか?」

第126回 3ヶ月間の実行計画

こんにちは、楳林です。ようやく春らしい天気になりました。しかも新年度が始まりましたね。新しく社会人になった方、先ずはおめでとうございます。また当たらし部署に異動になった方、転職・独立起業に踏み切った方、あるいは新たな目標やテーマに取り組み始めた方もおられると思います。4月になるといつも気分的にも何か新たなことに挑戦したくなる感じです。みなさんはどうでしょうか?

私自身も4月から夜間の社会人大学院生になり、先週末はオリエンテーションがありました。30数年ぶりに学生になり、事務局から学生生活の手引き的な説明を受けた後、先生の紹介があり、どのゼミに入るかも決まってしまいました。

同期の方は17名。専攻が「老年学」という特殊な分野で夜間ということもあり、大学を出て社会人になったばかりの方から、福祉・看護関係の第一線で活躍されている方、フリーのアナウンサー、私と同じ中高年のサラリーマン、さらになんと76歳の方までおられ、実に多様な同期生です。生涯学習というイメージが目の前に現実化している感じです。しかも皆、学生というより普通の社会人の方ばかりです。

もしかしたらこれからはますます、働くという行為と学ぶという行為とが重複する社会になりつつあるような感じがします。それが定年とかに関係なく、体が動く限り、意欲があり限り、人は社会に参加し、成長し続ける、そんな時代に入ってきたようです。

ところで、新たなスタートを切るとき、長期的なビジョンをしっかり持つことが必要ですが、同時に、当面3ヶ月間くらいの期間に絞った行動計画を立てることをお勧めします。それがあると、「明日から何を始めるか」と直ちに動き始めることが出来るからです。

私のコーチングのクライアントの一人、Mさん(40歳)は、大きな課題がほぼクリアになったのを機に、4月から自分の本当にやりたいことにチャレンジすることにしていますが、その前に、3ヶ月間で6キロ減量することにしました。6キロ減った自分を想像すると、「自分のやりたいことをもっと効率的にテキパキと出来るし、自信も取り戻せる」からだそうです。

しかもこの減量作戦を進めるに当たって、何か特別なダイエット法に取り組むのではなく、例えば家事の時間をもっと合理化し、その余った時間でウオーキングや好きなことに取り組む時間にあて、間食しないようにするといった工夫をいくつか実行することによって減量しようというものなのです。さっそく明日からグラフを書いて実行しようと張り切っておられます。

また銀行に勤めるNさん(53歳)は60歳の定年を待たず、55歳の役職離任を機に独立し、教育研修の講師やコーチになることを決め、すでにその準備を着々進めておられますが、先ず自分の感情をもっとイキイキしたものにするのが先決とばかり、子供時代の出来事を丹念にノートに書き出し、「その時何を感じたか」を徹底的に思い出すことを始められました。「昔のように感情がワクワク感や幸せ感を感じれなくなった自分」を変えようと思ったからだそうです。

Nさんはコーチングを始めた時に「本当にワクワクした感情が戻ってくるのかしら?戻ってきたら、こんな嬉しいことはないわ!」と発言してから、ずっとそのことを考えておられ、その結果としての決意だそうです。

お正月に決意したものの、このままでは計画倒れになりそうな方にとって、4月は再挑戦のプレゼントをもらえる時かもしれませんね。

ということで今週のエクササイズです。

●「この3ヶ月、あなたはどんなことにチャレンジしますか?」

第125回 素晴らしき普通の人たち

こんにちは、楳林です。やっと暖かくなってきました。つぼみでじっと待機していた家のそばの3本の桜の花も一斉に開き始めました。久しぶりにウオーキングで汗をかきました。3月も最後の週になり、新しい年度に向けてちょっと意欲的になっています。

ところでコーチングをしていて一番ワクワクするのは、クライアントの方をコーチングしているうちに、ある時、突然、その人の本質というか、何か中核に触れる時です。

先日も主婦のMさん(40歳)とその週の小さな出来事をきっかけにプロセスを進めていくうち、深い洞穴のイメージの中で、1つの小石を見つけた途端、「アーあった!」。それはまるでずっと探していたものを見つけたような感じ、もっと言うと自分という存在が「あったんだー!」という感じに近いものでした。

例えば青い鳥を探して世界を旅してまわり、くたびれ果てて我が家に戻ったら、なんと自分の家にいたじゃない!「いたんだー!」。もっと言うと生まれた時に戻ったような。「ただいま!」「お帰り!」そんな感じなのです。

そういう体験に立ち会うこともワクワクすることですが、その後の変化、成長の早さにはいつも驚かされてしまいます。気づきがとても早くなり、自分の資質、発揮したい能力、さらに人生の目的やミッションがより明確になっていくのです。

コーチングだけでなく、これまで体験したビジョン心理学などでもそういう場面に出会うことが少なくありません。その度に思うことは「普通の誰もが自分の本質を持っているんだ。それに気づくとどんな人も輝き始めるんだ」ということです。

こんな言い方もあるかもしれません。何か捜し求める「Doingとしての自分」から、ただ「存在(Being)としての自分」に変わっていく。その時、コーチングでよく言う「答えも解決法もその人の中にある」ということが真実なんだなと思えるのです。

今回、こんなテーマを取り上げたのは、先週、ある報告書を読んでいて、改めて「そうなんだ!」という思いがしたからなんです。以前紹介したことのあるシステムシンキング(全体像を捉え、その中から根本的な課題を把握し、効果的な解決法を見つけ出す)に関係する米国の会議報告の中にあった、「素晴らしき普通の人々」(Brilliantly Ordinary)という言葉が、私のこれまでの体験ととても重なることが多かったのです。

「素晴らしき普通の人々」についてこんな説明がなされていました。近年のリーダーシップでは、その人が行う行動(Doinng)でなく、その人自身の存在(Being)で捉える傾向にある、と。それはどういう事かというと、「変革を起こしたり、あるいは何かの偉業を成し遂げることができる」のは、「特別な人」だと思われがちだが、実際はそうでないという事です。

逆にこの時代は、「特別素晴らしい何かを持っているわけではない、普通の人々が、素晴らしいことを成し遂げる」時代であると語っていることにとても共感を感じたのです。

「その素晴らしいこと」というのは、自分の本質というか存在に触れることから始まるような気がします。

今、20代、30代で「やりたいことが見つからない」「好きなことがわからない」というのは、ある意味でまともだと思います。今まで、自分自身の存在なんていう捉え方が社会では一般的ではなかったからです。

それが証拠に40代、50代の方の研修で「本当にやりたいことは何か」に答えられる人は非常に少ないし、そういう問いかけを自分にすることすら忘れている人が多いのです。それよりも「本当にやりたいこと」を探しているうちに自分の存在に触れたり感じた、普通の人から自分を変革していくような気がします。

ということで今週のエクササイズはちょっと自分に聞いてみてください。

●「あなた自身を象徴するもの、それは何ですか?」

第124回 あなたは英智型、知能型、創造型?

こんにちは、楳林です。週末からまた寒くなりました寝。公園に行くと桜がちょうど100メートル競走のスタート台で、花開くのをじっと待っている感じです。私もそうですが、みなさんもスタート台で新しいチャレンジが始まるのをじっと待っていませんか。

ところで仕事をしていて、以前から私は3つのタイプの人にとても興味を持っていました。1番目のタイプは、とにかく理解力が早く、仕事を的確にテキパキとこなし、リーダーシップもある優秀な人です。今まで何人もそういうタイプの人と一緒にしてきて、劣等感さえ感じました。

2番目のタイプは、とにかく発想力がユニークというか、常に今までにない捉え方ややり方を見つける人です。効率的とかスピード感といった点には欠ける場合も多いのですが、「なるほど」と思わず感歎するようなことをする人です。学校時代からこういう人に対しては何か羨ましさを感じるときがありました。

そして3番目のタイプは特に切れ味とかユニークさとかが目立つわけではありませんが、その人が言うと何か回りも納得してしまうような存在感を持った人です。何か物事の本質が見えているといった感じがするような人です。それがどこから来るのか不思議で仕様がありませんでした。

この3つのタイプはそれぞれ魅力的なところを持っています。ある意味ではそれぞれがそのひとの最大の長所といっても過言はないでしょう。が、一体その資質はどこから来るんだろう、というのが私の関心ごとだったのです。

ところが最近、この私の以前からの疑問に答えてくれているような本に出会いました。その本は中西信男さんの「英智の心理」という本で、その中でアメリカの発達心理学者、ロバート・スターンバーグさんが「英智と知能、創造性の関係」について明らかにしている箇所でした。

というわけで今回はこのことについて紹介してみたいと思います。この3つは決して特別な人にのみあるのではなく、誰でもそのどれかを資質として持っているように思えるからです。だとしたら、それを最大の強みとして自分のキャリアに生かしたほうがよいと思えたのです。

スターンバーグ氏によると、私の言う1番目は「知能」の高い人になります。「記憶した知識を再生し、分析し、活用する人」で効率的な実行力を持っているのが特徴です。曖昧さや障害はできるだけ除去しながら問題を解決しようとする傾向があります。

これに対し2番目は「創造的」な人で、「存在する知識を超えていく人」と表現しています。例えば学校時代、ある試験問題を出されると、テスト作成者が正解としている回答以外の、それ以上の答えを出しては一人悦に入っている同級生はいませんでしたか?

他人が理解していることをただわかるというだけでは不満で、他人が理解しないことを理解しようとし、他人が理解しているやり方とは違う方式で理解しようとします。

3番目は「英智」の人で、「知識の意味と限界を理解しようとする人」だそうです。ある問題に対しても曖昧さや障害すらも事物の性質に基本的なものとして受け入れ,理解していこうとする。とにかく事件や現象の底にある構造、仮説、意味を理解しようとすることに関心があるわけです。

この3つのタイプを性格と見るか資質と見るか、あるいは単に違いと見るか、難しいところですが、これを強みとしてみると、たいていの人にこのどれかがあるのを感じませんか。でも自分がこのどれかを持っていると気づいていないと、他人を見て嫉妬したり、うらやましく思ったり、時には批判、攻撃してしまうのではないだろうかと思うのです。

自分のキャリアの棚卸をして、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルの強みを見つける作業をすることがありますが、この3つはもしかしたらその人のベースにある強みと見ることも出来るのではないでしょうか。

また、この3つの違うどれかを持つ3人が協力したら、さぞかし強力なチームができるかもしれませんね。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたは、英智、知能、創造のどれが自分にあるのを感じますか?」

第123回 セカンド・アクト

こんにちは、楳林です。3月もはや中旬。私自身、何かと整理することの多い週末でした。先週のエクササイズは「あなたには今どんな冒険のチャンスが待ち構えていますか」でしたね。1通紹介したいと思います。

「幾つかあります。1つは4月から保育士になるための講座に通うこと。2つ目は、4月1ヶ月間ですが、夕方の3時間、市の臨時職員として先行して保育園で働くこと。3つ目は高校時代の友人の紹介で1人の男性に会うこと。それ以外に休学中の英会話学校に復学するのと、引越しすることも決めました。4月が一体どんな月になるのかちょっと恐ろしい気もしますが、冒険するつもりでやってみようと思います」(Mさん、37歳)。

Mさんはこの1年近く、かなりもがいていたようでしたが、何だか急に霧が晴れて、新たな挑戦に踏み出そうとしていますね。Mさんはそのきっかけを「ゲシュタルトのワークショップに参加して、生き返ったよう感じです」と語っています。それもそれまでの辛い体験から逃げないで取り組んできたからこそ、受け取れるようになったのかもしれませんね。

ところで先週、「セカンド・アクト」という1冊の興味深い本を読むことができました。Mさんのように新しいライフキャリアに挑戦することに、まだ多少の不安を感じている人や、これからやりたいことを見つけ、実現したいと思っている人にぴったりの本なので、今回はこれを紹介したいと思います。

「セカンド・アクト」とは「今までずっとやりたかったけれど、何らかの理由で出来なかった人生を改革するためのもの」と書かれています。要するに人生やり直しのための方法が書かれている本です。

私がまず興味を持ったのは、とにかくいろんな人のケースが紹介されていることです。何をしていいかわからない若い人が夢を見つける方法から、年金生活を手放して70過ぎから夫婦で事業を始めたり、セカンド・アクトは年齢に関係ないということなんです。

でも新たな仕事を見つけるということは単なる結果に過ぎないんです。何らかの不満があるというのは1つの動機かもしれません。それ以上に「どうしてもやりたいことがある」と気づいていくことが大切なポイントのような気がします。「本当にやりたいこと」を見つけるということは、実は「その人の魂と心の中に進んでいく独特な旅」をすることなんです。

またこの本ではセカンド・アクトを成功させるための手法がいくつか紹介されています。1つは「自分の夢を具体化する5つのエクササイズ」です。情熱を感じていることをノートに書き出す。何が得意で何が苦手か、興味のあることのリスト作り、さらにその3つの根底にあるものを見つける。最後に「夢を蒸留」させてみる。「蒸留させる」というのは内容を本質まで濃縮させていくことだそうです。何だか酒造りにも似ていますね。

もう1つはセカンド・アクトを成功するために必要な精神、感情の基礎として身につけて欲しい手法。例えば、「助けは求めよ・・・そして恩は返せ」「妥協はするな」「開けられたドアを通って行き、目の前のチャンスは活用せよ」など9つの手法が紹介されています。私は9つ目の「未来に希望を持つこと」というのが一番気に入りました。

さらにセカンド・アクトを始める人にとって妨げとなる12の壁を紹介し、それぞれの壁に対する対処法、克服策をまとめてくれています。じゃあ、壁って何か?年齢、お金、時間、周囲の同意、場所、肉体的条件、知識と経験、タイミング、自己尊重、失敗への恐れ、成功への強迫観念、運命論者だそうです。何だかどれもが思い当たる感じがしてきます。

本の後半部分では、この12の壁に対しての克服策が紹介されています。セカンド・アクトを始めるのに「今がベストという時は永遠にやってこない」「変化はよいことで、悪いことではない」そして「何かを学ぶ最高の方法は、試して失敗してみることだ。私たちは成功から学ぶものはほとんどない」といった視点が、私のあらたな挑戦への恐れを軽くしてくれた感じがしました。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとってのセカンド・アクト-やってみたいのにずっと実行できずにいること-は何ですか?」

第122回 冒険心を取り戻す

こんにちは、楳林です。研修が終わって気が緩んだせいか、早速風邪を引いてしまいました。気がつくとまわりも風邪だらけです。でも今週は少しずつ春の暖かさが近づいてきそうですね。某大手企業の30代の方に行ったキャリア研修も成功し、私はちっとほっこりしています。

ところで先週末は、私にとって2つのビッグな出来事がありました。1つは大学院の冬季公開講座『老年学』に2日間参加したことです。4月から夜間の社会人大学院生になって「老年学」を勉強することはすでに書きましたが、そのオリエンテーションのような感じでした。

テーマは「生涯現役の現状と課題」。高齢者における就労と健康の問題やエイジズム、さらに社会貢献などがメインのテーマでした。誰もがいつかは迎えることになる「老化と死」。そこまで含めてキャリアっていったい何なんだ?今の私にとっては一番ワクワクするテーマなのです。こんなテーマは20代や30代の方からすると興味がない事かもしれません。でも、これからの時代にキャリアや仕事を考えようとしたら、自分の年齢もテーマにいれて考えなくてはなりません。

というのも、今や、60代は“第2現役世代”と位置づけられようとしています。高齢者の8割は亡くなる数ヶ月前までは元気なのです。だとすれば、近い将来、70代半ばまで、この人生で本当にやりたいことや使命に取り組めるチャンスが与えられる時代になるのです。

今、私が、最も関心があるのは「高齢者と創造性」です。1人の人間が生まれ、成長し、やがては年老い、死んでいくことの意味って何だろう?とりわけ80代になっても創造的な活動を続けている人たちは少なくありませんが、なぜそれが可能なんだろうか?そう考えると、私にとっては未知の探検が始まるような感じがしているのです。

もう1つのビッグな出来事は、もう2度と会えないだろうな、と思っていた小学校の同級生の初恋の女性(といっても片思いですが)になんと再会できたことです。小学校5年の終わり、彼女のお父さんの転勤で広島から東京に去って以来、40数年ぶりでした。

彼女がやっている居酒屋さんに入って、目が合った瞬間、「あっ、彼女だ」とわかりました。しばらくして、「わかります?」って尋ねた途端、「ええ、私もそうだと思いました」。1ヶ月ぐらい前に一度、電話で短く話してはいたのですが、一瞬に小学校時代に戻ったような感覚でした。

それから思い出しては一緒に通った塾のこと、先生のこと、同級生のこと、あの時の共通の空間が蘇ってきた2時間でした。かって、同じ空間を生き、同じ“砂場”で遊んだってことはなんと豊かな世界なんだろう。

小学校時代からピアノを習っていた彼女。居酒屋さんを始めた7年前までは、音楽関係の仕事をしていたそうです。「29歳の息子は映画関係でふらふらしていて困ったものだわ」。昔と同じ名字の彼女もまた新たな変化の時を迎えているのかもしれません。

次の日、自分にとって曖昧に途切れていたあの頃の思いに再び橋が架かったのを感じました。1つ気づいたのです。あの当時の別れをきっかけに読む本が変わっていたことを。それまでは「15少年漂流記」「ファーブル昆虫記」「トムソーヤの冒険」といった本を夢中で読んでいたのに、いつの間にか、小説や人生論が大半を占めるようになっていました。

「もう一度冒険を取り戻そう!」。それが今回の再会が私にくれたメッセージでした。そんなわけで、先週末は自分の未来と過去の両方に同時に光がさした感じでした。

さて。キャリアコーチングの話に戻りましょうか。以前もお話した、私のコーチングのクライアントの方たち。特に1年近く続いた30代の方はそれぞれ自分の足を引っ張っていた「課題」をほぼ完了し、新しい挑戦を始めようとしています。そして、代わって40代、50代の方が新たなテーマを持って私のクライアントになってきました。

40代の方は「大学院での人間関係を克服して修士論文を書き終え、大学の先生になりたい」「一度別れたパートナーと再婚し、仕事を軌道に乗せたい」。人生最大のトランジション(転機)の真っ只中という感じです。一方50代の方は「社労士の資格を取って独立したけれど、キャリア関係の講師の道を見つけたい」「定年を待たず、55歳でコーチとして独立し、今の会社の社員教育をしたい」。キャリアゴールを明確に持っておられる人ばかりです。

人生色々ですね!クライアントの方のテーマは常に自分の中のテーマと重なっているから不思議です。どんなことがあっても自分の夢を大切にしたいと思います。そして、それはこのメールマガジンを読まれてる方に、皆さんにお伝えしたい事です。20代の方も、40代の方にもです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたには今どんな冒険のチャンスが待ち構えていますか?」

第121回 人的ネットワーク作り

こんにちは、楳林です。継続して行っていたある会社のキャリアデザイン研修の前半戦が終わり、ちょっとホッとしています。暖かくなったかなと思うとまた寒さがぶり返したりの2月でしたが、もう3月です。4月からの新しいチャレンジに備え、この1ヶ月は公私共に完了させたり、手放したりすることでけっこう忙しくなりそうです。みなさんはどうですか?

ところで研修の中では最終的にそれぞれキャリア開発のためのアクションプランを作ります。基本的には【1】将来のキャリア目標に向け、現在の仕事をどう変えていくか(新たなジョブデザイン)【2】自己成長やキャリア形成につながる人的ネットワーク作り【3】新たなスキル開発や資格取得などのための行動計画の3つを柱に、「明日から何をやるか」というところまで落とし込んでいくわけです。

この3つの中でも受講生だけでなく私も意外に苦戦しているのが人的ネットワーク作りです。そこで、今回はキャリアと人的ネットワーク作りについて触れてみたいと思います。

私自身を振り返ってみると、例えば30代、新聞記者としてずいぶん社外の異業種の人との交流がありました。でもそのネットワークを自分のキャリアや後の転職活動に結びつけるということは、実はあまりなかったのです。というより、結びつけることにかなり抵抗感があったのです。

学生時代からの交友関係と仕事は別の世界にしていたかったし、会社内での派閥や人脈作りというのにも興味は全く興味はなく、距離を置くほうでした。

その意識が変わったのは、キャリアに関心をもった40代後半からでした。ビジョン心理学やキャリアカウンセリング、最近のコーチングを一緒に勉強した仲間とは、その後も情報交換が続いています。現在の会社でキャリアデザイン研修をやることになったのも、前の会社で親しくしていた営業関係の先輩が転職先から声を掛けてくれたのがきっかけだったのです。

キャリアカウンセリングやキャリアデザイン研修を担当することになってから、転職だけでなく、キャリア開発をしていく上で日ごろから人的ネットワーク作りを地道に行うことの重要性に気づいたといえます。30代からの交流をもっと継続、フォローしておけばよかったと反省することしきりなんです。

そんな自分の反省をこめながら、30代からキャリアに関連する人的ネットワーク作りを積極的に進めることを研修のたびに伝えています。もちろん、営業系、工場関係、研究開発関係と職場のおかれた環境で人と出会う機会は相当違いますが、よく注意してみれば必ず、交流してみたい人はいると思いますよ。

ではどうしたら人的ネットワークを充実、拡大できるでしょうか。まず大切なのは現在の仕事に関連して自分の問題意識や考えを社内外のこれはと思う人に対して表現していき、共感を得るとともに、相手に対してタイミングよく質問して相手の考え方にも共感していくことです。

また情報に関して一方的にもらおうとするのではなく、自ら情報を発信していく。相手から何が得られるのかではなく、相手に何が提供できるのかという姿勢が必要だと思います。

そのためにも日頃から自分の専門性を深めていく努力が欠かせないわけです。

一方、年賀状や暑中見舞いは、これまでの単なる付き合いから一歩も二歩も前に進めるチャンスとして捉えてほしいと思います。ここでも仕事やキャリアに関しての問いかけや質問を盛り込むのも有効です。例えば、「~に関しての情報をお持ちでありませんか?」といった問いかけの一文をさりげなく盛りこんではどうでしょうか?

変化のますます激しいこれから時代にあって、自分の職種、業種の垣根を越えて、多方面の分野で人的ネットワークを持つことが欠かせないと思います。キャリア開発のためだけでなく、人生を豊かにする上でもです。

でもまずは自分の身の回りから。会社関係、地域、学生仲間、趣味仲間の誰からでもいいですから、キャリアの視点で興味をもって接してみてはどうでしょうか!

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたの人的ネットワークに参加してもらいたい最初の人は誰ですか?」

第120回 自分の価値観を大切にする

こんにちは、楳林です。この2,3日、東京はもう春になったかのような暖かさです。何だか庭の草花が一斉に咲き始めそうです。私の周りでも新しいことにチャレンジしたり、急に活動的になる人、変化に直面する人、何か動き出したなぁ、という感じがしています。

たとえば先日、以前キャリアデザイン研修を担当させてもらったある企業の人事部の担当部長であるOさん(50歳、女性)から、突然電話で転職のアドバイスを求められました。数日後、私の事務所に来られ、じっくり話をうかがうことが出来ました。

Oさんは以前から社員のキャリアカウンセリングやメンタルヘルスに関心があり、資格も取って、社内で講習会などを開いていたそうです。しかし、企業合併などがあり、人事部でのポジションは変わらないものの、会社の新方針に違和感を感じるとともに、自分のやりたい分野から遠ざかっているそうなんです。

そこで思い切ってキャリアカウンセリングの専門職の仕事を見つけようと転職を決意、近く面接を受ける予定とのこと。給料は今の半分以下。その条件でも転職したいと、なにやらすでに決断している様子。

私はOさんがその業界の実情をあまり知らないのと、その性急さがちょっと心配になってきました。自分自身もかってそんな性急さで転職したのに、自分以外の人になるとけっこう冷静に見えてくるものです。

ところでOさんのように、何か重大な決断をする時、私はその人にせめて決断をする前に自分の価値観を探ってみるようアドバイスしています。

価値観が明確になると、自分にとって何が大切で、何が大切でないかがよくわかるようになります。すると決断や選択ももっと楽に出来るようになります。もちろん自分は人生の中で何を尊重したいのか、なんていう問いは普段、取り組む暇もありませんね。でも転機の時こそそれがよく見えてくると思います。

そこで今回は自分の価値観を明確にする幾つかの問いかけをしたいと思います。興味のある人は自分のこととして挑戦してみてください。

「これまでの人生で最も生き生きしていた瞬間は何時ですか?」―自分の人生を振り返ってみて、幾つかの出来事の中で最も輝いていた時期を選んで見てください。「そこに誰がいて、どんなことが起きていましたか?」そして「今にして思うと、どんなことが大切にされていたのでしょうか?」あるいは「そのとき、どんな価値観が尊重されていたのでしょうか?」。

次は最近、怒ったり、イライラしたり、不快感を抱いた時のことを思い出してみてください。「その時、どんな状況でしたか?」「何がそういう気持ちにさせたのでしょうか?」そして「そんな嫌な気持ちの裏側にどんな価値観が潜んでいたと思いますか?」。自分でも気付かないで抑圧した価値観に触れるとき、人は怒りや不快感を感じるようですね。

又、あなたが仕事や好きなことで何か達成したり、楽しかったなと思った時、さらにその気持ちをさらに掘り下げてみると、自分の価値観をより明確にするチャンスになります。「何かを成し遂げるということは、あなたにとってどんな意味がありますか?」

価値観を明確にする問いかけは、今回はこれくらいにしましょう。大切なことは自分の持っている価値観をさらに掘り下げてみたり、幾つか出てきた価値観をどのくらい普段から表現しているかに気づくことですね。もしかしたら価値観こそがその人をその人たらしめている本質的な部分かもしれませんからね。

ということで今週のエクササイズです。

●「自分の価値観を尊重するために出来ることは何ですか?」

第119回 ピンチやチャンスの意味

こんにちは、楳林です。先週末はもう「春一番」が訪れ、冷たい風の中にも、春の気配が感じられるようになりました。私だけでなく、みなさんの中にも新たな芽生えを感じませんか?先週のエクササイズは「職場で一番改善しなければならないことで、将来、あなたのキャリア開発にも役立つことって何ですか?」でしたね。何通か紹介します。

「職場で改善しなければならないことは、『職務分担』です」(Yさん、41歳、営業所責任者)。Yさんは昨年4月から営業所の事務責任者になり、それまでの気楽な2番手から責任ある立場に変わり、四苦八苦の日々だそうです。

そんな中、Yさんは2人の部下を持つ営業事務の責任者として、「育児時短で少し引き気味の社員のAさんには、私が今やっているデータ関連の資料作りを、スキルの高い派遣社員のAさんにはルーチンワークをそれぞれ担当してもらい、私自身は作業的な仕事から離れて、分析・提案など考える仕事に切り替えていくことでチーム全体のパワーアップにつなげていく」真っ最中だそうです。

「私にとっては、考える仕事にシフトするための環境作りであると同時に、将来、管理職としてステップアップしていくための、最初の一歩」として位置づけているそうです。もう1つ。「今の仕事は『本当にやりたいこと』ではないのかもしれませんが、せっかく与えられた仕事・立場なのだから、ここで自分を成長させたいという思いはあります」というYさんの発言はとても貴重に思えます。

「職場で1番改善しなければならないことは、情報の共有化と教育の機会を増やすことだと感じています。それが社員1人1人の将来のキャリアにとって役立つ改善であることを経営陣も意識して欲しいですね。現状は実務に直結しないことであっても職能スキルを上げるためのセミナーなどを申請しても却下されるため、休日や有休を使って自己啓発するしかないという状況です」 (Mさん、41歳、ソフトウエア開発業務関連)。

とはいえ現在の仕事に追われる中で、「自分の時間を如何にして作り出すか」が課題というMさん。「もう少し社内でスキルアップできる機会が得られればいいなと思っている」そうです。

ただ、Yさんは「これまで直接的に会社にアプローチして失敗してきた。いわゆる根回しが下手だった」と反省。「同世代の成功者は、自己努力も当然ですが、チャンスと機会を逃さなかったこと、そして運をも呼び込んでいる。また根回しがうまく、頑張っているマネジャーもいる」例などを参考に勉強中だそうです

「意識を変えることが必要です!」と強調するのはEさん(34歳、女性)。Eさんは10年間の会社員生活(一般事務)後、派遣社員やアルバイトを経験し、現在は契約社員として、あるTV制作会社で一般事務をしているそうです。

「現在の職場は仕事が減っているにもかかわらず積極的な営業をしていません。現場のスタッフも新しい技術の習得や業界の情報収集にも関心が薄いようです。時代は変わっているのに・・・。私は立場上積極的に発言できないのですが」とEさんは歯がゆそうですね。

それでも「現在の職場にいることを利用(?)して、この業界ならではのスキルを身に付けたい。意識改革が進めば仕事の幅が広げられると思います。もちろん、1年の契約期間中に出来るだけのことは提案・実践していきます」というEさんの姿勢もすばらしいですね。1年後、どうなっていたいですか?

3人の方の回答はそれぞれのおかれた環境の課題に前向きに取り組みつつ、自分のキャリア形成もしっかりやっていこうという姿勢が感じられ、すごいなぁと思いました。私自身は40代に入ってから過去の仕事は全て自分のキャリアビジョンの一部を含んでいることに気づいてからは、現在やっている仕事の大切さをやっと受け取れるようになったような気がします。

そう思えるようになった時から、面白いことにある出来事とか出会いなどからたとえ最初はピンチのように思えることさえ、何か次のチャンスとかステップを感じるようになりました。

ということで、今週のエクササイズです。

●「春を迎え、あなたに訪れているピンチやチャンスは、あなたのキャリア形成にどんなメッセージを伝えようとしていますか?」

第118回 キャリアデザインとジョブデザイン

こんにちは、楳林です。このところ、ある大手企業の30歳の社員を対象に、

「キャリアデザイン研修」が続き、かなり疲れました。今日は代休を取って暖かい冬の日差しの中、愛犬のゴンと散歩したり、のんびりした1日を過ごしています。

30歳前後といえば、入社7~10年位、実務能力、コミュニケーション能力など職業人生の基礎工事の出来を確認する一方、これからの10年、どんな分野でもリーダーシップ、問題解決能力、そして専門性を積み上げて職業人としての自分を確立していく大切な時期ですね。

でも安定した企業で働いているせいか、キャリアに対する関心は、企業やこちらの思うほど高くはなさそうです。一度、転職でもするとガラッと変わるのでしょうが。ただ、「これが本当にやりたいことか」「今のまま、ずっと同じ仕事をしていっていいのだろうか」といった悩みはかなりの人が抱えていてホッとします。

私の30歳前後の時と変わらないな、と思うからです。私だって「キャリア」という捉えかたを、したのは40代後半からでしたから。

ところで最近の若い世代の「キャリアデザイン研修」に関わっていて、1つの大きな変化はキャリアデザイン以上にジョブデザインを重視する企業が増えてきていることです。今回はこのことについて触れてみたいと思います。

従来のキャリアデザイン研修というと、30歳,40歳,50歳という人生の節目において、これまでの職業人生を振り返って、自分の強み、弱みを確認するとともに、「本当にやりたいこと」つまり自分の価値観やキャリアビジョンを明確にして、将来のキャリア目標と行動計画を立てるというのが基本でした。

これに対し、ジョブデザインを重視する考えは、慶応大学教授の高橋俊介さんが書かれた「キャリア論」の中で主張している主体的ジョブデザイン行動中心の「キャリア自律」の考えがきっかけになっているようです。

変化の激しい時代にあって、従来のキャリアビジョンに方向でのスキル開発行動では、時代に対応しないばかりか、人材流失のリスクを高めるだけだと批判しているのが特徴です。

ジョブデザインという考えは、「誰でもやりがいややる気が出るように仕事を設計する」という意味で、1950年代に単調労働に対する批判が始まりです。現在でもやりがいと職場生活の充実という面で重要な視点といえます。

代表的な理論にハーツバークという人の「満足―不満足要因説」というのがあります。これによると、仕事そのものについて「作業が複雑で挑戦的内容を持つこと」がやる気を誘発すると言っています。もう1つ大切なのは仕事そのもの以外に、達成、承認、責任、成長、能力発揮(創意工夫)の5条件がそろった状態を“自律性”といい、人間は本来自律的に仕事をするのが好きな存在であり、そのとき強い満足感を得るといっています。

ちょっと難しい話になりましたが、ジョブデザインは特に経営側で社員の自立性を高めるための環境整備、あるいは組織改革やマネジメント改革がないと5条件がそろう状態はなかなか実現しないなあ、という感じがします。

それを抜きにして社員に主体的ジョブデザイン行動を期待するのは、ちょっと片手落ちでは、という気もします。半面、個人のキャリア形成は普段のジョブデザインを飛び越えてキャリアデザインだけですと、やはり”青い鳥症候群“に陥る恐れがありそうです。

以前紹介した(第82回)米国のキャリア学者、リッチモンドさんは「あなたが愛する仕事を見つけよう。あなたが今もっている仕事を愛そう」と言っていましたが、後半部分がジョブデザインにあたりますね。でも前半部分の「あなたが愛する仕事を見つけよう」という視点も大切です。要はこの2つにどう橋を架けるか、というのがこれからのキャリアデザインのポイントのような気がして、研修のたびに強調しています。

現在の仕事が嫌だから転職を考えている人たちには、今一度、これまでの仕事を通してのジョブデザイン行動を考えることが必要な気がします。そして社内キャリア形成を目指す人は、ジョブデザインをしながらも、節目ごとには視野を広げて10年くらい先の出来事に対するキャリアデザインをぜひ描いてもらいたいですね。

要はいずれにしろ「自分の人生観をしっかり持つこと」「どんな生き方をしたいのか?」どんなライフスタイル?」「何を1番、大切にしたいのか」といった問いをしっかり受け止めた上で、自分のジョブデザイン、キャリアデザインをしっかり描くことだと思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「職場で1番改善しなければならないことで、将来あなたのキャリア開発にも役立つことって何ですか」

第117回 人生の輪

こんにちは、楳林です。あっという間に2月に入りましたね。私は研修が本格化して、1つ終えるごとに満足感や達成感を感じたり、1枚のアンケートでちょっと落ち込んだりしています。でも緊張感と終わった後の緊張の緩み、ドッとくる疲れ。そのいずれをも楽しんでいます。

今回は『人生の輪』についてご紹介したいと思います。これは、コーチングを開始したばかりの頃にクライアントに書いてもらいます。私はキャリアデザインの研修でもよく使います。

どんなものかというと、円を8等分し、それぞれのパイは、人生の代表的な領域を表します。通常は(1)仕事・キャリア(2)お金・経済(3)健康(4)家族・パートナー(5)人間関係(6)学び・自己啓発(7)遊び・余暇(8)物理的環境(通勤、職場環境、住居など)の8領域にわけます。

輪の中心を「0」、外輪を「10」として、それぞれの領域に対する今現在の満足度を10点満点で自己評価し、その点数に合わせて弧を描きます。そしてその弧をつなげて新しい輪を円の内側に描きます。初めての人は是非自分でやってみてください。

この輪が、あなたの『人生の輪』となるわけです。もしこの輪が車の車輪だとしたら、どれだけスムーズに走行できるでしょうか?まあ、たいていの人の輪はデコボコして、とても走れそうにありませんね。

この輪をじっと見るだけで、自分のライフキャリア上の課題がよく見えてくるんです。30代の若い人は仕事とそれ以外の両方を大切にしているとよく言われます。でも実際にはそんな人にはまずお目にかかりません。大体、仕事・キャリア、家族・パートナー、人間関係などの満足度が一様に低い人によくお目にかかります。独身の人では遊び・余暇とか学び・自己啓発だけが突出する人もいます。

中高年になると、仕事に対する満足感が高い人、低い人がハッキリ出てきます。家族・パートナーはほとんどの人が低いですね。

ほんとに「人生の輪」とはよく言ったものです。クライアントや受講生の描いた円の中のデコボコ感からその人の生き様が絵のように見えてくるから不思議です。

もし自分で輪を描いた人は次の質問に答えてきてください。

「この輪に乗った感じはどうですか?日ごろの感じとどう違いますか?」
「あなたの人生の何を変えたいですか?」
「その項目を10点にするためにはどうしたらよいと思いますか?」
「全項目が10点になったら、あなたの人生はどんな風に変わってますか?」
「その領域の10点の姿を想像できたら、その位置から現在の自分にどんなアドバイスをしてあげたいですか?」

ちなみにコーチングを学び始めた4,5年前にトライした時、私の点は仕事・キャリア8点、お金・経済5点、健康4点、家族・パートナー8点、人間関係6点、学び・自己啓発9点、遊び・余暇4点、物理的環境5点でした。その頃の自分が目に浮かびます。現在はだいぶバランスが取れてきたと思っていますが、まだまだ課題多しといえますね。

「人生の輪」を作ってみる利点の一つは、視野が広がることです。私のクライアントの1人は仕事・キャリアの領域で満足感がとても低く、もがいていましたが、人間関係やパートナーとの関係にも視点を広げ、その改善に取り組むうち、同じ仕事に対しても取り組み方が変わってきたのには改めて驚きました。

最近結婚したYさん(30歳)も独身時代は、遅くまで仕事に打ち込む割りに不満もいっぱい抱えていました。が、家庭を持ってからは早く帰宅し、ご主人の協力を得ながら夕食を作り、2人のコミュニケーションを大切にしているうち、仕事に対する不満が「みるみる減った」そうです。

米国では人生の輪のバランスの良い人が、仕事上でも高い成果を出す時代に来ているそうです。日本も年功制や終身雇用制が崩れつつある中で、かつての企業戦士に代わってバランスを大切にする人が企業にも評価される時代に入りつつあるようですね。ということで今週のエクササイズは以下です!

●「あなたが気になる領域を10点にするにはどうしたらいいですか?」

第116回 内なるエネルギーを取り戻す

こんにちは、楳林です。1月ももう最後の週に入りましたが、今年こそ実現したいと思った目標や思いは順調に進んでいますか。まだでしたら、この1週間で、最初の一歩を踏み出してみませんか?前回のエクササイズは「今年に入ってあなたにはどんな新しい出来事が起きていますか」でしたね。1通紹介します。

「私の今年に入ってからの新しい出来事、それは久しぶりに自分の視野が広がる意識改革が起こったということです」(Aさん、41歳、法律事務所勤務)

「実は私は事務所にとって資格なしの不肖の2代目なのです。従って、「資格取得こそが事務所=我が家の運命」と長年受験勉強に専念。しかし成就せず、さすがに気力、体力、“脳力”の低下を痛感。そんな折、昨年暮、気分転換にある“創業塾” に参加、約40人の老若男女の皆さんの起業意識に燃える姿を見て、久しぶりに自分も“内”からのエネルギーが湧いてきているのを覚えたんです」(Aさん)。

創業、起業というのはその人のビジョンや志が大切になる世界ですね。そういう人の集まりに出てAさんもそれまでの「資格を取らなくては」という世界から一歩出る機会を得て、自分自身の内側にある企業家魂みたいなものを思い出し始めたのかもしれません。40代という人生の後半戦にむけて、今年は新たなステップを踏めそうですね。

「ここ数年、『その資格を取るのが私の使命』みたいな気持ちが先行し、少々焦り気味の狭い生き方になっていましたが、でも違うんですね。本当の勝負は資格取得後のもっと先を見ることなんです。それに自分の中でも起業意識を持ち始めた自分がいるのにもびっくり。運よくすでに宅地建物取引主任者とマンション管理士の資格を持っており、これらをうまく活用できたら、と再び前向きな気持ちが沸いてきました」(Aさん)。

皆さんにも聞いてみたくなりました。「“内”の方から何かエネルギーが湧いてくる」って何だと思いますか?それを今も感じることが出来ますか?あるいは以前持っていたなと思われますか?

私自身の体験では、これまで何度もそれを感じたことがありますが、又いつの間にか消えたようになる。灯ったり消えたりの繰り返しであったような気がします。最近は老年学に取り組めることで再び灯っていますが(笑い)。それを思うだけでワクワクする感じがするのです。

内のほうから湧いてくるエネルギーというのは、何か新しいこと、魅力のあることに出会って情熱が湧いてくることもありますが、やはり自分の本質とか夢、志、ビジョンといったものに触れたり、思い出したりした時、あるいは他人と心が通じ合った時などに出てくるような気がします。

で、そういうときこそ、「自分が本当に何をやりたいのか」「何を大切にしたいのか」といった問いに対しても、何かスッと答えられそうな感じがします。「何をやっていいのかがわからない」という人は多分、この「内からの湧き上がるエネルギー」みたいなものが目下、消えているのかもしれませんね。

ではどうしたらこの「内からのエネルギー」を持ち続けることが出来るのでしょうか。たとえ消えたとしてももう一度取り戻すにはどうしたらいいのでしょうか?

Aさんのようにセミナーや集まりに参加してエネルギーを取り戻すのも手ですね。私も時々参加して刺激を受けます。じっくり取り組むなら、自分の人生小史を作成して、小さい時に興味、関心を持ったことを思い出したり、体験してみるのも結構役に立ちます。

手っ取り早いのは、日ごろから少しでも興味のあること、気になっていたことなどから1つ選択して、とりあえずでも始めてみることです。一歩踏み出してみることです。行動しながら、もっと興味がわいてくることが出てきたら、選択し直していけばいいのです。

ということで、今週のエクササイズです。

●「今あなたが、一歩踏み出して始めたい事は何ですか?」

第115回 視点を変える

こんにちは、楳林です。先週末の寒さが少し和らぎ、ホッとしています。前回のエクササイズは「今年あなたが挑戦したいことは何ですか?」でしたね。まず1通紹介します。

「今年挑戦したいことは保育の勉強を始めることです。2年をメドに保育士の資格を取りたいと思います。この資格を持っていると、保育園だけでなく乳児院や養護施設などでも働けるからです。音楽をやっていたいし、子供とも肌で触れ合いたい。最終的に自分がどうなっていくのか、全くわかりませんが、本当にやりたかった方向の入り口になるような気がします」(Mさん、36歳)。

自分が本当にやりたいことを見つけるって実はなかなか難しいですね。だからこそ「これかな」と感じたら、思い切って挑戦するほうがいいと思います。私も40代半ばにキャリアに関心を持ち出してから、キャリアカウンセリングやコーチングのコースに挑戦しながら段々、見えてきたな、という思いがしています。是非がんばってください。

もっともMさんは、新しいことに挑戦する一方、2ヶ月前に引越しをした途端、アパートの隣人との人間関係などでかなりきつい体験をしているそうです。過去の未処理の問題が浮上しているみたいですね。この出来事に対し、八方塞のような苦しさを感じているようですが、そういう時って、自分の固定的な視点に縛られていることが意外と多いものです。

視点というのはある出来事に対して、それをどう見ているかというものの見方で、多くの場合感情がそれにくっついています。十分その感情を味わったのですから、ふっとその視点を手放してみてはどうでしょう。これも自分が大きくステップする上での挑戦テーマとしてみたら、どんな視点が見えてきますか?

前回私が老年学の話しをしたせいか、今回は中高年の方の回答が目立ちました。最高年齢は「今年のやりたいことは俳画です」のHさん(85歳)でした。年齢層の幅広さにはびっくりしました。

さて今週、私がとりわけ関心を持ったのは、知人の女性Iさん(30歳)の話です。Iさんは正月早々、新聞に掲載されたある求人募集欄に視線が釘付けになったそうです。「今の仕事に近いけれど、これが自分のやりたい仕事では」と、心底、魅力的に思え、すぐにも職務経歴書を書こうと思ったものの、「今の仕事を途中で放り出して悔いは無いのだろうか」と思い直し、2,3日、冷静になろう」と様子を見ることにしたそうです。

その求人募集の締め切りの日、午前中休暇をとって職務経歴書を書いたのですが、結局投函しなかったそうです。その代わり、投函するかしないかの緊張状態の中で「今の仕事でまだまだ遣り残していることや挑戦し甲斐のあるテーマがあるんだわ」ということを新たに発見したんだそうです。

「ある仕事がとても魅力的に見えた」「そっちへ行こうか」「でも冷静になる時間を持った」「最終的には現在の仕事にもう一度コミットし直すことにした」。とどうだろう、「ちょっとマンネリに陥っていた今の仕事の中にけっこう挑戦したいテーマがあることを再発見した」。

これって何かに似ていませんか・・・・・。ちょっとマンネリになった異性関係。そういう時、突然、隣の芝生が青く感じる時が・・・・。そのまま進んでいくと三角関係や不倫。でもそこでかろうじて冷静に戻って今までのパートナーにコミットしなおして見ると、あら不思議、魅力に感じたものがパートナーにちゃんとあるじゃないですか!

まあ、転職と三角関係を全て一緒にするつもりはありませんが、夢中になるほど魅力的に感じた時は転職といえど、ちょっと冷静になってこれまでの職場、仕事を振り返ってみる余裕が欲しいものです。

それ以上に、こういう視点で見てはどうでしょう。何か魅力、誘惑を感じた時は、これにはまるのでもなく、かといって否定的に見るのではなく、仕事や異性関係が新しいステップに来た合図なのだと肯定的に捉える視点です。

Hさんのような突然降って沸いたような最悪と思える出来事ですら、視点を変えてみたとき、何か自分を変えるというか成長するチャンスとして捉えることだって出来るのではないでしょうか。

ということで今週のエクササイズです。

●「今年に入ってあなたにはどんな新しい出来事が起きていますか?」

第114回 私の夢

こんにちは、楳林です。3連休の間、じわじわと寒くなってきています。先週のエクササイズは「2004年、あなたはどんな夢を実現し、年末にはどんな結果を手にしていたいですか?」でしたね。まだ正月明けでエンジンがかかっていないせいもあるでしょうが、ちょっと難しい質問だったかもしれませんね。執筆に入るまでに回答ありませんでした。

そこで今回は、鈴木編集長からの業務命令(?)もあり、喜んで私自身の夢を書くことにしました。喜んで、というのは私にとって1つ大きな夢が実現することになったからなのです。

それは4月から桜美林大学の夜間大学院で「老年学」「(ジェロントロジー)を学ぶことになったことです。老年学って耳慣れない学問かもしれませんが、「加齢に伴う心身の変化を研究し、高齢社会で起こるさまざまな問題を解決する学問」、もっと簡単に言えば、8割以上の自立した高齢者にも注目して、元気な長寿社会の実現を目指す学際的な学問といっていいでしょう。

何故、老年学を学ぼうと思ったかというと、数年前から定年前後の方7,8名と高齢者問題の勉強会を続けているうちに老年学に出会ったことがきっかけでした。それに自分自身が“老い”を痛感するようになって、自分自身の生き方としても老年学に関心を持ち、ずっと暖めてきたテーマなのです。

加えて、普段、世代別のキャリアデザイン研修の講師をやっていますが、50歳代、特に私と同じ団塊の世代の多くは、定年を待たず社外に転出せざるを得ない状況がいつ来るか、といった厳しい状況に直面しています。その割りに社外に出てからのキャリアデザインを描ける人が少ないように思います。

そういう状況にあっても「定年後は悠々自適」とか「65歳で仕事は辞めたい」という人がいまでも意外に多いのが実情です。でもいずれ平均寿命が85歳位になれば、定年後も人生はまだ20~25年もあるわけです。毎日が日曜日なら、すぐに退屈してきますし、何より健康に悪いですね。

今こそ、老年学の視点を持った生涯現役のためのライフキャリア戦略が必要なのでは、という思いも老年学を自ら学ぶ動機になっていると思います。

日本はまだまだ「高齢者は弱く醜い」とか「60歳を過ぎたら能力も人格も劣化する」といった孤立した老人観が根強く残っている気がします。社会が、というより、私達自身がそういう観念の呪縛から自由になっていないのかもしれませんね。

私にとってはもう1つの思いがあります。実は私の亡くなった父は長く医学部で教えていたのですが、父に反発した私は社会学や経済学、心理学といった人文・社会科学系を学びました。ところが老年学はその両方を統合する学問なのです。

勝手な思い込みかもしれませんが、この年になってようやく自分の中の父親の部分を受け入れる時が来たような感じもしています。キャリアというのは仕事や職種の選択の底に、家族や自分の人生ストーリーが脈々と流れているような気もします。

正月に見た映画「ラストサムライ」の最後のシーンは、武士の勝元にとっては無駄死にのように見えようと運命を完璧に生きることだったのだと思います。大げさですが、自分もそんな思いがあるせいか、妙に反応してしました。

「加齢とは全ての人が経験していく人生の過程であり、同時に人間としての成長、発達も努力し続ける限り、人生の途上でとどまるものではない。高齢期といえ、人生のどの時期からの経験からも孤立するものではない」というのが老年学の基本視点ですが、なんだかようやく自分の主戦場に来たな、というか、この分野で完全燃焼したいと思っています。

現在のライフキャリア研修という仕事にもつながりますが、将来的には教育、企業、個人をつなぐ「老年学センター」作りに参加したいなあ、というのが老年学を学んだ後の夢です。

そして、毎回、みなさんの回答を読むことが、私の若さを保つ原動力になっていることを改めて感謝したいと思います。今年は今までのような形にとらわれず、もっと自由に書いていこうと思っています。でも毎回、エクササイズは続けます。回答を載せない場合は、時間の許す範囲で感想やコメントをしますので、今まで以上に積極的に回答していただければ幸いです。

ということで今週のエクササイズです。

●「今年あなたが挑戦したいことは何ですか?」

第113回 想起する

こんにちは、楳林です。正月休みはどのように過ごされましたか。さっそくですが昨年末のエクササイズ「中学1,2年の頃、あなたが好きだったことは何ですか」の回答から紹介させていただきます。

「とにかく身体を動かしていることが大好きでいつも走り回っていました。クラブ活動、トイレに行くときも、イヌの散歩も。それと相反するようですが、じっと山や空を眺めたり、特に夕日を沈むまで眺めるのが好きでした。今でも故郷に帰るのは人に会うよりは風景と会いに帰っているような気がします。イヌも死んじゃったし人も昔の彼ならずといったところでしょうか?」(40代男性、大阪南部出身)。

「学生生活という言葉に集約されるような気がします。当時、学友たちと、学校の内外でいろんなことをして楽しんでいました。・・・・・そうそう、当時はアインシュタインや湯川秀樹に憧れていましたね。あと作家にもかな。図書室の会報に推理小説の連載をし始めて挫折したのも良い思い出です。多分、その当時は何が好きと聞かれても、ひとつに絞り込むことは出来なかったでしょう。それは今も同じかなという感じです。私にとっては、社会人になってからの人生のほうが、後悔や失敗が多いという気がしています。その点が残念でなりません」(41歳、ソフトウエア開発会社)。

もう1通。「当時は数学、英語、国語の勉強と文字を書くこと、絵を描くこと、茶道のお稽古、・・・・新しい知識を得ること、学ぶことが好きだったようだ。最近は、当時に戻っているようで通信教育で学び始めています」(無職、女性、53歳)。

何だかみなさんの中学時代には豊かな感性や才能がいまだに埋もれている宝庫のような感じがしませんか。単に過ぎ去った過去を懐かしむだけでなく、もう一度丹念に掘り起こしてみたらどうなるでしょうか?

話はちょっと横道にそれますが、日経ビジネス最新号(1月5日号)でIBMは危機があるごとに「顧客は今何を求めているのか」という原点に立ち戻り、IBMの改革の遺伝子を思い出して新たなビジネスモデルを打ち出していく、という記事が目にとまりました。

なんだか人も、「本当にやりたいこと」を見い出していくためには、埋もれている中学時代の宝庫に戻って自分自身の遺伝子を再発見することも1つの方法では、正月気分覚めやらない中で思ったことでした。

そういえば昨年末に再放送になった韓国のTV映画 「冬のソナタ」には私もはまりました。主人公のカン・ジュンサン(イ・ミニョン)は高校時代に交通事故で記憶喪失になります。10年後、2回目の交通事故で昔の記憶を取り戻し始めますが、いっぺんに昔を思い出すのではなく、過去と似たような場面に出会うたびに記憶を取り戻していきます。これを想起するというそうです。

でももしかしたら交通事故にあわなくても、人は失敗経験などの人生の出来事の中でどんどん記憶喪失に陥っているのかもしれませんね。

自分の宝庫を思い出すためにはどうしたらよいのでしょうか。思い出そうという意欲・意志と想起することでは、と冬のソナタを見ながら思いました。

もう1つ年末年始に私の周りで1組の結婚式と1組の新たなロマンスの始まりがありました。ところが2組とも3~4年前に本人同士がサラッと会って何かを感じたようでしたが、その時は何事もなく、月日がたっての再会を機に一挙に進展したこと(選択とコミット)が共通点でした。同じようなプロセスが続くなんて不思議ですね。

しかもこの結婚や恋愛が仕事の面でも大きく変わるきっかけになりそうなのです。昨年ちょっと触れた「ラブ&キャリア」を象徴するような出来事でした。「準備ができた時、あなたの師が現れる」という言葉がありますが、恋愛もキャリアも同じような感じがしました。

というわけで正月は気ままな連想ゲームを楽しんだところで、やはり2004年、新たな気持ちで自分のビジョンを確認し、実現のための行動計画をしっかり持ちたいものです。

今週のエクササイズです。

●「2004年、あなたはどんな夢を実現し、年末にはどんな結果を手にしてい たいですか?」

第112回 あなたが魅力的だった時代

こんにちは、楳林です。週末の寒さで、治りかけた風邪がぶり返しそうでしたが、かろうじて踏みとどまっています。先週のエクササイズは「あなたにとって忘れられない1冊の本って何ですか」でしたね。何通か紹介します。

「わたしにとってのそれは、中学の時に読んだ『石川啄木詩集』です。いつも『この本が私の本好きの原点だ』と思っていたわけでもないのですが、改めて考えると、やはりこれです」(Sさん、35歳、ライター)。

「その本は学校の図書室にあったのですが、『東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて・・・・』と始まって、どのページをめくっても悲しいんです。表紙は古びていて、ほどよく汚れていてそれ自体『悲しい』んです。悪いこととは知りながらも、その本は私のモノにしてしまいました。つまり返さなかったのです。今でも本棚の隅にひっそりと悲しく佇んでいます」。

「でも、その後続く本好きの始まりの一冊ということで、『忘れられない1冊』となると思います」。

きっとその時の自分の心象風景に重なったのでしょうね。その時からあなたの旅が始まったのかもしれませんね。自分でも始めたばかりでちょっとおこがましいんですが、もう一度その本をじっくり読んでみることをお勧めします。

何故なら先週からぽつぽつ「ジャン・クリストフ」を読み始めて、改めてその深さ、豊かさに圧倒されているんです。でも始めて読んだ時、確かにその深さを感じている自分がいることにもどこかで感じるのです。きっとSさんも「悲しみ」だけでない、啄木のすばらしさを感じる自分の資質に思い出すきっかけになるかもしれませんよ。

もう1通。「私の忘れられない1冊は五味太郎の『まどからのおくりもの』という絵本です。高校の保育の授業の時に先生が紹介してくれた本です。五味太郎が、今のようにまだ知られていない時から大ファンになりました」(Mさん)。

まだ有名になる前から興味、関心が持てるというのは何か自分で宝物を発見したような感じですね。五味さんという人の作品のどんなところが気に入ったのですか?

ところで、今、村上龍の「13歳のハローワーク」が話題になっていますが、今回のエクササイズとも関連していると思うので、ちょっと取り上げてみたいと思います。13歳というと中学1,2年位、その頃に好きだったことを手がかりにして具体的な仕事、職業を探してみるという試みですね。自分自身を振り返ってもその頃がとても重要だな、と思うからです。

キャリアデザイン研修で30~50歳の方に、「小さい頃好きだったこと、やりたいと思った仕事は何ですか?」を書いてもらうことがあります。そして発表する時、同時に「その中で今でも欠かせない要素が何かありますか」ということも聞いてみます。それを話す時、みんなの顔が生き生きしているのが印象的です。

音楽家の坂本龍一が「この困難な時に、この本に出会えるかどうかは、その子の一生を決定するだろう」と広告文で語っていますが、私は常々こう思っています。「誰もが、そのころ好きなものに出会っている。でもいつの間にか、諦めたり、忘れたりしている」。

キャリアカウンセリングやコーチングの現場で、クライアントの方の旅に付き添って、そういう世界を再発見した時ほど、ワクワクすることはありません。クライアントが突然、魅力的に見えるときでもあるんです。

ですから、この「13歳のハローワーク」が売れているということは、やっとそういう時代に来たな、と思えるのです。働くこと、あるいは職業の選択、転職ということを今までよりもう少し深い意味で見ていく、それがライフキャリアではないかと思っています。

ということで今週のエクササイズです。

●「中学1,2年の頃、あなたが好きだったことは何ですか」

第111回 まだ叶えていない夢

こんにちは、楳林です。朝晩の愛犬の散歩は寒さを感じますが、気持ちを引き締めてくれます。先週のエクササイズは「あなたにとって2004年をどんな年にしたいのかを漢字で表してみてください」でしたね。1通紹介します。

「『備』と『築』といった感じでしょうか。今のところはというレベルですが、後厄、節目の年、そして新しい人生へ向けて、ステップするために体を準備する年になるのかなという思いがあります。まず『備』は現状を十分に把握して、必要なもの、足りないもの、自分自身のこと、環境、それらについて、変化のために備えをしたいです」(Mさん、ソフトウエア開発SE,41歳)。

「『築』は今年取得したITコーディネーター補から補をとっていけるようにスキルの向上をし、人脈や今まで知らなかった世界とのつながり、自分への自信となるべきものなどを築いていくべき人生にしたいですね。いくつかの資格取得にもチャレンジしたいし、人生を考えた上での自分の仕事を目指した転職できる環境も築きたいですね」。

40代は仕事人生としても一番油の乗る時期ですが、同時に人生の後半戦への折り返し点でもありますね。今まで捨ててきたものを拾いなおす面もあるようですね。

ところで、先週の半ば、帰宅途中の駅の売店でPHP1月号の特集「人生は、何度でもスタートできる」がつい目にとまって珍しく購入、電車の中で呼んでいるうち、ハッと気づかされたことがありました。それは萩原朔美さんの「挫折はチャンス」というエッセイを読んでいるうちに引き出されてきたのです。

萩原さんは私と同じ年で、多摩美術大学教授ですが、それ以上に映画作家、写真、版画などで活躍されています。その彼が毎年、自分の生徒に「いったい自分は何がしたいのかまだよくわからないんだ」といっているそうなんです。

ムムッと感じたのは次の文章でした。「それというのも、私は何者かになりたいとか、こんな仕事がしたい、と思ったことがなかった。いや間違い。たった1度だけ思ったことがある。小学4年生の時だ。画家になりたいと思った。親にも先生にも言った。しかし中学3年間で教え方に反発して絵を描く気力を失った。それ以来、何が自分にとって最適な仕事かが見当たらなくなったのである」。

萩原さんはその後、ジャズバンドを組んだり、寺山修二の主宰する劇団に入ったがいずれも挫折。30代から雑誌の編集、広告制作、テレビ企画などを手がけ、今は大学の先生。でも「どこかにまた次のやり直しが自分の身に起きるのではないか、と思っているのかもしれない」と語っています。

このエッセイを読みながら、ふっと「自分もそうじゃないか」という思いが浮上してきたのです。

「そう、作家です」。確かに小学校4年から高校生まで、自分の心を占めていたのはそれなんです。でも段々、諦めていって、心の奥で「無理だ!」と言っている自分がいまだにいるのに改めて驚いてしまったわけです。

確かに今まで新聞記者を皮切りに色々職業を体験し、現在はキャリアデザイン研修やコーチングという割と自分に合っているし、気に入った仕事をしている。メルマガも書かせてもらっている。でも近いところにいるようで、「まだ遠いんだな」という思いがしてきたのです。

「もしかしたら、人にはそれぞれ、『これしかない』という仕事というか世界が1つだけ与えられているのかもしれないな」。その時、直感的に思いました。まるで故郷のような感じです。「それは無理だ」と心の奥で半ば諦めながらも、諦めきれないでいる世界がみなさんの心の中にありませんか。まだ叶えていない夢が心のどこかで呼んでいるような気がする時がありませんか。

この正月は、中学2年の期末試験の最中、夢中で読んだロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」を読むことにしました。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとって忘れられない1冊の本って何ですか」

第110回 あなたの2003年を表す漢字は何?

こんにちは、楳林です。研修の仕事が一段落して気が緩んだのか、とうとう風邪を引いてしまいました。まあ、少しのんびりしなさいというメッセージと思って慰めています。先週のエクササイズは「まだ1ヶ月弱ありますが、あなたにとっての2003年を漢字で表すと、どんな漢字になりますか?また、その理由を教えてください」でしたね、面白かったので色々紹介したいと思います。

『忍耐』-「2年間心療内科に通院しながらの闘病生活の中、社内では窓際的な扱いながらも、自己のスキル向上のために自己投資して、ITコーディネーター補として登録。貯蓄もどんどんなくなっていき、結婚相手も見当たらず、父の三回忌を何とか無事に終える。それでも将来のビジョンについてじっくり考える歳であったし、何かが自分の中で変わってきていると思う。厄年でもあった今年。きっと将来へ向けての準備の年であったと思えるようにしたい」(Mさん、SE, 41歳)。

私も厄年の頃は大変な思いをしましたが、自分を振り返るいい機会になりました。「何かが自分の中で変わってきている」という箇所にとても興味を持ちました。

同じく『「忍」―「厳しい1年でした。商売がうまくいかず、知人にも迷惑をかけました。少しでも来年がよい年になりますよう、今から準備をしようと思います』(Aさん、自営業、50歳)。春は必ず来ますよ!

『動』-「私の場合、情報通信業界で3年半の勤務経験を得た後、企業経営についてさらに知識を深めるため、退職を経て社会人大学院へ入学しました。以前からの夢であり、そして又自分のキャリアそのものを大きく変えたいという思いから、一気に「動」いてみました。今までなかなか大胆に動き出すことが出来なかったので、今回は自分にとっていろんな意味で動き(変化)のある年だったと思います」(Kさん、27歳)。

Kさんは「来年は再び就職活を始める年ですが、知識・考え方の変化(動き)が、さらに前に突き『動』かす原『動』力になれば」と言っていますが、動きが好循環へつながる感じですね。

『飛躍』-「しばらくの間暖めてきた自分のやりたいことに気づき、そして、自分で今やれることを探し、それがある程度成功したといえるからです。その作業は、まさに『ハイリスク・ハイリターン』だったと思います。リスクが高くても、自分の目指すところに向かって行けたのは喜びでした。又私の人生において、そうした良い時期だったのかもしれません」(Sさん、35歳)。

良かったですね。来年はもっと飛躍するかもしれませんね。

『融』-「入社6年。これまでは自分の能力の何倍もの仕事を任される日々でしたが、今年ある出来事をきっかけに中長期的に自分を見つめることが出来るようになり、『きちんと向き合わないといけない自分の問題』にプライオリティをつけながら、初めて向き合えた感じがします。イメージ的には、異形の固形物でばらばらだった自分の経験の隙間に、何か流れ込んでいる感じです。そんな『融』です」(Kさん、人材開発関係、27歳)。

何か経験や能力が融合していく感じですね。それがキャリアへなっていくような気がします。

みなさんの今年を象徴する“漢字”を拝見していると、それぞれの個性を感じますね。好調であれ不調であれ、体験したことの意味と次へ向けてのメッセージをしっかり掴んでいて感心しました。私の場合は、『匍匐前進』です。今年は研修とコーチングをしこしこやっていた感じです。来年はなんとしても飛んでみたいですね。

今回は皆さんの“漢字”の紹介で一杯になってしまいました。そこで、何人かの方はすでに触れておられますが、今週のエクササイズは来年へ目を向けてみたいと思います。

このエクササイズに関する回答を cn@en-japan.com までメールでお願い致します。次回内容にみなさんのメールを反映させていきます。送付時に簡単な自己紹介(職種、年齢等)もお願い致します。

●「あなたにとって2004年をどんな年にしたいのかを漢字で表してみてください」

第109回 ビジョンを妨げているもの

こんにちは、楳林です。もう12月、今年もあとわずかですね。今年初めに立てた目標でまだ達成していないことはありませんか。私もまだやり残したことがありますが、この1ヶ月で挽回しようと思っています。先週のエクササイズは「あなたのビジョンを止めているものは何ですか」でしたね。1通紹介します。

「正直言ってしまえば、自分自身だと思います。こうでありたい、こうなりたいとか思った時に、心の中で必ず出てくるのが出来るのかな?苦しいからいやだな、といった否定的な言葉です。最初は頑張ろうと思っても、途中で苦しくなってくると、自分に言い訳をして、今のままでもいいやと前に進む(ビジョンを見る)のをやめてしまいます」(Sさん、36歳)。

とても正直ですね。でも「出来るのかな?苦しいからいやだな」という否定的な言葉はどこから来るのでしょうね。多分、もう習慣のようになっているかもしれませんね。本当に諦めてしまうんですか?あまりにハードルが高ければ、もう少し手の届くところに目標を設定して取り組んではいかがですか?

先週のライフキャリアデザイン研修でも、「ビジョンを思い描く」というセッションを行った後、「なかなかビジョンが描けない場合、何が理由だったのですか」という問いを投げ掛けて見ました。いろんな興味深い反応があったので今回はそれを紹介しましょう。

一番多かったのは「自分が何を望んでいるのかわからない」という回答でした。「何を望んでいるかなんて、もう長らく考えたこともなかった」とか「明確にしようとすればするほど、焦りや苛立ちが出てくる」「なんだかすでに諦めている感じです」といった発言の中に未来に対してより、現実に対する落胆の深さを感じました。

「今、興味や面白いといったものがあるとしたらどんなものでしょうか?」。今ビジョンがわからないなら、とりあえずでも興味のあることを中心に期限付きの目標を立てていってはどうでしょうか。

次に多かったのがSさんに似ていますが、「自分は望んでいるものを手に入れることが出来ない」という回答。多少は望むものが見えているようですが、すぐに疑いや、不安、恐れが出てかき消してしまうようです。「子供の時から、欲しいものは考えてはいけない」「仕事と家庭の両方は手には入らない」といった思いが今も続いているようです。

もう1つ。「私が望んでいることは今の職場では手に入らない」。自分の個人的なビジョンはあまりに今の仕事とかけ離れているため、転職するか、定年後にしか実現しないと諦めている方もけっこういますね。

その場合でもよく注意して今の仕事を見直すと、何か関連があるはずです。「将来、NPOで環境問題をやりたい」といってた人が、今の営業活動を見直すうちに 、環境関連商品の提案営業に気づかれたケースもありました。

ビジョンって、心から願っていることなんですが、自分を取り巻くいろんな制約条件のために諦めることが少なくありません。そんな時は恐れや制約条件をちょっと横において、まず自由にビジョンを描いてみてください。それが実現した状況を思い浮かべ、その未来から逆に現在を見ていくと、一見ネガティブに見えた出来事からも、ビジョンのヒントになるメッセージに気づくことがあるんです。

ところで2003年もあと1ヶ月。早いものです。先週、ビジョン心理学のビジネスセミナーに参加して一番の収穫は、恐れをかなり手放せたこととマインドがとても静かになったことです。今年1年は特に秋からハードワークに追いまくられた感があります。それも自分がそういう選択をしたためなんだな、と思うこのごろです。

研修の仕事も一段落して、これからの1ヶ月、今年1年のやり残しを片付けるとともに、次のステップへの準備をしたいと思っています。

ということで今週のエクササイズです。

●(まだ1ヶ月ありますが)あなたにとっての2003年を漢字で表すと、どんな漢字になりますか?また、その理由を教えてください。

第108回 キャリアの評価基準とは

こんにちは、楳林です。さすがに朝晩が寒くなりましたが、3連休をどのように過ごしましたか。私は3日間のビジョン心理学ビジネスセミナーにスタッフで参加し、日ごろの仕事のやり方を振り返っていました。先週のエクササイズは「あなたが思う“幸せなキャリア”って何ですか」でしたね。何通か紹介します。

「自分の仕事により、感謝されることです。ある技術を持ち、それを仕事に生かして人に喜ばれることだと思います。私の場合は「出来て当たり前」と言われます。もちろんプロとして仕事をしているのですから当然なのですが、ユーザーから思いがけず、感謝の言葉などを掛けられると嬉しくなります。この技術や技能を身に付けて(または経験して)おいてよかったと思える時です」(Sさん、36歳)。

「私が思うキャリアは、やはり感動があることです。楽しく、そして自分が役に立っているなと感じられることです」(Mさん)。

お二人とも「自分が役に立っている」「感謝されている」という自分の内的なものがキャリアでの幸せを大切な要素になっているようですね。

でも何がその人をして幸せって感じさせるのかは、簡単ではないですね。人によってずいぶん違うでしょうし、何より、「自分にとって幸せって何?」と考え始めたら、すっと出てこないかもしれません。今回は回答が少なかったですが、せめて「自分にとっての幸せとは?」って考えるきっかけぐらいにはなって欲しいなと思いました。

ところで「幸せのキャリア」については高橋俊介・慶応大学教授が「キャリア論」という著書で触れていますので、簡単に紹介したいと思います。高橋さんの論はキャリアをどのように評価するかという視点から、幸せのキャリアを引き出しているのが特徴です。

キャリアの評価基準は大きく、外的基準と内的基準があります。外的基準というのは、例えば社内出世度とか報酬、社外通用度といった自分の外にある客観的な物差しを言います。現在の世の中では主流かもしれませんね。それに対し内的基準というのは、自分の中にある物差しで、自分の価値観や内なる動機、専門性や特定のスキル、過去の経験といった自分の保有能力、それと興味の4つを重視しています。

2つの基準の違いはどこにあるのか。高橋さんは外的評価基準がキャリアの勝ち負けが問われるのに対し、内的基準は一人一人がそれぞれ個別に持つもの。だから、競争とは異なり、「幸せなキャリアか不幸なキャリアか」の違いになると語っています。別の表現で言えば「自分の満足度」あるいは「自分らしいキャリアの実現」ということになるそうです。

また成果主義のプレッシャーや社内でのポスト不足などを背景に、自分らしいキャリア、つまり自律的キャリア形成を目指す中高年や若手が増えてきています。これも自分の内的基準を大切にしようという動きと言えそうですね。

動機や価値観のタイプによっては、外的基準での勝つキャリアを目指すことが内的基準ともマッチングすることもあるそうです。基本的には“幸せのキャリア”は従来の主流の“勝ち負け”とは対極的にある考え方といってよいでしょう。将来的には「内的基準を重視した自律的キャリアしかありえない」と高橋さんは語っています。

私自身は内的基準をさらに徹底して、その人が自分のビジョンとかミッション(使命)を見い出していった時に独自の資質や能力をも見い出す契機ともなり、それが“幸せなキャリア”になるのではと思っています。とはいえ、キャリアデザインの企業研修をやるたびに、まだまだそれはストレートには出てこないことを痛感しています。

しかし、ビジョン心理学ではその人の問題の背後にこそビジョンと才能が潜んでいるとして、いろんなワークを通じて見い出していこうとしています。コーチングや他の心理学でもビジョンの大切さが認識されつつあります。意外に早く、ビジョンに焦点を合わせる時代がくるような気がします。

ということで今週のエクササイズは、またちょっとした挑戦です。

●あなたのビジョンを止めているものは何ですか?

第107回 自分のストーリーに気付く

こんにちは、楳林です。朝寒くなってきたから要注意と思っていたら、私のパートナーが早速風邪を引きました。今うつされては仕事に差し障ると、緊張を緩めないようにしていますが、どうなることやら・・・。先週のエクササイズは「あなたが今、心から表現したいと思うことは何ですか?」でしたね。先ず1通紹介します。

「現在、外資系の会社で働いていますが、このたび正当な理由もなく会社を解雇されます。私が一番表現したいのは本当の自分です。誤解を受けてばかりの人生でした。正義感が強く、相手が誰でも正論を貫いてしまうような潔癖さが自分にあります。それが元で過去にも異動させられたり、会社の不正を発見して首になったことがあります」(Kさん)。

「間違ったことは一つもしていないと思っています。真面目に一生懸命生きているつもりなのに何故こんなにつらい目にあうのか。確かに私は自己表現が下手で、不器用ですが、私は悪くない、頑張っているんだ、こびへつらうことは苦手だけど、嘘のない人間なんだ。大声でそう叫びたいです。でもどこか、自分で同じストーリーを作ってしまって、そこから抜けられない、そんな感じもします」。

そうですね、私もそう思いました。ちなみにこのストーリーに名前をつけてみませんか?例えば喜劇「正義の味方~~ウーマンの~~人生」を埋めてみてはどうでしょうか。そして自覚的に演技してみたらどんな感じがするでしょうか。自分のストーリーを悲劇でなく喜劇として意識できたら笑って超えていけるかもしれません。

前にも触れましたが、たいていの人が気がつかずに自分のストーリーを後生大事に抱えて生きています。気がつかないとそのストーリーを仕事や人間関係で何度でも繰り返します。ストーリーに気づけば、対処法は色々あります。肝心なことはKさんのように本当は知っているのです。ただ「心から表現したいこと」を避けるための隠れ蓑に使っているんです。

「心から表現したいこと」って、それを実現したい気持ちと同じくらい、怖くありませんか?「実現したらどうなってしまうんだ?」「それよりはストーリーを演じ続けよう」。「少なくてもそれなら続けられる」なんて考えていませんでしたか。

「感動を売る仕事、それが私のやりたいこと」とKさん。やっぱり気づいているじゃないですか。それに気づけば、会社を解雇されるように、お得意のストーリーを使ったのかもしれませんね。狙いは?もちろん本当に自分のやりたいことを見つけ挑戦するためにですよね。Kさんの本当の資質は純粋さ、なのかなと私は思いました。それはストーリーではありませんね。

Kさんはまた「本音で付き合うので友人は多く、慕ってくれる人も多いです」と語っていますが、きっとその人たちはKさんの本当の資質を感じていると思うのです。純粋で真直ぐな木のようなKさん自身の存在が感動を与えるのかもしれません。その時のKさんは決して自己表現が下手でも不器用でもないと思います。

もう1通。「今心から表現したいと思うことは、子供たちに『愛しているよ』を伝えたいです。普通にコミュニケーションをとっている時はもちろんのこと、音楽を通じて何かを表現できる方法はないかと思いました(自分に対しても『愛しているよ』を表現してみたいです)。赤ちゃんや子供を見ていたり、接していると『感動』があるのです」(Mサン、36歳)。

Mさんは子供にピアノを教えながら、愛への出会いというテーマがずっと続いていますね。きっと「愛と子供の心」を深めていくことがMさんの道のような気がします。で、1つ質問させてください。子供に感動する時、どんな色、どんな感じですか?

ところで私は今、ある企業のキャリアデザイン研修を準備しながら、「幸せなキャリア」というテーマについて考えています。依然述べたようにキャリアに「は「良い」「悪い」も「勝ち」「負け」があるわけではなく、自分自身によって評価され、自分らしいか、あるいは意味を感じるかどうかなどが大切だと思います。幸せというのも人それぞれの価値観によって異なりますね。

そういったことを踏まえて、改めて「幸せなキャリア」って皆さんはどんな風に考えるのかな、という興味を持っています。これを新たなステップにしたいと思います。

ということで今週のエクササイズは、

●「あなたが思う“幸せなキャリア”って何ですか?」

第106回 表現する責任

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたのハードワーク(それ以外の課題でもけっこうです)を仕組んでいるグレムリンはどんな怪物で、得意の戦略は何ですか?」でしたね。まず1通紹介します。

「私のグレムリンは“幸せ恐怖さん”です。得意な戦略は『お前が悪い。お前がおかしい』と私に罪悪感を感じさせ、いやーな気持ちにさせ、その後“災害的空想”をさせます。最悪の結果を想像して私をとことん追い詰め、莫大な不安を与えます。また時には『完全であってはいけない』というメッセージを出して、よい気分の私にガツーンと一撃を与えたり、順調に行き始めると邪魔をします」(Mさん、36歳)。

いやぁ、かなりの怪物ですね(笑い)。ちなみにその怪物はどんな形、姿、色をしていますか?

Mさんは「こうやって書き出してみると、何だかとても怖いです。どれもこれも本来の自分や本当にやりたいことを妨害し、私を苦しめている材料なのですが、自分の中にこういうものがあると認めるのも怖いし、それと向き合うのを怖がっている自分がいます。でも、怖くてもグレムリンがいることがわかることが、とても大切なのだと思いました」。

そうですね。今度現れてきたら、是非、“幸せ恐怖さん”に話しかけてみてはどうですか?

グレムリンに気づいた後の対処法については、例えば名前をつけてちょっと席をはずしてもらうとかの手がありますが、グレムリンを否定するのではなく受け入れて、じっくり付き合うというのも面白いと思います。

それにグレムリンは怪物の姿をしているケースが多いといっても、怪物というのは表面の姿で、実は本来の姿と痛みの両方が隠れているようです。グレムリンはある意味では、もう二度と痛みを感じないように守ってくれていた、という面もあったわけです。

でもグレムリンの姿がわかった以上、隠れている本来の姿を取り戻すチャンスの時が来ているのかもしれません。私も8つの頭を持った大蛇と対話しているうちに、何だか情熱とか知恵とかを取り戻す時のように思えてきました。Mさんもどんな本質が現れてくるか楽しみです。

ところで多少余裕の出来た今週末、私は「感動」と「夢中になる」という2つのテーマに触れる機会があったので、それについて触れたいと思います。

1つはメールマガジンで何かピンときて「感動は設計できる」という講演会に参加したことです。講師の平野秀典さんは会社員、マジシャン、役者という3足のわらじを履いている方だそうですが、2時間のトークは単なる感動のテクニックではなく、感動しながら感動の本質を聞くことが出来ました。そして感動することの大切さと、一人一人が自分なりの表現を通じて自分の思いをメッセージとして投げかけることの重要さを感じました。

特に筋ジストロフィーで段々手足が動かなくなっていった少年が最後は口で楽器を弾く話は、生きていることの奇跡と一人一人表現する責任があること、受講者の多くの方が涙をこらえながら(私もその一人でしたが)聞いているのが印象的でした。

キャリアというのもそうした感動や自分なりの表現が欠かせないものだということを再認識させていただいたわけです。受講者の方は30代の方を中心に、20代から、50代まで幅広く、ビジネスの最前線で活躍されている方が多い印象でしたが、改めて仕事の場でも感動の出来る世界を見つけたいんだな、ということをひしひし感じました。

その日の夕方、TVで画家・京都造形芸術大学教授の千住博さんの話にも感銘を受けました。千住さんは目下、教育TVで、「美は時を超える」という人間講座を担当、私もテキストを買って時々見ていたのですが、千住さんは最後にみんなへのメッセージとして「夢中になるものを見つけてください」と語ったのが心に残りました。

今、自分のグレムリンとも関連しますが、自分なりの表現を夢中になってやること、そして感動することが課題なんだと、改めて痛感した1日でした。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが今、心から表現したいと思うことは何ですか?」

第105回 あなたの中のグレムリンを探そう

こんにちは、楳林です。近くの公園に行くともう少しで木の葉が黄色になって今にも散ってしまいそうです。秋の深まりを感じます。先週のエクササイズは「あなたの本当の夢は何ですか?」でしたね。何通か紹介します。

「大好きな言葉だけで、難しい言葉ですね!小生は現実逃避かもしれませんが、60歳を迎えたら南の島でのんびりと過ごすことを夢見ています。学生運動に夢を見て、教員生活に夢を見て・・・・・・でも最後はやはり逃避かな?自分に戻ってしまいました。50歳で現職を退き、今は南の海を夢見て第二の仕事と準備に日々を過ごしています。」(Tさん)。

Tさんはまた、「30年以上になるヨット生活のまとめとして自分に対する締めくくりとしての航海。これが今の夢???」だそうです。仕事以外ですでにすばらしい趣味を実践してきたんですね!多分私と同世代と思いますが、「南の島でのんびりと暮らす」というのもヨット生活があってこそのとても良いライフデザインだと思います。私もたまには行きたいです。

「本当の夢、とは難しいですね。実はまた、最近キャリアについて悩み始めています。『海外に住みたい。医療関係の職につきたい。のんびりと暮らしたい』。そんなことを思っています」(青空さん、31歳)。

青空さんは医療関係について「学生時代に戻れるなら、医者を目指したいと思います。現在生命関係の分野を勉強していること、それと海外ドラマ「ER」の影響が大きいです。辛い現実と向き合いながらも、黙々と仕事をしている姿、『それでも走り続ける』姿を見ていると感動してしまいます。でもそれが夢か、と思うと難しいですね。今、また悩んでいます」とも語っています。

Yさんは確か今春、科学系博物館の展示解説員に転職されたと思いますが、本当に「走り続けている」感じですね。それに世の中で役に立つことをしたいというか、使命みたいなものの強さを感じます。ですからキャリアの面では自然な成長のようにも思えます。「遅くないですよ」って言いたいですね。

ところで、回答を見ていると夢の中に「のんびりしたい」という項目がよく目に入っています。私自身、この2ヶ月ほど仕事に追われ、やっと一息ついたばかりなのも影響しているかもしれません。私を含め、周辺でもメルマガでもこのハードワークのテーマが最近目立っています。

そこで今回はあなたのハードワークをお手伝いしている「あなたのグレムリン」探しをしてみようと思います。もともとグレムリンというのは集団で悪ふざけしたり、騒いだりする北欧の妖精のことですが、コーチングではよく、「本来の自分」や「本当にやりたいこと」を妨害する自分の内なる怪物のことを言います。

グレムリンに乗っ取られている時は、例えば「お前は~すべきだ」「しなければならない」「出来ない」「必要だ」「周りのせいだ」といった言葉を発したり、恐れを与えて脅かす戦略を使います。グレムリンへの対処は色々ありますが、まずどんなグレムリンが自分の中にいるかに気づく必要があります。

実は先日、そんな問題意識を持って自分のグレムリンを探していたら、早朝、突然見えてきたのです。それはまるで「やまたの大蛇」のようでした。8つの蛇がそれぞれ勝手な方向に向かってやりたいことをやろうとし、主張するのです。私がハードワークにはまる時の姿は、まさにそういう状態だったのです。正体がわかるととてもおかしくなりました。

最近はだいぶ手なずけていって1日、3つの蛇さんに活動してもらい、残りの蛇さんには休んでもらうようにしています。それだけでもかなりハードワーク感が軽くなりつつあります。そのうち、8つの蛇さんに生い立ちとか、じっくり聴いてみようと思っています。

そこで今週のエクササイズです。

●「あなたのハードワーク(それ以外の課題でもけっこうです)を仕組んでいるグレムリンはどんな怪物で、得意の戦略は何ですか?

第104回 あなたの本当の夢は何ですか?

こんにちは、楳林です。朝晩、めっきり寒くなりましたね。風邪を引かないように注意してください。先週のエクササイズは「もうこの年では無理、と思っているキャリアに関連したチャレンジの1つを選ぶとしたら、何ですか」でしたね。まず1通紹介します。

「キャリアではないですが、日本を含め世界中を1人で旅してみたいです。30代後半ならまだ出来るじゃないかと言われそうですが、やはり行動力が20代の時より落ちているのがわかります。雑誌や新聞などで若者が大陸横断や世界1週などを達成した記事を見るたびに、無茶が出来る若いときに行動しておけばよかったと思います」(Sさん、システム・エンジニア、36歳)。

本当に挑戦してみたいですか?20代の時からやってみたいと思っていましたか?それともとしだから出来ないということを克服するためにやりたいのかな。Sさんにとって今でも無茶な冒険が出来るとしたら何をしてみたいですか?Sさんのメールを読みながら、そんな事を思いました。

もう1通紹介します。「素敵になることです。一見キャリアとは無関係のように見えますが、私にとってはキャリアはもちろんのこと、生き方にも通じるような大事なことなんです。今回の題名の『年齢の罠』というのを見た時、私も『もう30台・・・』という罠にはまっていたことに気づきました。ではこれを超えるためのチャレンジは?と思った途端出てきたのが『素敵になるとき』だったんです」(Mさん、36歳)。

「私にとって『素敵になること』とは、内面は勿論のこと見た目もステキな人だーと思われる自分になりたいのです。子供(生徒)からも『ステキな先生だなー、あんな風になりたいなー』と思える先生になりたいのです。私も幼稚園の頃、きれいな先生や髪の長いアイドルに憧れていたことを思い出しました。諦めてしまうところでした。素敵でいるということは、私にとってとても大切なテーマなのです」。

自分が本当に大切にしたかったことを思い出すということ、そのことから逃げないということが何より重要なことですよね。その上で、Sさんにとって今、素敵な人ってどんなイメージですか?そのイメージをじっくり味わってください。素敵なS さんは今のSさんに何て言っているか、聴いてみてはどうでしょうか。

ところで今回のみなさんの回答を眺めながら、「今週はどんなテーマで書こうかな」と仕事の合い間に喫茶店で考えていたのですが、なかなかアイデアが出てこなかったんです。また夜でも考えようと思っていた矢先、隣の席で話し込んでいた3人の中年のサラリーマンが一足早く席から立ち上がりながら、その中の1人が言った言葉が耳に入ってきたのです。


「今、夢は持っているの?」

「ハーッ、それなんだよ!」。思わず私は呟いてしまいました。


Sさんの無茶なチャレンジやMさんの「素敵になること」って要するに自分の夢を思い出し、もう一度チャレンジすることなんだよね。で、さっそく自問自答しました。「じゃ私の夢は何だろう?」「本当の夢は何だろう?」「一体私という存在の一生を賭けた夢は何なんだろう?」。

「ムムーっ、出てこない」。一応は言えるのですが、でも、何だか今までのレベルでは答えられない気がしたのです。

仕事場に戻って、つい同僚に聞いてみました。「あなたはどんな夢を持っているの?」。

第一声「しぼんじゃった」。第二声は照れながら「億万長者になること」。なかなか素直に言えるもんじゃないのはわかっているんですが・・・。

翌日のキャリアデザイン研修でも「私の夢」という欄が気になってしまいます。さらさらって書く人、ジーッと考え込んで全然、筆の動かない人。

「そうだよね!これさえハッキリしたら、もうハートに点火したも同然なんだよね!」ということで今週のエクササイズはこれです。

●「あなたの本当の夢は何ですか?」

第103回 年齢の罠から抜け出す

こんにちは、楳林です。私が住む横浜はようやくさわやかな秋晴れの週末でした。先週のエクササイズは「あなたは自分の本質は何だと思いますか(もしくは周りの人はあなたの本質について何と言っていますか)」でしたね。1通紹介します。

「私の本質は“愛”です。惚れっぽい?それもそうかもしれませんが、自分を取り囲む物、者を愛することから全ては始まるというか、自分はいつもそう感じているようです。だから本質は『愛なのかな』と思うわけです」(Sさん、ライター、35歳)。

「その裏側には一体何があるのか?もしかしたら、みんなに愛されたいと思っているのか。以前はそうだったかもしれません。しかし、年齢を重ね、30代も半ばになると、全ての人に受け入れられるなんてことは、先ずありえないということが、身をもってわかってきているので、少し違うようです。」

「では、具体的にはどんな愛かというと、『その物や人の滲み出る良さ』を探り、引き出すことです。人はもちろんですが、その他、例えば仕事に於いても、その『滲み出る良さ』をより具体化し形作っていくような、そんな感じです。締めくくるには内容的に全然物足りないのですが、でも、“愛”なんです。」

とても共感することが多かったです。最近コーチングをしていて、クライアントのあるがまま、長所、短所とも受け入れるたびに、クライントの方もエネルギーは上がり、直感も冴えるようになって楽に前に進むことが出来るようになることに改めて驚いたりしています。それを愛といっていいかどうか、とにかく信頼感が増してくるのを感じます。

Sさんの「滲み出る良さ」をより具体化し形作っていく、というのはまさに、「相手の本質を呼び覚ましていく」というコーチングの基本につながるものだと思いましたね。

ところで興味を持ったのは「年齢を重ね、30代も半ばになると全ての人に受け入れられるなんてことは、先ずありえない」という表現です。確かにそうですね。でも注目したいのはSさんが「全ての人に受け入れられる」とある時期まで思っていたなんです。

そうした思いはいったい、どこから来るのでしょうか?「私の本質は“愛”です」ということと関係しているような気がします。「愛する人と1つになることは出来ないけれど、1つの星を見ることは出来る」とある作家が言っていますが、ライターのSさんにも同じような資質があるような気がしました。

もう1つ今回取り上げたいのは「年齢を重ね、30代も半ばになると」という表現です。毎回の回答を拝見していると、よく年齢のことが出てくるからです。「もう20代後半・・・」「35歳では・・・」「40代では遅い」「50歳を超えては・・・」そして「60代になっちゃ・・・」。まるで20代から「もうこの年では無理」と一生言い続けている風にさえ感じてしまいます。

確かに、日本の労働市場はまだまだ年齢制限が目立ちますし、また肉体的な衰えとか長かった60歳定年時代の年齢感覚が無意識に残っていて何か不本意な出来事があるとふっと頭をよぎるのかもしれません。

「もうこの歳では」と思うたびごとに、「無理」「出来ない」といった気持ちと一緒に、自分の豊かな感性が少しずつ閉じてしまっているように感じるのです。ではどうやってこの罠から抜け出すことが出来るのでしょうか?

「無理」『出来ない』ということは、「何か」に対して、そう思えたということですね。ということはその「何か」は身近にあり、それを先ず見つけること、その上でもう一度、その「何か」に対して今までと違った方法や視点で挑戦してみることです。

そしてその挑戦がうまくいった時、少なくとも「無理」「出来ない」という気持ちを変えることが出来るだけでなく、20代、30代、40代、50代その時々の体験が前向きの豊かな経験に変わっていくように思えるのです。

そういう意味でSさんの「滲み出る良さを引き出そう」という挑戦に今後も期待しています!

ということで、今週のエクササイズです。

●「もうこの年では無理、と思っているキャリアに関連したチャレンジの1つを選ぶとしたら、何ですか?」

第102回 自分の本質を呼び覚ます

こんにちは、楳林です。夫婦、家族のもつれから来る事件が多発していてとても気になります。先週のエクササイズは「自分のこの1年のテーマを実現する上での課題を克服するために、あなたが楽しいと思える挑戦を3つ考えてください」でしたね。先ず1通紹介します。

「この1年のテーマは恋愛を実現することです。そのための楽しいと思える挑戦は(1)目一杯、おしゃれを楽しむ(2)運動をしながら健康的にやせる(3)子供のこと(保育関係)を勉強する、の3つです。恋愛だけに意識が向かうと癒着の関係になりやすいので、仕事にもつながる子供をよく知るということを、改めて挑戦項目に入れました」(Mさん、36歳)。

Mさんは個人で子供さんにピアノを教えているそうですが、もう一度自信を取り戻して、自分の本当にやりたいことに挑戦する時が来ているようですね。「子供と接していて、体力がいるんだなぁ、と痛感しました」というように、ヒントは子供から学んでいるのがいいですね。恋愛ももしかしたら、子供のような好奇心を持って行動してみてはどうでしょうか。

もう1通。「自分のやりたいことをやるためにシンプルですが、(1)家族や友達、縁がある人誰とでも会って話をする(その中に新しい発見と新しいつながりが生まれてくると思います)(2)朝、きちんと起きる(3)世間の目、批判を気にせず、35歳からでも挑戦する、という3つです」(Kさん、35歳)。

Kさんは事務所閉鎖による希望退職後、「自分にもっと実力をつけたいと、先ず資格をとることに挑戦しましたが、気持ちに余裕がなかったせいか、結局試験に落ちて、必死になりすぎている自分に気づきました。そこではじめて自分のやりたいことをやろう」と頭を切り替えることが出来たそうです。

決して遅くはありませんよ。50歳からでも再挑戦する時代ですからね。

Kさんの回答を読むうち、今、自分がコーチングで取り組んでいるテーマにもつながるような気がしてきたので、今回はそれについて触れてみたいと思います。そのテーマというのは「本質に目覚める」ということです。本当にやりたいことを見つける、ということは同時に「自分自身の本質に目覚めていく」ということなんですね。誰もがその人の中に光を放つダイヤモンドの原石を持っていて、それがその人の本質だなーと思うことがよくあります。

コーチングで一番大切なのもその人の「本質を呼び覚ます」ということなんです。コーチングしていると直感的に感じるんですね。少なくとも、まだ表に出てこなくても、確かにあるな、と。あることを信頼しながら、本質が表に出てくるために障害になっていることを一緒に取り除いていくわけですね。

ところで「挑戦」というのはコーチングでよく課題として出すのですが、単なる行動を促すような要望と違って、そのテーマの実行を聞いただけで「躊躇するよ」「無理だよ」と思えるような、あるいは「自分の普段持っている枠を超える」ような課題が挑戦なのです。そんな挑戦も、実は自分の本質に目覚めるきっかけになるのだと思います。

KさんもMさんも、一時のかなり大きな挫折感からようやく立ち直ろうとしているのを感じますし、それ以上に御二人それぞれの持っている本質を呼び覚ますチャンスを迎えているような気がするのです。何より、挫折を乗り越える力強さを持っておられるのを感じます。自分の中にある力強さを持っていることを信頼して次はもっと大胆な挑戦テーマに取り組んではどうでしょうか。

それとコーチがクライアントの本質を呼び覚ますためのサポートをするためには、まず自分自身が自分の本質に目覚めていることが必要です。そんなわけで「本質に目覚める」というのが、いま自分にとっても最大のテーマなんです。

ということで、今回のエキスサイズです。

●「あなたは自分の本質は何だと思いますか(もしくは周りの人はあなたの本質について何といっていますか)」

第101回 自分で工夫する楽しい挑戦

こんにちは、楳林です。週末の夕暮れ、研修を終えて建物の外に出た途端、きんもくせいの甘い香りがかすかに匂ってきました。あっという間に秋が深まっていきますね。

ところで前回、私はラブ・キャリアについて書きましたが、読者の方から厳しい指摘がありましたので、それを最初にご報告します。「物を運ぶ人、搬送するもの、メッセンジャー等のキャリアはCarrierで、職業や経歴のキャリアはcareer,ラテン語の車道という意味です。つまり、文字通り、歩んできた道、あるいはこれから未来に続く道という意味と理解しています。・・・・・米国で日本人の就職相談を受けることが多いのですが、履歴書に上記の単語を書き間違えておられる方が多いと思ったので、お知らせします」(Sさん)。

私の「ラブ・キャリア」は明らかにCarrierで混同していました。まことに申し訳ありません(汗)。普段、career、職業を通しての生涯の体験という風に理解しているつもりでしたが、「ラブ・キャリア」と言われた体験が意識の奥に潜んでいたんですね。みなさんも私のようにキャリアを混同しないでください!

さて先週のエクササイズは「この1年、1つ上げるとするとあなたはどんなテーマに取り組みたいですか?」でしたね。何通か紹介いたします。

「私のテーマは『行動して感じること、そして次に繋がること』です」(Kさん、35歳)。

Kさんは「2ヶ月前、IT会社を希望退職して、さぁ!新しい未来だ!とは思ったものの、さて、私はどんな未来に向かっていけばいいのか???考えても、自分のやりたいことが心からうずいてこないのです。足を踏み出したいよ~とウズウズしているのに、心の中は真っ白でどこに踏み出したらいいかわからない」状態だったそうです。

「ただ、ITベンチャーに務める前は野生のイルカが好きで、国内外の海へ出かけていましたが、その後、忙しすぎて、好きなイルカも遠い存在になり、仕事以外で感じて喜ぶことを忘れてしまっていた」ことから、「今まで中途半端に終わっていた仕事や興味のあることをもう一度洗い直して、行動に起こして、その時の自分の気持ちを感じて、繋げていくことをしたい」そうです。

先ず最初にどんな行動を起こしますか?イルカを見に行きますか?私もイルカは大好きです。

「社会福祉の世界に入って14年、主任として働いていますが、病気をして今年8月から来年3月まで休職中です。仕事をしていた時は、「主任らしく働き、勉強しなくては」と、いろんな国家資格も取ってきましたが、今、休職してみて、今までの自分を振り返ることが出来ました」というのはNさん。

その中で「私が職場をまとめないと、とか自分が居ないと回らないと思っていましたが、職場は私がいなくてもしっかり回っていて、錯覚に陥っていた自分が恥ずかしくなると共に、そんな自分に付いて来てくれた若い職員に感謝できました」というNさん。この1年間のテーマは「謙虚と感謝」だそうです。

「半年後に入社が迫っており、まさにこれからキャリア形成を始めるといった感じです。このことを考えると、これから社会人生活を歩んでいく上での基礎を築き上げる1年になると思うので、『自分に妥協せず、物事に取り組む姿勢を持つこと』をテーマにしていきたいと思っています」(Yさん、大学4年)。

先ず最初に自分に妥協しないで取り組みたいことは具体的に何ですか?

最後は私と同じテーマですね。「ラブ&キャリアを融合させることです。今年、8年半、夫婦で続けてきた飲食店を閉店、それと同時に主人と別居することになりました。今はある会社で財務事務兼秘書として働いていますが、先日久しぶりに主人と会い、やっぱり主人の料理に賭ける情熱が好きだし、もう一度一緒に小さなお店を持てたらと思います」(Mさん、42歳)。

今の仕事はそのための準備かもしれませんね。今度はどんなお店を持ちたいですか?

みなさん、この1年のテーマや目標についてのイメージをもっと豊かにしてみてはどうでしょう。それが実現したときどんな感じがしますか?そして今から何をしたいと思いますか?

ということで今週のエクササイズです

●「自分のこの1年のテーマを実現する上での課題を克服するために、あなたが楽しいと思える挑戦を3つ考えてみてください」

第100回 ラブ・キャリア

こんにちは、楳林です。とうとう100回に達しました。2年間よく続けたものだと自分を褒めています。が、これもみなさんの毎週の回答と鈴木編集長のサポートがあったからと感謝しております。新たな気持ちでいけるところまで行こうと思っています。これからもみなさんの回答を楽しみにしています!

さて、先週のエクササイズは「あなたが新しいスタートを切るために、今、完了したいこと、あるいは手放したいことは何ですか」でしたね。さっそく、何通か紹介いたします。

「これまでのやりっぱなし人生にけりをつけ、淡々と自分の目標に向かっていく人間になりたい」(Mさん、30代)。

そのためには「平気なふりをしているうちに感受性が鈍くなる自分、行動せずに逃げている自分、肝心なことに粘り強くない自分、妥協して自分のプランを主張しきれない自分、言い訳をして甘える自分、理解しあえないと思った人とまともな話をしなくなる自分、計画まで落とし込めないとサボったりほったらかしになる自分、何でも欲張って足元が固まっていない自分」という8つの自分を手放したいそうです。

どれも自分に当てはまりそうで、自戒の気持ちをこめて掲載させてもらいました。でも、けっこう頑張っていますよ。だから、逆に、その頑張っている自分を手放してみてはどうでしょうか?

「ギャラリーに勤めながら、放送大学の心理学の卒論に取り組んでいますが、今年こそ、卒論を書き終えたいです」(空飛ぶイルカさん、48歳)。

「放送大学が開校した頃、まだ子供が小さくて、ゆくゆく学芸員として社会復帰する準備のため放送大学で勉強していました。が、子供の大病で、一度はすっかり自分のやりたいことを諦めていました。3年前、22年ぶりでギャラリー勤務を始めたのを機会に放送大学も卒業することを決め、以来卒論に取り掛かった」そうです。

「これを書くことで、自分自身が精神的にも仕事の面でもかなり整理がついて、新しいライフスタイルや新しい仕事の方向性が見えてくるように思えます」。卒業って、いつになっても大切な儀式ですね。

さて、100回目。新しいスタートに当たって、今回は私がこの1年、取り組んでいきたいテーマを話します。「ラブ・キャリア」についてです。いい年こいて照れるのですが、多分、自分にとってこのテーマがライフワークだと思えるからです。

10年位前、外国で心理学のワークショップでアイコンタクト(目と目を見合って、相手とつながるワーク)をしていたとき、相手の外国人女性が一言「あなたはラブ・キャリアね!」と私に言ったのです。どぎまぎした私は瞬間的に「No,No」と逃げてしまいましたが、実はそれがキャリアについて考える始まりだったのです。

キャリアって、もともとは馬車、乗り物という意味ですね。今のキャリアも職業という乗り物を通して何か、その人の人生にとって大切なものを実現していく事に加え、他者や社会に与えていくものがあるような気がします。じゃあ、ラブ・キャリアって何?愛を運ぶ?ラブ=キャリア?まだ日本社会でキャリアと愛と一緒に語るなんて、タブーに近いかもしれません。

でも、やはり私にとっては10歳の初恋以来、「ラブとキャリア」は不即不離の関係なんですね。片一方しかなかった時、私という車はギッコンバッタンしていました。両方を持っていた時は、両方をさらに深めたい、成長させたいという気持ちが強かったです。皆がそうかどうかはわかりませんが、私にはビジョンとは、この2つが溶け合っているような気がしてならないのです。

かってフロイトは「精神の健康のため、したがって幸せになるため、働くことと愛することの2つが大切だ」といったそうです。ユングの「あなたの中にある男性性と女性性」というのも同じ感じがしています。

そういうわけで、この1年、私自身、この「ラブ・キャリア」について折に触れ書いていきたいと思っています。欧米のビジネス書では、自然に出てくる愛とかラブを日本の企業社会でも語れるようになるといいと思います。本当は一番大切なのに、しかめっ面するって変ですよね。

ということで今週のエクササイズです

●「この1年、1つ挙げるとするとどんなテーマに取り組みたいですか?」

第99回 答えは自分の中にある

こんにちは、楳林です。このところ土、日も研修が入り、追いまくられています。台風もようやくおさまった月曜の午前中を代休にして書いています。先週のエクササイズは「あなたにとって最も悔しかったキャリア上の体験は何ですか」でしたが、私自身も研修が思ったようにいかず、悔しい思いをしました。例によって先ず1通紹介します。

「店長代理の試験に合格して1年、つぶれかけの店舗に異動になり、半年間がむしゃらにやって利益率、成長率ともNo1の結果を出しましたが、それでも店長になれず、半ば燃え尽き状態です」(Kさん、27歳、販売業)。

Kさんは、上司から「仕事自体は評価できるが、最大の弱みは相手に腹の底から立ち向かっていけないことだ」と評価され、「異動先は店長になれる最後のチャンス」と思って取り組んだ結果、「意外にも苦手としていた人間関係が得意分野になり、お客様からお褒めの言葉をいただけるようになった」そうです。

しかも、店長になれないどころか、上司から「今後半年間で自分が今の店舗からいなくなっても自分と同じ位出来る部下を育てる」というミッションを与えられ、「何が評価され、評価とはそもそも何か。自分が本当に欲しかったものは何か。店長になれなかった今、無意味に感じてしまっている自分がいます」。悔しさの真っ只中にいるようです。

でもちょっと視点を変えてみてはどうでしょうか。Kさんはどんな店長になりたかったのですか。そのありたい自分がちょっと上のほうから現在の自分を見たとき、今の自分自身に何といってあげたいですか。私にはこの半年のチャレンジと新たなチャレンジがKさんにとっては素晴らしいキャリア形成のように思えます。

もう1通。「この夏、ある児童文学セミナーに参加し、知り合いの作家の先生の推薦で、児童文学では売れっ子の先生の分科会に入れてもらえたのに、満足できる作品が書けず、推薦してくださった先生の期待を裏切ってしまったことです。仕事をしていて長編を書く時間がとれず、自分で満足していない短編を出す羽目になり、もちろん、酷評でした」(Pさん)。

Pさんはその時、「歴史との裏づけのためには資料を読まなくては。でも自分には時間がないから書けないと、言い訳し、すでに書く前に理由をつけて諦めていた」自分に気づき、「期待を裏切ったことだけでなく、自分から諦めてしまったことが、一番悔しい」と思ったそうです。

セミナーから2ヶ月経って、Pさんは「まだ書き始めていませんが、この回答を書きながら、『どうしてその話を書こう』と思ったのか、という原点を思い出していました。とりあえず書いてみよう」と思えるようになったそうです。

Pさんの回答の中にはとても大事なことが書かれているように思えました。「本当にやりたいことを邪魔しているのは時間とか、他人、出来事のせいではなく、実は自分自身が諦めていること」「悔しい思いをした出来事は、実は本当にやりたいことの原点をメッセージとして送っている」ということなんですね。

もう一言付け加えれば、Pさんのプロセスは、コーチングやビジョン心理学の基本原理とも言える「全ての答えは自分の中にある」ということを思い出させてくれているように思えます。

ところで、この「キャリアコーチング」も99回に、いよいよ次は100回の大台に乗ります。ほぼ2年間かかりました。生来、飽きっぽいタイプの私としては珍しいことなんです。99というのは数秘学でいうと、9+9=18=1+8=9。9という数字は何かを完了するという意味だそうです。

毎回、皆さんの回答に刺激を受け、一緒に旅をしてきた感じがすると共に、次のステージに進みたいなという感じがしています。

「私たちの全ての探検の終わりは
 出発点にたどり着き
 その場所を初めて知ることだ」

T・S・エリオット

そのためにも今回は9の「完了する」ということをしっかり受け止めてみたいと思います。

ということで今週のエクササイズは

●「あなたが新しいスタートを切るために、今、完了したいこと、あるいは 手放したいことは何ですか」

第98回 悔しさを表現する

こんにちは、楳林です。まだまだ湿気の多い暑さが続いていますが、朝、夕は気持ちよい風にホッとしています。先週のエクササイズは「あなたが、自ら仕掛け、早く決断出来た(現在しつつある)人生やキャリアの選択があったら紹介してください」でしたね。先ず1通紹介します。

「2年前の転職でしょう。東京で情報処理の仕事をしていましたが、会社や自らの先行きに不安を感じて転職活動を始めました。職務的にSEと営業の中間のような立場でしたが、『印刷業ならそういった人材がこれから必要だよ』という先輩の言葉がヒントになって、地縁、血縁の全くない場所の今の会社に巡りあいました」(Kさん、37歳)。

Kさんは自分のことを「動き出すまでには時間がかかるが、動き出すと止まらない“慣性の大きい”タイプ」と分析しています。また転職の決断は「妻の理解と応援があったこと、それと会社の決断が早く、いつでも来てくれといってもらえたこと」が大きかったそうです。

しかし、「3年目を迎えて、また1つの岐路に立っているような気がします」というKさん。今度は転職といった外側にではなく、「マネジメントするという能力に関して、自分自身を脱皮させる」という内側のキャリアの決断、選択に直面しているようですね。

何か「今の場所、仕事に100%コミットしますか」という問いに対して、自分の慣性がギリギリまで来た時、本当に決断できる人のように感じました。

「些細なことかもしれませんが、一人暮らしのアパートの選択です。今年の初め頃から、なんとなく探していましたが、いまいち自分の希望に合うアパートが見つからず、妥協してしまおうかな、などと決めかねていました。それが最近、建設中のアパートを見て『ここに入りたい!』。本当に即決でした。なかなか納得のいくアパートと出会わなかった意味も、自分なりにわかりました」(Mさん、36歳)。

ジーッと見守りながらも、いざとなると瞬時に決断、実行するMさん。もしかしたら、Mさんにとって、アパート探しだけでなく、仕事やパートナーを選択していくのにもこの能力を発揮できるように思えました。

今回のエクササイズは、一言で言うと「反応できる」ということですね。特に自分に対するリーダーシップの重要な要素だと思います。そのチャンスを掴むかどうか、一瞬で決まるときも、その前には1種の“タメ”が大切なんですね。

ところで、この連休中の夜は大阪で行われていた世界柔道選手権のTV放送に釘付けになっていました。一番感動したのは男子60キロ級の野村忠宏選手が前回王者を圧倒しながら残り30秒で抑え込まれて逆転負けを喫し、悔しさで声を上げて泣いているシーンでした。

どちらかというと天才肌。アトランタ、シドニーの両五輪で優勝した後、一度は目標を失ったかのように現役から遠ざかって米国に語学留学。恵まれたキャリア人生を歩み始めているようでしたが、まるで「もう一度燃える生きかたを見つけたい」とばかりに、昨年秋に復帰し、苦闘しながら今回の代表の座を得たわけです。

負けた試合ではポイントでは断然優勢だった野村選手。後半、押されているなと思っていたら、まさかの抑え込み負け。「競り合いで体力を消耗し、ばててしまった」そうです。でも、涙を流して悔しがっている姿には、もう一度しっかりと目標を見い出した姿を感じて感動しました。

前に「キャリアには成功も失敗もない」と書いたことがあります。但し、失敗の経験はそれをしっかり感じ切ってこそ、新たな挑戦が可能になるのだと思います。野村選手はそれを見せてくれたような気がしたのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとって最も悔しかったキャリア上の体験は何ですか」

第97回 今に生かされる過去の経験

こんにちは、楳林です。先週から右ひざに痛みが出て、「前に踏み出すのに何を恐れているのだろうか」などと自問自答しています。先週のエクササイズは「あなたは今4つのアイデンティティ様態のうちのどこにいますか」でしたね。今回は回答数が多かったですね。何通か紹介したいと思います。

「漂流型です。10月から転職活動をしようと思っていましたが、現在の仕事の引継ぎ手がいないことや新しい職場への恐怖心から状況に流されています。もっともこれは最近からではなく数年前からの状況ですが、なんとか変えなければと思いつつ、現状に流され行動していない。そんな自分に腹を立てて、イライラする。そして言い訳、誤魔化しを続けている感じです」(Sさん、35歳、SE)。

Sさんはご自分の状況をごまかさずに直視しているし、やりたい方向も理解しておられ、そろそろ次のステップにコミット(積極的に関与)する時のような気がします。私も同様ですが。自分なりに納得の出来る将来像を再度しっかり描くときかもしれませんね。

「混在しています。職場での行き詰まりで会社を辞めましたが、今はやっといろんなことを考えられるようになりました。これまでやりたかった『森林アドバイザー教室』への参加。今週からは『女も男も自分らしく』という講座の企画作業への参加、と動き出しています。その意味では活路開拓型ですが、仕事となると長年やってきたコンピューターの仕事から結局(生活のためもありますが)離れられず現状維持・保守型というところです」(Kさん、41歳、SE)。

何だか”頭と体“という感じがします。2つの試みとコンピューターの仕事を統合したらどんな世界が待っていますか。きっと2つの試みを楽しくやっておられたら、そこから新しい出会いやチャンスが生まれてくるかもしれませんね。コンピューターの仕事も単に生活上だけでなく、きっと生かされると思って腕を磨いていてはどうでしょうか?

「今まさに活路開拓型にいるところです。ある地方の雑誌ですが、そこで記者・ライターの仕事が出来るようになりました。これまでも同じ雑誌のホームページにのみ記事を書いていましたが、本誌に関しても契約してもらえるようになったのです。とてもうれしいのですが、やれるかどうかの不安もあります。しかし、とにかく納得のいくまでやってみたいと思っています」(Sさん、今回からフリーライター、35歳)。

よかったですね!Sさんはお便りの中で「ニュースキャスターの久米宏さんが、番組の降板記者会見で『これまでやってきた仕事が全てニュースステーションにつながっていたように感じます』という内容のコメントにすごく共感するものがありました。生きていく上でのキャリアとはそういうものかな」と思ったそうです。

実は私も久米さんのコメントに近い感想を持っています。過去に経験したスキルや考え方は今やっていることの中に生かされてくるほど、イキイキ感が戻ってくる感じです。

「今までずっと、きっと生まれてからずっと、そしてこれからも続くであろう自分探しの旅ですが、一歩飛躍しようという段階に来ています」というSさん。1つのトンネルを抜けた感じがしますね!

ところで今回の回答のうち、現状のいろんな活動を漂流型を除く3つの様態で説明されたMさん(IT業界勤務)。あまりに分量が多いので紹介するのは諦めましたが、余談も面白かったので紹介します。「先日M&Aのボードゲームを体験した際に、『ルールの本質を見抜く』のと『他のチームの状況を把握する』に終始し成績が振るわないという苦い経験をしました」。

そこでMさんは『もし商品開発力が同じであれば、経営陣に問われるのは『自ら仕掛け、早く決断できること』だと理解したそうですが、「いいカードが回ってきたら?ではなく、回ってこなくてもいい結果を出せるのが本物の経営者なんでしょうね。人生も同じかもしれません」ということに気づかれたそうです。

私も自分の完璧主義や受身の姿勢が邪魔をして、これまでチャンスを逸することが多かったことを痛感しています。

ということで今週のエクササイズはMさんの気づきを利用させてもらいました。

●「あなたが自ら仕掛け、早く決断出来た〈現在しつつある〉人生やキャリ アの選択があったら紹介してください」

第96回 あなたはどこにいますか?

こんにちは、楳林です。夜のコオロギの音色を聞いていると、短い夏の終わりと、はや秋が近づいてくるのを感じます。みなさんにとってこの夏はどんな体験がありましたか?

先週のエクササイズは「日ごろあなたが悩んでいる課題や問題がなかったら、あなたは何をしたいですか?」でしたね。1通紹介させていただきます。

「入社8年、製造業で設計・製品開発をやってます。日々の問題に追われて、本業以外のことで時間をとられたりしますが、そのような問題がなく、時間的な余裕があるなら、勉強がしたいです」(Oさん、製造業で設計・製品開発)。

「設計業務について4年ですが、材料力学等の基礎学問をもっと勉強したいという願望が年々強くなります。学生時代には役に立つか否かわからなくても興味がわけば勉強していましたが、営利目的の企業内ではそうはいきません。興味があってやりたいといっても、売り上げにつながらなければやめろというお達しがきます。ちょっと寂しくなります」。

「仕事に家庭にといっぱいいっぱいみたいな感じがありますが、もっと時間的な余裕があれば、そのような基礎学問をもっと勉強したいですね」。

淡々と書いてあるOさんの文章に、何か共感を覚えます。私自身も30歳頃、無性に勉強したくて会社に希望を出したら、経済研究所に出向になり経済学を勉強するチャンスを得ましたが、その時のことを思い出しました。

と同時に、現在の私自身が再び、何かを探し始めているのを感じます。8月初めまで研修が相次いで慢性的に疲労していましたが、お盆休みに数年ぶりにビジョン心理学の9日間ワークに参加し、自分の存在意義やらスピリチュアリティ(精神性)に触れて、かなりハイになり、その後、現実の中で落ち込んだりしながら(よくあるプロセスですが)、「で、」という感じです。

以前の意識ではないし(戻りたくないし)、かといってどこへ向かおうとしているのか?年齢、肉体といった自分の限界や経済的なことといった現実の重みを感じながらも、またまた自分探しが始まったような感じなのです。

自分探しの旅は20代ぐらいで終わると思っている方がいるかもしれませんが、そうじゃないんですね。30代、40代、そして50代でもあるんですね。まさしく「終わりのない旅」といったほうがよいでしょう。

キャリアは社内での職務、異動や昇進、はたまた転職、起業といった体験と自分探しとが何かつながっている状態だという気がします。その場合、自分探しの旅=キャリアの旅といってもいいでしょう。

でも自分の内側のどこかで「ワクワク」している自分がいます。チャレンジしたがっている自分もいます。

そこで今回は年齢を超えて、みなさんに1つの視点を紹介します。「いまあなたはどこにいますか?」という問いかけです。これは広島大学の岡本裕子助教授の論文の中にある「中年期職業人の4つのアイデンティティ様態」から引用させていただきました。中年だけでなく、若い人にも当てはまりそうだと思ったからです。

[1] 活路獲得型:自分の限界感をバネに、自分の納得できる方向に打ち込みつつある
[2] 現状維持・保守型:自分の手馴れた分野ややり方で一生懸命頑張っている
[3] 模索・探求型:現在の自分の働き方、生き方に不全感を感じ、納得できる方向を探求中
[4] 漂流型:現在も満足感は低いが、状況に流され、なりゆきまかせ的

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたは今4つのうちのどこにいると思いますか?」

第95回 小さな主題から大きな主題へ

こんにちは、楳林です。急に蒸し暑い日が続いていますね。先週のエクササイズは「今現在、あなたの人生の意義は何ですか」でしたね。ちょっとテーマが大き過ぎたようですね。先ず1つ紹介いたします。

「パートナーと二人で幸せになるために、楽しい努力をします」(Fさん、30歳)。

「実は先日、会社からいきなり解雇されることになりました。大きなミスをした覚えもなく、理由も告げられないままの解雇です。考えられるのは、夏期休暇のない会社なので有給を使ってお盆にUターンをし、空港でテレビインタビューを受け、それを見た社長が怒っていたそうです」。そんな会社もあるんですね。

「最初は驚きとショックが大きかった」Fさんですが、「色々ありますが、結婚して、自分のステージが上がったのかな、ここら辺がよい潮時かな」と、割と早い段階で気持ちを切り替えたようです。「次は、雰囲気の落ち着いた、きちんとした会社に勤めるか、自分のやりたい方向性にあっている会社をゆっくり選びたい」そうです。

そんな中でのエクササイズの回答でしたが、「楽しい努力」というのがとても印象に残りました。

ところで、今回はコーチングでいう「小さな主題から大きな主題へ」ということについて、触れてみたいと思います。コーチングでは毎回、今抱えている日常的な課題や出来事から入るわけですが、いろいろ聴いているうちに、突然、その日常的な出来事の背後というか奥の方から、その人の本質であったり、ビジョンのようなものが現れてくることがあります。

とてもワクワクする瞬間なのです。その世界に入った途端、クライアントが突然輝きだしてきます。まるで別人の様にです。そしてその感覚を持って最初の主題や課題を見たとき、もうほとんど解決したも同然になってしまうわけです。

先日もこんな例がありました。私のクライアントのYさんは、最近地域の店長から本店にセールスコーチとして移ったのですが、「何か意欲がわかず空虚感がある」というのです。いろいろ聞いてみると、「店長時代は問題も多かったけれど、一緒にやっているという密な人間関係があったのに、本店では人間関係だけでなく全てが淡々としていて、違和感や寂しい感じがする」というのです。

「では店長時代はそういう違和感はなかったんですか」と聞くと、「そういえば、店長のときは、とにかくがむしゃらにやっていただけかもしれない。本当はこの組織に同化できない違和感のようなものが、以前からずっとあるような気がする」と語り始めました。

その時私にはYさんが背中を丸くしてかがんでいる姿が浮かびました。突然、直感で「いつものYさんはまるで竹のように凛としているのに」という言葉が出ました。「竹ね…。そういえば、竹の中は空洞なのよね」。何かがYさんの心に触れたようです。明らかに伝わるエネルギーも変わってきました。

「空虚感や寂しいと思っていたんだけれど、私が竹なら、内側にそれがあってもいいんですね。それに竹は天に一直線に伸びている。何だか忘れていたことを思い出したような感じがします」。私もYさんの存在意義のような世界に触れて、内心びっくりしたわけです。

見る見る元気になったYさん。「明日から職場でも自分は竹のような存在であることを忘れないでいれば、余裕を持って楽しく働けそうな気がします」

ふっと出てきた直感を抑えず、言ってみることで、その人の奥に潜んでいたとんでもない“宝物”を発掘するきっかけになるわけです。それもどちらかというとその人特有の日常の課題や悩みの背後にこそ、最大のギフトが潜んでいるような気が改めてしたのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「日ごろあなたが悩んでいる課題や問題がなかったら、あなたは何をしたいですか?
(のんびり休みたい、ではダメですよ)」

第94回 自分自身の人生を取り戻す

こんにちは、楳林です。お盆休み中は結局、雨続きでしたが、ようやく晴れてきそうですね。先週のエクササイズは「“真実の絆”という言葉からどんなことが浮かんできますか」でしたね。先ず1通紹介します。

「2つの意味が浮かんできました。1つは自分自身を信じること。自分自身を信頼していれば、どんなことが起きても冷静に対処出来ると思います」(Fさん、30歳)。

Fさんは「最近、生活が変わって失敗の連続。生活費10万円を紛失したり(涙)、洗濯物が風で飛ばされて紛失したり…。その時はショックですが、原因を探り、対処して行った」体験から、「あまりくよくよせず、必要以上に自分を責めない」ためにも、自分自身を信じることの大切さを感じたようですね。先ず自分自身との絆、ということでしょうか。

「もう1つは、自分を認め、他人も認め、そして“自然体”でつながる、ということ。学校、会社、組織とか人は色々な外部要因でつながることが多いと思いますが、それらを超えて、本当の意味で純粋な人と人とのつながりを意味するのではないでしょうか」(Fさん)。

Fさんは今、「アナウンス学校の有志が集まり、朗読会を開催する計画しており、朗読の本を探したり、会の構成を考える中で、地域社会や子供たちの将来、また逆に古典文学に感心を持ったり、歴史を伝える重要性を感じたり、さまざまなインスピレーションを得ている」そうです。

そして「これらの経験が、きっと将来の自分に役立つのだろうな~という漠然とした思いではなく、これを機会に、何か、自分の人生における使命が見つかるような予感がします。でもまだ何かわからないですけどね(苦笑)」。2つの意味とも現在、進行中の出来事を通じて感じておられる点、本当に伝わってきます。

「“自分が自分であること”かな。自分自身にも、他者に対しても、偽らない自分で接すること。実はけっこう難しいことですが、祖母の死後、正直な自分でいることが、自分にとっても、もしかしたら相手にとってもよいのではないか、ということが少しずつわかってきています」(Mさん、36歳)。何かの出来事をきっかけに感じることなのでしょうね。

私自身もこのお盆休み、9日間という長いビジョン心理学のワークショップに参加して、お二人の回答に重なる体験をさせてもらいました。少し紹介してみたいと思います。

ワークに入って最初に感じたのは、ここ数年、ハードワークが続く中で、とても疲れている状態が慢性化していたのと、いつの間にかハートが閉じてしまったな、という思い。まさしくこれがデッドゾーンの感覚。そんな中で自分とのつながりや周りの人とのつながりが、段々感じれなくなって、役割や犠牲に嵌っていきます。

真実の絆というのは、まさにこの自分自身や周りの人たちとのつながりを本当の意味でもう一度取り戻すことから始まるといえましょう。つながりが薄れるにつれ、「自分が本当にやりたいこと」や「心から求めていること、渇望していること」すら感じなくなってしまい、個人のビジョンもミッションも見失っていくわけです。

ですから9日間は「自分自身の人生を取り戻す旅」であったわけです。人間関係や仕事上の課題や問題というのは、そこに“真実の絆”が失われている事に気づかせてくれると共に、もう一度絆やつながりを取り戻すチャンスにしていくこと。そのプロセスを通じて、やがて自分自身の価値とか使命、存在意義(Destiny)にも気づいていくわけです。

もちろん、9日間の旅で気づいたことを日常の生活、仕事の中で活かさなければ、何の意味もないわけです。1つ1つ現実化していこうと思っています。そんなわけで、私にとっては、何年振りかの命の洗濯をした盆休みでした。

さて今週のエクササイズです。こんな問いもありました。

●「いま現在、あなたの人生の意義は何ですか?」

第93回 真実の絆って何?

こんにちは、楳林です。台風が去って夏らしい天気になりましたね。お盆休みはいかがですか?先週のエクササイズは「あなたのお盆休みを“リラックスと集中状態”を実現するために活用するとしたら、どんな工夫をしますか?」でしたね。いただいたメールの中から何通か紹介します。

フランスに独り旅―「お盆をずらして、夏休みにフランスに一人旅です。最近、海外への独り旅をしています。小さなバックを背負って旅をすると、『このバックだけでも生きていけるんだ』ということを確認できるので、好きです。日本ではついつい余計なものに囲まれてしまうのですが、旅をしているときは、テレビなどもなるべく見ずに、ひたすら散歩して、自然の音や香りに感覚を傾けていれるので、『リセット』できます」(Yさん、展示解説員、30歳)。

「ともかく日記や手紙を書くことで、だんだんとやりたいこととその手段を集中して考えることが出来ます」

バックを背負って旅をしているYさんが目に浮かびます。いい感じだなー。好きな仕事をしながら、さらにシンプルライフと自分自身に近づいているYさんは、何を見つけて帰ってくるのでしょうか?

ツーリング―「ここ3年ほど全く行っていないので、出かけてみようかなと思っています。思い切って数日間、考えるのをやめて、リフレッシュしようと思っています。普段と全く違った環境で考えることにより、プラス思考で集中して考えることが出来るかも知れません。また旅行することにより行動することが大事だということが再認識できればなお良いと思っています」〈Sさん、SE、35歳〉。

是非行ってください。そしてどこへツーリングへ行って、何を感じたかを、メールで教えてください。

歩く―「最近の正月休みや長い休みは長距離の散歩が恒例になっています。夫と二人で黙々と歩きます。黙々というのは妥当ではありませんが、2人とも時間がたつにつれ段々寡黙になるような気がします。何を考えているかはそのときによりますが、歩いた後はとてもすっきり!クリアになります。ジョギングハイという言葉がありますが、それと同じ状態になるのだと思います。Let`s walk!と出来るだけ歩くつもりです」 (Kさん、SE、41歳)。

黙々と歩いていても、とても信頼しあっているお二人を感じます。

ところで私はといえば、9日から17日までの9日間、1年ぶりにビジョン心理学のチャック・スペザーノ博士のワークショップにパートナーと一緒にスタッフとして参加しています。

今回のテーマは「真実の絆」(トゥルー・ボンディング)。難しいですね。日ごろ、ハードワークに追われてすっかり忘れている言葉です。いったい誰との間でどんな関係を結ぶの?

パートナーとの関係、周りの人たちとのつながり、自分自身?あるいは仕事との関係、もしかしたら神とか宇宙とのつながり?小さな時はこの世界と1つになっていたような、そんなつながり?まあ、いろいろ出てきます。私自身はここに参加して、改めて自分のハートがだいぶ前から閉じているのを痛感しています。

ワークは主として、今はもうつながりを感じなくなっているとしたら、その障害や壁になっているのを主として現在の仕事や人間関係の課題、問題を通して見直していきます。私にとっては、一言で言えば“心の洗濯”かもしれませんね。

でも私がこんな長いワークをやるときは、たいてい、自分に人生の大きな転機が近づいている時なんです。まだ始まったばかりですが、このお盆休み、どっぷり入り込もうと思っています。

ということで、今週のエクササイズは同じテーマを出してみたいと思います。

●“真実の絆”という言葉からどんなことが浮かんできますか

第92回 リラックスと集中

こんにちは、楳林です。やっと本格的な夏の暑さがきましたね。朝晩はせみの鳴き声が響いています。さて、先週のエクササイズは「緊張を緩め、リラックスするために、あなたはどんな“儀式”を導入しますか〈すでにやっていることも含めて〉」でしたね。例によって何通か紹介いたします。

「仕事中、集中力が途切れたと思ったら、ハーブティを飲みます。常に何種類か用意して、リフレッシュ効果のあるペパーミントやビタミンCたっぷりのローズヒップ、胃腸に優しいレモンバームなど。今は女性ホルモンを整えるブレンドを飲んでいます。『はあ~』と、一息ついて、次の仕事への切り替えに利用しています」(Fさん、事務、司会など、30歳)。

Fさんはまた、気分転換に会社帰りにウインドショッピングやデパートの美術館めぐりをするそうです。「先日はジミー大西さんの、個展を見に行きましたが「お笑い時代には好きではありませんでしたが、彼の作品を見ていると、子供のころのキラキラした感性を思い出しました」。

ジミー大西さんは、絵によって自分の表現方法を取り戻したんでしょうね。Fさんも司会やナレーションをしているときに輝いているのかもしれません。

「1日2回の休憩時間に「ラベンダーの香りをかぐ」ということをしたいなと思います。新しい職場で研修やOJTで緊張が続く仲、休憩時間はトイレに行って戻ってくるだけという日々を送っていますが、もっとリラックスしなさいというメッセージと感じ、早速ラベンダーの香りのするグッズを探してきます」(Tさん、コールセンター勤務、39歳)。

そういえば私も研修ではそうですね。もっと何か工夫をしたいと思います。

「週に1回くらいのペースでトランポリンのあるジムに通っています。トランポリンで飛んでいると日常の嫌なことやストレスから開放され、おまけにダイエットにもなります。夜はぐっすり眠れ、翌日は心も体もすっきりして仕事が出来るのです。無心で跳んでいると、鳥になったみたいで楽しいんです」(顧客管理をしているOL,27歳)。

本当にうらやましいですね。どんな鳥になったみたいですか?

「決められているのに守られていない『週2回定時(水、金曜)で帰る』を実行、金曜日は韓国語学校に通っています。また季節限定としてライブに行きます。疲労度は大きいですが、普段は上げないくらいの大声を上げストレスレスを発散できるようです」(Kさん、CADの社内インストラクターなど、25歳)。

その他「トイレで瞑想やうたた寝をします(笑)」「深呼吸を徹底的に」「2週間に1回新しく出来たホテルに泊まってフェイシャルマスクでリラックスしたい」など、皆さん、「緊張を緩め、リラックスする」ため、いろんな工夫をされていてとても楽しくなります。

1つ感想を付け加えるとすると、回答の多くは日ごろの仕事でたまったストレス発散のためのリラックスにとどまっているのが多いかな、という気がしたことです。

リラックスした状態というのは、同時にハードワークのときとは何か違った意味である意識が浮上したり、集中状態が生まれたりしませんか?例えば、自分が本当にやりたいことやそれに近い目的、目標に対するアイデアや実行策が急に浮かんできたり、といったことです。

リラックスすることによって、肉体的、精神的に開放した状態の時、結構、普段眠っていた感覚が目覚めるようです。その時がもしかしたら自分のヴィジョンや能力を思い出すチャンスかもしれない、と思ってみてはどうでしょうか。

このところ研修に追いまくられていた私にとっても、お盆休みを“リラックスと意識の集中状態”が出来るよう有効に活用するいいチャンスだと思っているわけです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたのお盆休みを“リラックスと集中状態”を実現するために活用するとしたら、どんな工夫をしますか?」

第91回 エネルギー・マネジメント

こんにちは、楳林です。やっと梅雨が明け、夏の暑さが訪れそうですね。先週のエクササイズは「私は、みんなに「 」する「 」です」でしたね。これは一種の宣言文によって、自分の強みや才能、ヴィジョンや方向性を明確化するものといえますね。何通か紹介いたします。

「私はみんなに「夢と感動」を与える「お調子者」です」(Iさん、見た目20代の37歳)。

Iさんは「現在、製造業のアウトソーシング(業務請負業)の営業職に就いていますが、仕事は楽しんでやるというポリシーから、とても所長らしからぬ行動に出ることがある」事から、こういう表現になったそうです。「いろんな仕事を経験し、現在も現場、人事、営業と活躍?してきた中で,多くの方々に助けられ、力を与えられてきたので、そろそろ返す番かな?」。

「自分と仕事をする仲間、お客様に夢を見てもらいたい!生きる喜びを感じて欲しい!そうすることにより、2人の力で3人以上の力を発揮できる!そんな仕事に是非チャレンジしてみたいですね!」。どんな仕事ですか?

「私は、みんなの「生活を支える栄養剤」です」(Oさん、23歳、メーカー営業)。

Oさんは「食生活に欠かせない、あるいは食生活を楽しむための調理器具などの営業をしている」ことから、自分の宣言文が浮かんだそうですが、「自分がかかわっているもので、人々が生きていけていると考えると、大きな仕事に関わっているのだな」ということを改めて意識されたそうです。

「普段の仕事ではなかなかこのような意識を持って仕事に取り掛かることが出来ていないのですが、やはり自分の存在意義をしっかり盛ってやっていきたいと再確認しました」と言うOさんに、1つ質問します。栄養剤に名前をつけるとしたら、何ですか?

このほかこんな宣言文もありました。一部ご紹介いたします。

「私は、みんなに「金持ち教育」をする「億万長者」です」(Kさん)「私はみんなの「笑顔」が見たい「お母さん」です」(Iさん、営業・事務・秘書業務、40歳)。「私は、みんなの「夢」を叶える「土台」です」(Sさん、SE,35歳)

きっともっと自分を掘り下げていくと、さらに自分にぴったりの宣言文が見つかるかもしれませんね。

ところで先週、私が興奮した話題は、世界水泳選手権で北島康介選手が100、200Mの平泳ぎで世界新記録と金メダルを取ったことです。ピッチの速さで押していく100Mに対し、伸びのあるストロークで泳ぐ200M。これまで平泳ぎでも別の種目と思われ、それぞれ専門の選手によって世界記録が伸びていたそうですが、その常識を20歳の青年が“科学と才能”で打ち破ったわけです。

その秘訣は、平泳ぎ独特の進行停止時間をいかに短く、そして大きな泳ぎでストローク数を減らすことによって世界一早いストリームライン(流線型に体が伸びていく形)を身に付けたことにある、というような解説が出ていました。また、今の北島は、コンピューターで空気抵抗を計算し、大型エンジンを積んだスポーツカーに例えられる、という表現もありました。

でもなぜ、この話題をこのコラムで取り上げたかというと、同じ週、ある会合で今年開催されたASTD(全米人材開発協会)の年次総会の報告を聞いて時、とても似た印象を持ったからです。

それは米国の科学的スポーツ・コーチのJ・ローアーが彼の近著「全面的投入の力」について講演した内容でした。ハイスピードの情報化の中で好業績の達成と幸せな人生とのバランスをとるためには、従来のタイムマネジメントではなく、全力・全面投球できるようなエネルギーのマネジメントが必要だ、というのが講演のエッセンスです。

その実行策の柱は肉体的、感情的、精神的、信念的の4つのエネルギーを上手にバランスよく動員することです。特に興味を持ったのが、積極的な自分独自の儀式を行うことによって、高度なエネルギー管理を行えるということでした。

要するに毎朝、瞑想を30分するとか、週に2日は5時半にオフィスを出る、1時間半ごとに休みを取りなさいなど。全力投球は1時間半ぐらいしか続かないから、集中とリラックスの仕組みを儀式的な形で入れ込みなさい、ということですね。

北島選手の平泳ぎ、そのトレーニング方法と何だか共通点を感じたわけです。

と言うことで今週のエクササイズです。

●「緊張を緩め、リラックスするために、あなたはどんな“儀式”を導入しますか(すでにやっていることも含めて)」

第90回 チャンスもピンチも次のチャンス

こんにちは、楳林です。相変わらず雨が降ったりやんだり、九州では集中豪雨による土砂崩れの被害、いつになったら梅雨明け宣言が出るのでしょうか。先週のエクササイズは「今、あなたに人生の次のスッテプに一歩前進するチャンスが来ているとしたら、それは何ですか」でしたね。何通か紹介します。

「以前から森や樹に興味があったこともあり、“森林アドバイザー”という市主催の講座に応募したら、93人の応募者の中から10人の定員の中に抽選であたりました。2年間で10回の授業に参加することを決めました」(Kさん、41歳、SE )。

先日、1回目の授業に出たそうですが、「とても興味深く、勉強することの楽しさをひしひしとかみ締めました。クラスメートも老若男女さまざまで皆、とても前向きで、それにも刺激を受けました」というKさん。次からの実作業で山に入るのを楽しみにしているそうです。

「この経験がどう生かせるのか、という部分は残りますが、いずれ回答が出ると思っています」というKさん。今はこの楽しさを十分味わって欲しいですね。

「これまで契約社員として働いていましたが、9月末の契約更新ではこれを断わることにしました。その決断が正社員として就職し、再出発するという次の第一歩を踏み出すチャンスにつながるかも知れません」(Sさん、35歳)。

Sさんは「新しい会社でやる自信がないのと、現在の仕事が楽なため契約社員を継続してきましたが、この状況を打破するため、今度は契約を更新しないで、自ら考え、行動する状況を無理やり作りだし、一歩前進するためのチャンスとしたい」と決意しているそうです。

いわば“退路を断つ”感じですね。でもしっかり主体的に選択した時には、新たな道が見つかるような気がします。どういう場所でどんな働き方をしたいかをしっかりイメージしてみてはどうでしょうか。

「仕事において結果が全くといっていいほど出ないため、いろいろ考えていること、そのことが次のステップに一歩前進するチャンスが来ていることでしょうか」というのは住宅建設の現場管理の仕事をしているTさん(29歳)。

「今までは会社で決められた仕事をこなしていけば、おのずと結果が付いてきました。しかし、入社7年目で、苦しい状況の中、どうしたらもっとよくお客様に満足していただける家を作ることが出来るのかを必死に考えるようになりました。まだ成果が出ていませんが、ピンチの中でこそチャンスのきっかけがつかめそうです」ということにTさんは気づいたそうです。

またTさん自身が参加している会社の中期目標関係のプロジェクトについても、「単に参加するのでなく、成果を上げることと自分のステップアップのチャンスだと考えて取り組んでいきたい」そうです。そこで1つ質問です。3年後、どうなっていたいですか?

「人生の次のステップへのチャンスは結婚です。実は先週、入籍しました。古風かもしれませんが、自分の仕事より家庭第一と考えています。営業としてバリバリ働いていたころ、“『家事をしてくれる奥さんが欲しい』と、私自身思ったくらいでした。このような気持ちは、男性・女性は関係ないと実感しました。仕事が忙しい彼にもくつろいでもらえる家庭作りをしたいと思います」(Fさん、30歳)。

でもFさん、「引越しの片づけが落ち着いたら、司会の勉強&仕事にも力を入れ、1~2年後、家事と司会の仕事に専念できればと考えています」と付け加えているように、自分の夢もしっかり持っていますね。是非ライフ・キャリア・バランスを実践してください。

今回は他の方も紹介したかったのですが、このメルマガに継続して回答しながら、人生の次のステップへの一歩を着実に踏み出しつつある方が目立ちました。チャンスを掴まえたらそれを次のチャンスにつなげ、ピンチなら、逆にそこにチャンスの芽を見い出していく、それがキャリアの成長のように思います。

そんな人生の転機のときに是非、ちょっと自分を振り返って、本来の自分を思い出して欲しいのです。硬い表現で言えば自分の存在意義です。今回は少し冒険して自分自身を比喩で表現してみませんか。例えば、「私はみんなの夢を思い出させる青い鳥です」とか「私は人々が生きていることを実感させる荊(いばら)です」という風に自分自身を表現してみませんか。

それが今週のエクササイズです。

●以下の空白を埋め文章を完成させてください。「私は、みんなに『   』する『   』です」

第89回 次のステップを感じる

こんにちは、楳林です。雨がジトジト続く中で暑くなったり、涼しくなったり、なかなかすっきりしませんね。先週のエクササイズは「過去の見方を変えながら(積極的な意味を見い出しながら)、2003年後半、あなたが実現したいことは何ですか?」でしたね。何通か紹介します。

「まだ、過去の見方を変えたり、意味を見い出すところまで入っていない感じですが、2003年後半、(1)家を出て一人暮らしをする(2)ピアノのレッスンをしている甥っ子と連弾して,甥っ子の家族の前でミニミニコンサートをする(3)彼氏を作ることを実現したいです」(Mさん、36歳)。

やりたいなーということを先ずやってみることが先決ですね。3つの目標がすでに手に入っている状態をイメージしてみてください。その感じ、エネルギーを持ちながら行動してみてはどうでしょうか。

「実現したいことは2つです。1つは自分のやりたいことを見つけ出すと共に、それに関連する職場に就職して再出発をすること。もう1つは私的ですが、結婚して家庭を持つことです」(Sさん、35歳)。

Sさんにとって、今こそ、2つの希望を実現する時期なのかもしれませんね。

「いつもいつも悲観的ににばかり考えがちで実行が伴わない最近なので、今回は目標達成が目に見える体重減少を目標に行動したいと考えました。一見くだらなそうですが、達成できたら、その自信は私の励みになり、またきつい洋服からも開放されます」(Kさん、41歳)。

いえいえ、減量は意外に難しいですよね。目標は何キロですか。私も秋までに5キロ減らしたいと思っているのですが、なかなか難しいものですね(笑)

ところで私の知り合いやコーチングのクライアントの主に女性の方で、ここに来て仕事や私生活で大きな変化を迎えている人が相次いでいます。

Yさん(30歳)は9月の結婚のため新居に移る準備を進めていますが、同時に独身時代の仕事一辺倒の生活をここでしっかり見直し、これからの家庭作り、子作りと共存できる新たなキャリア目標を模索中です。

現在、技術開発関係の部署にいるそうですが、「まだ、本当にやりたいことが見えてこない」と言いつつも、「まず、30代は今の仕事で続けたいこと、そろそろ手放したいことを明確にして、出来ればもう少し基本設計の部署に移りたい」という希望を固めつつあるようです。

また、これまで妹さんと同居していたIさん(30歳)は妹さんが実家に戻るのを機に、一人暮らしを決心、近く引越しをすることにしましたが、その前に休暇をとって今週から2週間のアメリカ旅行に行くことになりました。「自由・大胆さ・ユニークさという自分の本質を存分に発揮してきます」というメールが届きました。

そのほか、仕事を中断してご主人と一緒に米国に留学するNさん、派遣社員から正社員を目指して転職活動中のCさん。今までの仕事をやめてスクールカウンセリングの現場に飛び込むことになったNさんは臨床心理士の資格取得を目指し、大学院にも挑戦する意欲を見せています。

というように7月に入って、急にあわただしい変化の時期を迎えている方が目立ちますが、転職、転居、結婚、留学などいずれもトランジション(人生の転機)といっていいでしょう。不安定な状態ですが、今までの視野とか枠組みを越えて、次のステップに入るチャンスでもありますね。

もしかしたら皆さんにもそれぞれ、これまでの人生を一歩前進するチャンスが来ているのではないでしょうか。

ということで今週のエクササイズです。

●「今、あなたに、人生を次のステップに一歩前進するチャンスが来てると したら、それは何ですか?」

第88回 過去未定、未来決定

こんにちは、楳林です。研修が続いて寝不足状態が続いています。先週の課題は「キャリアを通して実現したい興味や大切にしたいことは何ですか」でしたね。以外に難しかったのか、今回は回答が少なかったですね。1通紹介します。

「私のキャリアを通して大切にしていきたい思いは『誠実である』ということです」(Nさん)。

Nさんがその思いを持つようになったのはお父さんの影響だそうです。「私の父は自分にも他人にも『筋が通っていないことは許さない!』と言う人です。自営業をしていますが、とても商売上手とはいえません。しかし、『馬鹿正直』とも言えるような父を慕ってくれる人は多く、『父に頼めば安心だ」といって、仕事を持ってくる人はたくさんいます」。

「そんな父の姿を見て育った私は、『父のように誰にでも誠実でありたい』という思いが仕事を進める上で強くあるように思える」というNさん。現在デザインの仕事をしているそうですが、「例えば自分の作ったものに上司からOKが出たとしても、それが自分の中で納得のいくモノでない時は、時間の許す限り納得のいくものを作るように心がけています(それが出来ず、悔しい思いをすることもありますが…)」と語っています。

私の亡くなった職人肌の父とも似ていますね。もっとも私は以前はそういう父に強烈に反発したものですが、今は頑固だった父をほほえましくさえ感じます。そして自分もずいぶん父親に似てきたのを感じています。

ところで、先週のコラム・ジョブで「ああ、時間を戻せるなら、あの瞬間に戻りたい」「しかし、そんな風に思っても、時間は絶対に戻らない」「だからもう絶対にミスはしない、と誓う」という文章にとても興味を覚えました(編集長のコラムを題材に使ってごめんなさい)。

ミスだけでなく、よく恋愛などでもこんな感じを持つのではないでしょうか。でも往々にして同じミスを2度、3度とやってしまうものです(私自身、そうでしたから)。

ではこれを乗り越える方法はあるのでしょうか。1つの方法を紹介したいと思います。キャリアともとても関連があると思うからです。

「過去未定、将来決定」―最近読んだ「成功への心の扉」(著者はジェームズ・ストロベリーズ)に出ていた言葉ですが、私は納得!という感じがしました。

常識的には、過ぎ去った過去はもう変えられないが、未来はまだ起きていないから未定だけれどがんばろうということですよね。編集長の書いた感じですね。ではそれとはまったく逆の「過去未定、未来決定」ってどういうことでしょうか。

過去の出来事、例えばミスや失敗、挫折感あるいは逆に成功したこと、楽しかったこと。それぞれを別の視点から見直してみることによってまるで違った世界が見えてくる時があります。あのミスがあったからこそ、大きなミスを防ぐことが出来たとか、成功が後の失敗の原因になったとか、失恋のおかげで今の彼女に出会えたとか、です。

通常の見方で言えば、過去の出来事は、その時持っていた価値観や、大切にしていたことリンクしています。この価値観の連続性という観点に立つと、未来にも同じ状況が待っている公算が強い。

しかし一方で、自分の価値観や大切にしていることや考え方に気付き、場合によってはそれを変える選択をすることで、過去の見方が変わる事もあります。そしてそれと共に、自分の望む未来をしっかりイメージすることによって、未来を選択する可能性が高まります。この視点に立てば、過去は常に未定であり、そこに新たな意味を見い出すことによって、未来を新たに選択・決定できるということになります。

これってキャリアをデザインする時に行う自己分析や職務の棚卸の本当の狙いとも似ていませんか。単に忘れかけていたものも思い出すためにやるのではなく、固定的になっていた自分自身と過去の職務を新たな目で見直し、生き生き感を取り戻すことによって、新たなキャリア選択の道を見つける事が出来るのです。

こうしてみると、「過去未定、未来決定」というのは個人だけではなく歴史全体の柔軟な見方にも通じるような気がします。

ということで今週のエクササイズです。

●「過去の見方を変えながら(積極的な意味を見い出しながら)、 2003年後半、あなたが実現したいことは何ですか?」

第87回 キャリアの継続性を支えるもの

こんにちは、楳林です。このところまた、研修に追われる毎日が続いています。先週のエクササイズは「あなたの興味と仕事との間につながりや共通点があるとしたら何ですか?」でしたね。先ず1通紹介します。

「1つは映画です。現在、科学系博物館で展示解説員をしていますが、映画館と同様、ものでないサービスをどう提供し、楽しんで頂くか、エンターテイメントの要素もあり、共通点が多いと思います。よい映画を見るとすぐに人にお勧めするメールを流してしまいます。そこで、どう話のネタバレをしないで、面白さを伝えるか、友人たちを映画館に向かわせるか、と文章を考えるのは、科学の面白さを伝える解説員という仕事と似ているかも?」(Aさん、30歳)。

相手に興味を持ってもらうよう、面白さというかエンターテイメントを大切にされているのがよく伝わってきますね。そこまでして伝えて行きたいと思うAさんが本当に大切にしていることは何ですか?それから、このメルマガを紹介するときにはどのように紹介しますか。ちょっと聞いてみたくなりました。

Aさんのもう1つの趣味は洋服だそうです。「最近、お気に入りのお店が出来て、店員さんとも仲良くなって仕事のことについてもお話をします。店員さんがお客様に話しかけるのと、科学館の説明員がするのは、お客様に押し付けるのではなく、サービスを提供するという点でやっぱり似ていると思います」。

なるほど!興味のある分野からはいくらでも学ぶチャンスがありますね。そしてここでもAさんが日ごろ大切にしておられる価値観というか職業観のようなものを聞いてみたくなりました。

もう1通。「以前からパソコンに興味があり、インターネットやメールなども人より先んじてやってきました。そのためか、支店内の業務上必要なソフトのインストールから、外付けハードウエアの設定、営業マンのパソコンに関するもろもろの質問の返答役まで、ほとんど私に振られてきます」(0さん、メーカー営業、23歳)。

そのために「本来の仕事である営業の仕事をする時間が多少は削られてしまいますが、周りの人たちのバックアップが出来ていることは嬉しいですね」と語るOさん、「自分には営業の第一線で働くよりも、それをサポートする部門で仕事をしているほうが適しているのでは」と思うこともあるそうで、「いずれはそういった部門でのキャリアも積んでいきたい」と考えているそうです。

もし営業で職場の人たちだけでなく、お客さんにも何かバックアップのサービスをすることが出来るとしたら、どんなことでしょうね。そしてそれが出来たとき、営業に関してどんな感じを持ちますか?

ところで先週私にとって一番関心のあったテーマは「キャリアの継続性」ということでした。例えばこれまでの年功制や終身雇用という時代において転職とか再就職とかというのはイレギュラーな位置づけでしたが、人材流動化の時代においては人材関連企業のビジネスコンセプトとして「キャリアの継続性」をみていった場合、サービスの内容も今後、基本的に変わる気がするのです。

また個人の側からキャリアを単に職業とか職場、職種としてみるのではなく、そこでの選択・決定を通して、ゆっくり培っていく役割とか生き方としてみていった時、たとえ失業とか仕事をしていないときでもキャリアを通して継続しているものがあるように思えるのです。

私を振り返っても、これまで新聞記者、経済関係の調査、異業種交流のコーディネーター、研修講師、キャリアコンサルタント、コーチといろんな職業と職場、それに数年間の無職の時代を経験してきましたが、それをプロセスとして継続しているものがあるとしたら、何か自分、他者を問わず創造性を大切にしていきたいという思いがあるのだな、と感じるときがあります。

ですからキャリアというのは自分の興味とか大切にしたいことととても関連しているし、それを明確にしていくことだと思えば、本当はワクワクするものではないでしょうか。

ということで今週のエクササイズです。

●「キャリアを通してあなたが実現していきたい興味や大切にしたいことは何ですか」

第86回 キャリアとシステム思考

こんにちは、楳林です。暑くなるかと思うと、また一転、じめじめしたりの天気が続いていますが、皆さんいかがですか。先週のエクササイズは「今の仕事に直接関係のないことでも、何か興味を持って取り組みたいと思えることは何ですか」でしたね。

なぜこれを取り上げたかというと、「本当にやりたいことがわからない」とか、「今の仕事では燃えない」といった状態のときには、何か自分の興味のあることに取り組みながら、そのときの生き生き感や楽しさの感じを思い出してもらいたいのと、もしかしたら、キャリアの次のステップのきっかけになるのではと思ったからです。

先ず1通紹介します。「ダンスを職業としている恋人の誘いに乗って、ジャズダンスをやってみることにしました。今までまったくやったことがなく、彼女の仕事の領域に踏み込むのはどうかと思ったりしたのですが、『とりあえずやってみる』の精神を大切に、今年の12月に発表会があるので、それに1曲参加する予定です」(Oさん、メーカー営業、23歳)。

発表会で彼女と踊っている自分を想像してみてください。何を感じますか?そして、今までの自分がどんな風に変わりますか?

実は私の甥っ子は、大学受験の浪人中にヒップホップに夢中になり、とうとう大学入学を辞めてヒップホップのインストラクターになってしまい、同時に整体の学校に通い始めました。好きなことが仕事につながるのもいいですね。

もう1通。「興味を持って取り組みたいことが2つあります。1つは女性学、ジェンダー学の勉強です。男と女の不公平感、そうなった背景などを詳しく勉強したいと思っています。もう1つの興味は森林です。大木や古い樹を見たり山林を歩くのがとても好きです。」(Kさん、SE、41歳)。

Kさんは、「どちらもこれまで本や講演、セミナーなどで趣味程度はかじっていたのですが、今後本格的に勉強したいと考えているものの、一方では勉強した後、それをした後どう生かすか、ということを考えると仕事の忙しさにかまけて二の足を踏んでいます」と語っておられます。

ちょっと感じてみませんか。この2つをしっかり勉強しているときの自分の姿を。その時自分がどのように変わっていくと思いますか。そして変わった自分を通して自分の仕事やキャリアを振り返ったとき、どんな風に見えますか。

今の仕事に直接関係していないことであっても、ある意味で“人間と自然”についての考えを深める格好のテーマのように思います。将来、自分が「本当にやりたいことやキャリア」を考えていったとき、何か自分の考えの土台になるような気がしませんか。

ところで私も学生時代にワンダーフォーゲル活動をしたこともあり、山や自然にとても興味があります。社会人になって地方で仕事をしていたときに、山がまるで生き物のように感じたり、富士山山麓の植林の森が実は鳥や動物も住まない“死の森”であることにショックを受けたりした体験が今も強く印象として残っています。

今、システム思考に強い関心を持っており、管理職研修などで紹介しています。この考え方はラーニング・オルガニゼーション(学習する組織)の重要な要素で、簡単に言うと出来事を全体的にかつ相互依存や複雑性の視点を持って見ていきます。そして出来事を現象やパターンを掴みながら、さらにその原因となっている構造をシステムとして捉え対策を打つことといっていいでしょう。

でも私にはちょうど森の生態系システムのように思えるのです。「木を見ながら(育てながら)、森を見る(育てる)」といった感じです。しかも最近はライフキャリアもこのシステム思考がピッタリという気がしています。一人一人に「本当にやりたい仕事」の構造(生き方かな?)があり、そこに手を打つ必要がある、という考え方なんです。

ですから山や自然に対する私の興味が、気がついてみると自分のキャリアに対する考え方の土台につながっているような気がするのです。人のキャリア相談をすることは、私にとってはワクワクすることなんです。「隠れているこの人の本当の才能や夢はなんだろうか?」って思うからです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたの興味と仕事との間に繋がりや共通点があるとしたら何ですか?」

第85回 興味のある小さな試み

こんにちは、楳林です。ジトジトと、蒸し暑い日が続きます。梅雨ですね。先週のエクササイズは「あなたの人生の午後(40歳代)、どんなキャリア人生をイメージしていますか」でしたね。何通か紹介します。

「先ず頭に浮かぶのは、自分のピアノのレッスン室でレッスンしているところです。結婚して、子供はいなくて(?)、穏やかな感じです。本当に生徒のことを考え、こういうレッスンをやりたかったというレッスンをやっている感じです」(Mさん、36歳)。

「漠然としていますが、人に何かを教えているような気がします。サロンのようなゆったりとした部屋で、何人かがくつろいで、その中に自分がいるというような・・・。それは話し方かもしれませんし、別のことかもしれません。今、1つ1つ積み上げているものが、40代になって花開くようなイメージを持っています」(Fさん、30歳)。

MさんとFさんのイメージは、自分の好きな場所で、何かを教えているという点でとても似ていますね。それだけでなく、現在の心境にも共通点があるようです。

Mさんは最近、「自分を小さいときから可愛がってくれた祖母が亡くなり、四十九日の法要が終わったばかりで、とても寂しく、それに人間関係でのトラブルも重なって疲れが溜まっており、自分が本当にトランジション(人生の転機)の真っ只中にいる感じです。だからこそ、ここを抜け出すチャンスにしたい」そうです。

一方、Fさんは「昨日、会社で、自分に対する評価が著しく悪いことを知らされ、とてもショックと憤りを感じました。しかしよく聞いてみると、見るポイント(視点)が違っていたので、業務の比重の調整を行えば大丈夫だということがわかり、かえって自分の業務に集中できる環境を整えることが出来るようになった」そうです。

特に「仕事がやりにくい、業務が進まないと、なんとなく感じていただけに、その状況をきちんと把握することが,『自分の直感に正直になる』ことにつながることを発見しました」と書いてくれてます。とても良いプロセスです。

お二人の将来のイメージは共にかなり厳しい体験をしっかり見つめる中で浮上してきていますね。しかもすでに始めている試みを「1つ1つ積み上げていく」(Fさん)方向にあることも共通していますね。厳しい出来事に遭遇したことの本当の意味は、「人生としてのキャリア」を一歩前進させることにあるように思えます。

もう1通、印象に残った回答を紹介します。「私の母は53歳になりますが、いまだに(忙しそうにはしていますが)楽しそうに仕事に通っています。私たち子供2人が小さくて大変なときも、自宅で出来る仕事を会社から送ってもらい、ずっと続けてきました(もちろんこれからも続けるつもりのようです)」(Kさん、25歳)。

「そんな母を見て25年間育ってきた私は、『専業主婦』になっている自分が想像できません。旦那や子供が出来ても、仕事は続けたいし、続けていると思います。そのために今、ずっと続けられる仕事で、自分が楽しく出来る仕事は何か、必要なスキルは何か、いろいろ試行錯誤しています」というKさんが、1年半前から挑戦しているのが韓国語だそうです。

「将来韓国や韓国語に触れられる仕事をしたいと思いますが、まだ貿易の知識も経験もなく、悩みは尽きません」と言っていますが、私にはKさんの試行錯誤が韓国語の習得という1つの行動(アクション)を伴っている点が素晴しいと思います。Kさんの悩みはむしろとても健康的ですね。

リストラとか愛する人との死別といった大きなトランジションを契機にキャリアの方向が大きく変わることもありますが、その場合でも日々の現実の中で自分の興味や関心を少しずつでも行動に移し、試していくこと。そこから新たな出会いやキャリアの成長の機会が現れてくるように思えます。

「本当にやりたいことがわからない」という人も、立ち止まって考え込んでいるよりは、何か興味のあることを行動に移していく方が、新たな気づきや思いがけないチャンスがあるようですね。

ということで今回のエクササイズです。

●「今の仕事に直接関係のないことでも、何か興味を持って取り組みたいと 思えることは何ですか」

第84回 人生の午後のイメージ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「これまでの自分を変えるチャンスを含んだ新たな始まりやチャレンジに直面していたら、ぜひ紹介してください」でしたね。

実はちょっとしたミスで前々回のエクササイズと重なってしまいました。申し訳ありません。本当は「これまで“恐れがチャンスに変わった”と感じた、どんなユニークな体験をされていますか」でした。でも私の体験を理解しながら回答してくれたみたいでホッとしています。1通紹介いたします。

「この1月末で10年間勤めた会社を辞めました。ずっとコンピューターのSEをしていました。最後の1年はとても大変で、特に最後の1ヶ月は200時間近くもの残業。若い時は楽しかった新しい技術の習得も、ある時期から追いつくのが辛いと感じるようになり、上司の理解もなかなか得られず、忙しさと睡眠不足、疲労に耐えかねて辞めた、というのが正直なところです」
(Kさん、41歳)。

「この20年、コンピューターに関わり、これから60歳までの20年間は何か違うことをしようと思っています。『で、何?』というところです。結局、今、7月までの契約でコンピューターの仕事をしていますが(ローンもあるし食べていかないといけないし、他の業種よりは収入がいいので)、まだ模索中です」。

「40歳を過ぎて、何をしていいかわからないし、会社という枠からはみ出て、呆然としている、という情けない状況です。半面、何でも出来るぞーという自分もいます」。

とても伝わってくるものがあったので、ほぼ全文紹介させていただきました。

会社を辞めた表面的な理由はどうあれ、まず「キャリア人生の前半戦、ご卒業おめでとう」と言いたいですね。さて、これからですね。今はユングの言う人生の午後、あるいはトランジション(人生の転機)、中年の危機、あるいは厄年とか・・・まあ、いろんな表現がされる時です。

もう一度、個に戻って、この人生で掛け値なしにやりたかったことを見い出すチャンスが来たといえますね。組織のレールから少しでもはみ出ている時こそ、忘れかけていた夢やミッション(使命)みたいなものを思い出すチャンスがあるものです。40代前半はちょうどいい時期なのです。

たまには一人旅もいいですね。すっかり忘れてしまっていたあなたの宝をもう一度拾い直すようなことがあるかもしれません。一度には見つからないかもしれませんが、焦らないことです。自分が何を大切に生きてきたのか、今後もそうなのかとか、自分の価値観を点検してみることもお勧めします。時には心理学や気づきのセミナーに出てみるのも自分を知る良い機会です。

もう1つ。SEの経験を大切にしてください。キャリアというか、人生には無駄なことはないからです。必ず、新しいキャリアの中にSEとしての体験が生きてくる、ということを信頼することです。そう思えるなら、過去があなたの友人になってきます。

以上は同じように40代で会社を辞めて、自分探しを再開した私が、50代に入って40代を振り返ったときに感じることです。ですから、かなり私の押し付けがあることを差し引いてください。

もう1つ付け加えるなら、私たちの世代ですら、60歳までではなく、65歳以上、人によっては70歳代も、何らかの社会的な参加や生産活動をする時代ですね。ということはKさんもあと20年ではなく、30~40年あるということです。もっとも私自身、40代にはこんな考え方もしませんでしたが。今回は何だかお説教くさいですね(笑い)。

ということで今週のエクササイズです。

●「20、30歳代の方も含めて、あなたの人生の午後(40歳代)、どんなキャリア人生をイメージしていますか?」

第83回 恐れからチャンスへ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「これまでの自分を変えるチャンスを含んだ新たな始まりやチャレンジに直面していたら、ぜひ紹介してください」でしたね。先ず1通紹介します。

「今このときが自分を変える新たなチャレンジの時だと思います。会社が倒産するまでは、愚痴や文句を言いながらも、何気なく働いていて、ほとんど考えることがありませんでした。今は自分が何をしたいのか、何をすべきかを無理やりにでも考えざるを得ない状況です」(Sさん、35歳)。

Sさんは「まだ、不安だらけの上、漠然としか考えがまとまっていませんが、チャレンジのときではあると思います。ただ行動できないため、チャンスを逃しつつあることも事実ですが」と現状を率直に話してくれています。倒産前後を除き、ほぼ毎回、回答してくれているSさん、行動にまだ結びついていなくても変化のプロセスは着実に進みつつあるのを感じます。

もう1通。「先日、モバイル用のパソコンを買いました。通勤途上や営業車での移動中の時間を有効に活用したいと思い、購入に踏み切りました。得意先で営業提案を行うのにかなり便利ですし、帰社途上に営業日誌を作成できるのも時間の有効活用につながります。このメールも帰宅途上の地下鉄の中で書いています(笑い)」(Oさん、23歳)。

実は私も研修に持っていけるモバイル用のパソコンの購入を以前から考えながら、未だに機種で迷って(という理由をつけて)踏み切れないでいたところです。ですから、Oさんの1つの決断が、直ちに仕事のリズムを変え、時間の有効活用につながっていることにとても刺激を受けています。

「得意先の前でカバンからノート型パソコンを取り出すと、かなりインパクトを与えるようで、それも気に入っています(笑い)」というOさん、それだけでも自分が前より自信を持って、前向きになったと思いませんか!1台のパソコンだからといって、バカに出来ないですよね。

ところで先週、私はある大手企業のキャリア研修をメインの講師として担当する中で、面白い体験をしたので紹介したいと思います。

それは82回で紹介した私にとって苦手意識のある現実重視のプログラムです。しかも相手はある業界のトップ企業で研修内容に対する要求も厳しく、すこし前からかなり緊張していました。研修前日に、相手先企業の研修責任者からの無理な要求に、久しぶりに私は投げ出したくなる位の怒りを思わず感じました。

そういう時はいつもそうするように、帰宅後、近くの大きな公園で大声を出して怒りを発散させました。これですっきりした気持ちで寝れると思っていたのですが、1時間ぐらい寝た後、急に目が覚め、その後、頭が勝手に動き出し寝られなくなってしまったのです。「これは下手をすると朝まで寝れないかも」という焦りでますます目がさえてきました。

しかし、何とか心を落ち着けようと思い「今、何を感じているのか」と問いかけ自分の感情をチェックしてみました。そして、私が感じていた感情は怒りの下にある恐れであることがわかりました。今回のチャレンジに対して、恐れがいっぱいあったのに、それを感じないようにしてきたわけです。そこで、私は決意しました「よし、この恐れと恐れている自分を認め、受け入れて挑戦するぞ!」と。

その決意から30分も経たないうちに、焦る気持ちが消え、意識がまどろみはじめました。と、まどろみ中で、私の左手が意識とは無関係に動き、私自身の顔をサッとなでました。しかし、それは、実際は肩が少しだけ動いただけなのです。そして、不思議なことに、さっきまで感じていた「恐れ」の感情がきれいに吹き飛んでいました。今思うと、恐れを振り払おうと夢の中の左手が勝手に動いたのかもしれません。本当に不思議な体験でした。

翌朝、朝食をとりながら、相手先企業の研修責任者に対し、感謝の気持ちすら出てきました。彼はきっかけを与えてくれただけなんです。「怒り」はこの研修に対する「恐れ」を感じないようにする防衛網に過ぎなかったからです。

その日の研修は、まだ宿題はいろいろ出ましたが、気持ちの上では余裕を持って取り組むことが出来ました。恐れが消えると、けっこう人は勇敢なものです。そしてこの一連のプロセスの鍵は「よし、チャレンジするぞ!」と本心で決めることにあったように思えます。

昔から人一番怖がり屋の私は、これまでもいろんなやり方で恐れに対処してきました。恐れがなくなることはありませんが、マインドへの働きかけ方は少しずつうまくなってきたように思えます。

チャレンジが大きいほど、一方では失敗するかもしれないという恐れがあります。逆に言うと、恐れは大きなチャンスを隠していることになりますね。だから恐れに気づいたら、もう半分チャンスが近づいたようなものなのです。

ということで私を引き合いに出してのエクササイズです。

●「これまでの自分を変えるチャンスを含んだ新たな始まりやチャレンジに直面していたら、ぜひ、紹介してください」

第82回 自分を変える新たな挑戦テーマ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたが最近、勇気を振るうことを試されたのはどんな時ですか」でしたね。先ず1通紹介します。

「会社のビルから、目の前の駐車場で車上狙いを目撃、警察に通報したことです。他の男性2人は『仕返しが怖いから、関わらない方がいい』と見てみぬふりをしましたが、外からは私たちの顔は見えないと判断し、警察に通報。しばらくたって、犯人を検挙したとの連絡が入りました。こそ泥程度の犯行だと思ったら、実は事件だったそうで背筋が寒くなりましたが」
(Fさん30歳)。

いざとなるとなかなか出来ないことですね。Fさんはさらに、「友人の紹介で、初めてラジオCMの録音をしました。緊張で満足のいく結果ではありませんでしたが、『初めから100%満足できる仕事はない』と思い直しました。今週末は、初めての2次会の司会です」とチャレンジの連続だそうです。

「最近、一瞬一瞬の今の自分が、未来の自分をつくっていくのだなぁと感じています」というFさん。すばらしい表現、そして、実感ですね。

もう1通。「アフターファイブに韓国語を習い始めて1年半、初めて一人で韓国旅行をしましたもっともソウルに留学中の友達がいるのですが、それでも無事日本に戻ってきて『たどたどしい韓国語だけど、行ってしまえば何とかなるじゃない!』と思いました」(Kさん、25歳)。

「不安があっても始めてみなくちゃ」と痛感したKさん。「かねてから思っていた転職活動も、先ず『スカウト』機能登録から始めました」と早くも次のチャレンジテーマに取り組み始めたそうです。

お二人に共通するのは、仕事以外で勇気を試され、それを超えると、そのエネルギーを今度は仕事に投入している事ですね。何らかの意思決定を勇気を持って実行するとともに、そこで体得した勇気を、今度は仕事の方に活かしていることですね。

ところで、今回の回答を見ていると、勇気を持って1つの出来事に対して意思決定するとともに、仕事の面でも新たな始まり、そして、新たなチャレンジをしようとしている方が目に付きました。

実は私もその一人なんです。通常私が担当するキャリアデザイン研修は、基本的に3~10年後のキャリアビジョンを描き、それを達成するためのキャリア目標や必要となる能力開発のためのアクションプランなどを作成します。

ところが6月~8月にかけて、それとはかなり性格の異なる研修が2つ入ってきました。しかもその2つがまた対照的なものなのです。

1つは、すでに紹介したことがありますが、半年間勉強してきた「アクションラーニング」というコーチング的要素の強い手法とキャリアデザインを組み合わせた未来志向タイプの研修で、私自身がやりたかったプログラムです。

そして、もう1つはプレーイングマネジャーのための研修ですが、これまでやってきたことの範囲内で自分の強みを確認し、それをさらに100%発揮できるようにするための能力開発プランを考えるプログラムです。どちらかというと現実重視のプログラムですね。

ここで思い出したのが、以前、メルマガで紹介した米国のキャリアカウンセリングの先生である、リー・リッチモンドさんが書かれた「SOUL WORK」に出てくる言葉なのです。

あなたが愛する仕事を見つけよう。
あなたが今もっている仕事を愛そう。

私には2つの研修プログラムが1句ずつを代表しているように思えたのです。転職をするとか、何か新しいことにチャレンジする時、ともすると、今までやってきたことに魅力を感じなくなって、捨ててしまいがちですね。

しかし、多分にその傾向がある私に与えられたテーマが、なんとその2つに同時に取り組みなさいということなんです。どちらも初めてのプログラムなので、けっこう試行錯誤していますが、私にとって新たなチャレンジの機会として取り組んでいます。

ということで自分を引き合いに出してのエクササイズです。

●「これまでの、自分を変えるチャンスを含んだ新たな始まりやチャレンジ に直面していたら、ぜひ、紹介してください」

第81回 才能とミッションと勇気

こんにちは、楳林です。ジトジトとした天気が続きますね。先週のエクササイズは「あなたにとって『一皮むける体験』があったら紹介してください」でしたね。先ず1通紹介します。

「最初の脱皮体験は海外協力隊経験です。日本での訓練中にやっていけるか、不安で逃げたくなりました。でもやりきったことで、自分の限界の幅が広がりました。2回目は帰国後のハードワークで細かい嫌いなことが気にならなくなったこと、そして現在3回目。展示解説員として苦手な生物分野に取り組んでいます。2,3年過ぎても勉強を続けていられたら、また一皮むけれると思います」(青空さん、30歳)。

青空さんは「最初は飛び込んでむちゃくちゃ頑張るが、やがて限界を感じ始めると、人間関係もいやになって、未解決なことがたまり、不安になって、ついには逃げる」という自分の挫折のパターンが「子供の時、父の仕事の関係で2,3年おきに転校、その先々でいじめられ、そのたびに学校が変わるのを待っていたため、問題解決することなく身を引いてしまっていた」ことに起因すると見ています。

いま、そのパターンを克服するたびに一皮むけ、成長のステップになっているようですね。それがキャリアなのかもしれません。2,3年後の解説をしている姿、どんな感じですか?

もう1通。「新しい企業に派遣されて1ヵ月半、今まで体験したこともないようなこともたくさんあって、1サイクルが終わった今、やっとそれらが納得できたところです。ですが、派遣社員というものは即戦力であるべきものなので、どうしても次の1サイクルは外せない勝負どころになります。本当は逃げ出したいし、自信もないし。でも、きっとここが一皮むけるところかもしれないので、頑張ってみようと思います」(Sさん、36歳)。

一皮むけるということに気づいていれば、きっと乗り切れると思います。「その時の自分って、どんな自分になっていますか?」。ちょっと想像してみてはどうでしょうか。Sさんだけでなく、「みんな一皮むけようと頑張っているなぁ」と感動したことをお伝えします。

さて、今回は最近見た映画「ドリームキャッチャー」について触れてみたいと思います。ドリームキャッチャーというのは輪の中に細い糸がクモの巣状に編まれていて、寝室に置いておくと、悪夢を取り払って良い夢だけを見させてくれるという米国先住民の呪術的な品です。原作者のスティーブン・キングの小説も読まず、タイトルだけに惹かれ、「シカゴ」を見たいというパートナーを引きずって衝動的に観たのですが、メルマガの最近のテーマとのつながりを強く感じました。

主人公の4人の中年は、子供時代にいじめにあっている少年を勇気を奮って助けたことで、その少年から超能力をもらいます。相手の考え、嘘などを見抜くテレパシー能力、災難の予知能力、記憶の保管庫、紛失物の探知能力。でも夢を失い、日常に埋没した4人の中年にとっては、もはやこの才能は重荷になって、自殺を考えたり、交通事故にあうなどまさしく悪夢が続きます。

そして1年に1回、4人が恒例行事にしていた森の狩猟小屋に今年も集まった時、とんでもない事件に巻き込まれます。宇宙から来たような感染病に襲われるという恐怖の体験が始まるわけです。4人の中年男たちは、まるで少年の日の勇気を再び振り絞り、人類の命運をかけてこの恐怖に立ち向かっていくというストーリーです。

このストーリーには才能とミッション(使命)と勇気の関係が見事に表現されている、と私は感じました。ミッションを失うと、才能はしばしば悪夢のような出来事を招きます。これって、けっこう人生ストーリーとなって自分に起きていることではありませんか。

ミッションに立ち向かう中で才能も再び機能し始めます。鍵は勇気なんですね。時には最悪の状態にあってやっと自分の勇気を試されるようなことって、経験したことはありませんか。ついでに付け加えると。ミッションの妨げになるのが、お酒やタバコの中毒だそうです。

さて、勇気はどこから湧いてくるんでしょうか。本当の勇気って何なのでしょうか?

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが最近、勇気を振るうことを試されたのはどんな時ですか」

第80回 一皮むける体験

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたの体験した出来事から気づいた人生のパターンがあったら紹介してください」でしたね。ちょっと回答しにくかったかもしれませんね。1通紹介します。

「人生にパターンといえるほど、経験も長生きもしていませんが、現在でも1番の問題になっているパターンがあります。それは(1)事柄を始める(2)面白い間は続ける(3)苦しくなったり、嫌になったりしてくる(4)逃げ出す、というパターンです」(Sさん、36歳)。

Sさんは「このパターンが学生時代のアルバイトから始まって、会社員時代、さらに現在の派遣社員時代は会社こそやめなかったものの、仕事をえり好みして“社内転職”を繰り返していたので、実質的には同じパターンが続いており、どこかでこのパターンを越えないと、今の自分を変えるのは無理かもしれません」と正直に回答してくれています。

このパターンに気づくというのはとても大切なことのように思えました。Sさんだけでなく、私の中にも、そして多くの人たちの中にあると思えたからです。いろんな事柄について、けっこう(1)から(3)まで起きますね。そして(4)のところで、逃げる替わりに諦めたり、反逆や文句を言い続けたり、多様な選択肢があるようです。

わかりやすいのは人間関係、特に恋愛ですね。好きで付き合っても、やがて(3)にくると、別の人を好きになって逃げ出したりしますね。

どうやら(1)から(3)までは、パターンというよりは仕事や人との関係においてかなりの確率で起きるステップかもしれません。問題は(4)でどういう行動をとるかにその人の人生パターンが表れると思います。ということは自分のパターンを超えれらるかどうかの鍵は(3)にどう対処するかにかかっているわけです。

人生、面白いことに(3)のときにいろんな出来事や事件、病気などが起きるものです。それらにどう取り組むかで自分の人生パターンを超えられるかどうかが決まるわけです。

ところで、今私が興味を持っている「一皮むける体験」というのが、この人生パターンを超えるということと関連しているように感じるので紹介したいと思います。

「一皮むける体験」とは一言で言えば大きくジャンプすることですね。米国CCL(創造的リーダーシップ研究所)が「優秀なリーダといわれる人は、その成長過程において、同じような『一皮向けた体験』をし、その経験からリーダーシップを身に付けているのでは」ということを明らかにしたもので、日本でも神戸大学の金井壽宏先生らが同様の調査からキャリア論として展開しています。

ではどんなときに人は「一皮むける体験」をするかというと、異動、昇進、降格、左遷、初めての管理職経験、ビジネス上の失敗、リストラなどの業務上の出来事(イベント)から学ぶことによって、まるでサナギから蝶に脱皮するように質的な成長を遂げるということです。

特にキャリアに関して言うと、そうした体験が自分の人生の節目として感じるときに気づきや学びが大きいそうです。しかも、どちらかというと、自分の希望というよりは、異動、配属、転進など難しい環境や局面に直面するケースが多く、その場合、自分が対峙することになった現実を直視し、その局面から逃げないことが、「一皮むける体験」につながるようです。

そういう局面の時、同時に自分の人生パターンも浮上しているように思えるのです。そして私自身を振り返ってみると、自分の人生パターンにはまって、「一皮むける体験」の機会を逸したことがけっこうあったな、と反省しています。人生パターンを超えるということは、「一皮むける体験」につながるチャンスなんだということを、改めて痛感しています。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとって『一皮むける体験』があったら、紹介してください」

第79回 人生のパターンを超える

こんにちは、楳林です。連休は、どのように過ごしましたか。私は今回の連休は珍しく遠出せず、自宅で日ごろおろそかになっていた庭の草刈りや犬の散歩に精を出しました。

さて、先週のエクササイズは「あなたの抱えている人間関係での課題が解消すると、キャリア上、どんなメリットがあると思いますか」でしたね。1通紹介します。

「『嫌いな人、苦手な人とでも普通に接する』というのが私の人間関係での課題だと思っています。いったん相手をそう思ってしまうと、途端に顔を見て挨拶が出来ない、“報連相”が出来ない、無表情で受け答えをしてしまい、自分自身も嫌なやつに変身してしまいます」(Fさん)。

Fさんは、これが解消すると、「視野を広く持て、違う視点を知ることができると思います。また1つの目標に向かって、結果を出すことが出来、それが自分自身のキャリアの1つになるだけでなく、誰に対しても分け隔てのない人に変わり、リーダーとしての要素の1つが身に付くのでは」というメリットを感じているそうです。

ただ「ずいぶん前から治さなければと思っているが、一向に治せていません。先ずは基本的に顔を見て挨拶をすることから頑張ってみたい」というのが目下のFさんの決意のようです。

ちょっとイメージしてみて下さい。そのメリットが今、得られているとしたらどんな感じがしますか?周りはどんな風に見えますか?目の前にコミュニケーションの難しい人を置いて、その感じを持って近づいて行って、相手に感謝の言葉を伝えたら、相手は何と言っていますか?そんな風にです。

ところで、最近私にとってうれしいニュースがありました。それは、3ヶ月前、突然、脳腫瘍で入院した職場の研修講師のTさん(61歳)が元気に復帰したことです。そのプロセスでの気づきを紹介したいと思います。

Tさんは60歳の定年まで外資系企業3社で営業と人事の管理職を経験し、半年前から私と机を並べて同じキャリアデザインの研修講師をしていました。

「自分のこれまでの体験を通して人の生きがい再発見のサポートをするのは本当にやりがいがあるね」と目を輝かせはじめた時の発病だっただけに、私もショックでたまりませんでした。

そんなTさんが入院した2,3日後、私は明け方、ハッと思い出しました。Tさんが、若かりし日、商船大学に入って船乗りになる夢を持っていた事。しかし、やむをえない事情で自分の夢を断念したと言う話をです。「さあ、自分の夢を実現しよう」と燃えていた矢先の挫折感は、青年Tさんにとって大きかっただろうな、と思った事をです。

そして、その時の状況は、今回の状況と似ている、と私は直感的に感じたのです。もしかしたら、Tさんが自分の人生を研修で語っているうちに、眠っていた夢がよみがえろうとしているのでは、と。それが腫瘍という形をとって現れたのではないか?と。

普通に考えたら、これは、もちろんとんでもない発想です。が、そのとき私にはそう思えたのです。そして、手術直前のある日、私は彼にFAXでメッセージを送りました。

「青年の時にあった人生のパターンを超えて、夢を取り戻すチャンスです。 腫瘍は、敵ではなく、あなたの夢をもう一度思い起こさせるきっかけなの かもしれません。」―― FAXは、そんな内容のメッセージでした。

それから2ヵ月後、Tさんは頭髪はまだ短いながらも元気に職場に復帰しました。一緒に昼食をとりながら、Tさんは「あのメッセージを見て涙が出た。そして手術前の不安を取り去って勇気を与えてもらったよ。本当にありがとう」と言ってくれました。

そんな訳で、私は今回のTさんの件で、改めて病気も含めて人生の厳しい出来事は、何かその人の人生のパターンを超えたり、未完了のことを完了させるチャンスを与えてくれている、という事を再確認したように思えたのです。

そして、何か吹っ切れて仕事に取り組むTさんに、ライフキャリアの成長が続いているのを感じています。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたの体験した出来事から気づいた人生のパターンがあったら紹介し てください」

第78回 もう1つのアイデンティティ

こんにちは、楳林です。まるで春を飛び越えたかのように、急に暑くなってきましたね。先週のエクササイズは「3つの原則のどれかを実際に体験したり試していたら、ぜひ紹介してください」でしたね。1通紹介します。

「1つ目の『実地に試す機会を探すこと』では、自分が何をしたいのかという事を数年前から考え出し、そのために資格試験に挑戦したり、自己啓発の本やセミナーなどに何度か参加しています。まだ何がしたいのかという答えは出ていませんが、少しずつは、こうしていくべきだという道筋は見えてきた気がします」(Sさん、36歳)。

Sさんは2つ目の「新しい人に出会う」についても、「仕事以外で年に2回程度、異業種交流会に参加するようにしています。また仕事やネット仲間の知人や友人など、初めて会う機会がある場所(飲み会など)には参加するように心がけています。新しく知り合った人と話していると、こんな考え方もあるかと気づかされたり、仕事の紹介などのおいしい話を時々頂いたりいただいたりしています」などの努力をしているそうです。

Sさんはまさに試行錯誤し、学習しながら自分のワーキング・アイデンティの再構築と自分に合ったキャリア転換への過程にある感じですね。3~5年後の自分の姿を少し想像してみてはどうでしょうか。

ところで,最近、私の回りや知り合いで、せっかく、自分の志望する、やりたい仕事や業務に就いているのに、職場の同僚、上司あるいは部下との人間関係がうまくいかないために、肝心の仕事が行き詰ったり、リーダーシップが発揮できず、中には転職すら考えるようなケースが出て、ちょっと気になっています。

なぜこれを取り上げたかというと、この人間関係というのが、前回取り上げたワーキング・アイデンティティと関連があるからです。

「アイデンティティ」とは、「自分であること」「自分らしさ」といった意味がありますが、広島大学の岡本裕子助教授によると、このアイデンティティには2つの軸があるそうです。1つは「自分が何になっていくのか」という「個」としての自立、自己実現の達成という軸、もう1つが「自分は他者の役に立つのか」という関係性に基づく軸です。

つまり、同僚や上司と良い意味でうまくやっていくとか、逆に後進、部下をうまく指導できるとかという組織の人間関係を肯定的に発達させていけるかどうかということですね。

ところが、若い人では、職場の人間関係が深まるにつれ、それ自体がつらい、なじめない人がけっこういます。また中年以上では、これまでの年功制の中で「寄らば大樹」とか「会社人間」になっている人ほど、個としての自立と部下の育成といった関係性の両方の課題に対応することが難しくなってくるようです。

実は私自身、若い時、“離人症”というか、集団の中で息苦しさを感じたり、自然に振舞えないことにけっこう悩んだ時がありました。最初に人に接することの多いマスコミの仕事を選んだのは、自分の弱点を何とか克服したいという気持ちがそこにあったのかもしれません。そういう動機が自分のキャリア形成に影響しているわけです。

いずれにしろ、この人間関係のテーマは、キャリア上の問題とか課題の根底にあるような気がしています。同僚、上司、部下との関係を良い意味で変えていくことは、自分のキャリアの発展とも深く関係しているようです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたの抱えている人間関係での課題が解消すると、キャリア上、どん なメリットがあると思いますか」

第77回 キャリア転換の新アプローチ

こんにちは、楳林です。週末は夫婦で姪の結婚式に出席しました。お相手は大学のサークル仲間ということで仲人も立てず、友達感覚の楽しい結婚式でした。さて先週のエクササイズは「あなたが描いた人生ストーリーを実現するために、あなたがやるべきことを3つ挙げてください」でしたね。先ず1通紹介します。

「“成功に向かって”という人生ストーリーを実現するため、“何か書き出してみる”“目標に向かっていける自分になるように行動する癖をつける”“落ち込まない手立てを見つけられるようにする”の3つです」(Sさん、34歳)。

Sさんは現在、求職中だそうですが、先ず「再就職に成功する」するために、この3つを実行する良いチャンスですね。

もう1通。「“Take it easy”を実現するため、[1]体力をつける[2]技術を研く[3]プラス思考を心がける」というFさん(30歳)。プロフェッショナルとしての司会者の道を着実に歩み始めているのを感じます。

一歩進めて質問です。「体力をつけるために、では、先ず具体的に何をやりますか?」。回答を寄せなかった方もご自分で3つのやるべきことを考えられた方は、3つのそれぞれについて、具体策を1つは見つけてみてはどうでしょうか。

ところで、先週、私はハーミニア・イバーラというINSEAD(欧州経営大学院)の教授がハーバード・ビジネス・レビューに書いた「計画しても『第2のキャリア』は成功しない」という興味深い論文に出会い、とても刺激を受けました。人生ストーリーを書き換えるというテーマとも関連するので紹介したいと思います。

簡単に要約すると、新たな働きがいを求めて、それまで培ってきた職種や職場を大きく変化させてキャリア転換しようとする人がこの10年増えてきているが、その場合、「自己分析し、計画して実行する」という従来型の計画・実行型のアプローチでは失敗するケースが多い。真に自分にあった新しい道を探すには「試行して学習する」というアプローチが必要である、というものです。

その中核のテーマとしてアイデンティティの問題を挙げています。これまでのキャリア転換のベースは『本当の自分』というアイデンティティを発掘し、あとは自分に合ったキャリアを探すというものですね。

しかしイバーラ先生は「私たちはさまざまな自己(イメージ)がある」ことを前提に、アイデンティティを再構築するということは、さまざまな自己を試行錯誤し、学習するという過程を経ることが必要だ、と言っています。「二歩進んでは一歩下がるというような、長く、紆余曲折を経て、自分が本当に変えたいことは何かを理解し、自分を縛り付けている習慣や思い込みを明らかにしながら見出していく」こと、それがキャリア転換のプロセスだというわけです。

つまりキャリア転換というのは新しいアイデンティティを再構築することであり、それはまさに、人生ストーリーを変えることにつながることなのです。

では、この「試行・学習型アプローチ」はキャリア転換を成功させるためにどうするか、というと次の3つの原則を紹介しています。

1つ目は実地に試す機会を探すこと。自分が本当に何をしたいかを知るには、本職を続けながら、週末や長期休暇を利用して活動したり、資格を取ったりしながら、新しいワーキング・アイデンティティを築くことだそうです。

2つ目は新しい人と出会うことによって、新しい自己の発見と新しい仕事のアイデア、ヒントを得る、ということです。

そして3つ目は「意味を与える」。これはちょっと難しいのですが、キャリア転換に成功した人の多くは「これが私のやるべきこと」と感じるような一種のひらめきの瞬間があり、変化のきっかけになるというものです。

私自身,40代にかなり大きなキャリア転換を図る中で、以上の3つの原則を強く感じた経験があったので、余計興味深く読んだのかもしれません。

ということで今週のエクササイズです。

●「3つの原則のどれかを実際に体験したり試したりしていたら、ぜひ紹介してください」

第76回 マイウエイからハイウエイへ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「新しい人生ストーリーという本のタイトルは何ですか」でしたね。前回のタイトルに比べるとかなり前向きに変わっているようです。

「はじめまして。『わが道を創る』というのが私のタイトルです。実際、昨年から本業を続けつつ、個人企業立ち上げの準備をしている真っ最中ですので、タイムリーなエクササイズでした。勉強することが多く、寝不足の日々ですが、ゆっくり一歩一歩道筋を作っていくことで、自分自身のスキルアップにもつながり、結構楽しいものです」(Sさん、34歳)。

4月にふさわしいタイトルですね。個人企業を立ち上げたときのオフィスと自分の姿をちょっとイメージしてみてください。どんな感じですか?

前回のタイトルから大きく変わった方もいますね。「波乱Enjoy」だったFさん(38歳)は「Take it easy かな。波乱のある人生もチャレンジしがいがあってよいけれど、節目節目で『急がずもう少し落ち着こうよ』『周りにも配慮しようよ』というメッセージがあったのではないか」と今は思えるそうです。

「敗北」だったMさん(36歳)はなんと「勝利宣言です。『失敗』『負けること』『挫折』という体験を通じてそこに『自分を含めそれぞれが尊いのだ』というメッセージがあることに気づきました。ピアノを子供たちに教えていますが、その時忘れないようにしたい」そうです。

こうしてみると、これまで後生大事に抱えてきた人生ストーリーの中に実はヒントがあることを私も改めて再認識しました。不思議ですね。

もう1通。これもびっくりしました。前回「先送りの落とし穴」だったSさん(35歳)。今回は「他人のために行動する/他人の喜怒哀楽を自分のものと感じよ」だそうです。

「私は、自分中心に考えることが特に強く、他人のために行動するときも見返りの利益をつい考えて行動しています。でも、『お客様が何を望んでいるかを考えろ』といわれて、それは『他人の喜び・怒り・悲しみ・楽しみを自分のものとして感じる』ことにつながることに気づきました。とても難しいと思いますが、これを自分のなりたい人間像にしたいと思っています」。

Sさんは勇気を持って自分の現実を自己開示することによって、今まで気づかなかった自分の中の深い世界に一歩足を踏み入れたようですね。

みなさんの新しいストーリーには回りへの配慮、つながりとかサポートの感じがしませんか。それがビジョンとかミッションの入り口のように私には思えます。ということは、過去のネガティブな出来事をベースにしたネガティブな人生ストーリーすらも新しいストーリーを見出す大切なプロセスなんですね。

そして新しいストーリーはSさんの回答で浮かんだのですが、どこか“マイウエイ”から“ハイウエイ”への転換を示唆しているように思えます。“ハイウエイ”って、わかります?(笑い)

もちろん掛け言葉ですね。これまでの県道、国道から高速道に入るのと、もう1つはビジョン、ミッションというのは何か“内なる意識”に繋がっているからです。キャリアの成長スピードが楽にずっと早くなるわけです。但し、事故の場合は大変ですけどね。

ということで今週のエクササイズは人生ストーリーの最後の質問です。

●「あなたが描いた人生ストーリーを実現するために、あなたがやるべきことを3つ挙げてください(例:時間の使い方を変える、新しいスキルを学ぶなど)。

第75回 人生ストーリーを書き換える

こんにちは、楳林です。ビル街では新入社員、我が家の庭では草木の新芽がそれぞれ新鮮です。さて先週のエクササイズは「あなたの人生ストーリーを本にしたらどんなタイトルにしますか」でしたね。何通か紹介します。

「-挫折だらけの人生―です。以前、自分の職について語るトークセッションで、『挫折ってしてもいいのですね』と大学生に言われてびっくりしました。『別にしたくてしてるわけじゃなくて、結果的に挫折しているのだけれど・・・』。でも、挫折して初めてやる気が出る、挫折しないとちゃんとしない、挫折感をエネルギーに頑張れるタイプなので、挫折している程度がちょうど良いか、と最近思っています」(青空さん、30歳)。

さて、そんな青空さんから一緒に朗報も届いています。「私事ですが、突然、前からボランティアをしていた科学館で展示解説員として採用が決まりました。あわただしく退職の手続き、新しい職場での研修となりました。以前は総合職で正社員でしたが、今度は1年毎の契約社員で、5年までの期限付きです」「以前落ちたにもかかわらず、諦めず頑張れたのも、キャリアコーチングのおかげです。自分の価値観を見直す機会を頂いて、ありがとうございました」。

お役に立てて、私もとても嬉しいので、ほぼ全文掲載させていただきました。青空さん、おめでとうございます。

他の方のも紹介します。「-波乱ENJOY-です。どんな大変なことでも、楽しみながらやって生きたい、人生最後の時に、『アー、大変だったけど、楽しかったな』と思いたいのです」(Fさん)。「―先送りの落とし穴―まだまだ先があるからと思っていたら、何もしてきませんでした」(Sさん、35歳)。「―終わりなき道―今追い求めているものにある程度到達してからも新たに何かを追い続けるつもり」(Yさん、29歳)。「-砕かれる心―自分の思いやプライド、価値観が壊れたとき、初めて本当に大切なものが見えてくる」(Nさん)。極め付けは「敗北」(Mさん、36歳)。

でも、皆さんのことを私は、笑うことは出来ないのですよね。何故かというと、私も以前、「ローンレンジャー」とか「愛を求めて三千里」なんていうストーリーを後生大事に持っていましたから。が、ある時に気づいたわけです。人生ストーリーどおりの人生を送っていることに。「それを本当に望んでいるの?」。冗談じゃない!ではどうする?と。

幸いなことに、あなたの人生ストーリーはまだ完成本ではありません。過去から現在までの未完本の人生ストーリー、タイトルなんです。これからの人生を追加して完成本にすること、人生ストーリーもタイトルも書き換えるチャンスはまだ全ての人に等しく与えられています。そして書き換えるかどうかの選択権はあなたにあるんです。

途端に「いやあ無理だよ!」「どうあがいてもこのストーリーから逃れられないよ」「それにこのストーリーが実は好きなんだ」「書き換えるなんて、それでは今までの人生は無駄だったというの?」なんていう声が思わず聞こえてきそうです。

でも、こう考えてみてください。あなたは「書き換えてみたいけれど、新しい人生ストーリー、タイトルがわかっていないんだ」と。今のストーリーに100%満足している人はもちろん対象から外します。でも、そういう人って、本当に少ないですよね。だから、どこか不満を持っている皆さんのために幾つかのヒントを提供したいと思います。

1つは人生ストーリーを構成する過去の大きな出来事の1つ1つから、「本当は何を学ぶ必要があったのか」「受け取るべきメッセージは何だったのか」これまでの「失敗したとか最悪だったとか、事実だ」といった判断をちょっと横に置いて見直してみることなんです。歴史を深く見るのと似ていますね。

もう1つ、これまでの人生ストーリーに付けたタイトルも実は大きなヒントになるのです。例えば「敗北の人生」の新しいメッセージは、誰もが勝利する「WIN-WINの人生」を求めることかもしれません。

「人生の棚卸」とか「職務の棚卸」というのはもしかしたら、この書き換えなのかもしれませんね。それにキャリアというのはまさしくこの新しいタイトルを探す“乗り物”ですね。

それでも人生ストーリーを書き換えたとしても、生まれてから何度も繰り返したストーリーは確かに根深いですね。人生パターンや自己概念ががっちり組み込まれていて、人生ストーリーというより“人生構造”みたいに思えるからです。私もこれまで何度も元のストーリーに戻ってはまた選択し直しているのが実情ですが・・・。

ということで今週のエクササイズです。

「新しい人生ストーリーという本のタイトルは何ですか」

第74回 自己概念の重要性

こんにちは、楳林です。日増しに春らしく暖かくなっていますね。さて、先週のエクササイズは「今の仕事、職種で本当に大切にしたい、あなたの強みは何ですか」でしたね。1通紹介させていただきます。

「自分の強みを正直、見つけることが出来ません。情報処理関係ですので技術的なことでは、どんどん新しい技術を持った若い人が入ってきますし、プロジェクトリーダーとしては経験が皆無です。逆に強みをつけるために、奮闘しなければならないことはたくさんありますが・・・。強いてあげるなら、外注(派遣に近い)としてずっとやってきたのでどこにいっても開発などは、一通り出来る自信はあるので、これを大切にしてさらに技術力などを強めて生きたいと思っています」(Sさん、35歳)。

派遣ですと、どうしても顧客からの注文やニーズが優先するので、それに追われて大変だと思います。ちなみに、私の部門でも標準型のキャリアデザイン・プログラムがあります。が、導入に際しては、顧客のニーズに合うようその都度、大幅に手直します。だから、その過程で時代の流れや次のニーズ、シーズを感じることが出来ます。

Sさんもきっと今の仕事の中から今後重要と思われる技術やスキルに気づかれていると思います。そうした気づきを活かしながら、「今後1~3年後、自分はどうありたいか」というキャリアパスを描いた上で、先ず何をやるかを考えてみてはどうでしょうか?

ところで、先週末は、日本キャリア開発協会主催の「キャリアカウンセリング・フォーラム」に参加しました。その中で特に私にとって収穫になったのは、NCDA(全米キャリア開発協会会長)のスペンサー・ナイルズ博士(ペンシルバニア州立大学教授)の講演とワークショップを体験できたことでした。

ナイルズ博士は、主に、キャリアカウンセリングの分野で最も有名なドナルド・スーパー博士(故人)の理論を軸にして、キャリアカウンセリングの現状の課題や将来のビジョン、そして、最新の手法を指導してくれました。ですので、今日は、「自分が何をやっていいのかわからない」とか「キャリアの意思決定や選択が出来ない」と悩んでいる方に参考になると思ったことを簡単に紹介します。

それは、自己概念の重要性とキャリアの意思決定・選択の関係についてです。

自己概念というのは「自分自身のことをどのように受け止め、どのように思っているか」ということ、つまり「自分が何者であるか」「どういう存在であるか」という自己イメージと言ってもいいでしょう。

もう少し具体的に言うと「何が好きで、何が嫌いか」「どんなことが楽しいと感じる人間か」といった価値観にもつながってきます。

この自己概念は人生の成長段階(ライフステージ)や人生でのいろんな役割(ライフロール)を経て、自己概念の形成、発展と受容、探索と現実での吟味を繰り返していきます。そして、自己概念の実現(職業的自己概念)へと順次発展していくのです。その過程で人生目標や人生ストーリーも形成されていきます。

自己概念には肯定的なものだけでなく、否定的なもの(例えば自分は引っ込み思案である)もあります。だから、職業選択の障害や職業生活への不適応要因にもなります。また、自己概念は「どんな職業・職務が合っている」という客観的な要素以外に「その仕事に見出す意味は何か」という主観的な要素もあります。そして、それが自己概念の成長、発展する鍵になるわけです。

ですから、自分のキャリア上の意思決定や選択するということは、自己概念や価値観、そして自分の人生ストーリーに対する自己理解をキャリアの枠組みに置き換えようとする試みであるわけです。

つまり「何をしたらいいか」とか悔いのないキャリア選択をするには日頃から自己概念をしっかり理解しておくことなんです。

ということで、今週のエクササイズはワークショップでの課題を1つ紹介します。上で話したテーマが凝縮された良いエクササイズですよ。

●「あなたの人生ストーリーを本にしたらどんなタイトルにしますか」

第73回 大切にしたい、あなたの強み

こんにちは、楳林です。久しぶりの3連休で一息つきましたが、連日のイラク戦争のTVニュースに釘付けになっています。先週のエクササイズは「何度も聞きましたが、今、あなたの最大のテーマ、課題は何ですか?」でしたね。

「私の課題は『子育てをもっと大事に思えるようになりたい』ことです」(Sさん、26歳)。Sさんは結婚3年目で9ヶ月の息子さんを持つ専業主婦だそうですが、「子供が出来るまで、会社員時代と同じ給料を稼ぐことを目標に在宅で仕事をしていましたが、妊娠して仕事量を減らし、今は休業している」そうです。

Sさんは「今までの人生で『ちゃんと納得のいくまで成し遂げた』ということがなかったためか、子供を育てていても、『何かやらないと』と仕事を探したりして、その結果、子育ても仕事もおろそかになっている」というジレンマに陥っているそうです。

「自分が子供のころ、『何かに一生懸命取り組んでいる親であってほしい』と思っていたのに、今の自分はちゃんと取り組めていないので、焦っているのかもしれません」と反省するSさんは「今は、しっかり息子と向き合い、子育てをもっとも大切なこととして取り組んでいく」決心をしています。

ライフキャリアの視点から見たら、子育ても立派なキャリアの成長につながるし、「ちゃんと納得いくまで成し遂げたい」という長年の課題を克服するチャンスですね。

ところで、このところコーチングや知人からの相談ごとがいずれも、この「何を大切にするか」ということに関係しているようです。

人材派遣会社の1部門を任せられているNさん(32歳)は、今度、その部門を別会社化し、その経営を任せられることになったそうです。1年ぐらいは赤字覚悟だそうですが、ここに来て2つの悩みが出てきたそうです。

1つは自分のビジネスパートナーとの人間関係がなかなかうまくいかないこと。もう1つはいままでかなり犠牲して取り組んできたこともあり、「なにか、今の仕事に燃えてこない」そうなのです。その2つが絡み合って、「全て投げ出したくなる衝動に駆られる」こともしばしばだそうです。

いろいろ話しているうちに見えてきたことは、別会社化という大きなステップを踏むためには、恐れを越えて新たな目的に対する決意とコミットがいるということ。そして今までの犠牲感の中で埋もれつつあった、「自分が大切にしていることや自分の強みが何か」を再確認することでした。

「そういえば、このところ社内での仕事に追われ、自分の強みである人との交流など社外活動をすっかりお留守にしていたわ」ということに気づいたNさん、「新たなポジションで自分らしさを発揮していけば、ビジネスパートナーとの関係改善も出来るかも」と少し元気になったようです。

もう1人はある営業店の店長代理をしている女性のYさん(49歳)。いよいよ店長をという打診を受けたが、実は以前から同期の女性との関係の悪さで精神的に消耗している上、このまま店長になっても犠牲を続けるのは目に見えている。

「引き受けるかどうするか悩んでいるうち、今自分が本当に大切にしなければならないことをやる時では」ということに気づいた。もともと心理学を勉強し人材教育に興味があったのに、それを抑えていたYさんは、この機会に会社に自分の希望を伝えてみようと思い始めている。

問題や新たな課題に直面した時というのは、もう一度「自分が何を大切にしたいのか」を確認しながら、次のキャリア目標をしっかり立てるチャンスの時かもしれませんね。

ということで今週のエクササイズです。

●「今の仕事、職種で本当に大切にしたい、あなたの強みは何ですか」

第72回 ズルズル遅れの元にあるもの

こんにちは、楳林です。週末は愛犬のゴールデン(ゴン・パルファン)を連れて10km。のウオーキングを続けています。普段なら、なかなか続かないこのウオ-キングですが、犬の散歩だと長続きするので、彼に感謝している私です(笑)。さて、先週のエクササイズは「キャリアトランジションに直面したら、あなたが支援を求めるのは誰ですか?」でしたね。

「支援を求める相手は、世の中の事象といわば自分自身です。過去の経験から、自分の気づきに素直に従って行動した時、必要な情報がもたらされると信じています。書店、図書館で、そのとき自分に必要な本に出会えたり、メルマガの中にも心に迫るものを頂くことが出来、友人や見知らぬ訪問者の何気ない言葉の中にさえも重要なメッセージを受け取ることがあります」(Kさん、53歳)。

ただTさんは「自分に自信のない今は焦点が定まらず・・・・・その結果消極的な思考(?)になってしまっています。ここから抜け出すために『戦略的な対処法』があるのでしょうか」と質問されています。今回の3つのトランジション理論のうち、ウイリアム・ブリッジズの「トランジション」(創元社、1,800円)を読まれることをお勧めします。

「やはり家族です。今までもそうでしたが、家族の理解、協力がなければ思い切ってトランジションへと飛び込めません。そう考えると、私はとても家族に恵まれているなと思います。今度は家族に恩返ししなくては、と思っています」(Fさん、38歳)。

そうですね。再就職支援のカウンセリングでも、先ず自分のパートナーに状況をきちんと話して理解を求め、一緒に取り組んでいくことを勧めています。

Fさんは「長男が4月から私立の中学校へ入学し、今までの友達と離れ、彼も最初のトランジションに直面している最中なので、『あなたにもコーチングを行って、お手伝いしたい』と言ったら、ちょっとはにかんだうれしそうな顔をした」そうです。通常、コーチングやカウンセリングは家族、身内にはしないものですが(私も見事失敗しました)、コミュニケーションの機会を増やすぐらいの気持ちでやられてはどうでしょうか。

今回は回答がいつもより少なかったですね。多分、独身だったり、回りに適当な人がいなかったり、自分自身で対処している人が多いのかもしれません。こうした問題への対処の基本はなんと言っても自分自身でしっかり直面することです。周りにあまりに依存しすぎるのはよくありません。が、自分のことは、自分でわかっているようでわかっていないことがけっこうあるものです。勇気を持って信頼できる人にアドバイスを求める機会も作ってみてはどうでしょうか。

ところで、今回は最近の私の課題について紹介したいと思います。このところキャリアデザイン研修が相次いでいます。出張が多いこともあって、かなりハードであることは事実なのですが、1番の課題は、いろいろ企画していたことがズルズル遅れていることなんです(コーチがこれでは困ります)。その中でも大きいのが本を書くという私のプロジェクトYと自分たちのホームページを作るということです。

やりたいと思っていることが進まないということは、折に触れ自分を惨めな気持ちにさせたり、ストレスの原因になります。しいては現状でのメインの仕事にも影響が出てきます。10年以上ワークショップや研修のトレーナーやコーチをやっていて、よくわかったことは、「自分の課題が現場で表面化する」ということです。(ですから、トレーナーやコーチは人助けと同じくらい、自分のためにやっているという側面もあります)

先週、毎月1回参加している「アクションラーニング」のワークショップで思い切って自分の抱えている課題を話しました。アクションラーニングは問題提示者がその問題に関して実はエキスパートであり、解決方法を知っているという原理があり、メンバーは、質問によって、問題提示者自身が気づくというプロセスが生じます。

いろいろ状況説明と質問のやり取りがあって、膠着状態になった時、ポツンと1つの質問をしたのです。「あなたの最大のテーマは何ですか?」と。その瞬間に私の中に「3-5年後のキャリアビジョンが見えなくなっていること」という答えがスッと出てきました。

そうなんだな。そこがまた曖昧になっているんだな。それがズルズル遅れの元にあるんだな、とわかった私。不思議なことに週末のコーチングはクライアントがそれぞれ、一歩着実に、前進しました。遅れないように私も前に進む時のようです。

ということで、今週のエクササイズは。。。。わかりますね!

●「(あらためて)今、あなたの最大のテーマ、課題は何ですか?」

第71回 キャリアトランジション

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「レビンソンの視点から見直したとき、気づいたことはありましたか?」でしたね。今回は30代、40代の回答が目立ちました。

「私は昨年9月末、それまで8年間在籍した某私鉄会社を31歳で退職し、家業の電気工事屋を継ぐ予定で、現在中小企業向けの経営研修(1年間コース)を受けています。自営業の家に生まれ、以前から大企業組織には違和感を感じていましたが、本社の根拠のない“偉さ”や事業部間抗争、顧客より出世志向の企業風土などに愛想が尽き、本社への異動になって3ヵ月後に辞表を提出していました」(Mさん)。

Mさんは「本社異動直前の昨年3月末に行われた“30歳研修”でレビンソンの話を聞き、人生の転機を感じた」そうです。きっとその時に決めていたのでしょう。「実際に不動産開発(前職)から下請け工事屋(家業)への転職は難しいことを痛感していますが、現在通っている学校を『意識的に勝ち得たモラトリアム』として今後の人生を考えている最中です」というMさん、家業を継ぐというより、新しい業を起こす位の気持ちで取り組まれているのかもしれませんね。

「30代の焦燥感、自分の可能性が狭まってくる感じにぴったり当てはまっている感じがします」というのはITアウトソーシング会社で人事・総務担当のFさん(30歳)。「先日、転職先の最終面接に挑みましたが、どうもしっくり来ないというか、自分の中に違和感があり、こちらから辞退した」そうです。

「数ヶ月前までは、『1人で生きていけるだけのキャリアを持たなきゃ』とがんばっていたが、いざ転職の決断を前にした途端、『会社ではほどほどに仕事をして、余力を司会の仕事や勉強のために使うほうが、自分の求めている“働く姿”だ』ということに気づいた」Fさんは「転職願望は、自分の可能性を見極めることへの焦燥感から来る“悪あがき”だったのでしょう」と自分を笑えるようになったのは素晴らしいことですね。

プロジェクトYでコーチングに取り組んでいるTさん(38歳)は「20歳前後、30歳前後にもありましたが、今またトランジションの時期に来つつあります。今まで仕事が突き出た分、家庭をおろそかにし、長男にひずみが出てきた感じです。ここで長男ととことん向き合ったほうがいいと思うのですが、仕事も新たな目標があるので捨てられないし・・・・」というジレンマに立っているそうです。

「自分の感情中心で、長男の感情を大切にしていない自分が見える中で、今、自分の勇気、可能性を試せるし、自分を信じる、ということがどういうことなのか、じっくり考えていかねばならない」というTさん、仕事も続けながら、長男さんにコーチングを使ってみてはどうでしょうか。

さて、トランジションの3回目はナンシー・シュロスバーグの「キャリアトランジション(キャリア転換)」を紹介したいと思います。

ちょうど数年前、私がキャリアカウンセリングの講座で勉強中に彼女の著者が日本語に翻訳されて「選職社会―転機を活かせ『原題はOVERWHELMED(圧倒されて)』」が出版されたので、日本で彼女の講演を聴くことが出来ました。

この「キャリアトランジション(キャリア転換)」とは、、「人生はさまざまなキャリア転換の連続で、それを乗り越える努力と工夫を通してキャリアは形成される。だから、、それを上手に自己管理(キャリアマネジメント)できるように行うことが大切だ」というものです。

彼女は、まずトランジションの起こり方を

[1] 予期していなかった(していた)出来事(解雇、失業、昇進など)
[2] 自己決断して起こした(しなかった)出来事(転職、異動、結婚など)
[3] 人間の発達プロセスの中で起きた(老化、定年退職など)

の3つに分類し、その影響度、タイミング、持続性、自己コントロールという4つの視点を踏まえて分析していきます。

たとえ突然の出来事に困惑、呆然としたとしても、少しでも適切な対応を冷静に取れると彼女は言います。具体的には4つのリソース(状況がどうか、自分自身の理解、周囲の支援、転機を変える戦略)をしっかり点検し、活用することによって、リストラといったライフキャリアの危機すらも、キャリア形成の好機として捉えていくのです。

私は、シュロスバーグの視点に対して、当初は余りにクールでシステム的な感じがして抵抗感がありました。しかし、日本ではまだどの世代もリストラなどのトランジションに振り回されている現状を見るにつけ、「キャリアを単なる職業ではなく、人生というもっと深い意味で捉える中で、トランジションを好機と見る視点と戦略的な対処法が必要だ」という思いから、もっと日本で取り上げる時だと痛感しています。

ということで今週のエクササイズです。

●「キャリアトランジションに直面したら、あなたが支援を求めるのは誰ですか?」

第70回 世代別のトランジション

こんにちは、楳林です。このところキャリア&ライフデザインの研修が相次ぎ、研修所生活が増えています。

さて、先週のエクササイズは「あなたが体験中(した)のトランジションを振り返った時、その体験を自分で用意したと思うことはありませんか」でしたね。1通紹介します。

「1年前に県地域づくりコーディネーターの職に就き、NPO団体の理事として活動を始めました。でも8月くらいから仕事が手につかなくなり、出勤拒否になり、訳もなく涙が溢れたり、の状態が続き、11月末に退職しました。しかし、今振り返ってみると、あの苦しさは、周りの価値観などに合っていない自分から来ていたのだと気づいたのはとても大きいです」(T さん、32歳)。

Tさんはさらに、「実は昨年6月、『人生に関わりたい』という気づきと『そこにいる理由がボロッと落ちちゃった』感じがあり、その後しばらく何気なくいたのですが、あのときにその後のボロボロ体験も決まっていたのかもしれません」と語っています。

そうです!人は子供の時から一瞬に選択します。でも次の日からケロッと忘れますが,一度選択したことは着実に進みます。その選択したときの思いがどうも自分のミッションとかヴィジョンに近い感覚なのです。なぜ忘れるかというと「そんな大それたことをしてもまた痛い目にあうから、やめとけよ!」というエゴの声にかき消されるからです。

Tさんは退職後、キャリアカウンセリングとコーチングの勉強を始め、今年1月、学生対象の「価値観に気づき、現実社会を乗り越える視点転換の練習」のようなワークショップを企画・実施したそうです。「収入を除いては、今とても充実し、生き生きしています」と言うTさん、本当の「始まり」が近づいている感じですね。

今回はTさん以外にもとても深みのある回答が幾つかあり、皆さんに是非、紹介したかったのですが、紙面の都合で別の機会にさせてもらいます。残念ですが・・・。

ところで今回のトランジション(過渡期・転換期)はレビンソンの発達段階から見た4つの「過渡期」という視点を紹介したいと思います。

第1段階は主として20代前半、社会に出る前後の過渡期です。学生から社会人になる中で「一体、自分は誰か」という問いに直面しながら、劣等感とか、無力感、離人感に悩まされるそうです。私の場合も孤立感に陥ったり、人と話すのがとても苦痛だったものです。

第2段階は30歳前後。結婚とか、会社の役割といった責任感や制約条件が増える中で、自分の可能性が狭まるような感じとか焦燥感を感じるときです。私自身は結婚前は周期的に転職願望が出ていましたが、結婚した途端、そういった焦りがしばらくは影を潜め、仕事に結構燃えた時期でした。

でも最近の30歳前後の独身の方に接してみると、第1、第2段階が重なって押し寄せている感じがします。

第3段階は40才前後。レビンソンは「この時期が最も大きく、本当の自分らしさの模索・葛藤を通じて、真の自己へ統合へ向かう段階」と位置づけています。よく中年の危機と言いますが、今まで未完了にしていた仕事、家庭の両面でのギャップ、歪みが一気に浮上します。すでに紹介しましたが、私は第2段階が未消化だった分、この段階が一番大変でした。

第4段階がリタイヤ前後です。定年を無事迎えたとしても社会での役割を喪失し、孤立感や引きこもりに悩まされ、新たな生きがいを見い出さないと心身ともにあっという間に老います。50代でリストラに遭遇した人の中には、それまでの人生がまあまあ順調だった人ほどあらゆる課題が重なって危機的状況に陥る人も少なくありません。

かなり教科書的な紹介になってしまいましたが、世代的なトランジションがあり、誰もが直面する課題があるということを理解しておくことが大切だと思うからです。理論はあくまで仮説に過ぎませんが、その理論との比較で自分の体験をチェックすることによって、今たとえきつい体験や混乱の中にある方でも、その意味やメッセージがわかればよりスムーズに超えていけると思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「レビンソンの視点から見直した時、気づいた事はありましたか?」

第69回 トランジションの隠れた選択

こんにちは、楳林です。日増しに春が近づいてくる感じですね。先週のエクササイズは「あなたが今、自分の周りで何らかの転機、危機に直面しているとしたら、そこにどんなチャンスを感じますか?」でしたね。何通か紹介します。

「米国でようやく生活や仕事に慣れたところで、ある日突然主人を亡くしました。人生の目標を失って一旦日本に帰りましたが、『このまま私の人生が終わってもいいのか』と数ヶ月間自問自答した後、米国に戻りました。まもなく主人の6回目の命日ですが、今はそのおかげで自立し、独立心が養われ、ちょっとやそっとのことで動じなくなりました」(Sさん)。

Sさんはこの経験から「どんな転機や危機も、それらは後に何らかの力になる、決して無駄になることはない。必要な試練と思い前向きに受け止めることにしています。『また、チャレンジするチャンスを与えてくれてありがとう』って思うと、いやなことも何とかなりますよ!」。

「自分の勇気、可能性を試せるし、自分を信じるというチャンスですね」というのはTさん(コンタクトセンターのスーパーバイザー、38歳)。

Tさんは「2年前から契約社員として働いていた会社との契約が切れるときに、これから設立するA社に来ないかという誘いがあった。仕事の内容は魅力的だったが、いつ設立されるかもわからない。生活もあるし他社もいくつか受けながらまっていたら、B社に5年契約で入社することが決まった。しかしたとえA社が立ち上がらなくても、自分が本当にしたいと選んだのだから後悔しない、自分の可能性を試したいと、B社をお断りし待つことにした。5ヶ月の待ち期間はかなりの辛抱とストレスがあったものの、あのときの決断は間違っていないと今は確信できる」と言います。

“待機”というのは、自分から行動を起こせないだけに、時にはとてもつらいものですが、意識を変革する上では実は強力な方法です。受け取るとか自分を信頼できるというのはまさしく最高の成果だと思いますよ。

ところで人生の転換期(トランジション)とかキャリア転換についての質問もいくつかありますので、私自身も体験し、その前後に学んで役に立った3つの理論を1つずつ3回にわたって紹介したいと思います。

以前書いたことがありますが、Sさんと同様、私も40代前半に突然、7歳の息子を病気で亡くし、仕事にも意欲を失って23年努めた新聞社を退職、2年間のブランクの後、再就職した研修会社で出会ったのがウイリアム・ブリッジズのトランジション3段階論です。

第1段階は「何かが終わる時」です。離婚、リストラ、失恋、最愛の人を失うといったネガティブな体験だけでなく、入学、結婚といったお祝いするような体験も含まれます。それまで慣れ親しんだ人間関係や場所や、環境を失ったり離れたりして目標や意欲を失なったり、混乱、恐れや怒りなどの感情を体験します。

第2段階は「ニュートラルゾーン」です。昔の現実の終わりを受け入れつつも、次の方向が見えないまま、まるで宇宙の孤児のような寂寥感、空虚感にしばしば襲われます。私がブリッジズに出会った時で、おかげでその後起きてくる内的変化やプロセスに直面することができました。

この段階を抜ける方法が実は自分のミッションやヴィジョンを見つけることだと気づいた時、人生で直面するトランジションの深い意味や意義を多少なりと理解できるようになったんです。

そして第3段階は「何かが始まる時」です。何かが具体的に始まる前から、なんとなく予感できます。出会いとか再就職とか、をです。私もそのころからキャリアカウンセリングやコーチングを勉強するようになりました。50代に入ってからも何度かミニ・トランジションに直面しますが、それを新たなチャンスとして受け止めれるようになったと思います。

もう1つ、体験で気づいたことは、リストラとか失恋とか「何かが終わる」数ヶ月前に、実は潜在意識で「終わる」を選択していたことでした。つまりトランジションすら、自分のどこかで選択している、ということなんです。何のためにトランジションを選択したのか?それに気づけば、もっと深い転機の意味が見えてくると思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが体験中(した)のトランジションを振り返った時、その体験を 自分で用意したと思うことはありませんか?」

第68回 ある日突然・・・

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「自分にミッションがあるとしたら、それは何だと思いますか?」でしたね。何通か紹介します。

「私が今漠然と思うのは、『あなたの存在は、かけがいのないものだ』ということを、音楽(ピアノ)を通して生徒に伝えてゆけたら・・・と言うことです。それには先ず、私自身が、自分の存在を祝福し、尊いものだと思っていなくては、伝えることは出来ないと感じています。これからの課題です」(Mさん)。

Mさんは「5歳からピアノを習い始め、以前ピアノの講師をしていましたが、自分の抱えている問題で、レッスンや生徒との関係に行き詰まり、教えるのをやめてしまい、何年も彷徨っていました。最近あるワークショップに参加して「やはり、私のビジョンは音楽だ!」と気づき、再びやろうと決心した途端、5歳の甥のレッスンを頼まれました」というのが自分のミッションに気づくまでの経緯だそうですが、不思議ですね。甥っ子さんのレッスンをしながら、あなたの5歳の時の気持ちを思い出してください。

「子供たちに夢を持って生きること、それを諦めない事を身をもって教えていくのが私の使命かなと思っています。」というTさん。現在は「“曲作り”とスキーを馬鹿みたいにやっている」そうですが、同時に「わからないこと、知りたいことを1つ1つクリアーしていく、そういう楽しさを子供たちに伝えたいです」とも語っています。

Tさんは派遣で働きながら、検定を受けたり、スキルアップの講習を受けているそうですが、「そのためだけに勉強しているのではなく、一人の女性として、いつかは『これでよし!』と思えるようになりたい」そうです。自分の5年後のありたい姿を描いてみてはどうでしょうか。

「今の自分にとってのミッションは『逃げださないこと(諦めないこと)』の一言に尽きると思います」(Sさん)。「仕事上でのスキルを身に付ける、私的には結婚などに対し、『ダメだから、無理だから』と理由づけしては諦め、逃げていた」というSさん。

「逃げない」というのはとても意味深い言葉ですね。本当は何から逃げ出さないことを決めたのですか?

「私にとって、科学は生活の基の一部になっているので、科学とどう関わっていくのかが、私の人生の使命かな。それと身勝手だった海外協力時代の償いとして、子供に元気になってもらいたい、役に立ちたいと思います」(Yさん)。科学する心と「何故?」と質問攻めの子供って、どこかでつながりませんか?

ちなみに私のミッションは「一人一人のかけがいのない個性や能力を見い出し、表現していくためのサポートをする」ことだと思っています。最近、みなさんの回答の中に、それぞれのユニークさが現れてくるのを感じ、嬉しく思っているところです。

ところで先週、私自身は「突然、現職からグループ内転進あるいは社外転進を突きつけられ、混乱、動揺している」今までで最もシビアな中高年のキャリアデザイン研修を担当して、私も体調を崩したり、同僚が突然、大病で入院してショックを受けました。コーチングのクライアントは愛犬を亡くして落ち込んでいる報告までありました。

ある日突然のリストラとか病気、愛する対象を亡くすといった、予期せぬ不幸な出来事と言うのは、人生の転機(トランジション)の中でも、とてもきつい体験です。ただ日本ではまだ、トランジション体験に対する理解が十分でないため悲しみ、怒り、混乱、絶望感、失意などの深い感情に直面するよりは、えてして周りへの恨み辛みになりがちです。

たまたまミッションをテーマに取り上げている中での出来事ですが、実は大きなトランジションは、その人のミッションとかビジョンとかと、深いつながりがあるのです。危機はまさしくピンチですが、取り組み方次第ではビッグチャンスにもなるのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが今、自分の周りで何らかの転機、危機に直面しているとしたら、 そこにどんなチャンスを感じますか?」

第67回 ミッション(使命)について

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「キャリアを考える上で大切にしているキーワードを教えてください」でしたね。何通か紹介します。

「現在の私が一番大切にしていることは『自分が本当にやりたいこと』です。30代初めまでは『とにかく何でもよいからキャリアをつけよう』と考えていましたが、いつも中途半端に終わっていました。それは本当にやりたいことではなかったからだと思います。といって本当はまだ『本当にやりたいこと』が漠然としか見えていないのですが・・・」(Sさん)。

Sさんは「あたかもあるかのように、それに照らし合わせて考えるようにしています」と言っています。なるほど、多分感じてみることが大切でしょうね。

「『解決できない問題はない』です」と言うのはIさん(設計、30歳)。

「私はとても失敗が多すぎて、いちいち落ち込んだり悩んだりしているとキリがないからかも知れませんが、失敗した時点で最もよい方法を考えたり、相談したりして、とにかく具体的に対処すればほとんどのことは何とかなり、次の経験に生かせると思っています」という理由からだそうです。

「『”あなた“にお願いしたい』です。肩書きや所属部署の名前で受け取るのではなく、○○さん、あなたにお願いしたい、と自分の名前で仕事が取れるようになりたいです」(ANさん、某通信教育会社勤務、32歳)。専門性とかプロフェッショナルと言う感じがしますね。

「成功・失敗の観念に人一倍とらわれやすいので、『成功』『優秀』『エリート』というキーワードが出てきますが、それでは寂しいです。『Win-Winの関係』『信頼』『社会のためになる/お客様のためになる』にしたいです」(Nさん)。

キャリアデザインの研修中によく受講生の方から「キャリアって何ですか?」って聞かれますが、皆さんの回答を読んでいるとやはりキャリアとか人生に対する理解、姿勢、態度がそのまま出ているのかなーと思いました。

キャリアを説明するのは本当に難しいですね。狭義のキャリアは「職歴、経歴、進路とか業績」を言いますが、広義というか現在では「単に職業・職務を意味するだけでなく、個人の人生・生き方とその表現」をも意味するようになっています。

「キャリアは、個々人が、具体的な職業や職場などの選択・決定を通して、時間をかけて一歩一歩努力して進んでいくのであり、創造していくもの、生涯にわたって展開されるものである、従ってキャリアは個々人にとってユニーク(独自)なものである」(渡辺三枝子・筑波大学教授)

というのが私にとってかなり納得できる定義ですが、人に対して同じ表現では伝えにくいですね。

さて、先週の私のテーマはミッション(使命)ということでした。その理由の1つは帰還直前に空中分解して7人の乗務員が死亡した米スペースシャトル・コロンビアの事故でした。そして、私個人と仕事の場で、偶然、ミッションステートメントを考えていたのです。

ミッションも難しいですね。その人の存在目的、あるいは存在意義、文字通りそのために自分の命を使うもの。自分の生涯のストーリーと言うか、地図という言い方もあります。

事故原因とか色々あるでしょうが、「大空に散ったシャトルの夢」というニューズウイーク(日本版)の記事を読みながら、私の勝手な思いかもしれませんが、「世界の今という困難な時期に、インド人のカルプナ・チャプラさん、イスラエル人のイラン・ラモンさんら7人の乗員の1人1人が家族と自分のキャリアを愛し、そして事故を通して、国を超えて“地球の平和”というミッションを伝えるべく集まり生きたチームだった」という思いがしました。ご冥福を祈りたいと思います。

私の発想はそんな風に、自分自身や周りで起きているテーマと社会全体の出来事を関連させて見るようにしています。だから、皆さんの回答を通じてのメッセージも私自身を振り返るとても大切な機会なんです。

ということで今週のエクササイズです。

●「自分にミッションがあるとしたら、それは何だと思いますか?」

第66回 大切にしたいあなたのものさし

こんにちは、楳林です。先週は福島市に出張しましたが、寒波の直撃を受け、久しぶりに“しばれる”ような寒さや地吹雪を体験しました。先週のエクササイズは「あなたにとってこれまでの失敗や挫折の体験で役に立っていることがあったら紹介してください」でしたね。何通か紹介します。

「アメリカ系の大学で授業が厳しく、成績も辛く、おまけに卒業が遅れ、水面下で持ち上がっていた通信社への就職の話もなくなってしまいましたが、自分に向いているものを必死に探しまくったことで幅広い教養が出来、面白い仕事をするために努力するようになりました」(Mさん、四捨五入すると30歳)。

Mさんはこれまでに清掃、販売、編集、経営企画、議員秘書、経理など10近い職種を経験しているそうです。「せっかくであった理想の上司が突然退職してしまうなど挫折の連続でしたが、そのお陰で会社に頼らず、ことの本質を見抜いてどこでも通用するという、昔の目標をかなえつつあると思います」。

現在は経理や広報を経営的な観点から見られるシステム屋さんで見習い中だそうですが、将来は自ら起業してもよさそうな感じがします。10年後くらいのビジョンを描かれてはどうでしょうか。

もう1通。「失敗と思っていることは、学生時代に海外留学や旅行をして見聞を広めておかなかったこと。未練が残っているので近いうちに計画しています。“挫折”に関しては人間関係ですね。他人の心を思いやることが苦手なのでいろいろ失敗しますが、最近心に刻んでいるのは『私に何かをもたらすのは、人である』ということです。まず身近にいる人を大切にしないと・・・・」(Iさん)。

Iさんは雑誌の編集をされており、「本格的に創刊準備となってきて、忙しさも今までの2倍という感じです」というように久しぶりの回答ですね。「今年は仕事とフラメンコに集中して頑張っています」ということで安心しました。私も気が多いほうですが、やはり絞込みが大切ですね。

ところで、先日、有楽町駅近くの国際バザー展を覗いているうち、ネパールの商品を飾っているところで1冊の本が目に入り、思わず買ってしまいました。「ネパールー旅の雑学ノート」(著者は平尾和雄氏)という少し古い本です。実は平尾氏(君といったほうがいいでしょう)は、私の大学時代の同級生なんです。

同じ社会学科でも、私は社会学、彼は文化人類学でしたが、クラブは同じワンダーフォーゲル部の仲間でした。私ものんびり屋でしたが、彼は一種、ボヘミアン風で親しいというよりはちょっと気になる存在でした。

大学卒業後、彼は普通の会社に就職しましたが、1年足らずで退職、そのままネパールへと旅立っていきました。5年位して「ヒマラヤの花嫁」という本が出版され、ネパールの女性と結婚し、タトパニ村で宿屋を開業している話が出ていました。その5,6年後、ネパールの事情で、奥さんのスルジエさんと一緒に帰国した直後に一度、仲間と一緒に会ったことがあります。

彼はちっとも変わっていませんでした。一時は日本に住むことも考えたそうですが、スルジエさんが日本の風土に合わないとかで、再びネパールに戻りました。スルジエさんと生きることが彼の選んだ人生だという感じがしました。その後、風のうわさで彼の消息を聞く程度でしたので、今回、7年前に出版された、この本を懐かしく読むことが出来ました。

今回、彼のことを取り上げたのはエピローグの一文を紹介したかったからです。

「僕が一番伝えたかったのは、雑多な情報や知識ではなく、その見方だったような気がする。自分の属する文化がフツーでまとも、よその文化は特殊で異常、という座標軸を取り外さない限り、異なる文化に触れても何も見えてこない。まして『進んでいる・遅れている』とか『優れている・劣っている』とかいったゆがんだものさしをあててしまったら、さまざまな無尽蔵の宝の山を見逃してしまうことになると僕は思う。」

前回、私は「キャリアには、成功も失敗もないのです」と書いた直後だっただけに、彼をとても近く感じました。現在はフリーのジャーナリストをしているそうですが、ネパールが彼のライフキャリアの泉のような気がしました。

ということで今週のエクササイズです。

第65回 何かの終わりや挫折から学ぶこと

こんにちは、楳林です。相変わらず風邪がはやっています。みなさんも注意してください。先週のエクササイズは「あなたが直面している課題を、少し上空から見たとき、どのように見えますか」でしたね。何通か紹介します。

「直面している課題を前に、きっと蝙蝠みたいにあっちへふらふら、こっちへふらふらと飛んでいるように見えます。課題に対する選択肢がいくつかあるのに、はっきりと決めずに先延ばししている自分がいます」(Sさん35歳)。

Sさんは「現在のフリーでは先の見通しが立たず、かといって転職しても実力、年齢的にやっていけるかどうか不安」なことから「何社かの紹介はあるのにチャンスを逃がし、紹介者の行為も無にしています。渡り鳥みたいに、ここと決めたらまっしぐらに飛んでいけるようになりたいです」とも語っています。

俯瞰のスキルを使ってどこを見るのでしょうか?。Sさんの「蝙蝠のようにふらふらしている」「渡り鳥のようになりたい」というのは気づきの入り口ですね。蝙蝠は超音波を発しているし、渡り鳥は磁力線を感じています。Sさんも自分自身の内なるキャリアコンパス(羅針盤)を信頼して、自分の進路を聞いてみてはどうでしょう。「どっちの方向を指しています?」。

もう1通。「狭い範囲でバタバタしているように見えます。身近な課題をすぐ他人に転嫁してしまうきらいがあります。また他人の悪いところをよくしてあげようとして余計バタバタするようになっているようです。もっと広い範囲を見るよう心がけて自分の見方、行動を変えることが肝要かと思っています」(Kさん43歳)。

Sさん、Kさんともシステムエンジニアだそうですが、仕事だけに限定せず、もっと物事や自分自身についてもシステム的に全体をつかみながら行動してみてはどうでしょうか。俯瞰のスキルは全体像を捉えて、異なる視点から見るきっかけを与えてくれますが、とても直感が大切になると思いますよ。仕事にもつながりませんか?

ところで先週の最大のトピックは私にとっても貴乃花の引退でした。私も少年時代から先代の若乃花以来のファンでしたから。一昨年の夏場所で右ひざの怪我を押して土俵に上がり、決定戦で武蔵丸に勝って優勝して以来、1年4ヶ月ぶりの土俵となる昨年の秋場所で復活したかに思えましたが、1場所全休後の初場所中での引退はとても残念な気持ちでした。

「遅すぎた引退」とか「まだ30歳で早すぎた。ちゃんと体を直せばまだまだ出来たはず」など、いろんな見方がされていますね。

これをキャリアの視点から見た時どうでしょうか。プロスポーツでの引退はあっても、キャリアから見たら、1つのステップが終わったに過ぎません。普通のサラリーマンなら30歳というのは、これから自分の専門領域を確立し、深耕する段階ですね。

貴乃花もこれから相撲部屋の親方として若い力士の育成やマネジメント、さらに相撲協会の幹部としての長い道が始まるわけです。国技という特殊で年功制の強い世界であっても、企業社会同様、これから組織の改革やグローバル化が進むのは避けられないと思います。これからどんなリーダーになっていくのか、興味があります。

そんな視点で見たとき、1年半あまりの膝の故障で出場できない葛藤や、初場所での全盛期とは比較にならないもろさ、引退会見で口を開くまでの沈黙といった一種の挫折体験は、とても彼にとっては、貴重な経験であるように思えるのです。

キャリアには成功も失敗もないのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとってこれまでの失敗や挫折の体験で今役に立っていることは あったら紹介してください」

第64回 俯瞰(ふかん)のスキル

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたにとっての”思いやりのあるわがまま“って何か、ちょっと挑戦してみてください」でしたね。

今回は回答の多くが内容が深く、いずれも「うーん」と考えさせられるものばかりでした。

まず、1通のメールをご紹介します。「自分のゴールをつきつめること、諦めないこと、正直になること、自分に言い訳をしないこと。自分の最善にしがみつき、やり抜くことだと思います。それには大変な決心と責任がついてきます。でも自分がベストを尽くし、自分のために幸せにならない限り、周りの人を幸せにしていき、思いやる余裕は出てこないと思うのです」(Hさん、35歳)。

Hさんは日本の法学部でアメリカ法を学び、金融、メーカーでの営業を経て、元々望んでいた米ロースクールへ留学。マスターを修得後、無職になりながら現在もアメリカで弁護士資格取得を目指しているそうです。

「学位はとりましたが、現実は甘くなく、仕事はなかなか見つかりません、違う職種で、仕事を見つけて落ち着きたい気持ちはものすごくありますが、でも自分の選んだ道にしがみつこうと思います。あきらめず、わがままになり、アンテナをフルに張って、戦闘態勢でいようと思います。きついですが」というHさん。きっと努力は、実ると思います。頑張ってください!!

また、Hさんには、いくつか質問が浮かびました。「1年後、2年後、さらに5年後の自分をイメージして見てください」そして、「何をしていますか?どんな場所で、どんな服装で、どんな仕事と生活をしていますか?休日はどんな楽しみ方をしていますか?」「そこから何が得られていますか?経済的な面、精神的な面、健康面、家庭生活では、人間関係では?どんな充実感が得られていますか?」「そのとき自分が大切だと思うキーワードは何ですか?」なんて質問です。

そして、未来の自分に尋ねてみてください。「あなただったら、現在の状況をもっと楽に超えていくために何をしますか?」。こんな風にイメージを広げていくことはとても大事なことなのです。Hさんだけでなく、是非読者の皆さんも自分に当てはめて考えてみてください。

さて、もう1通。「思いやりのあるわがまま、と聞いて思い出すのは社会人になってから、医学部に入りなおして、今もなお医者になるべく励んでいる友人のことです。彼自身も、そのことはある種のわがままであることを認識していますが、それでもがんばっているその姿に周りは応援せずにはいられません。そしてわがままの方向性が明確で、その先にきっと達成されるという責任がつくのと、達成されればきっと良いものが出来る、みたいな感覚が共有されているのかも」(Aさん、30歳)。

Aさんは、ご自身のこととしてデッサンについて書いてくれています。それも、面白いので取り上げさせてもらいます。「私が絵を好きになったのは、とっても変わり者の美術の先生にデッサンを学んでからです。対象物の構図を決めて、配置を決めて、白と黒でとらえたり、面でとらえたり、とだんだん形になってきたら、一度すべてを消して、また違ったアプローチで描き進めたり・・・。この手法は目からウロコものでした。自分のキャリアをこのデッサンに置き換えてみると、大局→細部→大局を繰り返しているようです」

なるほど。さて、Aさんのメールを読みながら、私はコーチングの「俯瞰のスキル」を思い出しました。これは、たとえば、苦しい状況に直面した時、例えば鳥になったつもりで、上空から下界を見下ろしてみると、物事の全体像や人生のプロセスが、渦中に居た時とは異なる視点から見るきっかけを与えられるというものです。

Aさんの美術の先生は「紙の中に対象物が埋まっていて、それを掘り起こすように描きなさい」とも言っているそうです。これはちょうど「俯瞰によって、厳しい状況の中に、時には自分のビジョンや生き生きとした人生のイメージを再び思い出す」ことに近いような気がしたのです。

俯瞰のスキルは、「メタ思考」にも似ています。これは「自分が今、何を、どのように考えているかをより高い視点で見る」ことです。今の仕事で悩んでいたり転職などキャリア上の問題に直面した時、こうしたスキルを使って視点を変えてみると、けっこう楽に越えることが出来ると思うんですよね。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが直面している課題を、少し上空から見たとき、どのように見えますか」

第63回 デザイン・ア・ドリーム

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「この10年を振り返った時、その先にある、あなたにとっての今年の課題は何ですか?」でしたね。今回は30歳の方からの回答が目立ちました。ちょうど節目なのでしょうね。何通か紹介します。

「10年前のちょうど今頃は、米国の大学に入学し、2学期が始まる直前。周りの反対を押し切り、アメリカ手話という特殊でつぶしの利かない科目に選考を決めました。この数年、日本でアメリカ手話の教室を主宰し、1つのヴィジョンを実現しました。今年の課題はパートナーシップにコミットすることです」(Nさん)。

20代のうちに1つやり遂げるって素晴らしいですね。「自分ひとりでやることは得意にしていますが、2人一緒にヴィジョンへ向かうことに挑戦します」というNさん。小学校時代の2人3脚競争を思い出してみてください。どうでしたか?その感じを仕事でもパートナーシップでも楽しんでください。

「20歳での就職から始まり、恋愛、結婚、家の新築、子供との離別、離婚・・・確執の深かった両親からの自立の10年でもありました。『イヤなものはイヤ』と自分の気持ちを素直に、きちんと伝える、という単純なことを知るのに10年苦しみました。今年の課題は、ありのままを受け入れ、相手も受け入れること、でしょうか」と言うFさん。新しい彼と「今年結婚が決まりそう」だという事です。

昨年、科学系博物館でボランティアを始めたYさんは「この10年間、あわただしく転職を繰り返し、挫折や諦めばかりでしたが、今年は相談したり一緒に夢を語れる友人との時間を大事にしていきたい」と語っています。

30歳以外の方では、ご無沙汰していたSさん(35歳)から久しぶりの回答です。「昨年7月に会社が倒産、ごたごたが続いて回答する余裕がありませんでした。フリーで何とかやっていますが、これまでを振り返ると、“逃げと言い訳”の仕事人生でした。ですからこれからの課題は、『再就職や結婚、将来どうしたいのか、から逃げないこと』だと思っています」。そうでしたか。大変だったですね。今年はチャレンジの年ですね。

みなさんの10年。初めての体験ばかりを手探りで生きて来たことが、いずれもひしひしと伝わってきました。失敗しようと成功しようと、このプロセスは皆さんのライフキャリアの宝になると思いますよ。

ところで正月早々、あるTV番組での発言が私をハッとさせました。「デザインとは夢を実現する手法ですよ」。そうなんだよ!!でもこの人は一体、どんな人なんだ。川崎和男さんという工業デザイナー。うかつにもこれまでまったく縁がありませんでした。

早速、インターネットで調べて驚きました。すごい人じゃないか!!日本を代表する国際的デザインディレクター。若いときの交通事故で車椅子の人生、しかも心臓病を抱えながら日本のデザイン界の頂点にいる人。そのハンディを逆手に取った車椅子、人工心臓から眼鏡、時計などあらゆる商品を独創的なデザインの対象にしているのです。

早速、著書の「デザイナーは喧嘩師であれ」「ドリームデザイナー」という本を購入、一気に感動しながら読んでしまいました。今年も良い出会いで始まりました。

キャリアデザインの研修が今の私のメインの仕事。キャリアデザインというのは職業生活を通じた自身のキャリアに関して、ありたい姿(ビジョン)、何を大切にし(価値観)、いつまでに、どこで、どんな仕事をしていくかを計画、設計することです。でもデザインするっていうことは、「それが私の生きざまだ」ということを再認識させられました。

デザインに関する川崎さんの言葉をいくつか紹介すると、「自分自身をデザインし直さないと、一生負け続ける」「デザイナーの『命』を『気持ち』に変えて、『形』に変えて、命がけでやっている」そして『デザインというのは、自分のわがままな発想を、社会から『これは思いやりのあるわがままなんだな』とおもってもらえるかたちにかえてあげること』。

川崎さんによると、「わがまま」というのは「我が」と「まま」に分かれる。「我が」は自我、「まま」は「ままになる」(自由になるよ)、つまり自我の自由性が「わがまま」ということになる。「わがまま→思いやり」というのがデザインだそうです。発想の自由とエネルギー源がある。子供の世界ですね。よくいう「わがまま」だけではデザインがないともいっています。

一人ひとりがキャリアのデザイナーになる時代に来ていると思いませんか?

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとっての“思いやりのあるわがまま”って何か、ちょっと挑戦 してみてください」

第62回 いも虫から蝶へ

新年おめでとうございます。楳林です。年末年始どのように過ごされましたか。私は広島の実家で3日間のんびり過ごしたり、「今年をどんな年にしようかな」と考えながら、そろそろ仕事の準備を始めたところです。

ちょうど1年前、年の初めにあたって私は2003年は「ライフキャリア元年」と位置づけました。これはキャリアと人生を切り離して考えるのではなく、たとえば個人が生涯学習とか人生80年時代に取り組む中でキャリアを考える時代の幕開けという意味を込めていたわけです。

その後、私が関係する企業研修でも「ライフキャリアデザイン」というプログラムが着実に増えてきています。経済環境は新卒の就職難とか中高年のリストラといった厳しい状況が続いていますが、それも人生上遭遇する予期せぬ出来事として受け止めていく中でキャリアは形成され開発されていくように思えます。

正月早々、古い友人のSさん夫妻の訪問がありました。といっても私達夫婦よりはずっと若く、ご主人が40代前半、奥さんは30代半ばといったところでしょうか。私が感心するのは、ご主人はコンピューター関連会社でソフト開発の技術者ですが、結婚以来ずっと2人でカウンセリングや心理学の勉強を続けていることです。

最近は2人でリアリティセラピーのワークショップに参加しているほか、勉強中のフォーカシング,マイクロカウンセリングなどの話題が次々に出てきます。今の仕事から、どうやって「将来は2人でカウンセラーになる」というキャリアチェンジを実現していくか、一生懸命取り組んでいる姿勢が伝わってきました。

私が「新聞記者から転職して今年が10年目、何か新しい始まりの時だね」という話をしたら、彼らも「私たちも結婚10年目、転機の年になりそうですよ」。そういえば年賀状の何通かでも「結婚10年目」とか「海外生活10年目」という知らせがあったのを思い出しました。みなさんにとって何か10年目のテーマというのはありますか?

ところでこの休み中、1冊の本を夢中になって読みふけっていました。バーバラ・マークス・ハバードという未来派の女性運動家が書いた「意識的な進化ー共同創造への道」という本です。

バーバラさんの本の中で面白い話があるので紹介したいと思います。それは私たちの状況を「いも虫から蝶への変化」に似ているという視点です。いも虫が繭を作るときには、先ず成虫原基という組織が発生して、まだ形成されていない蝶の青写真を形にしようとする。しかし、当初はいも虫の免疫システムがこれを異物とし攻撃しますが、ある段階で成虫原基が成虫細胞になると、新しい雛形を作り、古い免疫システムは停止し、いも虫の体は蝶の形に変身していきます。

いも虫から突然蝶に変身していくと思っている方もおられるでしょうが、実際には、長い間、さなぎの状態がありますね。何だか自分たちも長い間、「さなぎの状態にいたのでは」という思いがこの10年という月日を振り返った時に強く感じたこともあって、バーバラさんの本を紹介させていただきました。

ちなみにバーバラさんの本のテーマはソーシャル・ポテンシャル・ムーブメントを伝えることです。かって人間の欲求段階を説明したアブラハム・H・マズロー らが人間はより大きく成長できると言う考え方に立って「ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント」を展開しましたが、さらに「すべての人々が人生の目的と意味を見つけていく共同体の実現」を目指そうという視点です。

現在の経済・社会システムは世界的な環境汚染、飢餓、貧困、経済不況などに直面し続けています。その中で絶えず新しい教育とか社会システムが浮上しますが、復古的で保守的なやり方、つまり古いいも虫の免疫システムによって攻撃され、依然古い構造を維持しているのが現状だというわけです。しかし、その状態はもしかしたら「いも虫から蝶」への生みの苦しみなのかもしれませんね。

1人1人の個人も組織、社会も案外似たような状況にあるのかもしれません。そんな思いを持ちながら新しい年が始まりました。

そこで新年最初のエクササイズです。

●「この10年を振り返った時、その先にある、あなたにとっての今年の課 題は何ですか?」

第61回 1年を振り返って

こんにちは、楳林です。先週の今年最後のエクササイズは「なんと!」61回を通じて初めて回答ゼロを記録しました。でもこれは「今年1年の振り返りにページを割いてください」というメッセージだと私はポジティブに解釈させていただきます(笑)。

なお、来年のプロジェクトY を進めるにあたって、以前紹介した枝廣淳子さん(「朝2時起きで何でも出来る」の著者)のバックキャスティングの3つのステップを参考にすることをお勧めします。

(1) 理想を自由に描いてみるー「現状はどうか」「今どんな問題があるか」をひとまずおいて、「先ずどこへ行きたいか」をしっかり描く。
(2) 何が出来たら、その理想像が実現できるか
(3)(2)が出来るようになるには、具体的にどうすればよいのか(行動計画)

さて、「キャリアコーチング」を通して、私自身の1年を振り返ってみたいと思います。

一昨年の10月中旬から「キャリアコーチング」が始まって、2002年は第11回「ライフキャリア元年」から始まりました。当初は10回ぐらい書ければ、という気楽な感じでお引き受けしましたが、鈴木編集長にうまく乗せられて、20回、次は50回とまるで短距離、中距離ランナーから遂にマラソンランナーにまで転向させられていきました。

ここまで続いたのは、何よりみなさんのエクササイズに対する回答があったからこそ、と感謝しています。根がフリーチャイルドで、朝令暮改が朝飯前の私にとって、毎回「こんにちは、楳林です」と書き始めるのすら、かなり長い間抵抗がありました。でも毎回のみなさんの回答が、私のエネルギー源になりました。戴いた回答は今でも全部保存しています。

「理想のキャリアを実現するためのエクササイズ」というタイトルは、鈴木編集長から与えられたもので、当初は照れくさい感じがしました。私自身、理想のキャリアを実践しているどころか、キャリアに関しては落ちこぼれに近かったからです。ただ、かつての恩師であるヴィジョン心理学のチャック・スペザーノ博士の初めての著書が「30日間で理想のパートナーを見つける方法」だったので、何か因縁を感じて「やってみるか」という気を起こさせました。

ところで、「理想」というのは今の日本、あるいは現代において「死語」に近いかもしれません。でも年功制の時代から、キャリアを自らデザインする時代へと変わってきつつある21世紀というのは、再びビジョンとか理想、夢とかを大切にする世紀なのでは、という気がしてなりません。

そんな訳で、転職サイトのメルマガなのに、ある意味では目先の転職スキルから程遠いテーマを自由に書かせていただいた鈴木編集長とen-japanに改めて感謝するしだいです。

1年を振り返って、自分の印象に残ったり、思い入れの強いテーマは「ライフキャリア元年」(第11回)、「キャリアコンパス」(第14回)、「キャリアとマネジメント」(第37回)、「アクションラーニング」(第39回)、「ライフ・キャリア・バランス」(第42回)、「セレンディピティ」(第45回)「フライフィッシング」(第49回)などですね。みなさんはどうでしたか。

前職が新聞記者だったこともあり、新しいテーマやコンセプトにすぐ飛びついてしまいます。でも一番勉強になったのは、みなさんの回答です。通勤の電車の中で何度も読み返すのが楽しみになっています。

それにしても、この1年、「キャリア」について考えない日はなかった感じです。新聞記者時代は「ベンチャーの楳林」でけっこう名が通ったものです。ヴィジョン心理学では「パートナーシップは楳林夫妻に聞け」(ちょっと、のろけです)。今は「キャリアの楳林」を自負しています。本当に単純にほれ込むタイプですね(笑)。

また、仕事の面では今年1年、30歳から50歳代までのキャリアデザイン研修に専念しました。30歳代では「キャリアの自己責任」、40歳代では「市場価値やプロフェッショナル」、50歳代では「生涯現役」がメインテーマでした。

自己啓発の面では11月から「アクションラーニング」をものにしようと、6ヶ月コースに参加しています。コーチングは来年6月から始まる資格コースに備え、再び活動開始です(クライアント募集中!)。23年勤めた新聞社を辞めて、来年が10年目。新しい始まりの年にしたいですね。

それではみなさんいいお年をお迎えください!ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとって今年はどんな成果のあった年でしたか」

第60回 Yプロジェクトのアクションプランは

こんにち、楳林です。年内の研修もようやく終わり、寒さもこのところ薄らいでいるせいか、多少ゆったりした週末を過ごしています。先週のエクササイズは「あなたはどんなタイプの“戦士”だと思いますか」でしたね。何通か紹介したいと思います。

「どんな戦士?といわれると、一言では難しいです。軍師とは少し違いますが、情報を集めて判断する人、多分、軍師の下の諜報部員みたいな戦士でしょうか。自分をうまく使ってくれる人が結果を出してくれるフィルターになってくれないと、まったく役に立たない。自分を必要としてくれるときだけに戦っている、必要じゃない世の中になったら、パッと去ってしまう、そんな、“気まぐれ戦士”です」(Kさん、37歳)。

KさんはYプロジェクトで歴史小説を書くことを目指しているせいか、「中国の戦国時代のハンショの生涯の概略を知ったときに、興味を持ったので、そういう人にあこがれているのかもしれません」とも語っています。私も興味をもってちょっと調べてみたら、波乱万丈の人生を送り、秦の昭王の下で“遠交近攻の策”を勧めたりした軍師でした。肝心の成果を受け取らないところが似ているようですね。

そういえば私も以前、ワークショップで歴史上の人物で「好きな人」「嫌いな人」を挙げ、次の日、その人物に仮装する、というのをやったことがあります。好きな人はサン・テ・ク・ジュペリで星の王子様になってみたり、嫌いな人はヒットラーで、髭を生やして右手を挙げて演説したりしましたが、特にヒトラーが自分の中に潜んでいるのを感じてゾクゾクしたのを覚えています。

ユング心理学で“元型”というのがあるのですが、歴史上の人物というのは自分の無意識にある気質とか資質を引き出してくれます。キャリアの志向性を考える上でけっこう役に立ちます。

「サポートの戦士です。一見、先頭(大将)で戦いそうだと言われますが、自分では参謀が向いていると思っています。学生時代は生徒会副委員長、学園祭実行副委員長といずれもナンバー2の座で気楽に自由に行動、現在は3名の事務所で営業2人のお世話役です。相談に乗ってあげたり、相手の考えをまとめたり、新しいアイデア、アドバイスを提案することもあります」(Fさん、30歳)。

Fさんはさらに「参謀は、大将によい仕事をしていただくことが目的ですから、あまり鋭くなりすぎないよう、“いい加減(良い加減)”でいることを心がけています」といっていますが、これも自分の資質を受け入れているからこそ出来る余裕ですね。

「何か大事な目的を果たすために旅をしている物語の主人公。昔、『ゲド戦記』『プリデイン物語』などのファンタジー小説を読み漁りました。たいてい世界が何か悪いことになっているので、その悪を倒すためとか、何かを探すとかで主人公が旅をするストーリーです。自分の幸せを探す旅というよりは、世界の幸せのために労して、結局最後は自分の幸せも手に入れる。その主人公に自分を重ね合わせ、使命感や正義感をごく自然に捉えていたようです」(Nさん、28歳)。

Nさんは「今、実際の私は、自分の幸せのために努力する日々ですが・・・」と語っていますが、それも大切なプロセスだと思います。かって夢中で読んだ物語の主人公などの価値観は、時期が来るまで眠っていて、ある日、ライフキャリア上の転機に直面した時、突然、目を覚ますかもしれませんよ。

それに魔法使いゲドだって、魔法の力を失い、自分の弱さを受容したとき、始めて『生きる』ための力を獲得するじゃないですか。私はそれがビジョンに近い感覚だと思っています。

さて今年もあと2週間余りになりましたが、その後みなさんのYプロジェクトは進展していますか。実はお恥ずかしいのですが、キャリアコーチングを1冊の本にまとめるという私のYプロジェクトは、まだ構想段階で、先月末ごろから焦っています(ですのでみなさんにはっぱをかける資格はありません)。

でもそれでは癪なので、この年末年始にかけて、目標に対して、それを達成するために何が出来たらよいか、どうやったらそれが出来るか、具体的なアクションプランまで作って、一歩着手するところまで行きたいと思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたのYプロジェクトの目標達成のためのアクションプランを紹介して ください(すでにかなり進んでいる人は途中段階の課題を)」

第59回 あなたはどんなタイプの戦士?

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「自分でも結構人のため、社会のため役立っているんだな、という体験を思い出し、紹介してください」でしたね。まず1通紹介します。

「1.個人指導型の塾で教えていたとき、内気な子が笑ってくれたとき 2.アフリカで教えていたとき、大切な高校3年生の卒業試験中、部屋を覗いた私に、生徒が『バッチリ』というように目で合図を送ってくれたとき 3.タップダンスを先生の補助で子供に教えていたとき、気弱そうな子が熱心に踊った後、お母さんにタップシューズをおねだりしていたとき」(Yさん、30歳)

Yさんは「父が厳しかったことやいじめにあって、自分自身がいじけた萎縮した子だった」ことから「気弱そうな子や萎縮した子が笑ってくれたりすると、とてもうれしい」そうです。そうした自分の奥にある痛みがもしかしたら共感を呼ぶのでしょう。キャリアや資質というのもあんがい、そんな痛みの中に“種子”となって、やがて芽が出てくるのかもしれませんね。

大学卒業後、海外協力隊でザンビアの地方の中・高校で2年間、物理を教え、今また仕事をしながら週末は科学博物館で解説員などのボランティアをしているYさん。「社会の役に立つのはまだ」といっていますが、そんなことは全くないと思いましたよ。

もう1通。「山形の地元サッカーチームの応援サイトの運営マスターとして、試合・練習・選手たちの生の声を取材して公開していましたが、チームの不振とともに、サイトが“荒らし”にあらされ、閉鎖してしまいました。毎月100人以上の方が訪れていたのに、自分の技術の低さがとても悔しかったです。でも今でも『あのサイトよかったのに』『楽しみにしていたのに・・・』という言葉を聞くと「少しは役に立ったのかな」と思います」(Tさん35歳)

Tさんは先日の私の山形での求職セミナーの事務局をやってくれました。「以前、レポーターの仕事をしていたのですが、結婚後は遠のいていました。最近、インターネットによるIT学習の受講を申し込んできました」と語っていますが、3人のお子さんの世話をしながら、再びキャリアを伸ばすチャンスを迎えているように思います。

ところで、今回はいつもより回答数が少なかったですね。多分、「社会のために役立っている」とか「感謝される」ことを感じることに抵抗があったり、自分にそんな価値はないと思ったり、あるいは感謝されるときに姿を消していたり、気づかないフリ(潜在意識ですが)をしたりしていませんか。ちょっと注意して自分の反応をチェックしてみてください。

何故なら、反応の違いがあっても、そういう場所に自分の痛みがあるとともに、また自分のヴィジョンや資質、使命などが潜んでいる可能性が高いからです。「本当にやりたいこと」や「大切にしていること」をもう少し深いレベルで見つけたいなら、抵抗がある場所こそ実はチャンスなのです。

さて、私は先週はやや余裕を取り戻した感じです。そんな時にふと書店で目に留まったのが以前夢中で読んだカルロス・カスタネダの「時の輪」という本です。新しい本というよりは、過去の本のエキスを抽出してシャーマンの戦士の道についてまとめた箴言集みたいな本です。

戦士というと違和感や抵抗感があるかもしれませんが、私はこれまでの体験から、誰もが戦士の素質を持っていると思っています(平和の?自由の?あるいは愛の?)。でも大半の人は戦士の資質を眠らしています。

例によって直感で開いたページ(私はこのやり方からよくメッセージを受け取ることにしています)の一文を紹介します。「凡人と戦士の基本的な相違は、戦士があらゆることを挑戦として受け入れるのに対し、凡人はあらゆることを祝福か呪いとして受け入れる」。なんだかキャリアの世界に似ていると思いませんか。

こんなことも書かれています。ドン・ファンというインディアンのシャーマンによって「人はその意志に反して、否応なく戦士の道へ進まされるはめになる」。まんまとのせるわけです。もしかしたら、このキャリアコーチングの狙いもそこにあるのかもしれません(笑い)。

ということで今週のエクササイズは、その気になって楽しんでみて下さい。

●「あなたはどんなタイプの“戦士”だと思いますか?」

第58回 人から感謝されると…

こんにちは、楳林です。先週は山形、宮城両県を中心に“東北巡業”の旅でした。雪が降り寒かったですが、地酒と食事を楽しみました。さて、先週のエクササイズは「あなたのキャリアを深めるのに役立っていると思える欠点があったら紹介してください」でしたね。先ず1通紹介します。

「劣等感とジェラシーです。人が自分よりいいことをしているとうらやましい。その人が優れているような気になります。そして劣っている自分が悔しいのです。その悔しさをバネに東京の大学に入学し、就職氷河期に大企業に就職、いままた本社部門へ移りました。でも、これで豊かな人生と言えるのでしょうか。その疑問がいつまでもつきまとっています」(Nさん、28歳)。

結婚されたばかりのNさん、久しぶりの回答ですね。キャリアをここまで導いてきてくれたのは“劣等感とジェラシー”だそうですが、“豊かなキャリア、豊かな人生”を考えるきっかけも与えてくれていますね。たまには「お疲れさま」といってあげてみてはどうでしょうか。そろそろ、そのエネルギーを自分の人生の目的やヴィジョンへ向けてみてはどうでしょうか。

「変に頑固で人間づきあいの下手なことが、逆にキャリアや人間関係を作ってくれています」(Kさん、37歳)「早とちりを直すためのメモ魔が仕事力の向上につながった」(Nさん、38歳)「人に対して好き嫌いの激しいことへの対処が、人を見る際の幅を広げ、両親との不和を随分解消」(Fさん、30歳)「ねちっこい性格が、原因追及や説得の原動力に」(Kさん、32歳)「わがままで回りに迷惑をかけながらもキャリアアップにつながった」(Tさん、38歳)。

私もそれらの欠点で悩んだことがあるので紹介させてもらいました。それらの欠点が自分のの足を引っ張っていると悩んだり、何とか直そうとあがいたり、諦めたり・・・。でも気がつくと、けっこう自分のキャリア形成に大きな影響を与えていることに気づくと思います。長所と欠点は裏表、また紙一重なんですね。

ここで、ふと野口英世のことを思い出しました。子供のときの火傷で左手が不自由になったが、後に一念発起して医学を志し、黄熱病の研究で偉大な医学者として紹介されています。でも一方では、若いときから浪費家で女好きで、それに名誉欲の固まりだったという話もあります。教科書的な理想像よりも、自身の欠点やエゴといった人間臭さと志の強さとが交じり合っている姿の方がかえって興味を惹きます。

ところで先週の“東北巡業”というのはハローワーク主催の求職支援セミナーの講師として山形県の山形、寒河江、村山、それに気仙沼(宮城県)の4会場で計7回のセミナー(1回2時間)を担当しました。若い方から中高年の方まで毎回40~60人、併せて400人近い求職者の方が参加してくれました。

セミナーの内容は、求職活動の心構え、キャリアデザインの重要性、それに履歴書や面接のポイントなどが中心でした。来る前は、雇用保険の認定の代わりになるセミナーなのでなので「真剣に聞いてくれるのかな」とちょっと思ったりしていたのですが、予想はまったく外れました。

みんな熱心に真剣に聞いてくれ、終わると大きな拍手をいただきました。さらに、「ありがとう」と、私に直接お礼を言って帰られる方すら多かった程です。わずか2時間での講演で、こんな経験は初めてで胸が熱くなりました。

都会に比べて圧倒的に求人件数が少ない中で、「みんな必死に仕事を探しているのだな」ということを痛感しました。と同時にアンケートには「求職ノウハウだけでなく、キャリアデザインなどを考えるきっかけになった」「こういう機会をもっと増やして欲しい」という声の多さ驚かされました。

今回の“東北巡業”は私にとっても「自分の経験が結構、人の役に立って感謝されるんだ」という感覚というか充実感をかなり取り戻せたように思えます(私も単純ですね!)。帰りの東北新幹線の中で「求職者のためのキャリアデザインを書きたいな」という気もしてきました。

ということで今週のエクササイズです。

●「自分でもけっこう人のため、社会のため役立っているんだな、という体 験を思い出し、紹介してください」

第57回 欠点を伸ばすって?

こんにちは、楳林です。やっと喉風邪がピークを越えました。先週のエクササイズは「ありのままの自分ってどんな自分ですか」でしたね。先ず「自分は怠け者」と思っている人の多いことに驚きました。

「怠け者。でも好奇心は旺盛。好きなことはやるが、嫌いなことはやらない。人より優秀でいたい。自分が好き。勉強好き。向上心がある。楽しいことが好き。わがまま。いい人と思われたい。でも嫌いな人にはつらくあたる。つまるところ好き嫌いの激しいのが自分です」(Tさん、38歳)。

「怠け者である。人から期待されたり、よく思われようとすることがモチベーションになる。地味な仕事は嫌い。かといって目立つ仕事で準備が大変な仕事は嫌い」(Nさん、某外資系人事職)。

「本当は怠け者。でも仕事で暇なのは耐え難い。だから働き者かも。勉強も嫌い。でも向上心は強いです。資格取得や英語の勉強をしています。じゃあ勉強好き?多分、面倒なことは嫌いなワーカーホリックで、人生を楽しむ術をいつも探している、落ち着きのない人間」(Kさん、32歳)。

これ位にしておきましょう。複雑というか、矛盾・ジレンマというか、もがいているというか、諦めているというか・・・紹介しながら私も思わず笑ってしまいました。それが今のありのままの現状なんでしょうね。

「怠け者」とか「嫌い」という感情に対し、罪悪感とか失敗感が浮上すると、今度はそれに対する補償行為として頑張ったり、やさしくしてあげたり、というのが心理学的な分析ですね。でもそれを繰り返して中年になると、「努力が人生観」と思ったり、何が好きで、何が嫌いか自分でも感じれなくなったり、そうなると重症です。

そうならないためには、自分の中の「怠け者」とか「嫌い」という感情をもう少し違った視点で見直すことが必要かもしれません。「嫌い」というのも実は「好き」な価値観が抑圧されて潜んでいると言いますから。

先日、テレビで動物の「ナマケモノ」を見ました。木々の間や水面を本当にゆっくり進んで行きます。ほかの動物に比べたらとても鈍くても、「ナマケモノ」にとってはそれが自然なんです。あなたの「怠け者」も、もしかしたらあなたの自然さかもしれません。そう思ったら、多少自分が可愛く見えるようになるかもしれませんね。

ところで先週、京都で研修中、京都新聞に掲載されていた「欠点を伸ばす」という電気通信大学の中島義道教授の書かれた記事に共感するところが多かったので紹介したいと思います。

キャリア開発ではよく、「欠点を直すより長所を伸ばしたほうが効率的」というポジティブな考え方が一般的ですね。これに対し、中島さんは「すべての人に当てはまるものではないが、ある種の人は一生を賭けて、『自らの欠点』を伸ばすべきだ」という考え方を出されています。

「人は誰でも、それさえなければ、どんなに生きていくのがラクかと思うような致命的な欠点がある」と言う中島さん自身は「偏食、スポーツ音痴、死への怯え、他人に対する羨望、軽蔑、非協調性、そして虚栄心、病的なナルシスト、冷酷さ、ネガティブ思考などまるで生きることへの『適正』がない」自分のありのままの姿に小さいときから苦しみ、変えようとしても変えられず、自殺しようと思ったこともあるそうです。

しかし50歳を過ぎるころから「こうした自分の欠点のすべてが、自分が哲学をする際、物を書く際に大いなる宝になった」として、「人を信頼し、人に信頼されて生きる幸せな人生」も良いものだが、「欠点を伸ばし、欠点を通して自分の生きる糧(仕事)を見出す」のも「重い人生だが、それもまた、疑いもなく輝かしい豊かな人生なのだ」と述べています。

そこまで徹すると大変ですが、自分の欠点を否定的に見て直そうとするだけでなく、欠点そのものに真正面から向き合うことによって、隠れた才能の発見や自分のキャリア、人生をさらに深めることも可能のように思えました。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたのキャリアを深めるのに役立っていると思える欠点があったら紹 介してください」

第56回 「ありのままの自分」ってどんな自分?

こんにちは、楳林です。「みなさん風邪を引かないように」と云っていたら、当の本人がひどい喉風邪に苦しんだ1週間でした。先週のエクササイズは「この人生であなたが一番大切にしたいこと(価値観)は何ですか」でしたね。今週も何通か紹介します。

「自分がやりたいと思ったことをやる」(T さん、38歳)。Tさんは「子供時代、しつけの厳しい父への反発心から、怒られても自分がこうしたいと思ったことは大抵やった」という経験とあわせ「誰かのバックアップ(我慢も含めて)があってこそ(何かが)できる」ということを痛感したそうです。

そして今後は、「自分だけでなく、『やりたいことをやろうとしている』誰かをサポートする側に回りたい」―TさんがプロジェクトYでコーチングを身に付けたい動機はそんな気持ちから来ているそうです。

「自分の感情を大切にしたい」(Iさん、28歳)「それぞれの人のもつ感性を大切にしたい」(Mさん)。お二人とも社会生活上、あるいは人と接していく上で、時には難しいと感じつつも、その気持ちを持ち続けることを大切にしていますね。

一方で今回は次のような質問付き回答が目に留まりました。「現状の家族や友人たちとの関係性が自分にとって本当に大切にしていきたいもののように思えます。が、でもなぜか自分は現状に満足できず、焦りや不安を感じています。」(Kさん、32歳)。

Kさんは「プロジェクトYとしてMBAをとるため英会話を特訓中」だそうです。でもそれでは「人生を楽しんでいないし、主人にも負担をかけている」ことから「何故、MBAをとりたいのか、本当にほしいのか」を考えていった結果、「単に経済力や自分の市場価値を高めるだけでなく、自分の周りや職場が自分を必要としている居心地のいい場所にしたい」つまり「現状の家族や友人たちとの関係性を大切にしたい」ということに気づかれたそうです。

しかし、論理的に理解していても「MBA取得への焦りや今の職場に居ることによるキャリアの足踏みにイライラしている 現状が手放せないでいます。みなさんは『こうなりたいという』自分と現状をどのように折り合いを付けていますか」という質問をされています。

とても良い問いかけだと思います。Kさんの回答を読みながら、改めて私も自分の過去のキャリアを思い出しました。私も30代後半に「新聞社を辞めてMBAをとろう」と思ったこともあったからです。その後、関心は変わりましたが、その気持ちは、ビジョン心理学やコーチングをやる動機として続いてきたと思います。

そういえば、ある時、ビジョン心理学のスペザーノ博士にからかわれたことがあります。「きっと、君は腰の曲がった90歳になって杖をつきながらもビジョン心理学を勉強しなくては、と言っているかもしれないね」って。これには、参りました(笑)。

要するに完璧主義というか永遠に現状に不満足なのです。その奥には「足りない」「自分は不完全」「達成するまでは・・・」という観念が根強くあるわけです。私もまだまだそれが残っています。少しずつ取るしかないですよね。

そこで、今日は、1冊の本を紹介したいと思います。それはスペンサー・ジョンソンの「人生の贈り物―あなたの探し物は何ですか?」という薄い本です。その中でこんな風に言っています。

「私が探していたかけがえのないプレゼントとは、ただ、今現在あるがままの自分のことだ」「現在とは、ありのままということで、それがかけがいのないことなのだ。なぜそうなのかわからなくても。現在がそうなるべくしてなったものなのだ。その現在を知り、現在を受け入れ、現在を生きるなら、満ち足りて、幸せになれる」。

私もいつかは100%そう思える自分になりたいと思っています。

ということで今週のエクササイズです。

●「ありのままの自分ってどんな自分ですか」

第55回 「大切にしたいこと」を大切にする

こんにちは、楳林です。あっという間に寒くなりましたが、みなさん風邪をひかないように。先週のエクササイズは「より具体的になったあなたのプロジェクトYをやる決断をするとともに、いま手放す必要があるものは何ですか」でしたね。今週も沢山いただいているメールの中から何通か紹介します。

「歴史小説を書くことを選んだのと相前後して高校講師の仕事のチャンスが来ています。先生の仕事を入れると最低1年間はかかりっきりになるはず。プトジェクトYを2,3年後にしようとしたら果たして実行できるだろうか。私は『プロジェクトYを今する』ことを選んだので、仕事のチャンスを手放す必要があります」(Kさん、無職、37歳)。

「仕事と書くことを両立させている方もいますが、両方を同時に始めるのはかなり難しいと思います」と考えた上での選択だそうです。多分、Kさんにとってはそれが正解かもしれませんね。でもどちらもやりたいことだとしたら、もう1つ中長期的なキャリアビジョンを考えてみてはどうでしょう。

「来年の6月に留学するというプロジェクトを実現するためには、今まで遊びに使っていた時間と無駄な睡眠時間を手放し、英語の勉強に使うようにします」(女性、公務員、26歳)。こちらは、「睡眠時間を削って勉強や仕事現場になるべく多くの時間を割いて吸収できるものを吸収したい」(Aさん、ソフトウェア営業、28歳)も似た回答ですね。

お二人ともやる気を感じます。この機会に習慣を変えたいという決意が伝わってきます。

「甘え、執着、そして恐れを手放すとともに、今やることを明確にし、効率よく実行するために、自分の生活と行動・思考をいるもの、いらないもの、保留の3つに分けてシンプルにしたい」というCさん(求職活動中、26歳)。シンプルにするというのはとてもいい感じですね。

でもあまり性急に変えようと無理はしないほうが良いですよ。またうまくいかなかったからといって失敗感を持ったりしないでください。習慣とかネガティブな行動とかは、意外と根深いものです。私もよく何かやるとき、睡眠とか無駄だと思う時間を効率的に使おうとした体験が数多くあるのですが、大体は3日坊主に終わるケースが多かったからです(私とは違うかもしれませんが・・・)。

さて、今回は少し異なる視点を紹介したいと思います。

それは、手放したいと思っている生活・行動・思考の底にはそれを支える価値観があるということです。多くの場合、無意識に刷り込まれているものです。たとえば小さな時、両親から「あなたはだらしない」と怒られた途端、「私はだらしない」という観念が植え付けられてしまい、気がつかないでいると、その後の行動を通じてその観念が悪循環的に強化され無意識の価値観としてへばりついてしまいます。

すると効率的にやろうと思っても、それを邪魔する、無意識の価値観との戦いになり、結局、自分が自分に負けてしまいます。他人に負けるより、自分に負けるほうが実は挫折感や罪悪感は大きいですよね。

ではどうするか。1つの方法は、自分の無意識に潜んでいるネガティブな価値観や観念に気づき、それを先ず受け入れることです(私自身は本当に怠け者です)。一方で成熟した大人の自分として「この人生で何が大切か」を思い出し(私は本当はゆったりやると直観が働く資質を持っています)、それを「大切にする」ことを選択するのです。

すると古い価値観との相克が始まるけれど、その度にあなたが大切にする価値観を選択し直すことによって、次第に好循環へと向かって行くと思います。プロジェクト自体の目的達成も大切ですが、このプロジェクトを自分が大切にしたい価値観やビジョンを明確にして、次の大きなステップに繋げるチャンスにしてほしいと思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「この人生であなたが一番大切にしたいこと(価値観)は何ですか」

第54回 決断と手放すこと

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「自分の子供時代の目を通してプロジェクトY を表現してみませんか」でしたね。なぜこれを取り上げたかというと、子供時代という新たな視点から見ることによって、あなたのプロジェクトYがもっと生き生きとしてくるかもしれないと思ったからです。まず1通紹介します。

コーチングを勉強中のFさんは「子供時代の視点から、コーチングを表現してみると『おじさんたちは何をしているの?どうして、そうしているの?それによってどうなるの、どうしたいの?』といったところでしょうか」 と語っています。

私も本当にそうだと思います。「どうして?何故?」を連発した子供時代の溢れるような好奇心こそ、色んなスキルより大切だと思います。コーチングだけでなく、それぞれのプロジェクトの原点のような気がします。

また、Fさんは今回の課題をきっかけに「そういえば小学生の卒論に、将来の夢として『カメラマンになって、世界中の働く人を撮影したい』と書いたのを思い出しました」そうです。カメラマンとしての真実を見ようとする視点はコーチングをやる上でのFさんの才能かもしれませんよ。子供時代の思い、夢というのは、そういう自分の資質を含んでいると思います。

そしてコーチというのもそれぞれ自分独自の資質、才能を発揮してこそ味や深さが出てくるのですから、ぜひ、大切にしてください。

もう1通。「子供時代って自由に見えて、いろんなことを大人に抑えられているように思えます。そんな中で、誰か1人自分の話をきちんと聞いてくれる人がいたら、その子も自分自身に自信が持てて、映画“ペイフォワード”のように世界が広がっていくのではないかと思います」(Fさん)。

Fさんもコーチングを身につけようとしておられますが、きっと大人になってもきちんと話を聞いてもらえれば、少しづつ子供時代の自由な感覚を思い出すのではないでしょうか。それができるコーチになってください。

キャリアカウンセラーを目指しているCさん(26歳)は「最初に安らぎという言葉が出てきました。次にあこがれとか、活き活きと周りになじんでやりがいもあり楽しく働ける場所のイメージが出てきました」と語っています。Cさんだけでなく、みなさんも時々、自分のプロジェクトYを子供時代の視点から見つめ直してみてはどうでしょうか。

ところで先週のビッグニュースは巨人の松井秀樹選手が大リーグ挑戦を正式に決断したことでしたね。この決断する、決意するということは、何かをやりたいとか選択するという次元を大きく越えることですね。もう2度と引き返すことのできない場所に足を踏み入れることを意味します。

同時に松井選手の決断は、日本での保障されたであろう巨人での経済的安定と地位を手放すことになるわけです。そのリスクを冒してでも、自分の夢にチャレンジするというということに「今までのしがらみを気にせず、思い切りやってほしい」と願わずにおれません。

プロジェクトYに参加している皆さんもそろそろ、「やりたい」という次元から、「やる」という決断の時を迎えていますね。でもそのためには、自分のプロジェクトの目標をより具体的に設計する時ですね。単にコーチングを勉強するとかでなく、1年後、どういう状態になっているのか、出来れば詳細な青写真とか資格とか客観的な指標を持つといいですね。

同時に、松井選手のように、決断するということは何かを手放すことかもしれません。今までの習慣を手放すとか、無駄遣いをやめるとか・・・・。

ということで今週のエクササイズです。

●「より具体的になったあなたのプロジェクトYをやる決断をするとともに、いま手放す必要があるものは何ですか」

第53回 ワクワク感の源泉

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「好奇心を持って自分のプロジェクトYを見たとき、どんなところがワクワクしますか」でしたね。みなさんの回答を読むたびに私まで楽しくなってきました。何通か紹介します。

「中学の時から『もし~であれば』『こうなっていたら』と考えるのが何より大切でした。作品を制作するということは、そんな自由な世界にいられる。そう思うと本当にワクワクしてきます」(Y さん)。Yさんは、ドラマや映画の脚本家を目指し、来年秋のシナリオ公募に向けて、まず脚本を1つ作り上げることが目標だそうです。

「ついいろいろなことに手を出してしまうので、今回は本当に大事なものを最優先にして取り組みたい」というYさん。その課題として1日30分から1時間は脚本を書く時間を決めて実行する、ということですが、同時にその人なりのワクワク感をしっかり取り込むことが大切なように思えます。

またYさんの回答を見ていると、ワクワク感の下に『自由さ』『創造性』『ユーモア』を大切にしたいという価値観があるようですね。そんな風に自分のワクワク感の源泉を探るのも面白いと思います。

今回のプロジェクトYでは、“何かを書く”というテーマを持った人が多いですね(私もそうですが)。歴史小説を書きたいというKさんは、「学生時代に史学科のせいか、古戦場や石垣などの写真を見たり、調べた歴史の流れに、いろんな人の思い、自分の思いを盛り込んでいく作業がドキドキする」そうです。

一方、会社のプロジェクトに追われているNさんは、「とても新しいことをする余裕がない」中、それでもプロジェクトYに参加する方法として、普段から関心が強い食べ物や料理を楽しもうという企画を考えたそうです。

「自分と同じようにハードワークの人のために、食べ物をゆっくり楽しむ生活を推奨運動する『スローフード』のホームページを作り、食べるだけでなく、見たり読んだりすることは文句なしにワクワクします」(Nさん)。自分の食生活の改善にもつながりますので、とても良いアイデアだと思います。

またNさんは当初、「自分の女性性を追及する」ことをプロジェクトYにしていましたが、途中で変更することはもちろん問題ありません。でも、これらは、よく見ると、同じテーマのような気もします。

ところで、私の好きなTV番組に『アクターズ・スタディオ・インタビュー』があります。毎回有名な俳優や監督の本質を引き出す司会のジェームズ・リプトンの質問はコーチングの勉強にもなっています。先週見たスティーブン・スピルバーグ監督から発せられる言葉にはとても感動しました。

「自分の作品の多くが子供の目線で撮っている」と語り、「『未知との遭遇』の一場面の子供がドアを開けて光を直視するシーン」に自分のビジョンを見るといいます。ビジョンの源泉というのは、子供のドキドキ、ワクワクにつながっているんですね。「演技とは何ですか」という質問に「人から笑われるのを恐れない勇気を持つこと」と答えていましたが、なんだかキャリアとかビジョンにつながる感じがしました。

ということで今週のエクササイズです。

● 「子供時代の視点でプロジェクトYを表現してみてください」

第52回 自分のプロジェクトYに好奇心を持とう

こんにちは、楳林です。先週は土、日が研修で休む間がありません。エクササイズは「この1年で達成したいプロジェクトYを始めるにあたって、最大の課題(障害)を一つあげてください」でしたね。幾つかの回答を紹介します。

「私のプロジェクトYは歴史小説を書くことですが、最大の障害は自分です。いつも時間を障害のように思っていますが、本当は言い訳なんです。今でもつい逃げたくなりますが、やり続けようという自分がいてこそ、プロジェクトYは進むと思います」(Kさん)。

私も全く同じです。いつも時間や完璧主義を言い訳にして挫折することが多いです。今回はなんとしてもプロジェクトYをやり続けることで、これを越えたいですね。

「最近カラーアナリスト講座を受け始め、私のプロジェクトYは『カラーを通じて自分自身の本当の姿を見つける』ですが、最大の障害は自分自身の変化に対する恐れだと思います」(Yさん、33歳)。

本当の自分を見つけるというのは、多分今の自分を変えたいという思いがあるのだと思います。同時に慣れ親しんだ今の自分が変わることへの恐れも実はあるんですね。それに気づくことは大切ですね。

まだまだあります。「コーチングを身につけるための最大の課題は『嫌いな人でも受け入れる』ということです」(Rさん、38歳)「怠け心です。初心を忘れ途中で投げ出したくなることが多々あります」(Cさん)。

Cさんはキャリアカウンセラーを目指していますが、好きで始めたことが途中で義務感に陥らないように、「体験ワークの中でのワクワク感を時々思い出しながらやっている」そうです。「ねばならない」でやっていると息切れしてしまいますね。

ホームページ作りを目指しているAさんは「最終的な目標がハッキリせず、情熱もいまひとつなのが当面の課題」だそうですが、最近会った妹さんが「何故かハードワーク、低賃金の中でもとても楽しそうに仕事していることが衝撃的だった」そうです。妹さんはその仕事のどの部分、どんなところが楽しいのだと思いますか?

強く感じるのは、みなさん(もちろん、私も含めて)のプロジェクトYは、「一応、宣言したものの、まだまだ抽象的、あるいは骨組だけで、具体的なイメージとか肉付けに欠けているなぁ」ということです。しかし、この状態でスケジュールを考えたり実施計画を作ったりしては、計画のための計画作りに終わって、そのうちやる気をなくしてしまうのではないでしょうか?

私の中でも、このところ、「キャリアコーチングの本を書くことで、自分の何が変わるの?」「まわりや自分の人生にどんな影響を与えるの?」「何のために書くの?」「一体どんな内容?」「本当に書きたいの?」といった自分への問いかけが活発化してくるし、一方では「どうせいつものように途中で投げ出すさ」といったグレムリンのささやきも依然、根強いものがあります。

そんな中、みなさんの回答を見るうちに浮かんだのが、「もっと好奇心や遊び心を持って自分のプロジェクトYを見ていこう」というものでした。「何がワクワクするのか?」を大切にしながら具体的なイメージや目標を決めていった方が、深刻にならずに決断でき、楽しく取り組めると思うからです。

ということで今週のエクササイズです。

●「好奇心を持って自分のプロジェクトYを見た時、どんなところがワクワ クしますか」

第51回 プロジェクトY実現への最大の課題は?

こんにちは、楳林です。めっきり秋らしくなりましたね。先週のエクササイズは「これから1年間、あなたは自分の強み、得意なこと、好きなことを生かして、実現したいプロジェクトは何ですか」でしたね。今回は多数の回答があり、皆さんのやる気を感じました。先ず1通紹介します。

「私の夢は事業家になって自分の信念で仕事をし続けること。そのためにもこの1年、今の会社で今の仕事にきちんと成果を残して、次のステージに転職することです」(Iさん、情報処理サービス業、30歳)。 Iさんは将来のキャリアビジョンをしっかり持った上で、自分の強みを伸ばすために中小企業診断士の試験も受けつつ、この1年の目標を定めている点がいいですね。この1年の「きちんとした成果」をもう少し具体化してみてはどうですか。

もう1通。「2003年10月までに自分のホームページを作ること。それによってたくさんの人との出会いがあったり、自分も楽しく趣味を深め、成長する中で、さらに『何をしたいか』『何を実現したいか』を考えていきたい」(Aさん、編集者、28歳)。

たとえ今はわからなくても、1年間のプロジェクトYでワクワクすることを行うことは、必ずあなたのキャリアビジョンにとって大切なプロセスになると思います。

ところで、今回のエクササイズを出した直後、1冊の本に出会いました。宇宙飛行士の向井千秋さんとご主人が翻訳した「4001の願い」(著者は米国のバーバラ・アン・キプファーさん)です。原題は「The Wish List」、「生きているうちに、私は・…したい」という短い文章の“願い”が4001、載っている本です(原書は約6000)。この本には、偶然ではない何かを感じました。

「願いというのは私達の心の奥底から涌き出てくるものなので、ある重要な情報、つまり『自分とは何か』『自分は何者になれるのか』という情報を持っている」と向井さんは前書きで書いています。ちなみに4001は「自分の願いが間違っていないか気をつける」だそうです。楽しい願いが満載されています。

そこでこの本に倣って、みなさんの回答の一部をWISH LIST風に掲載してみました。

□ 自分の感じる力(女性性、共感性)を使いカラーアドバイザーになっている
□ 構想を練っている歴史小説を書く
□ コーチングをマスターする
□ 男女共同参画プロジェクトを軌道に乗せる
□ メルマガを商業ベースに乗せる
□ ずばり、女性性を追求する
□ 月1回、ライブハウスで演奏する
□ キャリアカウンセラーの資格を取る
□ 地域猫を救うため猫嫌いの人ともコミュニケーションをとれるようにする
□ 社内のクリエイティブコンテスト(年4回)で、最低1回1位をとる
□ キャリアコーチングの本を書く(これは私です)

生涯かけて実現したいことが、今の段階でわからなくても、いまワクワクすることをやることは必ず自分のキャリアビジョンにつながる。そういう信頼のもとに1年限定付きのプロジェクトYをより具体的にし、達成プロセスも楽しんでください。ところで、先週は、2人の日本人がノーベル賞をとるというビッグニュースが飛び込んできましたね。物理学賞の小柴昌俊さんと化学賞の田中耕一さん。御二人とも研究が好きで好きでたまらない、研究してきたことを語る時の幸せな笑顔が印象的でした。周囲を気にせず、とにかく好きなことを貫くというのが大切なんですね。

ということで今週のエクササイズです。

●「この1年で達成したいプロジェクトYを始めるにあたって、最大の課題 (あるいは障害)を一つあげてください」

第50回 あなたのプロジェクトY

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「(たとえ好きであろうと反発していようと)、あなたは父親の資質や強み・弱みのどんなところが似ていますか」でしたね。

何故このテーマを取り上げたかというと、よく深層心理では父親との関係がその人の仕事に影響するといわれているからです。また女性にとっては異性の父親との関係は男性関係にも影響するようです。嫌っている父親と同型タイプを好きになったり、逆に好きで癒着していると、恋人が出来にくかったりしますね。

先ず1通紹介します。「『対外的には愛想がよくサービス精神旺盛』『ややこしい話や深刻な話は避けがち』『本質的には真面目』『楽天的で前向き』『趣味は二の次、仕事で手一杯』『風邪をひきやすい体質』」(Yさん、27歳、制作会社編集)。

Yさんは小さい時から家では無口なお父さんを見て、「会社へ行くのが楽しいのだろうか?」と思いながら成長し、「将来会社勤めはしたくないな」と新卒で美術学芸員になったそうです。その後結婚して転職、現在は小さな制作会社で編集の仕事をし、「仕事に忙殺される日常」の中で、「彼なりにいつも精一杯だったのでは」と理解し始めると共に「お互いもっと人生を幅広く楽しむ」必要性を感じておられます。

私は企業の50歳代のキャリアデザイン研修をする機会が多いのですが、実は大手企業の管理職クラスの方で、Yさんのお父さんのような方が結構多いのです(一般化してYさんに申し訳ありません)。

その背景には、管理職という単線的なキャリア形成が大きな要因となって、大半の企業で「失敗できない」「減点主義」「どうせ言っても無駄」「出る杭は打たれる」といった企業風土を醸成してきたことがあげられます。そしてビジョンという燃えるような想いが眠ってしまうと、「風邪をひきやすくなる」というわけです。

ところでこのキャリアコーチングも今回で50回目を迎えました。正月休みがあったのでほぼ1年です。皆さんの回答を振り返って一番思うことは、「将来、本当にやりたいことがわからない」つまり自分のキャリアビジョンが見えない中、現実でもがいておられる方が多いということです。

それはやむをえないと思うのです。これまでの教育はほとんど「現状の問題点を明らかにして対策を打つ」か「現状をベースに改善する」か、どちらかのアプローチだったからです。「勉強しろよ」「努力さえすれば」「頑張れよ」「プロになろう」・…。それが急にビジョンといわれても困りますよね。

何より将来から発想するビジョン指向や課題創造型のアプローチは、高度成長、年功制の企業社会では必要なかったと言えます。あなたの両親も、そして両親の生き方を批判するあなた自身も知らなかったわけです。

ずっと昔、天動説から地動説に変わったコペルニクス的転換、それはパラダイム(思考枠組)の転換ですが、ビジョンからの発想というのはそれ以上の転換なのです。何故なら今は“天も動くし地も動くパラダイム”に変わろうとしているからです(笑い)。

そこでです。私に浮かんできたアイデアは、毎回回答してくれる人、読んでいるだけの人を問わず、意欲のある人は是非、「これからの1年、つまり百回目までに個々人、1つのプロジェクトに取り組んで欲しい」という提案です。

それは自分の強みと思う資質、能力、得意なスキル(漠然と思うものでもいいのです)、好きなことを使って(育てながら)、この1年で実現したいことを1つ選択し実現するというプロジェクトYです。転職、職場内の改善、絵を描く、小説を書く、新製品の開発、海外留学、資格を取る・・・・。もちろん、自分のキャリアビジョンにつながればベストですが、思いつきでも結構です。

プロジェクトYはNHKのプロジェクトXを意識して、マグレガーのY理論(X理論は人間は本来悪とみるのに対し、Y理論は性善説と言っていいでしょう)に引っかけています。

その実現したいことを仮のビジョンとして、そこから現実をにらみながら、新たな課題を作り、それに取り組んで欲しいのです。そこでの気づきや障害、戦略にフォーカスした回答ですと嬉しいですね。

最近参加したある会合で感銘を受けた言葉があなたをサポートしてくれるかもしれません。「人が持つ本質的な能力とは、私に何かができると想い続けること」(ジョン・レノン)。

ということで今週のエクササイズです。

●「これから1年間、あなたは自分の強み、得意なこと、好きなことを生か して、実現したいプロジェクトYは何ですか」

第49回 フライフィッシング

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたが抱える今の課題や問題から見えてきた、あなたの理想の姿を描いてみてください。できるだけ冒険して一日のスケジュールを具体的に描いてみてください」でしたね。先ず一通紹介させていただきます。

「朝7時起床。好きな音楽を聞きながら朝食の準備。ダンナと今日のお互いのスケジュールを話しながら朝食。今日はパーソナルカラーやカラーセラピーのセッションを受けに女性クライアント4人が来る予定。お花を活けたり、中国茶を用意する。夕食後、一時間は電話でカウンセリング。その後はダンナと一杯やりながらビデオ鑑賞」(Yさん)。

Yさんは現在、企業で一般事務をしながらカラーセラピーなどのプロを目指し勉強中だそうです。3年後は海のそばでオフイス兼用の一戸建てに住み、「月に1,2回はダンナと娘と一緒に海岸に行って貝殻やガラスの破片、流木を集め、『海からの贈り物』と題してワークショップをしたいです」。イメージが伝わってきますね!

さて、前回、バックキャスティングについて話しましたが、これに関連してとても参考になるコメントがありましたので紹介します。

「バックキャスティング(Back casting)という言葉ですが、これは私の趣味のフライフィッシング(Fly fishing)の用語ではないかと思いました。フライ(毛鉤)を魚のいるポイントに投げ入れるために、竿を前に振る動作をフォワードキャスト(Forward cast)と呼び、その前に竿を後ろに振り力をためる動作をバックキャストと呼びます。フライフィッシングのキャスティングでは、バックキャストでキャスティングが決まるといっていいくらい重要な動作で、今回の話しにピッタリ当てはまるなと思ったわけです」(Nさん、35歳、電機メーカー勤務)。

このコメントを見て私も我が意を得たという感じです。後と前というのは、まさにその人の仕事を通じての人生体験の過去と未来ですね。未来という視点を持って現在、過去の体験をしっかり受けとめつつ、しかも軽やかにまた未来に向け直感的に選択する。それが私なりのキャリアコーチングの目指すところとピッタリ重なるからです。

Nさんはさらに「ちなみに最後のフィニッシュとなるフォワードキャストの前にバックキャストとフォワードキャストを何回か繰り返して方向と距離を調整することをフォルスキャスト(False cast)と呼ぶのですが、最終的な職業に就く前に何回かの誤り(Falce)も必要ということも含まれているのかもしれませんね」とも語っておられます。

これも素晴らしい指摘です。今の仕事であろうと転職しようと、自問自答の繰り返しや、失敗の体験も、やりたいことを明確にしていくプロセスとして大切なことだと思うのです。そして、それが本当の意味でキャリアを形成していくのではないでしょうか。Nさん、素晴らしいコメントをありがとうございました。

ところで、フライフィッシングといえば数年前に観たロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」という映画の場面を思い出します。「全てが1つに溶け合った、その中を川が流れる」という意味だと思いますが、モンタナ州の山間の渓流でのフライフィッシングの美しい場面は今でも目に浮かびます。

牧師の父と母の元で成長する2人の息子の話です。長男は故郷を離れて文学の大学教授になり、次男は新聞記者になる。その成長の過程で、父と子、あるいは兄弟間の葛藤があっても、フライフィッシングをする時は、お互いの繋がりを取り戻します。

自然の美しさもさることながら、天職意識を持って牧師を勤める父が、2人の息子が選んだそれぞれの職業をまた天職として静かに受け入れていく姿は、心に残るシーンでした。

私の父はもう10年前に亡くなりましたが、父の性格や生き方、仕事に反発し、全く違う職業を選んだのですが、最近とみに自分のキャリア形成が父の影響抜きには有り得ないことを痛感しています。

そこで今週のエクササイズです。

●「(たとえ好きであろうと反発していようと)あなたは父親の資質や強み・ 弱みのどんなところが似ていますか。思いつくことを是非教えて下さい」

第48回 バックキャスティング

こんにちは、楳林です。朝晩めっきり涼しくなりましたね。先週のエクササイズは「何度も聞くことになりますが、あなたが本当に好きなことは何ですか」でした。何通か紹介させていただきます。

「簡単そうで難しい。本当に好きなこと・・・。この間、美容院でシャンプーしてもらっている時、荒々しいコンクリート剥き出しの天井を見ていて、マンションの現場管理をしていた時のことを思い出し、私は現場にいるのが好きだったなーと強く思いました」(Iさん、30歳)。

私も昔は取材の現場、そして今は研修やワークショップの現場で、緊張とワクワク感の中での人との交流が好きです。Iさんは建築設計屋さんだそうですが、現場のどんなところが好きですか。具体的に教えてください。

次に似た回答を二通紹介させていただきます。「本当に好きなことがわからないのです。ただ中学の時は漠然と通訳になりたいと思っていましたし、ずっと英語を勉強したい、という思いがついてまわっていました。もう一回自分の気持ちに向き合って勉強を始めたいと思います」(Mさん、41歳)。

「13年勤めた大手銀行を辞めて、やりたいことを現実にするため転職活動中です。本当に好きなことは、実力も経験もないけど翻訳をやりたい。きれいごとではなくて、好きなことをやるために、もっと努力したいと思っています」(Oさん、33歳)。

御二人の回答を取り上げさせてもらったのは、是非、紹介したい人を思い出したからです。私の愛読書の一つである『ときどき思い出したい大事なこと』(著者はディック・ライダーさん)の翻訳者で、半年ぐらい前に自ら『朝二時起きで、何でもできる』を書かれた枝廣淳子さんという方です。

彼女は主婦で米国に生活した二年間で同時通訳と翻訳家への道を実現したばかりでなく、その後環境ジャーナリストとして活動されておられます(すごいですね!)。二時に起きる、というのは夜型の私にとっては無理な話ですが、それ以外の成功のための考え方、やり方が、私も研修プログラムで採用していて、とても共感できるものでした。

それは「バックキャスティング」という考え方です。これは、現状がどうか、どういう問題に直面しているかはひとまず置いて、「かなえたい究極の目標、理想の姿」を先ず描き、そこから現状を振り返り、「ではあそこに行くためには、何をすべきか」を考えるという方法です。現状でなく、「目的地」から「バック」に投げる(キャスト)のです。

具体的には、ステップ1「どんな自分になりたいかを思い描く」。全てうまくいったら、どうなっているか。この「究極の姿=ビジョンを描く」作業をビジョニングと呼ぶそうです。コツはできるだけまざまざと描く。どういう場所で、誰と、何を、どのようにしているか、どんな気持ちで、どんな服を着て、という具合にです。

ステップ2「自分の理想の一日を思い描く」。枝廣さんは夢に描いた同時通訳者になってしばらく満足していましたが、そのうち、「これでいいのかな?自分が本当にやりたいことはなんだろう?」と思ったそうです。そして「5年後、こんな風になっていたい」と思う理想の自分の一日なり一週間なりのスケジュールを具体的に書いてみることで、「通訳は英語を磨くいい方法だが、本当にやりたいことは環境問題の専門家」ということに気づき、それをスケジュール表に記入して実現させていったそうです。

また、枝廣さんは「目標」に対して、「計画」を立て、「行動」してみて結果を「チェック」、「もう一度行動」することを繰り返して目標に近づく「自己マネジメントシステム」もしっかりやっておられます。Mさん、Oさん、是非チャレンジしてみてはどうでしょうか。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが抱える今の課題や問題から見えてきた、あなたの理想の姿を描 いてみてください。できるだけ冒険して一日のスケジュールを具体的に 描いてみてください」

第47回 好きなことをそろそろ始めませんか

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたの思い出す花園、楽園があったら紹介してください」でしたね。先ず一通紹介させていただきます。

「夏の日。熱気を含んで、でも少しは涼しくなった夕風が、窓からさわっと流れ込んで、外ではセミが鳴いています。薄青い空気は、夕暮れ前の一瞬のものです」(Nさん)。

Nさんはこのシーンに「ぞくぞくとするような,たまらない懐かしいような気持ち」、そして「深い深いところにしみついたような気持ち」になるそうです。何故懐かしいのでしょうか。それはその場面とあなたは分離せず、溶け合っているからです。そのシーンはあなたそのものなのです。Nさんの花園に登場するセミは自己変容の象徴ですし、「さわっと」という夕風、「薄青い」空気はあなたの気質、資質を表しているかもしれません。そんな風に皆さんも自分の花園をちょっと自分自身だと感じながら見直していくと、そこにあなたのまだ気づかない本質が見えてきませんか。

Nさんだけでなく、「それがどうしてビジョンと関係があるの」という質問が目立っています。あなたの花園,楽園は汲めども尽きせぬあなたの心の井戸、泉なのです。そこに単なる未来指向のビジョンでなく、未来に帰る故郷のような、そして存在レベルの深いビジョンがある、と私は思っています。時間が静止して永遠と繋がる場所です。

もう一通。「冬の早朝、小さな愛犬と一緒に近所の川沿いを散歩している時、日の出と共に空だけでなく、まわりの空気の全てが、足元まで金色に染まりました。私はごく自然に『どこかに神様が降りているところだね』と愛犬に話しかけていました」(Iさん)。私も7、8年前、カナダでインディアンのビジョンクエストに参加した時、生まれて始めて夜明けから夕暮れまで太陽を見ながら「自分が太陽の子だ」と感じたことを思い出しました。

ところで私はこの三連休の間、パートナーと一緒に湘南国際村で一年ぶりに三日間のワークショップを行いました。参加者は私達を含め12人と小規模でしたが、とても楽しい旅でした。

再び音楽の勉強を始めたN君、カラーコーディネーター志望のYさん、自作の漫画を毎週送ってくるE君、建築家のS君、看護婦さんのKさん、米国手話の先生のNさん、トレーナー志望のM君、農業を目指すKさんら30歳代が中心です。共通の課題は「本当にやりたいことを見つけ、どうやって実現していくか」ということでした。

私とパートナーとM君がビジョン心理学やコーチングの手法でプロセスをリードする一方、参加者が絵画療法や音楽、ダンス、太極拳など自分の得意技を持ち寄り、みんなをリードすることで、とてもバラエティに富んだワークショップになりました。

「本当にやりたいことを見つけたい、実現したい」「でもそれで経済的に自立するのが難しい」「生活のための仕事に追われて、本当にやりたいことをやる余裕がない」「自信がない」・・・。そんな悩みをワークの中で気づきを持って解きほぐしながら自分を前に進めていく旅といっていいでしょう。

ワークショップを追えて帰宅し、メールを覗いたら、愛読する翻訳家の山川夫妻のメルマガがこんな言葉で始まっていました。

「自分が本当に好きなことをやりなさい。お金はついてきます。マーシャ・シネター(聖なる知恵の宝石箱)」

今回のワークショップでの結果と同じでは、と苦笑してしまいました。これってシンクロナイゼーション(同時性)というのでしょうね。たとえ仕事にすぐに結びつかなくても、本当に好きなことを始める時なんですね。

ということで今週のエクササイズです。


●「(何度も聞くことになりますが)あなたが本当に好きなことは何ですか」

第46回 あなたの花園を想い出す

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「当てにしていないものを偶然発見した、あなたのセレンディピティの体験(キャリアに限定しません)を紹介してください」でしたね。何通か紹介させていただきます。

「私のセレンディピティは、模擬司会の材料を探していた時、雑誌で偶然見つけた『ワインと日本酒の、美味しい楽しみ方』レッスンです」(Fさん)。

Fさんは、小さな頃お父さんがヨーロッパ出張から帰るたびにワインのビンを持って帰ってきてはワインについて教えてくれたそうです。学生時代はワインやビールの試食販売で売上げトップ、さらに嫁ぎ先では、日本酒の作り方を教えてもらうなど、偶然にお酒が身近にあったそうです。だから、「今回も楽しく勉強し、模擬司会も成功した」のは当然ですね。

「好きなことがあると、毎日がきらきらしているような感じです(この表現は本当に感動しますね)。そして周囲の人にその気持ちを伝えると、さらに新しい情報が入って来たり、人との繋がりが出てきます」というFさんの次なる興味は「ビールのソムリエ」だそうです。

もう1通。「梅原猛氏の聖徳太子の著作を読み、太子に非常に興味を持っていた頃、母に連れられて行った太子に全く関係のない白豪寺で、ずっと見たいと思っていた聖徳太子二歳像に出会えたこと」(Tさん)。太子のどんな点に興味を持たれたのでしょうか?

今回の多数の回答はそれぞれ「へーっそんなことがあるんだ」ととても楽しく読まさせてもらったし、それ以上に書いている人達が活き活きとしていて、私1人で見るだけではもったいないほどでした。ただ偶然かどうか,回答した全員が女性でした(私のパートナーには羨ましがられました)。

ユング的な発想によると、男女とも男性性、女性性があり、女性性こそが偶然性や創造性や深いビジョンを受け取れるということです。今回の回答が女性ばかりだったというのは、これまでの企業社会で男性が女性性に蓋をしている傾向があるのかな?なんて思ってしまいました。

ところで。最近の東京電力の原子力発電所での故障発生データの虚偽記載事件は私にとってもショックなことでした。なぜなら私自身、かって新聞記者として福島支局で原発取材をし、またその後エネルギー担当で東京電力の記事を多数書いていた経験があるからです。今回名前の出ているトップの中には取材で親しくなった方もいます。何故こんな事態を招いたのでしょう?

東電だけでなく、最近の雪印食品、日本ハム、三井物産など日本を代表する大手企業の不正、表示改ざん、申告漏れといった不祥事の原因は、企業倫理の欠如という観点で批判するだけではすまない問題だと思っています。ある意味で問題になった企業だけがひどいのではなく、現在のほとんどの企業に共通する課題があると私は思っているのです。

その共通する課題とは,1人1人が自分のビジョンを忘れたり、見失っていることだと思います。この人生で本当にやりたいこと、ビジョンを実現する場として企業があるのではなく、どこかで生活のために諦め、妥協し,いつのまにか会社のビジョンや目的に同化して生きてしまってるのではないでしょうか。

これは、40~50歳代だけでなく、20~30歳代の方も同じ課題に直面していると思います。自立して自分のこれからの人生、キャリアを設計するためにも自分のビジョンをしっかり見つけたり思い出したりすることは、本当に大切なわけです。

ビジョンを見つけるためには、自分の価値観(自分にとって大切なこと)にしっかり気づくと共に、やわらかい感性や共感性が必要です。前回のセレンディピティとか、偶然性に反応できるようになることも役立つことです。

さて、今回のエクササイズを考えるにあたって浮かんできたのは「自分の花園、楽園を思い出す」ということでした。私の場合、小さな小川に沿って咲き乱れる花々の間を蝶々が飛び舞っている世界を想うだけで、その匂いと蝶々を生き生きと感じることができます。子供時代に体験した完璧な世界ではないかと思っています。そして、この感覚は私のビジョンにも繋がっているようです。

ということで、今週のエクササイズです。


●「あなたが想い出す花園、楽園があったら紹介してください」

第45回 セレンディピティをキャリアに生かす

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたという魂(スピリット)はこれから両親(お母さん)のお腹に入っていきます。さあ、どんなことを感じていますか?そして今、やり遂げたいと思っていることは何ですか?」でしたね。

「今まで他人のよい点を伸ばしてあげようとし、自分は他人の目ばかり気にし過ぎていたので、今度は自分を思いっきり表現すること。自分を表現するといっても自分でよくわかっていないのですが,自分をうまくプロデュースしたい」(Nさん、34歳)

Nさんは投資企業への不動産コンサルタントを辞めて、現在ブランドデザインの営業をしながら、「本当に自分の魂から好きな仕事を起業できたら」と模索中だそうです。何より自分のよい点を認めそれを伸ばす時です。

両親、家族に対する思いも何通かありました。「両親に感謝の気持ちを伝えたい」(Tさん、32歳)「両親を幸せにするのが私の努め」(Nさん、28歳)「家族の平和を願いたい」(Iさん)。その時、両親・家族が世界の全てでしょう。それがあなたの今の世界に対するミッションだとしたら、何を感じますか。

今回の問いは決して科学的に実証できるものではありませんが、一種の催眠法で自分の中にある潜在意識を探るヒントになると思います。ついでにもう1つ。チベット仏教によると「オギャーッ」と生まれた瞬間、全てを忘れるそうです。が、それを思い出すことが、一生の旅なのかもしれません。

ところで最近、ふと本屋で見つけた『偶然からモノを見つけ出す能力』(澤泉重一著)で取り上げている「セレンディピティ」という言葉が私の興味をひきつけました。創造性やキャリアとも深く関連すると思うので、今回は、これを紹介したいと思います。

セレンディピティというのは「当てにしていないものを偶然にうまく発見する能力」という言葉で、1754年に英国の文筆家、ホレース・ウォルポールが手紙の中で使った造語だそうです。分かりやすい例でいえば、「旅行で使うカメラを探していたら、旅行先の良いレストランを紹介した本が思いがけず見つかった」などはこの才能が作用しているというわけです。

もともとはセレンディップの国(今のスリランカ)の王様が、当時、3人の王子に、国を荒らしていたドラゴンを退治するための巻物を探すため修行の旅に出させたという寓話からきているそうです。肝心の巻物を発見することは出来なかったが、3人の王子はそれぞれ才能を発揮するようになったといいます。

「思いがけぬ古書の発見」、「結婚相手の発見」からカオス理論といった偉大な発明発見まで、実はこのセレンディピティが発揮された結果と言われるとますます興味が湧いてきます。セレンディピティの向上法はまず楽しむことだそうです。面白くなり興味が湧けば、日常生活、芸術、スポーツ、研究開発に応用できるとありました。そして興味が湧けば湧くほど「偶然」と「察知力」が組み合わさった「偶発力」という感性が磨かれるそうです。

これってキャリアにも当てはまりそうじゃないですか?。私もこれまで新聞記者、研究員、研修講師、キャリアカウンセラーなどの仕事を経験してきました。が、振り返ってみると、ちょっとした偶然の出来事や人との出会いから道が開けたり、チャンスが来たり。あるいは失敗したことにだって意味があったように思えます。

ということは、自分のビジョンや目標はしっかり持つと同時に、セレンディピティに対する感性(偶発力)をより研ぎ澄ましておくことで もっと偶然のチャンスを取り込むことが出きるのではないでしょうか?以前紹介したクランボルツ先生の「計画された偶然理論」(第15回)にも似ていますね。

セレンディピティの本の著者の澤泉さんは“偶然”とは「神からの贈り物」あるいは「神の罠」と言っていますが、偶然って本当に不思議ですよね!

ということで今週のエクササイズです。

●「当てにしていないものを偶然発見した、あなたのセレンディピティの体 験(キャリアに限定しません)を紹介してください」

第44回 今、何を感じていますか

こんにちは,楳林です。

先週のエクササイズは「棺桶に片足を突っ込んで、ふと自分の人生を振り返ったとき、何をもっとやりたかった、と思うと思いますか」でしたね。いつもより回答数が多かったですね(私にこの質問をくれたYさん、ありがとう!)。何通か紹介させていただきます。

「皆様に心から喜んでいただけるような披露宴司会を、1組でも多くしたい」(Fさん)。

Fさんは2年前に健康と仕事の両面でとても辛い体験をされ、自殺を考えたことすらあったのですが、そんな時に友人の披露宴の司会をして、「こんな自分でも、誰かに感謝されることが出きるのだ」と思ったそうです。現在はアナウンス学校に通いながら発声・発音の基礎から勉強中だそうですが、きっと、そんな体験の中でこそ自分の天職を感じられたのでしょうね。

「きれいな言葉は、きれいな心から生まれるということを学びました」というFさん。「今日を大切に生きること、自分を大切にすることができる人は、他人に対しても思いやりの心を持つ、魅力的な人であると知りました。」司会の勉強を続けることは、素敵な大人になるためのレッスンだと思っています。自分が死んだ時、一人でも多くの人の心の中に、素敵な思い出が残っているよう、司会デビューに向けて、頑張りたいと思います。」Fさん、頑張ってください。そして、沢山の方にいっぱい感謝されてください!!

ところで今回、けっこう多かったのが「何も思わないようにしたい」「なさそうだ」「思わないように、毎日を過ごしたい」といった回答でした。心構えとか「べき論」としてはわかるのですが、ちょっと物足りない感じがしています。

コーチングでは「スペースチェック」と言ったりしますが、自分の意識を内側に向けて「今自分が何を感じていますか」とよくチェックします。「ワクワクしている」「怒っている」「悲しい」といった感情に優劣も良い悪いもありません。ただスタート台に立ったということです。

「棺桶に...」・・・「ワーやだな」「ゲーッ」「寂しい感じ」「もう人生終わりか...」「ふと振り返る?」「私の人生を」・・・ きっと短時間に色んな感情が交錯しますよね。そんな感情をしっかりキャッチしながら直感を使って自分の中へ短い旅を楽しんで欲しいのです。例えば、こんな回答を見ると私は嬉しくなります。「私がもっとやりたかったと思うのは、[1]私をバカにしたり傷つけた人に文句を言いたい。[2]私が傷つけてしまった人に謝りたい。[3]過去の怒りや罪悪感、執着を手放して心豊かな毎日を過ごすこと」(Mさん)。

「直感的に浮かんできたのは、もっと人のために生きたかった。私は向上しようと努力して生きてきた。おかげで誇れる仕事もできた。誇れる経験もした。でも、まわりの人のために、地味にやさしく尽くしている人達が、何故かすごくえらく見える。自分がちっぽけに思えて悲しい」(Nさん)。

エクササイズをちょっと感じてみて、回答することが自分の中の未処理なことや新たな課題を浮上させるきっかけにしていって欲しいのです。

その気づきの中から「自分がこの人生で本当にやりたいこと」のヒントを見つけてくれたら、私としても毎週エクササイズを出すやりがいがあるというものです。

今回は皆さんの回答に対する返事で終わってしまいました。できれば1日に何回かちょっと立ち止まって「今何を感じているのかな」と自分の内側をチェックする習慣をつけてみてはどうでしょう。

ということで今週のエクササイズは,未来に来る死ではなく,過去の生を受けた時に旅してみましょう。じっくり感じてみてください。


●「あなたという魂(スピリット)はこれから両親のお腹に入っていきます。 さあ、どんなことを感じていますか?そして、今、やり遂げたいと思っ ていることは何ですか?」

第43回 精神性とキャリア

こんにちは、楳林です。お盆休みの宿題は「20年後のあなたから見て現在の私の状況に大きな違いを与えるために、私が今すぐとれる2つの行動は何ですか」でしたね。何通か紹介させていただきます。

「先ず、[1]整理整頓、[2]鮮やかでプラスのイメージトレーニング。[1]はしなきゃ、した方がいいと思っているのに、出来ていないことをすることで今を楽しんで充実させる。いわば体内(思考や環境も含めて)の悪い部分を取り除いてから、将来のプラスのイメージという良いものを吸収するというシンプルな方法です」(Oさん)。

いいですね。私もお盆の後半は普段出来ない部屋の中の本や資料の大整理をして、気持ちよく次のステップに取りかかろうとしているところです。

もう1つ。「1つは自分の価値観にあった米国の大学でさらに専門的に勉強してエデュケーションリッチを目指す。もう1つは海外とのメール交換や国内での行動半径を広げること」(Sさん)。

Sさんは4年前までニューヨークで投資顧問などで働き、結婚して日本に来たそうです。家族と楽しい場所に行くとか、相手を見極めきちんとした人と交流するなど行動を通して情報の収集や友人関係を作るという姿勢がハッキリしていて、見習いたい点です。

一方、私への質問も1通紹介します。「棺桶に片足を突っ込んで、ふと自分の人生を振り返った時、何をもっとやりたかった、と思うと思いますか」(Yさん)。

私も時々、この質問を研修で使う時があります。当然この問いは自分にも帰ってきます。数年前、体調が凄く悪かった時、「このまま死んでいっていいのだろうか」と夜中に一睡も出来ないまま悶々と考えたことがあります。

一言で言えば、「スピリチャリティ(精神性)、魂、あるいは天命、天職といったことを仕事や日常の世界に根付かせたい」ということです。以前は変な奴と思われるのが嫌で黙っていましたが,今は若い仲間と一緒にJSWA(ジャパンソウルワークアカデミー)作りを進めているところです。

一人一人が自分のビジョンや才能を思い出し,使命や天職を人生で実現していくための学びと実践を続けるためのコラボレーションといったらよいでしょうか。こうした精神性を宗教とか教会の世界でなく,ビジネスとかキャリアの世界で展開したいのです。

でも普段の仕事に追われていると、いつのまにか私自身、ハードワークにはまってしまいます。まだまだ道は遠いですね。そんなわけでお盆前半はまた名古屋で開かれたビジョン心理学のワークショップに参加して今の自分の課題に挑戦していたわけです。私への質問に関連して,今回はそこでの体験を紹介したいと思います。

ワークショップの中で魂とか天命とかがテーマになると、先ず誰でも怒りが出てきます。それを感じていくとやがて絶望感とか無価値感、無意味感に直面し,さらにそれを感じ続けていくうちに、やがて自分の精神性やビジョンに突き当たるわけです。

本当に不思議です。誰でも小さい時はスピリットに溢れていた。が、ある出来事で傷つき、スピリットだけではなく、自分のビジョンや人との繋がりさえ見失っていってしまう。ならば、今度はその逆のプロセスをやれば良いのです。大切なのはもう一度選択をするということなんです。

ということで今週のエクササイズはYさんの質問を取り上げたいと思います。

●「棺桶に片足を突っ込んで、ふと自分の人生を振り返った時、何をもっとやりたかった、と思うと思いますか」

第42回 ライフ・キャリア・バランス

こんにちは、楳林です。お盆休みどう過ごしていますか。私は名古屋で13日までチャックスペザーノ博士のヴィジョン心理学セミナーにスタッフとして参加しています。

先週のエクササイズは今までと違って「私(楳林)に質問したいことを教えてください」でしたね。思いがけない質問もあってビックリしたり焦ったりしています。今回は「なぜコーチングというお仕事を選んだのですか。あなたがその仕事をしていて一番幸せだと思う瞬間はどんな時ですか」(Iさん)にお答えしたいと思います。

コーチもいろんなタイプがあると思いますが、私の場合、まずビジョン心理学を通じて「全ての人は意識の深いレベルに独自の才能とビジョンを持っている」ということを体験しました。その後、キャリアカウンセリングでキャリアに対する問題意識を育てました。だから、コーチングでやっと自分に合うスタイルを見つけたという感じです。

ビジョン心理学を通じて「独特の共感性」を伸ばすことが出来ましたが、コーチングとの出会いによってそれを生かしながらも前に進む力や仕事に結び付けられるようになったと思っています。また自分の中に「ネガティブな問題提起者」と「無思慮な行動派」が対立していましたが、それが3つのプロセスを経て統合されてきたと思っています。

一番充実感を感じる時は、クライアントとのやり取りを通じて、その人の中にある才能やビジョンに気づいたり、解決策や答えを一緒に見つけた時ですね。以前はうまくいかず、落ち込む時もありましたが、最近は「それもプロセス」と流せるようになりました。答えになっているかな?(今後も質問にも出来るだけ答えていきますので宜しく!)

ところで、私自身、今年初めのキャリアコーチング(第11回)で2002年を「ライフキャリア元年」と位置付け、「ライフとキャリアを一体として捕らえる意識変革の必要性と、それなくして企業も本当の構造改革にならない」と書きました。

私は今企業研修の形で30~50代の方に対して「ライフキャリアデザイン研修」を実施しています。当初はリストラと絡むケースの多かったキャリアデザイン研修も、最近はリストラと全く関係なく、全社員に受講させるような動きさえ強まっています。

そんな中、今回は、パクさんという女性が書いた「会社人間が会社をつぶす」という本のなかで提案している「ワーク・ライフ・バランス」に共感することが多かったので、これを紹介したいと思います。パクさんは米国で大学院を出て外資系の会社に勤務、結婚して“仕事と家庭の板ばさみ”に苦労する中で、米国の「ワーク・ライフ・バランス」セミナーに出会ったのをきっかけに、これを日本に普及させようと思い立ち、それを仕事として手がけているそうです。 ワーク・ライフ・バランスとは、やりがいのある仕事と充実した私生活―人間関係、自己成長、健康、家庭など-を両立させることで、そのほうが個人も生き生きするし、会社も業績が向上するという考え方です。

でもそのためには、個人は意識改革のために自分を良く知ること、そして本当にやりたいこと、大切なことは何かを知る必要があるし、会社もそれ以上に意識変革が必要であるとして、そのためのコンサルティングやセミナーを開催しておられます。

ただ、パクさんが著書で紹介している「ライフ・バランス・セミナー」(一部だそうですが)は企業研修のプログラムに比べると、私がコーチングやキャリアカウンセリング、或いはビジョン心理学で体験したり、私個人で使っているセッションやプログラムに近く、ちょっとうらやましい気がします。そのうち、この「キャリアコーチング」読者対象にライフキャリアのワークショップをやれたら良いな、と思ったりもしています。

ということで今週のエクササイズは、「ライフ・バランス・セミナー」のセッションにある「未来の私との対話」(ビジュアライゼーション)でちょっと20年後のあなた自身になっていただきます。

●「20年後のあなたから見て、現在の自分の状況に大きな違いを与えるために、 自分が今すぐ取れる2つの行動は何ですか」

第41回 こだわりについて

こんにちは、楳林です。暑い日が続いていますね。先週のエクササイズは「今の置かれた状況で、実現したいと思う事と、それを支える大切にしたいと思う価値観は何ですか」でしたね。何通か紹介させていただきます。

「編集の仕事をしていますが、とにかく新レーベル創刊を成功させること。プライベートでは人間関係を広げ、つながりを大切にすることです。そして大切にしたい価値観は自分が面白いと思い、ワクワクする物を世に出すことです」(Iさん、28歳)。

Iさんは久しぶりの回答ですが、自分がワクワクする感じを大切にしていれば、きっとうまくいくと思いますよ。チェック材料にもなりますね。

もう1通。「結婚した時の情熱、『自分の店を持つ』という夢に向かっていた時のワクワク感を取り戻し、女性らしい豊かさを身につけて新たなビジョンにコミットしたい。そして大切にしたい鍵は『手作りへのこだわり』かな・・」(Mさん、40歳)。

何か1つ実現したら全て実現するような気がします。みな繋がっていますね。実現したいことを1枚の絵で表現してみてはどうでしょう。特に「新しい手作りが何か」が見つかるといいですね。

ところで、私も最近自分のこだわりについて、新しい気づきがあったので今回はそれを取り上げたいと思います。前々回に書いた「アクションラーニング」では、「本当に聞くべきこと」を質問することが問題、課題を明確にし、課題解決につながるということを紹介しました。

この「質問する」ということが私にとっての人生のこだわりだったのです。ただ、このことに改めて気づくのに、私は多少時間がかかりました。

でも、こだわりの始まりは多分5,6歳からでした。「どうして?」「何故」を連発して両親を困らせたと、もう亡くなった母から昔、聞かされたことがありました。そして大学を卒業してから20数年間、新聞記者として、質問し続けたわけです。「小さい時と変わらないわね」と何気なく母から言われたことも思い出しました。

コーチングに初めて出会った時も、初めてだとは感じないくらいでした。しかし、今回、アクションラーニングに出会って、やっと自分のこだわりが何なのかに気がついたのです。

今回、私が経験したように、コーチングやアクションラーニングでお互いに行う質問プロセスは、自分の本心に気がついたり、課題を解決してくれます。

そして、幼少からのこだわりを成長させてくれます。更に、このことは、コミュニケーションや人間関係のありかた、さらにビジョンにも関係していることだと思います。

なお、アクションラーニングでは、質問能力の育成と同じ位、リフレクション(考えを呼び起こし、分析し、理解しようとする内省的思考方法)が重要な構成要素になっています。が、今となっては、「あ~これも自分の性癖だな」と思い苦笑をしたくらいです。

いずれにしても自分の「こだわり」をしっかり見つけることによって、さらに奥にある価値観やビジョンの入り口になる、という気がしています。但し、コーチングでは「こだわり」も時にはグレムリンの策略になるかもしれないのでご注意!とのことです。

ということで今回のエクササイズはいつもと逆の形で行ってみましょう。

●「私(楳林)に質問したいことを教えてください」

第40回 見えない糸でつながる

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「キャリア、あるいは仕事を通してあなたが達成したい事は何ですか?ゴール達成を阻んでいるものは何ですか?それに対しあなたは何が出来ますか?」でしたね。先ず一通紹介させていただきます。

「達成したい事は人の立場に立ったアドバイスや行動が取れる人間になる事。阻んでいるものは拒まれることを恐れる気持ち。出来ることは自分からぶつかっていく度胸、コミュニケーションを大事にすること。自分を否定しないこと」(Oさん、33歳)

Oさんは13年働いた大手銀行を退職し、本当にやりたい事に向かってキャリアを構築しようとする第一歩を踏み出したそうですね。先ず、人の立場に立ったアドバイスや行動をとっている時どんな感じがしているのか、その感じを大切にしてください。

なお、「拒まれる恐れ」というのは、コーチングではグレムリンと言います。人が前に進もうとするのを妨げようとする「自己制限的な思考」、よく「悪魔のささやき」と言います。この声に気がついたら手放すだけでよいのです。あとは前に進むことです。

他の回答の傾向を見ると、達成したいことは「自己実現」「自己成長」「幸せ」などが目立ちます。阻んでいるのは「覚悟、情熱の不足」「諦め」「迷い」「気分&感情の波」など自分の内側にあるグレムリンのようですね。それを認め、受け入れれば大きな前進です。あとは出来ることを選択するか、先延ばしするかだけですから。

さて、私は先週末、コーアクテイブコーチングの3日間のワークショップにアシスタントとして参加しました。フルフィルメント(充実感)コースといって、自分が生き生きとした感じを取り戻すコースでした。そこでの私の体験を紹介したいと思います。

参加するにあたって、生活、仕事の面で充実感を感じるため、最近ハードワークですっかりおろそかにしていた「精神性(スピリチュアリテイ)を大切にする」という価値観をしっかり感じるというのが私のテーマでした。

しかし、ワークショップの初日、アシスタントとして受講生の後ろで見守っていると日頃の疲れも出て睡魔との戦いが続きました。ヴィジョン心理学のセミナーなら受講生のサポートに動くのと違って、受講生のワークを静かに見守り続けるというのは結構辛いものがあります。

「これでは無駄な3日間になる」と反省して、2日目の朝、「その場に居ながら、受講生と一緒にフルフィルメントを感じよう」と決めました。午後の「やりたいがやれないでいること」というセッションをセルフコーチングしていると、あちこちから聞こえてくる質問を、あたかも自分に対するものと思って答えているうちに、突然、受講生全員とまるでエネルギーで繋がっているような素晴らしい体験をしました。

リーダーとアシスタントではさむ形で受講生に安全な場を提供し続けるというのは、ちょうどこのエネルギーというか波動で繋がることなんだと思いました。急に一人一人の表情が生き生きとして感じられ、3人1組になったコーチングのロール・プレーイングが、まるで「ソウルダンス」(魂のダンス)をしているように感じれた時には思わず私も興奮しました。

「この感じを普段のキャリアデザイン研修でもトレーナーとして感じ続けることが出来たら、きっと私もワクワクするだろうし、受講生も今まで以上に気づきや自分のビジョンを描けるようになるのでは」とも思えたからです。

私にとって精神性とは、自然の中で一人修行をすることで会得するのではなく、普段の仕事とか人間関係といった日常の中でも、まるで見えない糸で繋がっているようなものに思えます。それがある時たとえ一人でいようと自分なりに充実した日々を送れるような気がしました。

もちろん、今回のワークショップで突然、この見えない糸を感じるようになったわけではありません。この1,2ヶ月、研修やコーチングをしながら、これが今の自分の課題と思って色々取り組んできたという準備があってのことだと思っています。

とにかくハードワークしながらも、先週末は豊かな週末を過ごさせていただきました。次は自然とも見えない糸で繋がればいいなとも思っています。

ということで今週のエクササイズです。


●「今の置かれた状況で、実現したいと思うことと、それを支える大切にし たいと思う価値観はなんですか?」

第39回 アクションラーニング

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「今あなたの周りで起きている問題は、あなたにどんなキャリア上のチャンスを与えようとしていますか」でしたね。先ず一通紹介させていただきます。

「今月から転職で連結会計ソフトウエアパッケージの会社に勤めています。前職が半導体の海外営業であったため、会計知識、業界知識もわずかで、仕事の進め方も全く違い、悪戦苦闘(問題だらけ)の毎日です。でもここでのチャレンジが遂行能力を身につけられるチャンスと思って取り組んでいます」(Aさん)。

Aさんはまた、この新しいチャレンジが「今後、ゼロから始める新入社員の指導にも役立つ」とも考えられておられます。そうですね、それがキャリアの成長ですね。

もう一通。「購買部門に移動して3週間。これまで36社と取引してきた名刺の印刷をコストダウンのため、今後は競争入札で1社に絞ることを説明することになりました。これまでの「共存共栄」から「効率」への転換という会社の方針で良いのかどうか…」(Nさん)。

Nさんは前回の「会社の状況は、実は自分の深層や価値観の現在の状態を見せてくれている」という視点をさっそく実行して、「自分の中の効率ばかり追い求める理想像の矛盾」を感じておられますね。

そこでもう一歩進んでみませんか。「競争入札に勝つ1社と落選する35社を自分の中の成功、失敗の体験の数として感じてみてください。そこから36社それぞれどんなプロセスを辿るでしょうか」。Nさんは「割り切らないビジネスモデルを実現できたら」と思っていますが、そこへ一歩進むビッグチャンスかもしれません。失敗からも学ぶことは多いものです

ところで私は先週、また新しい出会いがありました。ある人材開発のセミナーで米ジョージワシントン大学のマイケル J.マーコード教授の「アクション・ラーニング」の講演を聴いたことです。今回はこれを紹介したいと思います。

マーコード教授の定義する「アクションラーニング」というのは、小グループが現実に起きている問題に取り組み、行動し、その過程で学習することにより、個人の成長、チームワーク、リーダーシップ、組織開発が一貫して同時に変革していくというものです。

その手法はというと、「本当に聞くべきこと」を質問し合うことによって問題、課題を明確にし、新しい考え方の道を切り開き、創造的になっていくというシンプルなもので、まさしくコーチングの延長にあるものです。実際、「ラーニングコーチ」がグループの相互作用を促していきます。

質問の力が問題解決に繋がるだけでなく、学習機会を増やし、チーム力を高め、対話の基盤として機能しながら、変化と発展を生む感受性を育てていくというわけです。

さらに興味深いのは、この「アクションラーニング」の始まりは90年前、不沈船と言われたタイタニック号が沈んだ日ということです。「アクションラーニング」の創始者レグ・リーバンズ教授の父がタイタニック号の設計者に「この船が沈むことがあり得るか」と聞いた時、「氷山にあたれば」と思ったにもかかわらず口にしなかったといわれています。

何故口に出さなかったか。「馬鹿にされる」という恐れがかえって問題を大きくしたり、解決のチャンスを逃してしまうわけです。リーバンズ教授は「グループ内の問題は、思いがけない質問によって解決の糸口を見出す」ことに着目したわけです。

この1,2年、「アクションラーニング」はボーイング社、キャタピラー社など米国大手企業などで相次ぎ採用されているそうです。もしかしたら今後、日本企業でも広がるかもしれません。

ということで今週のエクササイズはアクションラーニング風に出してみました。

●「キャリア、あるいは仕事を通してあなたが達成したいことは何ですか? ゴール達成を阻んでいるものは何ですか?それに対しあなたは何が出来ま すか?」

第38回 戦略的なキャリア形成

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたはどんな価値観を一貫して大切にしている企業で働きたい(あるいは創業したい)ですか?」でしたね。先ず1通紹介させていただきます。

「最近、米国の化学会社に転職しましたが、この会社を選んだ理由は[1]人種や性別、年齢による差別がなく、あくまで人物本位で評価してくれる[2]これにより、社員を使い捨てにしたり、単なる歯車として扱うのではなく、一人一人を大事にし、温かくアットホームな会社、という印象を受けた」(Sさん)からだそうです。

Sさんは米国で転職されたようですが、日系企業の場合、日本女性であることが大きなハンデイと感じていたのに、この会社では逆に「セールスする上で他社と異なり目立つこと」という見方をしてくれたことを会社を選んだ3番目の理由としてあげています。

Sさんはこれまで大手総合商社のセールス・マーケティングから始まって、日系企業のプロジェクトのコーディネーションや大学の講師など多彩なキャリアを体験してこられています。今回の転職候補になった会社のほとんどが以前の会社でのSさんの顧客だったことから「人生どこでどのようにつながるかわからないので、常に全力投球、誠心誠意で働くことの大切さ」を再認識されているようです。

Sさんは、この会社を選んだ3つの理由は同時に「会社の価値観であり、その価値観を選んだ」とはっきり認識されています。もう一つ加えれば、多分Sさんの価値観でもあるのでしょう。「全力投球、誠心誠意」というのももともとSさんの人生への姿勢だと思います。それらがキャリア上の体験を通してさらにしっかりと自身が認識していっているようです。

Sさんの転職時の回答とは別に、既に長く勤めておられる方の回答も2通紹介します。「『サービスがいいから』『安いから』『安定しているから』というだけでなく、お客様や取引先に無条件で人間的に信頼されたら最高」(Nさん)「理想主義かもしれませんが、企業のトップが、企業理念について、もう誰も止められないくらい、とうとうと話せる情熱を持ち続け、それが戦略・会計処理等すみずみまで首尾一貫している会社」(Kさん)。

ただ、お二人とも、この視点から現在勤めている会社を見直した時、「コストダウンや効率化、アウトソーシングなどが進む中で、お客様とのつながりが、どんどん失われていっている」(Nさん)「入社した時に惹かれた企業理念が、あまりにおざなりになって、もうけ重視になっている」(Kさん)という葛藤に直面しているようです。

そんな時、多くの人は「それが企業の現実さ」「うちの会社も同じ穴の狢さ」と諦めて屋台で愚痴をこぼすか、もう少し燃える場所を見つけて転職していきます。少数の方は何とか会社を変えたいという意志を持ち続けて努力する人もいるでしょう。

しかし、キャリアの形成と深層心理から見たとき、こんな視点もあります。「その会社の状況は反発しながらも、実は自分の深層や価値観の現在の状態を見せてくれている」という視点です。とするならば、ただ会社を悪者にしたり、自分が被害者になるのではなく、自分もそうであるとまず受け入れることです。その上で、大切にしたい価値観を自分も会社も共に取り戻す(WIN-WINの関係を作る)ために何をしたらよいかを考え実行することです。

その時、日常の職場や仕事上で起きる問題や壁と感じることは、実は単に問題処理のためだけにあるネガティブなものではなく、自分も会社も大切にしたい価値観を取り戻していくチャンスとしてあるということです。そして、それが戦略とも言えますし、自分のキャリア形成にも繋がるのです。

ですからSさん、Nさん、Kさん、そして皆さんにとって、これから直面する問題、課題は、チャンスとして取組んでいった時、戦略的なキャリア形成の実現に繋がるのかもしれません。

という事で今週のエクササイズです。


●「今あなたの周りで起きている問題は、あなたにどんなキャリア上のチャンスを与えようとしていますか」

第37回 キャリアとマネジメント

こんにちは、楳林です。サッカーが終わったら、今度は暑い夏の到来ですね。先週のエクササイズは「あなたの心の中や職場において、相対立しているものを統合した時、現れてくるものは何でしょうか?」でしたね。今週も1通の回答を紹介させていただきます。

「相対立しているものは大人の自分と子供の自分です。大人と子供の間でバランスが取れていないと思います。この二つの間でちょうどいい位置に立てた時、素直に自分が求めるものに手が伸ばせ、何をするにも感じていた圧迫感を感じなくなると思います」(Cさん)。

Cさんは自分の中に自由な感覚の子供と、社会とか常識を気にする大人の対立から行動が窮屈になっている自分を何とか開放しようという気持ちが感じられます。その2つをバランスさせるというのも大切なプロセスだと思います。そこで質問です。「圧迫感なく、素直に自分が求めるものに手が伸ばせるようになったら、何をしてみたいと思いますか?」。

さて、今回のテーマである「統合」というのは、バランスの先にある状態です。例えば子供の部分と大人の部分が統合されるに従い、本当の意味での「成熟さ」が出てくるように私は思っています。でも「統合」というのはとても難しいテーマです。

私の場合、前回でも多少紹介しましたが、ある中堅企業の新任の管理職の方を相手にマネジメントとキャリアデザインの両方を一緒に行う研修を実施しています。そのせいもあり、もう2ヶ月ぐらい、自分の中でこの「マネジメント」と「キャリア」がずっと頭から離れない状態が続いています。

私のキャリアを振り返ってみると、新聞記者時代は企業取材が中心でしたし、その後、経営戦略などの企業研修をやった経験もあります。が、ここ10年くらいは「企業の成長」より「個人の生きがいやキャリア」に関心が移ってきました。それだけに「もう一度この2つのテーマをやり直しなさい」というメッセージが来ているように思えます。

1回目の研修が終わって2,3日たった朝、直感的にひらめいたものがありました。それは「個人にとってビジョンや価値観を大切に自分のキャリアをデザインする時代に来た」ように、「ビジョンや価値観を本気で大切にする企業しか成長できない時代に来ているのでは」という視点です。

そして、その日のうちに出会った1冊の本があります。「隠れた人材価値-高業績を続ける組織の秘密」(著者はスタンフォード大学のチャールズ・オラリー、ジェフリー・フェファー両教授)。この本の内容を一言で言えば「高業績をあげ続けられる会社の成功の鍵は、人材獲得競争に勝ち抜いたからではなく、現在いる全ての社員の持っている真価、潜在能力を存分に引き出し、活用していることにある」というものです。

成功例として米サウスウエスト航空など8社をケースに取り上げ、その共通の要因として、「わかりやすい価値観があり、しかもその価値観が経営戦略や社員への投資、情報の共有化、チームを基盤としたシステム、そして報酬などの経営慣行と一貫した整合性を持っている」ことをあげています。

要するに価値観を単なる飾りやタテマエでなく、本気で実践している企業が成功しているのです。ある意味でそういう企業は「人は誰もがその人なりのビジョンと才能を持ち、それを現実化していく答えを持っている」というコーチングの基本哲学を実践しているような感じすらします。

「そんな企業が日本にあるのかな」と思われるかもしれません。でもこれからの時代、価値観が経営のあらゆる面で一貫した整合性を持つよう努力する企業でないと、成長し続けるのは難しいと思うのです。

そう考えると、キャリアを選択していく上でもどんな企業を選択するかということは大きな比重を占めそうです。ということで今週のエクササイズです。

●「あなたはどんな価値観を一貫して大切にしている企業で働きたい(ある いは創業したい)ですか?」

第36回 温故知新とビジョンについて

こんにちは、楳林です。ブラジルの優勝で幕を閉じたサッカー。噴き出す民族のパッションや組織力と個人技の溶け合う模様が私には印象深かったですが、あなたはどうでしたか?さて、先週のエクササイズは「あなたの本当の価値は何ですか」でしたね。先ず1通紹介させていただきます。

「私の価値は日々の『普通の幸せ』を素直に受けとめ、自分磨きを忘れないこと。そういう意識でいられること」(Sさん、27歳、介護ヘルパー)。Sさんは結婚を機に家事との両立を図りながら、体に障害を持ちながらも自立生活をしている人をヘルプする現職に転職されたそうですが、同時にその人達を通して、学ばれておられますね!

何かを達成したら幸せになるのではなく、「あるがままの生活」や「夫婦が仲良く長生きする」という今を大切にし、充実感を感じることが好循環を引き寄せるのだと思います。

「協調性」(Mさん、40歳)「宮沢賢治のように個人の幸福より人類の幸福を願う」(Kさん、43歳)「患者の希望する医療が行える」(Mさん、26歳)

・・・・「これが価値かな?」なんて疑わずに、自分の直感を信頼し、出てきたメッセージのさらに深い意味を探っていってみてください。それが直感のパイプを太くしていきます。

さて、もう1人の回答を紹介させていただきます。「私の価値は、“温故知新“を実践できる、20代としては貴重な人材です」(Nさん、27歳)。温故知新というのは昔の事をたずね求め、そこから新しい見解・知識を得ることです。

Nさんは自分の中に「大学で国文を専攻し、保守的で真面目過ぎる」面と、「ミーハ-でアイデア好き、時代の先端技術にも興味がある」面という、まるで新旧2つの相反する性質があることをしっかり掴んだ上で、それを対立させるのではなく、「古いものを顧みて尊び、新しい時代に生かしていける」資質があることを感じておられます。

何故これを取り上げさせていただいたかというと、先週末、私がトレーナーとして参加した企業研修の中で私も同じような思いを体験したからです。

それはある創業以来75年の中堅企業の新任の課長さん(40歳前後)を対象に、私としては初めてマネジメントとキャリアデザインをミックスさせた研修でしたが、40代の社長さんの下で管理職の方はとても伸び伸びした感じがしていました。

ところがマネジメントの面では改善のレベルに留まっており、改革に必要なビジョン構築力や、キャリアの視点が全くといっていいほど欠落していました。その上、研修のある場面で「私の会社は自由な空気がある半面、老害がひどくて・・・」というある管理者の発言が気になり、私は思わず言ってしまいました。

「単なる未来思考ではビジョンを見つけることはできません。例えば、個人のビジョンなら、自分の小さな時、つまり昔の自分を振り返り、そこから受け取ることが大切なように、企業のビジョンも古い企業風土や古い人を単純に切り捨てることはできません。古いなりに“大切にしている思いや価値観"を理解しないと本当の意味でビジョン、つまりありたい姿、志というものは見えてきませんよ」と。

それで、Nさんの“温故知新”という回答を読みながら、「そう、それがビジョン思考なのだ」という気がしたわけです。企業や両親に依存するのではなく、自らの足で立つ自立の姿勢は、キャリアの面で絶対に必要ですが、同時に古い部分を投げ捨てるのではなく、統合していくことからビジョンのより深い部分が見えてくると思います。

ということで、今週のエクササイズです。先週と同じように(Nさんの中で新しいものと古いものが対立しながらも統合したように)直感を鍛えながら回答してください。

●「あなたの心の中や職場において、相対立しているものを統合した時、現れてくるものは何ですか?」

第35回 あなたの本当の価値は何ですか

こんにちは、楳林です。日本サッカーは残念でしたが、韓国サッカーのパワーは凄いですね。さて、先週のエクササイズは「やりたいことを仕事にするために、今の仕事から学べるチャンスは何ですか?」でしたね。今回も先ず1通紹介させていただきます。

「今までの自分の仕事を棚卸しして『次の仕事に生かせるチャンスとして何があるかをしっかり考える』」(Kさん、再就職準備中)。Kさんは過去に個別指導塾の運営と製薬会社での一般事務(派遣)を経験して今年3月に結婚でいったん退職、ようやく落ち着いたので就職活動を始めているところだそうです。

Kさんの回答を見て感心したのは、先ず自分がトランジション(人生の転機)にいることを自覚して、まず「家庭と仕事の両立」「子供を産んでも復職可能」「自分に自信を持てる専門知識」など自分が望んでいることを明確にしていること。その上で現実をしっかり直視していますね。

現在、偶然、前職に近くしかもスキルアップにつながる製薬会社の治療のモニターサポートの仕事を紹介され、面接の段階だそうですが、ぜひ受かると良いですね!

Kさんだけでなく、今回の皆さんの回答を読んでいて感じたのは、まず将来の目標をある程度持ちながら、今の仕事から何をチャンスとしてやれるかを真剣に見つけようとされていることです。

「大学で針灸の効果に関する研究をしているが、英語の研究論文を書くことで英語に強く、論理性を養い、小論文を書く力をつけることは、卒業後、医学部受験の準備にもつながっている。東洋と西洋の医学を融合させ、患者により有効な治療を施すという私のキャリアビジョンへ向けての準備はすでに始まっている」(Mさん、26歳)。

「2つの癖をつけたい。1つは実行する癖、第2に計画し、現実化する癖。希望していた職場に異動が決まったばかりですが、これまでの仕事のやり方を変えるきっかけにもなりそうです」(Rさん、エネルギー会社勤務、27歳、女性)。

「自分と仕事をすると面白いなと思われるような他者への接し方、人の集め方を覚える」(Aさん、半導体海外販売推進部、27歳)

さて、皆さん、今回はもう1つチャレンジして見たいと思います。先ず気付いて欲しいのは皆さんの中に、今の仕事に対して「まだ本当にやりたいことではない」「物足りない」「プロセスの段階」といった意識があること、そして人によって強弱はありますが「自信がない」「自分はたいしたことはない」といった自分観があることです。

そこでこんな視点を出してみたいと思います。「今の仕事はつまらない」という感じは、実は「自分はつまらない価値のない人間だ」という意識の反映だとしたら?という視点です。さて、その場合の早道は仕事を変えることでしょうか、それとも自分を変えることでしょうか。

未来へ向けて計画を立てて、着々実現していくビジョン思考は大切です。が、もう1つ大事なのは「全ては今、ここにある」という視点です。しかも「今の自分=今の仕事」だとしたら、一番の早道は、今の自分を変えることです。

つまり「自信のない自分」から「自分はこの世にある使命を持って生まれてきた価値のある人間」(そう思いませんか?)という意識を取り戻すことです。たとえ現実がそうでないとしてもです。

もしそんな意識を持てたら、「つまらない」「やりがいがない」と思っている今の仕事すらベストの仕事と思えてくるかもしれませんよ。深い意味でです。つまりどの場所にいようと常にワクワク感を感じることが出来るわけです。そして成長するペースに即応した新しい職場が提供されていきます。

ビジョン心理学ではこれをマスターへの道と呼んでいます。「意識で選択するだけで現実が変わる」という道です。昔は多分、マスターへの道は特殊な修業をした人のみに許された道だと思われてきました。でも時代や社会の変化で21世紀はそろそろ誰もがこの事に挑戦できる時代になって来ていると思うのです。

ということで今週のエクササイズです。あなたの直感を使って回答してみてください

●「あなたの本当の価値は何ですか」

第34回 好きなことを仕事にするための条件

こんにちは、楳林です。日本サッカーの活躍に私も興奮しています!ところで先週のエクササイズは「今、あなたが大切にしていること、わくわくすることをこの半年どのように実現、実行していきますか」でしたね。今回も先ず1通紹介させていただきます。

「私が大切にし、ワクワクするのは英語力をつけることです。この半年、実現、実行したいことは(1)資格試験を受けることで次のステップへの原動力にする(2)英語サークルや国際行事に参加する(3)ボランテイア通訳をするの3つです」(Fさん、28歳、公務員)。

Fさんは回答を書いてみて「本当は英語を使って収入につながる職業につきたいのに、どうしてもそのビジョンが見えてこない」ことに気がついたそうです。「といって公務員という恵まれた現職を手放すことが出来るのか」という問題があり、それが自分をとどめていると感じているようです。

焦って公務員を辞める必要はないと思います。それより実現、実行したいことにもう1つ加えるために質問します。「今の職場に関係する所で、英語を使う機会を作るとしたらどんなことですか?」それともう1つ。「英語を使って将来、どんな働き方をしたいですか?」

ところでFさんのように、「好きなこと、わくわくすることを仕事にしたい」「でも今の仕事は好きなこととは関係なく、どちらかといえば生活のため」というジレンマに悩む方が回答の中でも私の周りでも意外に多いので、今回はこのテーマを見ていきたいと思います。

ここには2つの課題がありますね。1つは好きなんだけど、それでお金を稼ぐには、自分の力不足も含めて自信がないというもの。また好きなことをお金につなげるに抵抗がある人もいます。もう1つは今の仕事に魅力を見出すことが出来ないでいる。また本当は嫌いだけど、生活のためという人もいますね。

こうした状態から抜け出すために、紹介したい理論があります。米国のキャリアカウンセラーのジラット博士の提唱している「不確実性を積極的に取り入れる」という理論で、「知り得ない将来に対して柔軟に考え、今の仕事に対してもオープンマインドで接すれば、あれかこれかではなく、不確実なものを前向きなものとして受けとっていける」という視点です。

今の仕事ですら偶然の産物であり、不確実なものなのだから、好きなこと、わくわくすることを諦めず、学び続ければ、段々自信もついてきます。そして、まだ今の自分では知り得ないチャンスが見えてくるよ、ということです。

前にも紹介させていただいたアロマセラピストを目指すYさん(38歳、外資系勤務)は、コーチングを始めてからずっとアロマセラピーで開業したいというこだわりを持ち続ける一方、今の職場に対しても、当初持っていた拒絶感を少しずつ手放していくうちに、最近、来春から週末2日間、アロマセラピーをやって欲しいという話が偶然、舞い込んできました。

もちろん彼女はやるつもりでいますが、同時に「今の会社で人間関係とか営業のスキルなどまだ学ぶことは多いから、当分楽しみながら続けるわ」と柔軟な対応ぶり。なにか心まで柔軟になってきたようです。

好奇心とかワクワクする気持ちを持ち続けることと、今の仕事も前向きに捉えていくこと、どうもこの二つの姿勢が偶然の出来事をラッキーなこととして引き寄せる要素のような気がしています。

ということで今週のエクササイズです。

●「やりたいことを仕事にするために、今の仕事から学べるチャンスは 何ですか?」

第33回 人生に冒険しよう

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「長い間冷凍保存してきたあなたの資質、才能、ビジョンは何ですか」でしたね。今回は皆さんの回答を読みながら悩みました。回答数が多い上、そのほとんどが人生の転機を感じさせるもので、どの回答にも様々なテーマが含まれており、どの回答を選んだら良いのかとにかく迷ったためです。

でも、あえて1つの回答を紹介させていただきます。「日本の小児循環器医のなかで名前のしられた存在になりたい。<中略>とにかく、日本でだれもやっていない研究をして結果を残すこと。」(Tさん、医師)。

今回、Tさんの回答を紹介させていただいたのは、実は、私自身が13年前、7歳だった1人息子を小児白血病で亡くした経験があるからです。だから、今回の回答はある意味で自分について語る必要があると思いました。

ある日突然の発病と「悪性で5年生存率5%以内」という信じられない宣告(Tさんによると最近はかなり直るそうです)。それから2年間は夫婦での看病と現代医学との戦い、あらゆる代替医療の試み。そして死を迎えた時は失敗感と挫折感に打ちのめされ、いっぺんに老後を迎えたような感じでした。そして、当時熱中していた新聞社での仕事にも意欲を無くしてしまい、退職を決意したのです。

本当に強烈なトランジション(人生の転機)を体験したわけですが、それが結果的には冷凍状態を溶かすきっかけをプレゼントしてくれました。それ以前から参加していたチャック・スペザーノ博士のビジョン心理学を通して、数年間、夫婦でこのきつい体験を癒していくことが出来たのも幸運でした。

私と妻に共通していたのは、ある意味で“人生の冒険”が好きな所です。外国人と一緒に長期の深層心理のトレーニングを受ける中で、人間の心の深さというか凄さ、素晴らしさに魅了されたことです。「みな心の世界をまるで暗黒大陸のように恐れているけれど・・・何なんだこの世界は!」っていう感じ。2人して探求者になってしまいました。

社会にもう一度前向きに参加していくのには10年近くかかりましたが、今私はキャリア関係の研修講師やキャリアカウンセラーを職業としています。結婚直後に学芸員の資格を取って美術館に勤める予定だった妻は、数年前から仏壇ギャラリーで働きながら、目下放送大学で「別離・喪失体験に伴う悲嘆からの回復のプロセスと、そのサポートシステム」というテーマの卒論に取り組んでいます。

スペザーノ博士はよく「マイ・ウエイからハイ・ウエイに行きなさい」と冗談っぽくいいますが、私達のスタッフ仲間と一緒に「ジャパン・ソウル・ワーク・アカデミー」というビジョンの実現に取り組み始めています。

ビジョン心理学で学んだもう1つ大きなテーマは、「パートナーシップとキャリアは人生の2つの車輪だ」ということです。7、8年ずっと月に1回は夫婦でこのテーマに関しての1日ワークショップを楽しみながら続けていますが、私と妻とはこのままでは“漫才夫婦“のようになっていくのではと恐れてもいます (笑)。

ところで癒しも冷凍保存を溶かす1つの方法ですが、もっと楽に溶かす方法を実は皆さん見つけ出しているようですね。例えば。

「女性向の漫画や小説などを発行しているエロ系の出版社に勤めています。校正やデータ打ち込み、雑用を嫌っていましたが、そもそもこの仕事を選んだのは“わくわくすること”“楽しいもの”を作りたかったからだということを思い出しました」(Iさん、28歳女性)。

今回の皆さんの回答に多かったのが、こういった「好きなこと、わくわくすることをやる」ことでした。これが実は、その方法なのです。さてここで、コーチングに戻って今週のエクササイズです。

●「今、あなたが大切にしていること、わくわくすることをこの半年どのよ うに実現、実行していきますか」。

第32回 冷凍保存した才能を溶かす

こんにちは、楳林です。暑くなってきましたね。先週のエクササイズは「あなたが嫌っている人、どうしてもやりたくない仕事、それを嫌っている理由は何ですか?」でしたね。今週も幾つかの回答を紹介させていただきます。

「どうしてもやりたくない仕事は自営業。理由は実家が酒屋を営んでいて小さい頃から寝る暇もないほど働いている両親の姿を見て、自営業だけは嫌だと思い、大手企業に就職しました」(Sさん、33歳)。

Sさんは「4年前まで仕事、遊びに熱中してきましたが、ある仕事に失敗し、自信をなくし、以来鬱々とした日々を送っている」そうです。が、その中で、さらに自分の意識のより深いレベルで「自分の思い通りに人を動かし、利益を得てみたい」という欲求があることにも気付いておられます。そして多分、それが自営業だということも。

MITのエドガー・シャインのキャリアアンカー(キャリア指向性)という考え方を紹介したいと思います。これは仕事や職業から見た人生の価値の方向性から生活、安定、マネジメント、専門性、創造、挑戦、独立、奉仕の8つのカテゴリー(領域)に分けてその人のキャリアタイプの傾向を見る方法です。が、そのうち、創造、独立の2つの資質をSさんに感じます。

でも多分、両親と自営業をセットで嫌っているため折角の自分のキャリア指向性を拒絶してしまい、自分らしさが発揮できないでいるように思います。

さて、深層心理の視点から見ると、「嫌な人や仕事」がある場合、人は大体、批判しながら同じ事をやり続けるか、あるいは「それだけは絶対やりたくない」という思いの中で、それに代わる補償行為をやるそうです。

補償行為というのは、例えば「約束を守らないのが嫌い」な人は、とにかく約束だけは絶対に守ろうと犠牲的に努力するようなことを言います。しかし、批判しながら補償行為で逆のことをやろうとも、その人の意識の奥に「自分も約束を守らない人」という観念が潜んでいるのです。そして実は他人と同じ位、実は自分自身をも責め続けているのです。

ところで「何故よりによって嫌な人や仕事が身近にあるのだろか」と思うことはありませんか。それは決してネガテイブな出来事ではないのです。それは、嫌な人や仕事の意味を解き明かすことによって、埋もれていた自分の資質、才能や時には自分のビジョンを見出すきっかけにもなるからです。

ある意味であなたが自分の才能やビジョンを、本当に必要とするまで長い年月、あなた自身の冷蔵庫に冷凍保存して来たのです。その冷蔵庫を開ける鍵はあなたの体験の中にのみヒントがあるのです。そして冷蔵庫から出して溶かす時が来たと考えてはどうでしょうか?

「男性の補助と入力作業の総務という仕事が嫌い」というNさん(27歳)はその理由を探っていく内に「客観的な理由より実は気分として嫌なのだ」「男性と同列にならない悔しさ」といった感情に気づき、さらに深い意識に「プライドとトップでいたい、特別な存在でいたい、というペルシャ猫のような顕示欲がある」ことまで気づかれました。素晴らしいプロセスですね。

ユング心理学の視点で云うと、あなたが戦っているのはあなたの中の男性性と女性性で、両方を受け入れて統合していくに従い、気品溢れる女性性が開かれるように思います。そんな魅力的な女性を周りは補助に使うでしょうか。

またNさんだけでなく、何人かの方が理由を探るうち、自分の中に特別意識があるのに気付かれましたね。一人一人が自分の資質とビジョンを花開かせていけば誰もが特別な存在(ヒーロー、ヒロイン)になりますが、それはもう特別とすら言えません。一人一人が欠かせない価値を持っているのですから。

ということで今週のエクササイズです。

●「長い間冷凍保存してきたあなたの資質、才能、ビジョンは何ですか」

第31回 3つのレベルの価値観

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたがこだわっていることは何ですか」でしたね。今週も先ず1通の回答を紹介させていただきます。

「生きがいあふれる人生づくりと組織内のコミュニケーションの活性化」(Yさん、まちづくり、地域づくりコーデイネーター)。Yさんは4月に転職して以来の回答ですね。ワークショップ技法で、公民館の職員の方に「人を呼べる企画づくり」のための研修をし、参加した人達が自分たちの考え方を熟成させ、新しい価値や合意を作り出すことを目指しているそうです。

「今の状況は本当に自分の望んだ環境になっています。あとは自分自身の態度です」とYさんは言っていますが、こだわりについて書いた後で次のテーマと新たな選択を見つけたようです。そのプロセスが価値観と、さらにはビジョンへと発展していくと思います。また、今回取り上げることが出来なかったみなさんも、自分自身のこだわりを書いた後、次のステップを模索しているように感じました。

ところで、私は今某企業で、「キャリアデザイン研修プログラム」を担当しています。そして、キャリアの現状分析の1つとして「コア・コンピテンシーモデル*」をおこなっていますが、様々な能力評価の中で、常に低い評価となる項目が、この価値力(こだわりの強さ)とビジョン構築力なんです。

*「好業績をあげるための行動につながる能力評価」のこと

今、日本の企業は、極端に言うと「年功制」から「成果主義」や「労働の流 動化」の時代に変わりつつあります。自分のキャリアは、今までのように企業に依存するのではなく、個人の自己責任で将来のキャリアをデザインする時代に来ているように思います。

しかし、今まで企業をベースにしアイデンテイテイを持って働いてきた中年、中高年の方に、急に個をベースに考えろと言っても難しいことです。「自分が本当にやりたいこと」とか「自分が大切にしていることが何か」なんて、よっぽどの人生の転換期が訪れない限り考える機会はなかったからです。

そして同時に、20代から30代の方にとっても、古い目標(「戦う対象」という意味も含めて)はなくなったのですが、それに変わる目標、目的を自分で見つけていかなくてはいけないわけです。これまた大変ですよね。

これに対応する流れはMBAコースに象徴されるように、流動化する労働市場に通用する資格とか専門性を身につける流れです。これは大事なことです。しかし、将来ありたい姿、ビジョンをしっかり描くことはもっと大切です。そして、それには、ベースとなる自分の価値観にしっかり気付くことが必要です。それも表面上や建前上の価値観でなく、意識の奥に隠れているより深いレベルの価値観です。

ちなみに、価値観も大きく分けて3つのレベルがあると私は考えています。表面にあるのは「私の人生観は~~」に現れるような「~すべき」「~ねばならない」といった表現の価値観。その下の2番目にどちらかといえば「あいつのここが嫌いだ」「これだけはやりたくない」といった表現に潜む価値観、そしてその底に本当にやりたいこと、使命とかビジョンを支える3つ目の層の価値観があると考えています。

表面の価値観すら否定すると無気力な生きかたになりますが、かといって表面だけ受け入れても建前や押し付け型の人間になります。その段階から先に進むにはまず2番目の層の価値観を意識化する必要があります。ビジョンとかミッションに向かう前に、この層を通過する必要があるのです。

ということで今週のエクササイズです。今回はこの層を通過することを目的としてみましょうか!『 あなたが嫌っている人、どうしてもやりたくない仕事 』を思い浮かべてください。そして、以下の問に回答してください。

●「それを嫌っている理由は何故ですか?」

第30回 こだわりの大切さ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「失敗を望んだのは何故だったんでしょうか?」でしたね。今回も先ず1通の回答を紹介させていただきます。

「社内の留学制度に選ばれませんでした。それを選んだのは1つは留学費用を会社から出してもらうことで縛られるのを避けるため。もう1つはMBAコースが会社の役に立ったとしても、本当に自分の興味かどうか明確でなかったためです」(Nさん、大手エネルギー関連企業)

Nさんは今回の課題はいくらフリをしても、「傷ついた自分を慰めるため、あるいは負け惜しみをこじつけるような気分」になり、「まるで納得できない理屈を納得したかのように書いているみたい」で無理を感じたと正直に書いておられます。

そうですね。いくらフリをしても、感情レベルはそれを受け入れるわけにはいきませんね。でもそれでいいのです。「今何を感じているか」ということはとても大切ですが、感情は過去のいろんな体験の場所につれていってくれる乗り物ぐらいに思われた方がいいとお思います。

それより大切なのは、自分の直観です。フリをすることによって、実は自分の直観を働かすことが出来る。その意味で一種の催眠療法なのです。コーチングで言えば視点を変えてみる方法です。

Nさんは「自分のキャリアや興味のために、慎重に留学目的を選んだ方が良い」「本当は人文系の学問に興味がある」「才能があったら、クリエイターになりたい」ことに気づいてきました。ですから次のフリです。「才能があるとしたら、どんなクリエイターになりたいですか?」。

さて、話は全然かわりますが、私は研修所に向かうタクシーに乗るたびに、運転手さんと最近の景気とか世間話をします。最近、一見して転職間もない雰囲気の運転手さんに出会うことが多いので、「いつからやっていますか」「前はどんな仕事をしていましたか」と聞く機会が続いています。

そして、これは偶然かもしれませんが、ここ3回連続して前職が和食関係の板前さん、調理師さんだったのです。それも20年前後の経験者ばかり。今朝会った運転手のSさんには「せっかく手に職を持っているのに、何かもったいないですね」というと、「低料金の飲食チェーンに圧倒されて経営が厳しく、料理の半加工化に伴う人員削減の対象になってしまって…」と、半年前に運転手さんに転職したそうです。

ところが「もう調理師は廃業して、ずっと運転手を続けるのですか」と聞いた途端、「いいえ、今は不況で緊急避難みたいなものです。将来は絶対に自分の店を持ちますよ」という返答。そのエネルギーにSさんのこだわりを感じて、何か応援のエールを送りたくなったほどでした。

こだわりというか、「これをやらずにおれない」という気持ちが実はビジョンには欠かせないような気がします。そして人は誰でもたとえ今は忘れていたとしても必ず何か、その人なりのこだわりがある、と思います。ある意味で、それはその人の存在価値にもつながってきます。

私の場合のこだわりは、1つは「書くこと」、そしてもう1つは「心の世界」に対する関心です。小学生の頃からその芽はあったように思えます。明らかにそれが自分のビジョンの重要な要素になっているし、それを現実の中で具体的に深めていくプロセスがキャリアなのでは、と思っています。

ということで今週のエクササイズです。人生、あるいはキャリアを念頭において考えてみてください。

●「あなたがこだわっていることは何ですか」

第29回 敢えて夢を見る

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「これまでどんな時に、これは奇蹟だな、と感じましたか?」でしたね。今週もいつものように1通の回答を紹介させていただきます。

「まだ10代だった時、あるキャラクター商品の熱烈ファンだった私は、あるとき、そのキャラクターデザインを手がけているEさんのライブペイントのイベントに最前列で参加。ショ-終了後、控え室にまで押しかけたのがきっかけで、Eさんのホームページを作ることになりました。今でも副業でその運営をするだけでなく、一部のシールのCGデザインまでやっています」(Nさん、エネルギー関連企業)。

Nさんは友人から「それは奇蹟じゃなく、ステージ裏まで押しかけた、君の熱意だよ」と言われているそうですが、私もそう思いました。Nさんの熱意と意欲と行動力が奇蹟を招き入れているのではないでしょうか?

他の幾つかの回答でも奇蹟と体験とそれが起きる条件が指摘されていました。「上司や周りの人達に助けてもらったり、海外旅行の招待に当選したり」というNさん(30歳、パート)は「日頃から損得感情なしに人間関係を大切にしている」そうです。またCさん(25歳、特許管理事務所)は「自分が追い詰められた時、人や本との出会いで救われることが多い」のは「一生懸命何かをやっている時」だと感じているそうです。

自分の欲求からでなく相手に何かを与えたいといったエゴが少ない状態の時や、無心、無我夢中でやっている時に、自分でもびっくりするような事が起きるのでしょうね。これは何かを実現する時のヒントと言えると思います。

ところでNさんは「いつも夢を見ていることができるので、(そのことを)やめられません」と語っています。そこで、今週はこれに関連したことを紹介したいと思います。

5月の連休中、私は久しぶり、チャック・スペザーノ博士のビジョン心理学のワークショップにスタッフで参加しました。そこで印象に残った言葉があります。それは“リビング ビューテイ”(生きている美しさかな?)という言葉です。そして、同時に大事なこととして語られていたのが、「どれだけ夢を持ち続けるか」ということでした。これはそのままNさんの回答につながっていますよね。

さて、今回のワークショップのテーマは「敢えて夢みる」でした。こういうワークシップは人によっては好き嫌いもあるでしょう。でも、私は自分にとって非常に役立つことがあるので、こうしたワークに参加するのが大好きなのです。そして、今回も意識の奥に潜んでいる自分の夢の障害物を幾つか溶かすことが出来たような気がしています。

スペザーノ博士は真の夢追い人になるために、(1)自分の心を見つける勇気を持つ(2)自分の夢が何なのかを知る勇気を持つ(3)夢を実現する勇気を持つ(4)個人の夢を超えたところにもっと大きな意味を見出す(5)できれば存在の一番奥深い所にある覚醒まで生涯を通じて実践する――ことを勧めていますが、私は、誰でもこうしたことに挑戦できる点にこれからの時代の面白さがあるような気がしています。

そうそう、最近、神戸大学院の金井壽宏先生が書かれた「働くひとのためのキャリア・デザイン」を読んだのですが、ベンチャー経営者の増田宗昭さんが「夢なんか(実現しっこない)という人もいるが、実は<夢しか実現しないのだ>」と語っていたのが印象的でとても共感できることでした。

ということで今週のエクササイズは「フリフリ」ゲームです。今週は、直感を使って回答をしてみてください。

まず、記憶を辿り、「自分の夢を失ったり、傷ついたりした」時間に戻ってみてください。そして、「実は失敗を望んでいた」という「フリ」をしてみてください。ここで質問です。

●「失敗を望んだのは何故だったのでしょうか?」

第28回 天才、ビジョン、そして奇跡

こんにちは,楳林です。先週のエクササイズは「あなたが天才だとしたら,やり遂げたいことは何ですか?」でしたね。ゴールデンウイークで時間があるせいか,今回はユニークな回答が沢山寄せられました。幾つか紹介させていただきます。

「世界平和を実現する事です。そのための具体的な方法として(1)人間の心の中から『戦う,争う,奪う』というような感情を消してくれる食品を発明する(2)治療法のない病気の特効薬を作る(3)オゾンホールを埋める装置を発明する(4)地雷探索ロボットを開発する(5)人間の体内に蓄積された有害な化学成分を浄化させるものを発明する」(Hさん、転職活動中)。

それぞれ現代社会の課題を克服する発明ですね。でも1人でやるのではなく、そういう天才を集めた企業が出来たらすごいですね。

「今私がはまっているような、朝は早朝から,夜は深夜まで休みなしに働いたり,通勤に1日4時間を費やしたり、24時間営業のコンビニを生命線とするような都会型の生活パターンを人々の価値観をひっくり返すことによって、過去のものにしてしまう」(RNさん、27才、エネルギー関連企業勤務)。

コンビニだって一挙に出来たのではありません。何を大切にするか、RNさんのささやかな思いが広がっていったとき、気がついてみたら都会型の生活パターンが変わるのかもしれません。

「コミュニケーション能力をフルに生かして、相手の潜在的な願望・希望をその人自身で見つけ、見つけた事を無理をせず、少しばかりの勇気を持って向かって行けるような気持ちを持たせてあげられるアドバイスや助言が出来る仕事につきたい」(Cさん,25才,特許管理事務所)。

Cさん自身はコミュニケーション能力に自信がないといっていますが、潜在可能性としてその資質があると断言できます。後はやると決めるだけのように私には思えます。

「アメリカの大学院で国際関係学の修士号を取得して国家公務員になって、国連難民高等弁務官事務所で働き、難民問題や民族紛争を解決するためのプロジェクトを立ち上げたい」(Sさん、30才、求職中)。

Sさんは回答を書く中で「自分は問題解決や物事がスムーズに運ぶように調整するのが好きなんだ」ということに気づかれたそうです。皆さんの回答を読んでいるだけで楽しくなります。何故なら皆さんは自分のヴィジョンを語っているからです。

「あなたのヴィジョンは何ですか?」という問いかけでは現実の制約感が先に立ってされて自分のヴィジョンを押さえ勝ちです。しかし「もしあなたが天才なら・・・」という問いかけは、「もしあなたに制約が無ければ・・・」という一種の催眠療法的な手法を通じて自分が設けた壁を無意識に超えているのです。

さて、皆さんの回答を読むうち、もう1つ、テーマが浮かんできました。それは奇跡(ミラクル)ということです。奇跡は天才でなく普通の人でもふとしたことや偶然で現れたり体験することが少なくありません。

これが奇跡と言えるかどうかわかりませんが、私自身も例えば会うべき人に出会ったり、入学入社試験の合格を事前に察知した時など、まるで目の前で門が自然に開いているような体験を何回かしたことがあります。そういう時は本当に流れに乗っているようでとても楽に前に進んでいる感じなのです。

しかし、何よりもあなたが何万分の一の確率で生まれたこと自体が奇跡だとは思いませんか。ですから私達自身が奇蹟の存在といえるのかもしれません。

ということで今週のエクササイズです。

●「これまでどんな時に、これは奇跡だな、と感じましたか?」

第27回 天才だとしたら、やり遂げたいことは?

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「仕事でやり残したことや諦めてしまったことはありませんか?もしそれを現在の仕事に反映させることが出来たら、現在の仕事はどう変わってきますか?」でした。今回も先ず一通の回答を紹介させていただきます。

「小さいながらもプロジェクトの立ち上げ~完成~納品~保守・メンテまでの流れを一度任されそうになったことがあります。でも、ユーザーとの折衝、設計書の作成、人員の配置など、いろんな問題を抱えてしまい、一週間と持たずに諦めて(逃げ出して?)しまいました。全部やれるようになったら、仕事をするのが面白くて仕方がない状態に変わっていくと思いますが・・・」(Sさん、34歳)。

Sさんにとっては、先ずその失敗体験からもっと学んでおく必要があるような気がします。何故なら、失敗とか挫折というのはある意味で何かを未処理、未完にしているからです。そしてこれは、経験から言えることなのですが、後から似たようなチャレンジの機会が来るものなのです。

「まだ、全部をやる自信がないので、1、2年前から一気にやらずに、少しずつの範囲で取り組んでいる」ということですが、もしかしたら、Sさんの今のキャリアの課題は「自信を持つ」ことなのかもしれません。

すでに実現したときの感じがある程度わかっておられるのですから、そのイメージを大切にしながら、「今はそのプロセスを楽しむ」ことが大切です。その上で、次の機会を自信を取り戻すチャンスにされてはどうでしょうか。

ところでゴールデンウイークに入り、私もつかの間ですが研修から解放されています。そして、「ビューテイフル マインド」という映画をみて感動しているところです。ですので、今回はこの映画を題材に話を進めたいと思います。

この映画はゲーム理論でノーベル賞を取ったジョン・ナッシュという米国の数学者の一生を映画化したものです。若いときから数学の天分を発揮したナッシュは、実は現実と妄想の世界が区別できない精神分裂症に苦しんで病院への入退院を繰り返します。が、それでも数学へのこだわりを捨てず、やがて老年期に入って精神分裂症を受け入れながら、数学者として大成していく生き様を描いたものです。

天才の一生というと、自分とは無縁のように思われるかもしれませんが、キャリアの視点から見た時、ナッシュという天才が自分にとって、とても身近な存在として共感できるものがありました。

先ず彼のノーベル賞受賞の根拠となる「非協力ゲーム理論」の生まれるきっかけが、21歳の時、たまたま学生仲間でのゲーム的な恋愛談義からだったこと。世紀の大発見も誰にでもあるような日常のひとこまから生まれることが多いようですね。

若い時から部屋のガラスにさえ数式を書かずにおれないほどの探求力やどんな不遇な状態でも数学にこだわり続ける意志力の強さと集中力。これこそが、日常の偶然性との出会いを招き入れ、素晴らしい発明発見を生み出しているのだと思います。

一方で、精神の極限状態の中で幻想という精神分裂症に苦しめられる姿は、鬼気迫るものでした。映画を見ていくうち、「私達の多くが、人生の多くを観念という過去の幻想にどれだけ足を引っ張られているか」ということに気づき、自分の中にも何だかナッシュがいるように思えたものです。

研修やコーチングをしている中で、初めは普通の人に見えていた人ですら、自分自身を知るにつれ「実はとても強い思いやこだわり、実現したかったことがある」ことに出会うことが少なくありません。その意味で天才と云われる人達は、自分たちの隠れた深層を見せてくれているような気がしています。

ナッシュは老年期に入って、精神分裂症を時にユーモアを持って受け入れ統合しながら、今も数学、経済学から宇宙論といった創造的な活動に取り組んでいるそうです。そんな彼の姿を見ると、「こだわりと幻想」こそがキャリアの大きな要素のように思えてなりません。

ということで今週のエクササイズは、ゴールデンウイークを楽しむつもりで。

●「あなたが天才だとしたら、やり遂げたいことは何ですか?」

第26回 大切にしたいことを呼び覚ます

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたが職場の人間関係を『勝ち/勝ちゲーム』にするため、どんなことが考えられますか?」でしたね。今回も先ず1通の回答を紹介させていただきます。

「入社11年目、海外営業を担当しています。この1年以上、コミュニケーション不足から上司との関係が悪化し、何度かこちらから歩み寄りましたが無視され、最近は業務指示も出ず、最低評価を下されるようになりました。相手を理解し、こちらも認めてもらえばと努力しているところですが・・・」(Kさん、32歳)

こちらから近づくとか理解するとかだけでは難しそうですね。もう1つの方法はKさん自身が「このままでいいのだろうか」と悩んでおられるように、社会人10年を過ぎ、自分自身の仕事、あるいはキャリアについて、より深い理解をする時期に来ているように思えます。

たとえば「何故この仕事をやりたいのか」とか、「この仕事を通じて何を大切にしたいのか」あるいは「これ以外にやりたいことはないのか」といった問いかけを自分にしてみてはどうでしょう。上司との関係の前に、自分自身とのコミュニケーションが課題になってはいませんか。

もう1つ。「自営業のため職場の人間関係=家族関係です。夫婦間のマンネリ・倦怠感みたいなものが、そのまま仕事にも現れている気がします。これを『勝ち/勝ち』にするには、少し荒っぽいかもしれませんが、今までの価値観や観念を一掃させて、新たに目標を設定することが必要だと思います」(Iさん、40歳)。

Iさんはご夫婦で飲食店を開業されておられ、仕事そのものは嫌いではないようですね。でも今までの価値観や観念を一掃させるというのは、ちょっと強引な感じがします。どこかで大切にしていることを合わせるために、押さえてしまったものがあるかもしれません。

そこで質問です。「飲食店以外に、Iさんがやりたいと思ったことは何ですか」「それをやる上で大切にしたいことは何ですか」。そして「大切にしたいこと」が見えてきたら、次の質問です。「今の飲食店でその大切なことを実現するために、何をしたらいいですか」。お二人のパートナーシップとお店が新しいステップに入る時期のようです。

先週、私が担当した40、50代のキャリアデザイン研修でも似たような質問があったので紹介させていただきます。49歳の営業管理職の方が「30年間、営業職一筋だったので、キャリアビジョンといっても今の仕事以外に思いつかず困っています」と相談にきました。

そこで「入社以来、営業以外でやりたいと思ったことはありませんか」とお聞きしたところ、「そういえば、入社4、5年目の時に企画関係をやりたいなと思ったことがありましたが、いつのまにか諦めてしまいました」ということを思い出されました。

「では、もし、企画関係に行ってたとしたら、そこでどんなキャリアが得られていると思いますか」と尋ねたところ、「経営全体が理解できると共に、きっとマーケテイング関係で新しい企画を立てていたかも」とのこと。

「その2つの視点を持って、今の営業活動に活かせたら、仕事振りはどう変わりますか」とさらに聞くと、「もっと提案型の営業展開が可能になるような気がします」と答えてくれました。そして、「営業管理職として、経営とマーケテイングをもっと専門的に勉強したいですね」と短時間のうちにかなり納得をされた様子でした。

将来のありたい姿-キャリアビジョンがまだ見つからなくても、過去のやり残したことや諦めてしまった事をもう一度、思いだし、そこにある価値観や大切にする視点から現在の仕事を見直すことで、現在の停滞感を突破することが出来るのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「仕事でやり残したことや諦めてしまった事はありませんか?もしそれを 現在の仕事に反映させることができたら、現在の仕事はどう変わってき ますか?」

第25回 勝ち/勝ちゲームにするために

こんにちは,楳林です。先週のエクササイズは「今の人間関係に隠されたあなたのミッションは何ですか」でした。今回も先ず1通の回答を紹介させていただきます。

「職場のグループのメンバー3人はいずれも技術系の男性(40代2名、20代1名)です。私は特許管理事務兼一般職と職種は全く異なりますが、会社の方の仕事をしやすくするために何かしらサポートすることが出来ると思っています」(Hさん)。

Hさんは大学卒業後、通信過程学芸員コースに編入、勉強しながら,3月から派遣で特許管理事務所で働いているそうです。意欲を持って仕事や人間関係に取り組んでおられるようですね。

「親子の距離が他人の距離になっているように思います」とHさんは言っています。これから職場での人間関係が密接になるにつれいろんな感情が引き出されてくると思います。それがいい感じであれ悪い感じであれ、自分のビジョンやミッションを見つけるきっかけにすることが出来ると思います。

さて、今回はその鍵となる“勝ち/勝ちゲーム”(あるいはWIN/WINの関係づくり)を紹介したいと思います。

今の企業社会は、ある意味で競争社会、つまり「勝ち/負け」の世界です。そして、いつのまにか職場に限らず人間関係もともするとこの「勝ち/負け」になりがちです。この関係からはなかなかビジョンやミッションは生まれ難いものです。が、これを「勝ち/勝ち」の関係に変えることは可能です。

今回こんな回答がありました。「保身ばかりしている上司に反するような仕事をすること。順調な人間関係を一度見直すこと」(Oさん、26歳)。こんな上司だったら平穏な職場でもちょっと壊したくなりますよね(笑)。

では、これを「勝ち/勝ち」の関係にするにはどうしたらよいでしょう。まずこれを考えてみましょう。保身の上司に憤慨していると思いますが、これは相手の存在を受け入れていないだけではないと思います。実は自分自身の中にも保身する姿があり、その部分を否定し嫌っているということはないでしょうか?

ですので、そういう「隠れた自分」と「上司」を先ず受け入れる必要があると思います。でも、まだそれだけでは「負け/負け」ゲームです。2人が「勝ち/勝ち」ゲームをするようになるという目標を持った上で、先ずOさんが、この職場におけるチャレンジを勇気を持って提案することが必要なのではないでしょうか。

そしてOさんは今その時期なのでは?と私は思いました。「見かけだけの平穏さでなく、充実感のある職場にするために先頭に立ってチャレンジする」ことがOさんのミッションのような気がするのです。

さて、もう1通。「職場の人間関係が悪いわけではありませんが、意識の中で、男性への反感と女性への恐怖の間に挟まっています。サブとして人を助けるのが好きなのですが・・・」(Nさん、事務経理関係の総合職)。

内なる男性性と女性性が激しく戦っているようですね。でも、この場合も先ず、女性を見下す男性と総合職を嫉妬する女性を自分自身の一部として受け入れてみてはどうでしょうか。そして、次にそのエネルギーを統合の方に向けてはどうでしょうか。

例えば職場の男性と女性がそれぞれお互いを認め合って協働出来るよう働きかけていく。リスクを冒すことになるかもしれませんが、チャレンジする中で、それだけのパワーと自信を持ったリーダーになれることと思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが職場の人間関係を「勝ち/勝ちゲーム」にするため、どんなことが考えられますか?」

第24回 問題,人間関係とミッション

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「今の職場であなたがチャレンジを避けていることは何ですか」でしたね。今回も先ず1通の回答を紹介させていただきます。

「(1)この会社に長期いるという意志決定 (2)会社の戦略や方向性までをも含めた重い意志決定に関して自分の考えを持ち,発言すること (3)チームを持っているが、それを部門として大きな責任を負うこと、広い意味での教育の3つです」(Sさん、29歳)。

何だか管理職を目前にした中堅社員の思いのような感じですね(笑)Sさんはこれを書くことによって「未来の自分のイメージや10年後の姿が明確で、しかもコミットできていれば、チャレンジを避けることなんてしない」と気づいたそうです。

いま管理職に一番求められているのもこうしたヴィジョンやミッションを持つことですね。そこで質問です。それが「見つからない」のか、あるいは「見つけたくない」のか、どちらだと思いますか。

ところで今回のエクササイズは職場ということで人間関係に関する答えが目立ちました。「上司とのコミュニケーションを避けている」(Yさん、30歳)「上司を含め人付き合いが苦手です」(Cさん)「人を相手にするのが苦手なのに部下、後輩を指導しなければならない」(Hさん)。皆さん、職場の人間関係でかなり苦労しているようです。

そこで今回は人間関係について、ヴィジョン心理学の視点を紹介したいと思います。それはあらゆる問題、課題は過去、現在の人間関係の反映だということです。仕事上のことだけでなく、健康、経済、家庭、お金などの問題がある時、よく見ると必ずといっていいほど誰かとの関係がうまくいっていないようです。

厄介なことに、例えば上司との関係がうまくいかず、その職場がいやになって転職したとしても、次の職場でまた同じような上司との問題が浮上してしまう。そんな経験をされた方はいませんか。

問題と人間関係が深い関連があるとすれば、いま人間関係が障害になっている人は、同時に何か問題や課題が気づかないところで浮上しつつあるということです(すでに表面化している人もいるでしょう)。

その解決方法は2通りあります。1つは問題、課題をしっかり見据え、その核心的なテーマに手を打つという方法です。

もう1つは人間関係を改善することです。これにも2つのやり方があります。1つは当の相手に好き嫌いや正しさなどの感情を気にせず、とにかく親しくなるという方法です。たいがいの場合、自分が嫌っているときは相手もそうですから、こちらから近づけば相手の抵抗感も少なくなっていきます。

人間関係を改善するもう1つの方法は、問題となっている人間関係のもっと奥にある人間関係を見つめていくことです。多くの場合、両親、兄弟姉妹との関係が反映されています。そこで面白いテーマが出て来る時があります。関係がこじれたり、断絶したのは、「両親があなたを愛してくれなかった」からですか、それとも「あなたが家族のために果たそうとしたミッションを捨てた」からですか、といった問いなのです。

さらに深い意識での関係を観ていった時、実は神とか女神(宗教ではありません(笑))と自分の関係にたどり着く時もあります。ミッションの日本語である「使命」の本来の意味は「命を使ってでも守りたい価値」ということですからね。

さて、最初のSさんに戻りましょう。問題の核心を見ていった時、Sさんも実は「ご自分のミッションをしっかり見つける」というテーマに今直面しているということなのです。

上司、後輩といった職場の人間関係が問題になっている中核のテーマは「彼らがあなたに何かを期待している」ということなのです。相手との関係が改善されるにつれ、あなたは職場でのあなたのミッションを果たすチャンスの時であることに気づくはずです。

もちろん、自分のミッションを果たす場所がこの職場ではなく、別の場所だという確信が出てくれば、転職というテーマが浮上することになると思います。

つまり問題から入ろうと、人間関係を見つめる方から入ろうと、それはあなたが自分のミッションを見つけるために起きたことであり、あなたが自分のミッションを見つけ、コミットしていけば解消していくことなのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「今の人間関係に隠されたあなたのミッションは何ですか」

第23回 あなたがリーダーだったら?

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたが職場のリーダーだとしたら、メンバーの1人1人が創造的になるために、どのようなサポートをしますか」でしたね。今回も幾つかの回答を紹介させていただきます。

「それぞれに役割を与え、貢献を認められる体験をしてもらいます。具体的には『不満』を『提案』の形に変え、当人に改善のリーダー役をやってもらい、他のメンバーの協力も取り付け、改善が達成出来るようサポートしていきます」(Mさん、研究職)。

「部下が創造的になれる環境、というのはある程度の『責任感』と『使命感』、そして達成したときの『結果』が創造できることが必要だと思います。そして『しょうがないな~~、Yさんのためなら,一肌脱ぐか』という感じかな」(Yさん、29歳)。

「企業理念・事業目的をメンバーに示します。その組織が現在向かうべき方向をはっきりとさせます。そうすることで、何のためにこれをやっているのかという目的意識が持ちやすいと思います」(Yさん、25歳)。

「先ず最初に1)欲しい結果2)結果を出す目標期限3)その結果を出す必要性の3点を説明してもらいます.そして大まかな日程表を作ってもらった上で、A.日程に無理はないか?B.わからないことや困ったことはないか?について質問した後は,相談を受けたときにのみ一緒に考えます.最後に期限の1日前に結果概要を口頭で説明を受け、翌日結果を受け取ります」(Kさん、30歳、休職中)。

皆さんの回答を幾つか並べて紹介させて頂いただけで、「リーダーシップは誰かに教わるのでなく、回答は、まさしく皆さん自身の中にある」ということ、そして今回はまるでグループの回答のような形で職場のリーダー像を深められたように思います。

もう1つ。「まだ働いていませんが、職場のメンバーがクリエイテイブになるためには、先ずはリーダーが、メンバーにはこうあってほしいという理想を自ら実践する必要があると思います。そんなリーダーを見たメンバーは必ず影響を受け取るはずです」(Tさん、18歳)。

そうですね。とかくメンバーの方に目が向かい勝ちですが、基本はやはり「環境を変えようと思ったら、先ず自分を変える」ことですよね。

さて、リーダーとしてメンバーの創造性を手助けするということは、自分のキャリアをサポートしているような感じがしませんか。そこでメンバーを自分に置き換え、エクササイズに対する自分の回答は自分自身が創造的なキャリアを実現するために、内なるリーダーが自分にサポートする方法だと思ってみてください。

実は、前回の質問の意図は「あなたがリーダーとして行うことは自身のキャリア開発にとってプラスなことである」だったのです。

さて新年度が始まる4月に入り、すでに皆さんは自分の実現したいキャリアのビジョンや目標をかなり明確なものにしたり、その方向へ向けてチャレンジしつつあると思います。でもそんなときに思わぬ課題が足元で浮上する時があります。そこでこんなケースを紹介したいと思います。

私のコーチングのクライアントであるMさんはアロマセラピーの週末開業を決めた後、いろんなチャンスが舞い込むだけでなく,職場でも今までの営業サブの仕事からマーケテイング担当に移らないかという話も来るなど一時は絶好調。でもその後,話だけでなかなか具体化しないのが気になる様子です。

そこで原因を探っていくと、職場での異動を喜びつつも、新職場の上司に以前から抵抗感があってか今ひとつ迷いが出ていることが判りました。そこで「新上司との関係もチャレンジとしてみたら」とアドバイスした途端、なにか吹っ切れたようです。

新たなキャリアにチャレンジするとき、同時にこれまでの職場や人間関係を改善するような課題が出るようです。それを避けるのでなく、それもチャレンジとして受け止めていくことで、より前に進むことが出来ます。

ということで今週のエクササイズです。

●「今の職場であなたがチャレンジを避けていることは何ですか?」

第22回 ミッションとリーダーシップ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「現在の職場でのミッションを創造してみてください」でしたね」でした。今週も何通か紹介させていただきます。

「“リーダーのサポート業務”という将来の目標に向けて、“職場内の男性達に、それぞれの業務目標を達成させる”というミッションを持つことが出来ます」(Nさん27歳、エネルギー関係の総合職)。

Nさんは現職(男性の補助的な業務)ではキャリア形成が出来ないという気持ちから転職を考えています。そして、将来は自分の裁量や判断、マネジメントが出来る仕事をやりたいそうです。

ただ「リーダーシップを取るよりは、サブあるいは右腕(諸葛孔明のイメージ)となって活躍したい」と言っています。が、周りの人をエンパワー出来る人がこれからの時代のリーダーかもしれませんよ。そう考えると、リーダーやサブという区分はあまり重要ではないのかもしれません。

それにしてもNさんが最後に書いている「ミッションの達成を助けて差し上げますので、部長、どうかハッキリしたミッションを持ってください!」はとても感情が伝わってきました。まるでお父さんに言っているような感じですね(笑)!

ところでビジョンとかミッションには「思い」や「夢」と一体になった感情がありますよね。それはどこからくるのでしょうか?

その1つのヒントが私には自分の生まれ育った家族の中での役割にあるような気がしています。これはあまり科学的ではありませんが、以前、深層心理のワークショップを受けているときに教わったことを紹介したいと思います。

それは「子供は何番目に生まれるかでミッションが異なる」というものです。

第1子・・・自分の家族を救いに来た
第2子・・・家族に平和をもたらしに来た
第3子・・・両親の関係改善に来た
第4子・・・家族全体の繁栄(豊かさ)を実現するために来た

第5子からまた繰り返すそうです。また一人っ子は4つのミッションを全部背負うので大変なのだそうです。

これを信じるかどうかは別にしても、例えば2人のチームに1人、2人と加わるだけでもそれだけで人間関係は変わりますよね。大切なことは子供時代のそうした体験はたいてい失敗に終わり、無意識に怒りや悲しみと一緒に隠されその後の人生のパターンやストーリーを形成するケースが多いということです。でも今いる職場でそのパターンが起きていてもおかしくありません。

さて、話は変わりますが、先週とても感動したことがありました。私のクライアントで米国手話の教室を主宰しているN(31歳)さんに誘われて、「手話歌コンテスト」に見にいったのです。

Nさん自身がこのコンテストを見つけ、生徒さんに「挑戦してみなよ」と励まし、彼らをモテイベートしたのです。このことは、彼らに新たな生きがいと創造的な活動を実現するチャンスを提供したようでした。

コンテストの結果は準優勝でしたが,歌と踊りを手話で伝えようとする5人のチームはとても創造的でした。

ちなみに彼女のご両親は学校の先生で、高校生時代は両親に対しかなりの反逆児だったそうですが、生徒さんと一緒になって応援する彼女は、私にはミッションを持った先生に見え、そのことに私は感動したのでした。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが職場のリーダーだとしたら,メンバーの一人一人が創造的になるために、どのようなサポートをしますか」

第21回 ビジョン、ミッション、価値観

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「今いる職場に自分のキャリアビジョンに必要な要素はありませんか?」でした。今週もいただいたメールから何通か紹介させていただきます。

「大学までの専門(物理)を活かせる職場にと選んだ会社ですが、専門スキルの他にも法律に関する知識が必要となることが新鮮です。また小さな会社なので営業とのやりとり・駆け引き、顧客とのやりとりもあり、顧客と共に監督官庁に出向くこともあります。キャリアビジョンというより、社会人として必要な技術(交渉力)を学ぶことが多いです」(Yさん、29歳)。

Yさんはこれまでの回答で、「エンターテイメント」「科学」「教育」「協力隊」などが自分のキャリアビジョンの柱になることを感じておられます。その上で「現在の仕事の顧客とのやりとりの中でのコンサルタント的要素が、将来やりたいことにつながっているかな」と着実に歩んでおられるのを感じます。

もう1通紹介させていただきます。「外注で仕事をしていた以前と違い、現在の職場では同年、あるいは年下の人から注意を受けて腹が立つこともありますが、自分の至らない点を指摘してくれるので、ある種の新鮮な気持ちで仕事をしています。プロとしての最低限必要な要素を教えてもらっています」(Sさん、34歳)。

Sさんはご自身を「キャリアビジョン以前の段階」と言っていますが、私にはSさんの毎回、エクササイズにコツコツ取り組んでおられる姿こそがSさんのキャリアビジョンに欠かせない資質であり、それをご自身で育てているプロセスのように思えます。

一方では今回のエクササイズをやりながら、現在の職場に「学ぶものがない」「人間関係が不満」「キャリアに役立たない」「経済的不満足」といった回答も目立ちました。

現状に甘んじないということは大切です。でもちょっと視点を変えて、「自分の将来ありたい姿,ビジョンから現在の職場を見たら、どんな意味があるのかな」という風に見ることをお勧めします。

ところで最近、「ロード オブ ザ リング」を見ました。「世界の滅亡を回避するために、邪悪の魔法を持った指輪を捨てにいく旅」にビジョンの持つもっと深い意味を見せてくれます。ビジョンを見つけるというのは、なにか特別になるのではなく、本来の人間に戻るということなんです。そして特別な意識ではなく、「人にはそれぞれ、生まれつきの役割がある」というミッション(使命)と、副題にある「旅の仲間=友情」が、ビジョン以上に大切なものとしてが描かれています。

ビジョンというのは夢とか志、ロマンといえば素晴らしいですが、実は幻影、幻といった方が正しいかもしれません。ある人は子供時代に失ったもの、実現可能性のない夢という見方すら出来ます。「そんなもの役に立たない」と捨ててしまう人が多いのです。

しかし、幻影に近い夢を諦めず、考え続け、それでも実現の可能性に賭けるという選択をした時、現実とか日常の世界は今までとは違って見えてくるようになり行動も変わってきます。そして、あなたが大切にする価値観も明らかになってくるのです。

もし今の職場に抵抗があるとしたら、それは「世界に対して持っているあなた自身の壁、ブロック」なのです。しかし、職場は「あなたが思っているあなたそのものなの、あなたという鏡」です。だからこそ「あなたを変えるチャンスがその場所にある」という意味で「あなたはベストの場所を選んでいる」とすら言えるのです。

あなたがキャリアビジョンを指向するという選択をした時、キャリアビジョンへのプロセスが、現在の職場という現実・日常性に起きます。逆に言えば、「今、ここ」をないがしろにしたビジョンって、単なる夢物語に終わってしまいます。

ビジョンというのは自分の内側で“感じる“ものです。だからそれをキャリアに結びつけるには、たとえ50歳からでも先ず自分を探す旅をする必要があります。そしてキャリアビジョンというのは現実の仕事と人生の中でビジョン、ミッション、そして価値観を “三位一体”として見たものと言えるのです。

ということで今週のエクササイズです。

●「現在の職場でのあなたのミッションを創造してみてください」

第20回 キャリアビジョンと転職

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「仕事、仕事以外の経験、それに子供時代の3つの経験でそれぞれに好きだったことを1つずつ挙げ、そこに共通する中核的なテーマと感情を見つけてください」でしたね。今週も先ず1通紹介させて頂きます。

「仕事:出会いの中で何か学べた時。仕事以外:自宅でよく開くパーテイの翌日、面白かった、ありがとうといわれた時。子供時代:みなで野球をしていた時。常に他者との関わりの中で喜びや意義を見出しています」(Aさん、27歳)。

Aさんは今の仕事が、もっぱら内勤で外の世界と触れていないことや仕事内容が物足りないことなども影響し、現在もっと顧客と直接接触できる仕事に転職活動中だそうです。

もう1つ、同じような回答がありました。「中核的なテーマは仲間と知恵を絞りながら解決策を導くそのプロセスに興味を持っている」というSさん

(25歳)も現職にそれを感じれないためか転職希望のようです。

私自身も新聞社に入社して最初は整理部という内勤でかなりくさりました。しかし、私のとった作戦は、いまある仕事をしっかりやることと、「外に出たい」という希望は希望ではっきり上司に伝え、時を待つことでした。2年半で支局勤務になった時のうれしさは今でも忘れません。と同時に整理部で見出しをつけていた経験が取材にとても役立ちました。

ですから、「今の仕事が物足りない」から転職をする前に、もうすこし、「今の仕事の中に自分のキャリアビジョン形成に役立つ物があるとしたら何だろう」と興味を持って発見されてはどうでしょう。現在の仕事にも必ず意味はあるものです。そうやってその仕事を卒業されてはどうでしょうか。

キャリアビジョンと転職に関連して、もう一人ご紹介したいと思います。

「この3月で現在の職場を退職します。次の仕事は県の嘱託職員で週3回出勤。地域づくりコーデイネーターという肩書きでまちづくり、地域づくりに関わる人たちを支援する仕事です。それとは別に社会学系の大学院に通うことになりました」(Tさん)Tさんはこのコラムの始まりから何度もエクササイズに回答されて、その度に自分の仕事のあり方や自己分析をしっかりやっておられるな、という印象がありました。福祉関係の人材センターに勤務されているそうですが、人や自然とのつながり、自由を大切にされている人というのが私の印象です。

今回のエクササイズでも「仕事や仕事以外,子供のときに好きだった体験で共通すること、それは『人が変わること』だったと思います。仕事の中で、高校生にワクワク探しのワークショップをしたり、そんな自分が楽しかった」というTさんは、自分のキャリアビジョンの方向へ今まさにチャレンジされているのを感じます。

「県の仕事は3年限定で収入もだいぶ減り、少し不安ですが、なんとなく『大丈夫』という安心感もあります」「結婚を機に、何だか、この人と結婚させてもらえるなら、自分は自分の人生の方向性についてもっと正直に生きなければ、というよく判らないけど確信めいたものも感じます」

キャリアとパートナーシップに対する信頼がTさんの中に根付きつつあるようですね。すばらしいことだと思います。何をしたいかとかキャリアビジョンの方向性が明確になってくると、転職などの機会が来たときも、その意味や目的をしっかり押さえながら、時には川の流れのようにスムーズに進む時があるものです。

ということで皆さんへのエクササイズです。

●「今いる職場に自分のキャリアビジョンに必要な要素はありませんか? 是非、それを教えてください。」

第19回 キャリアビジョンを見つける旅へ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「いまパートナー(仕事上の相手)で、対立、競争している人がいたら、ちょっと視点を変え、その人の価値を見つけてください」でしたね。今週も先ず1通紹介させていただきます。

「福祉職10年ですが昨年4月からペアになった女性にかなりのストレスを感じています。私より年長で立場も上ですが、その人は細かな所に気持ちが入りこんで、仕事全体の流れが滞ったり、他人に任せきりになるところが私には許せない感じです。

でも、彼女は中間管理職という立場よりもむしろ現場に近い気持ちで、そのこだわりが結果としていいものを引き出す鍵になっていることもあります。私は自分なりの意見も出しながら共同作業を続けていくことで、彼女のよい部分を学ぶことが出来るかもしれません」(Sさん、36歳)

10年というキャリアは1つのサイクルが終わり、新たなサイクルに入る時ですね。彼女を受け入れることによって、あなた自身が、中間管理職と現場感覚を統合する、いわばプレーイングマネージャーの準備をしているように思えますが、どうでしょうか?

ところで、今回は初心に帰ってキャリアビジョンについて触れてみたいと思います。このコラムへの回答や企業研修で出会う方、年齢的には20代から50代まで共通して、キャリアの将来像やビジョンが描けないという方がこのところ多いからです。

その関連でもう1通紹介させていただきます。

「私は昨年6月に自立した女性と対等なパートナーシップを目指して再婚しましたが、今年2月にリストラにあい、現在無職です。それ以来嫁さんに対しても弱気になっています。最近、連絡もなく遅い時につい『どこへいってたの』とか言ってしまい、当然またギクシャクしてしまいました。我ながら『こんな部分があったのか』と驚き、情けなく思います。結構「俺は男だ」タイプでやってきたので自分でも心外です」(Kさん、43歳)。いろんな要素が絡んでいますね。先ず失業したりすると、日本の男性の多くは、自信の源になっていた会社へのアイデンテイテイを失い、気弱になりがちです。それと前に紹介したトランジション(人生の転機)状態に入り、中立ゾーンという精神的に不安定な状態になります。

もう1つ、結婚前は多分、Kさんがリードしていたパートナーシップの段階が失業を契機に今度は自分が依存になり、奥さんが自立に変わってきているようです。依存の状態というのは、深層心理でみると“傷ついた女性性“とも言われ、ニーズや嫉妬心が強くなりますが、これは相手にとっては、「こんな女々しい人と結婚したつもりではなかったのに」とうんざりするエネルギーなのです。

それにKさんの場合、前の結婚の未完了の部分が新しい関係の中に課題として出てきているようにも思えます。ある意味ではキャリアの危機とパートナーシップの問題が重なって、かなり大変な時期を迎えていると言えます。でもちょっと視点を変えれば、チャンスの時期でもあるのです。先ず「対等な人生のパートナー」を目指す限り、時には自立―依存の関係が逆転したりすることを体験しながら成長するものなのです。だから、片方が「うんざり感」を感じたとしても、それは相手の本質ではないのですから、我慢して受け入れることが必要です。

その上で、Kさんにとってキャリアとパートナーシップの両方の危機を乗り越える方法は、この機会に自分のキャリアビジョンをしっかり見つけることです。会社ではなく、自分のキャリアビジョンに根付いた仕事を見つけていく中でこそ、パートナーシップも改善していくと思います。

いま、「ハリー・ポッター」や「千と千尋の神隠し」「ロード・オブ・ザ・リング」といったファンタジー映画がヒットしています。ビジョンというのは、あなたのファンタジーです。そして夢こそが新しい現実を作っていく時代ではないでしょうか。

ですから皆さんが直面している問題、課題は、それぞれ異なっているでしょうが、それは「キャリアビジョンを見つける旅を始めなさい」というメッセージと思ってみてはどうでしょうか。

ということで皆さんへのエクササイズです。

●「仕事、仕事以外の経験、それに子供時代の3つの経験でそれぞれに好きだったことを1つずつ挙げ、そこに共通する中核的なテーマと感情を見つけてください」

第18回 パートナーシップと無価値観

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「自分とパートナーとの間で(独身の方は将来のパートナーと)、キャリアに関して、どのような関係を持ちたいですか」でしたね。今週も1通紹介させていただきます。

「結婚するまで米国で働いていたので、その経験から2人で信頼できるスケジュールを組み立てることです。日本社会は男性型、夜型、チームワーク型になっているので、そのつど細かい計画を見直します。計画をきちんと立て、信頼できる関係を作ることが、老後になっても2人で安心して暮らせる条件ではないでしょうか」(Sさん)。

本当にそうですね。私にとってもけっこう耳の痛い点です(笑)。相手が家庭に居ようと仕事をしていようと、2人で計画を作り見直していくというコミュニケーションが、お互いに信頼できる関係を培っていく基本ですよね。

今回は主婦の方の回答が目立ちましたが、いずれも自分の仕事ややりたいことと家庭の両立に個性的に取り組まれていますね。主婦業というのも大切なキャリアとして見ていかれてはどうでしょうか。

ところで回答の中に「旦那と一緒に仕事をするのは難しいな」(Kさん31歳)という感想に目がとまりました。今回はこのテーマを取り上げたいと思います。

何故このテーマを取り上げるかというと、私も妻からこれまで何度か同じ事を言われたからです。

私達は普段は別々の仕事をしていますが、もう7,8年、月に1日だけ、2人で一緒にトレーナーになり、ビジョンを見つけるための小さなワークショップを続けています。

これは2人がやりたかったことでした。が、初めてみるととにかく大変でした。交互にトレーナー役をやったわけですが、とりわけ私は相手がうまくいくと何故か腹が立ち、相手がうまくいかないと内心喜んでいる自分がいたのです。紛れもなく競争心が潜んでいたわけです。

競争心は勝つと優越感を持ち、負けると逆に今度は惨めさや劣等感を持ちます。パートナーなのになんでこんな感情が出てくるのでしょう。特に男性にはパートナーに自分の弱さやだめさを見せたくないという感情が根強くあります。だから程度の差はあれ、自分のほうが上位にいれば、その弱さを隠しておけるわけです。

では、自分の弱さを見せたらどうなるのでしょう。「自分は愛される価値がない」という、とても無価値な感情が潜んでいて、何とかそれを感じないように四苦八苦してきた事がわかります。

が、ワークショップを通していろんな人を見てくると、どうやら私だけでなく多くの人の中にそんな無価値観が潜んでいる事がわかってきました。だからパートナーに近づかないように単に夫婦の関係や、子供が出来たら父、母の役割で接したり、なかには一生パートナーを作らないようにしたりします。
将来ありたい姿やビジョンを支えているのは自分の価値観ですが、その中核にこの無価値観があるとしたら、なかなか自分のビジョンが見つからないのも当然ではないでしょうか。

例えば、頑張って自立して自分のキャリアを実現していったとしても、ふと立ち止まったときに、この無価値観が浮上してきます。

しかしです。この無価値観を超える方法が実はパートナーシップにはあります。人生のいろんな体験を通じて「こんなダメな自分でも愛されているんだ」という実感を得たとき、徐々に自分の無価値観が軽くなって、お互いの価値を受け入れられるようになっていくわけです。

ですから人生のビジョンを見つけ、実現していく上で、キャリアとパートナーシップはちょうど車の両輪のような感じが私にはしています。「あなたと一緒にやるのは大変」と小言を言われながらもワークショップを続けているのはそういう理由からです。

ということで皆さんへのエクササイズです。

●「いまパートナー(仕事上の相手も含む)で、対立、競争している人がいたら、ちょっと視点を変えその人の本当の価値を見つけてみてください」

第17回 キャリアとパートナーシップ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「もしもあなたが今本当にやりたいことがあるとしたら、それを一歩でも先に進めるため、どのような具体的な行動をとることが考えられますか」でしたね。今週も1通紹介させていただきます。

「貿易関係の会社で派遣社員をしながら、昨年11月、初めて米国の公認会計士の資格試験を受け、結果待ちです。目標は「心と生活の充実」、ステップが『資格』と外資系企業に就職すること。具体的に「勉強と自粛」を続けていますが、実際はずっと同じ調子で、だれてきているのが気になっています」(27歳、Kさん)

最初の挑戦で受かるといいですね。充実感という目標をしっかり持って取り組まれていて素晴らしいと思います。そこで質問です。「今充実感を感じるために何をしたいですか?」

何人かの人も資格や語学に挑戦しています。でもなんとなく「資格をとらなければ」と頑張り続けているようです。目標に向かっている今も充実していること、そして将来のキャリアビジョンを具体的に描いていくともっと楽に「資格」のステップを超えていけるような気がします。

ところで今回は、別の方のメールから、もう1つ新しいテーマを。「結婚して1年半ですが、自分自身の本当にやりたいことをやるために、『割り切った気持ちを持つこと』と『家族の説得』からしなくてはいけないのですごく難しい質問です」(25歳、Kさん)

Kさんは、「独身時代と比べての束縛感と1人で生きているわけではないことへの責任感」を感じる一方、ご自分が「家事など主婦としての役割も仕事も趣味も完璧には出来ない」という諦めにも近い気持ちを持ちながらも、「割り切らないと前に進まない」と思っていますね。また「結婚して仕事を続け、趣味を楽しむためには主人とお互いの両親の理解と協力が必要不可欠」であることを痛感しているようです。

このパートナーシップとキャリアの問題というか関係は今も私にとってもとても関心のあるテーマです。

ある時期、私と妻はチャック・スペザーノ博士のビジョン心理学を通して、かなり徹底的にパートナーシップのあり方に取り組んだ時期があります(今も続いていますが)。そこで見えてきたことは「自分が人生で本当にやりたいこと、キャリアや家族の問題も含めて、かなりの課題はパートナーと近づくことで解決していく」ということです。

キャリアの問題はある意味で両親と自分の葛藤や自立の過程を通じて形成されていくような気がします。そして結婚すると今度はちょうどお互いの間に両親が挟まっている感じなのです。パートナーと近づくということは先ず、自分の両親に近づくことでもあり、同時にお互いのキャリアを成長させることにもなるのです。
今再就職に取り組む中高年のご夫婦は、企業戦士としてではなく、夫婦協力してセカンドキャリアに取り組む時代が始まっているようです。

一方、若い人は以前から、お互いに自立して“友達夫婦”が増えて来ていますよね。それは「父は仕事で家庭は母」という関係に比べて、お互いが対等の関係になりつつあると思います。が、半面、友達以上には近づかない、干渉しないという関係を維持することで親密感を避けているようにも私には思えます。

多分、これからはパートナーシップの問題を通じてお互いの自立を尊重しつつも、キャリアに関しての相互協力、相互依存の関係がもっと求められてくるように思えます。そこで大切なのは地道にコミュニケーションしていくということではないでしょうか。

Kさんは「理解してもらうために、説得のコミュニケーションを考えている」 ようですが、相互協力のためのコミュニケーションに挑戦されてはどうで しょうか。実は私達も今も共稼ぎしながら、コミュニケーションの機会を作 るのにけっこう苦労しています(笑)。

ということで皆さんへのエクササイズです。

●「自分のパートナーとの間で(独身の方は将来のパートナーと)、キャリ アに関して、どのような関係を持ちたいですか

第16回 コミットすることの大切さ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「最近あなたに来た偶然の出会い、出来事をどのように活かしていますか」でしたね。今週も1通紹介させていただきます。

「最近私にとっての偶然の出会いはやりたい仕事が見つかったことです。これまで4歳、3歳の息子がいるため、安いパートで我慢していましたが、3月で4歳の息子の幼稚園が閉まるため、保育園へ2月から行くのを決める直前に、自分のやりたい仕事が偶然にも見つかりました。子供にはかわいそうかもしれませんが、頑張りたいと思います」(主婦、28歳)。

多分、ずっと「やりたい思い」を持ち続けておられたのでしょうね。そして子供というのはけっこう親の気持ちを理解しているものです。あなた自身もきっと心のどこかで息子さんの了解を得て、自分で決めたからこそ、やりたい仕事に出会ったのだと思います。

今回はこの「何かを決めるということ」あるいは「選択する」ことについてお話したいと思います。最近では、よく「コミットする」という言い方をしますが、今週はこのことと偶然性の関係についてもお話しいたします。

というのは、私がコーチングを続けている人達にも、何かを決めた後、変わった出来事が相次いでいるからなんです。

第1回のコラムで紹介しましたカラーコーデイネーターを目指しているYさん。彼女は、先月カラー検定の2,3級に合格したものの、しばらく躊躇していました。が、今月、思い切ってプロになるためのパーソナルカラーコースに入学しました。入学金を払った直後、勤めている会社の職場が3年間いた経理部から、営業部に異動になったのです。「何か会社の都合で異動になる感じで初めはショック」だった彼女ですが、コーチングを受けているうちに「営業での顧客とのコミュニケーションはプロになるための準備なんだわ」と意識を変化させています。それどころか「何だか心の奥でこうなることを選択していた感じ」と語る彼女は、プロへの階段を着実に歩み始めたようです。

もう1人は第2回で紹介したMさん。外資系の検査機器メーカーの営業をしながらアロマセラピーの資格を取得したものの、なかなか開業の決心がつきませんでした。今年に入ってやっと料金表の入ったパンフレットを完成、週末開業にこぎつけました。その直後、本人も驚くハプニングが起きたのです。

次の週、米国本社で働いている米国人で年に2,3回は日本に来る友人が1つのプレゼントを持ってきてくれたのです。それはインデイアンが使う“ドリームボックス“。よい夢を見たら、それを書いてこの中に入れると夢が実現するというものだったのです。

「別に開業のことを話したわけでもないのですよ。ただ、彼が日本に出張する直前、彼の娘さんから、『インデイアンのお婆さんの所でお土産を買って私に持って行って』と言われたそうなんです。そして、推薦してくれたのがドリームボックスだったんですって」

「本当にびっくりしたわ。でもちょうどこれからの自分のビジョンを持ちたいとおもっていた矢先だったので、何かサポートされている感じだわ」と語る彼女は、目下、そのドリームボックスを使ってよい夢を見るのを楽しみに待っていると言います。

と、ちょっと“飛んだ”エピソードになってしまいましたが、入学金を払ったり、パンフレットを作ったりという具体的な行動は、頭で考えていた「やりたいこと」を本当に決心、あるいはコミットさせる効果があるようです。

そして同時に、相前後してやりたいことを支援するような出来事を生じさせるパワーもあるようです。勿論、それが単なる偶然なのか、必然なのかは当の本人ですら理解できないかもしれませんが・・・

皆さんはこうした必然とも思える偶然が、キャリアや仕事で起きたことはないでしょうか?

ということで皆さんへのエクササイズです。

●「もしもあなたが今本当にやりたいことがあるとしたら、それを一歩でも先に進めるため、どのような具体的な行動をとることが考えられますか?」

第15回 偶然を必然化する

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたのキャリアコンパスは、どちらの方向をあなたに示してくれていますか。あなたの経験、智恵、直観を使って回答してみてください」でしたね。今週も先ず1通ご紹介させていただきます。

「現在、私のキャリアコンパスは転職を念頭に、やりたい仕事と適性を模索している最中で、あえてフリーな状態で羅針盤をぐるぐる回しています」(Kさん、30歳)。

面白い表現で現在の状態を語ってくれていますね。焦らないでコンパスの落ちつく先を見極めてください。きっと落ち着く時がくると思いますので!

もう1人。「『経済的に余り冒険したくない』けれど、『でもやりがいのある事をしたい』、そして『本当は、もの書きになりたかった』。三つがまだ別々の方向を向いて整合性が取れず、困っています」(別のKさん、31歳)。しっかり今の自分を掴んでいますね。あなたのコンパスもきっと統合してくると思います。

さて、今日はキャリアに関する“偶然性と必然性”について触れてみたいと思います。私自身、以前から自分がやりたいことを見つけ、進める上で、人との出会いや出来事がまるで偶然なのに、あたかも必然であるように感じることをたびたび経験してきたからです。多分それは私だけでなく、多くの方も感じておられることなのではないでしょうか。

ということでスタンフォード大学のクランボルツ先生が発表している「計画された偶然理論」についてご紹介したいと思います。

これは、変化の激しい時代には、キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成されるとする理論です。そのため個人が自立的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、偶然を必然化し、味方につけていこうというものです。

では、どうやって偶然を必然化するのか。

クランボルツ先生は、(1)好奇心を旺盛に持ちながらも、同時に(2)自分なりのテーマ、考え、価値観にはこだわりを持ち続け、といって環境変化などには(3)柔軟に対応し、どんな結果についても(4)ポジテイブに捉え、変化に対して積極的に(5)リスクを取る。そんな行動・指向パターンが必要だとしています。

これは簡単なようで、とても難しいことですね。自分自身を振り返ってみると、せっかくの偶然というチャンスを、“必然だ“と思いこみすぎて、執着して柔軟性を欠いたり、リスクを避けてチャンスを受け取りそこなったり。。そんな連続だったような気がします。

でも、この数年、自分でも多少は偶然の受け取り上手になってきたと感じることがあります。自分の本当にやりたいことが定着しつつあることとも関係しているようです。そう、このコラムを担当していることも、とても自分に学びの場とチャンスを与えてくれています。

最近感銘を受けたのは、「ハリー・ポッター」の翻訳と発行者である松岡佑子さんです。彼女は4,5年前に肺がんでご主人を亡くされ、赤字出版社の静山社を引き継いだ翌年、友人から贈られた「ハリー・ポッター」を読んだ時、「この本こそ私が翻訳するのを待っていてくれたんだ」というぐらいの運命的な出会いを感じたそうです。

「出版社を引き継いでいなければ…、英語が出来なければ…、英国の友人がいなければ…。偶然と必然からみあって、偶然のように見えても、それを成り立たせるいろんなものは必然なんです」「人間の力を超えた力があるという確信みたいなものがあるんです」とも語っています。

偶然の世界はまるでハリーの“魔法の砂“がかかるみたいですね。

ということで今週も皆さんへのエクササイズ。是非トライしてみて下さい!

●「最近あなたに来た偶然の出会い、出来事をどのように活かしていますか」

第14回 自分自身のキャリアコンパスを見つける

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「これだけは人生でやり遂げたいと思っている事は何ですか」でしたね。今週も先ず、1通ご紹介させていただきます。

「子供の頃からプロの漫画家になりたく、投稿を続け、35歳の時、青年誌でようやく新人賞を取ったのもつかの間、その雑誌が廃刊。その後も投稿を続けましたがボツばかり。生活に行き詰まって就職しましたが、なれない仕事で神経をすり減らしています。貧乏なままで一生を終えても後悔しないけど、プロとして仕事が出来ずに死んだら後悔すると思います」(41歳、Mさん)

「これをやりたい」というものをずっと持ち続けているって、幸運だしすばらしいことだと思います。その上で1つお聞きします。「今の仕事が必要なプロセスだとしたら、生活のためという以外に、今何を学んでいますか」。漫画を通して、伝えたいと思っていることときっと関連しているような気がするのです。

今回は20代から50代まで幅広い層での回答がありました。その幾つかも紹介します。

「自分の居場所を作り、自分の意思が反映され充実感のある仕事に就く」(Cさん、25歳)「起業して自分の給料を自分で決める](Aさん、27歳)「自分に素直に生き裕福な暮らし」(Kさん、31歳)「海外生活、SE経験、子育て経験を統合するような仕事」(Yさん、33歳)「人生の折り返し地点に来て、何か足りないような気がして…」(Wさん、40歳)「いつ死んでもよいように生きていたい」(Sさん、51歳)。

皆さんの回答を読んでいて、「本当は何をしたいのかな」と模索しているような印象を受けました。しかし、言えることは、皆さんのキャリアはすでに今もプロセスを進行中だということです。
さて、今回は「キャリアコンパス」、つまり“キャリアの羅針盤”についてご紹介したいと思います。船が羅針盤を頼りに航行するように、自分のキャリアの方向を指し示す“内なる羅針盤”と言ったら良いでしょうか。

「自分が本当は何をしたいのか」「自分の適職は何か」で悩む人が多いと思います。またスキルの陳腐化や予期しない環境変化で自分のキャリアの将来像が不安定、あるいは不確実な状況に直面されている方も少なくないです。この視点はそんな時に役立つと思います。

この「キャリアコンパス」という考え方は、米国のA・ミラー・テイードマンという女性の学者さんが述べたライフキャリア論、つまり「人生はキャリアである」という理論のキーワードとして提唱しているものです。じゃあキャリアコンパスって何か、というと、「自分自身のこれまでの経験、智恵、そして直観」だと言うことです。

要するに自分のこれまでの職業体験や人生体験を、ある意味で内的体験として見直し、そこでの気づき、自分なりの知恵と直観を今度は自分の将来へ生かしていくことです(そのためには日記や瞑想といった、日々の努力が必要になります)。

「自分の内側にあり、誰でもが持っているシンプルなもの」ということですが、目に見えないだけにちょっと厄介ですよね。テイードマンさん自身が、「体得するのに心の中に葛藤を感じながら何年もかかった」と言っているくらいなのですから。

でもポイントがあります。それは「あなたが積極的にキャリアとしての人生を生きる時、このキャリアコンパスが作動し始め、内的なメッセージを聞くことが出来る」ということです。そのメッセージと同盟を結ぶという言い方もしています。

キャリアコンパスをキャリアの指針にする上での注意は、「他人のでなく、自分自身のを使う」ということです。それぞれ人のキャリアコンパスには、独自の“物語”があるからだそうです。キャリアというのも人の真似をする物ではないですよね。

なお、キャリアコンパスを使う最大のメリットは、どんなに航路から外れていても、今いる場所からいつでも始められるということです。もしかしたら一直線の航路より、途中で嵐に出会ったり座礁した方がキャリアの味が出るかもしれません。それに、どこからでも「北北西に進路を取れ」といった進路変更は可能なのです。

何かこれからのキャリアカウンセリングとかコーチングの世界は、キャリアの最先端でまるで東洋のタオ(道)の世界に近づいていると思いませんか。それが俗世から離れ山の中で修業するのではなく、現代の企業社会の中で行うことに意味がありそうです。

ところで、キャリアコンパスについて調べていくうちに、もう1人、米国のコンサルタントのペギー・シモンセンさんも「キャリアコンパス」の本を出されていました。前者に比べるとかなりビジネス寄りですが、変化と不確実性の時代にあって、5~10年後のゴールを目指すキャリアデザインではもはや対応できないとして、内側からの直観をベースにして戦略的なライフキャリアマネジメントを個人が持つ必要性を強調していました。

彼は、キャリアコンパスを

「まだ地図化されていないキャリア領域を航行するのに必要な羅針盤」

と表現しています。

私には両者とも羅針盤と同じように私達の内側に何か宇宙の磁力みたいなものあって、それがキャリアというか、自分のビジョン、使命あるいは運命と関係しているように思えてならないのですが、皆さんはどうお感じになられますか?

ということで皆さんへのエクササイズです。
●「あなたのキャリアコンパスは、どちらの方向をあなたに示してくれていますか。あなたの経験、智恵、直観を使って回答してみてください」

第13回 トランジションをチャンスに変えるには

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたには今どんな変化のとき、つまりチャンスが来ていますか」でしたね。

今週も先ず、1通ご紹介させていただきます。

「現在46歳です。証券業界に20年ぐらいおりまして、現在求職中です。ある経験のない業種からの入社の打診を受けたのですが、遠方なところでもあり住居費、引越し費用など自己負担なのです。当初は給与もそれほど多くは出ません。職種には興味があるのですが非常に迷っています。チャンスと思うのか、無謀なのか決めかねています。妻、それに子供2人いますし..」(H)。

求職中ということで、そうした中で異業種からの打診、しかも通勤距離、経済条件などあまりよくないということで、家族を抱え悩まれておられますね。焦りや不安なお気持ちを御察し申し上げます。

ところで、職種には興味があるということですが、1つお聞きしたいと思います。「それは本当にやりたいことですか。あるいはそのステップとして考えられる方向ですか」。

もしかしたら、「そんなのんびりした選択の余裕なんかない」と怒られそうです。ですが、そうであったとしても、この質問をしてみたいと思う理由は、40代半ばというのが人生の大きな転機の時期であり、私自身も失業や子供との死別などけっこうきつい体験をしたからです。

今回は、以前簡単には触れましたが、トランジション(人生の転機、移行期)についてもう一度ご紹介したいと思います。米国のブリッジズという心理学者によると、人生のある移行期というのは、何かが終わる「終焉」の時期から、新しい始まりの時期(開始)までの間に谷間の時期(中立ゾーン)という不安定な状態を体験するということです。

なおトランジション体験というのは、失業するとか、近親者との死別、離婚といった辛い体験ばかりでなく、入学・入社、結婚、昇進といった一見前向きの出来事の中でも体験するものなのです。

仕事に関していうと、今までの仕事を辞めたり失業して、次の仕事を始めるまでの間や、今までの会社に持っていた安定的なアイデンテイテイが失われる中で、次の仕事がスムーズに見つからない場合、焦りや不安、絶望感など辛い感情を人によっては強く体験します。

今、中高年のリストラで、経済面での苦しい局面ばかりクローズアップされています。しかし数年間の再就職支援カウンセラーとしての体験から、再就職先が決まった後、「この辛い体験が自分の人生を振り返るとてもいい機会になった」という方が実に多かったことも事実なのです。

ですからトランジション体験というのは、マイナス面ばかりでなく、実はこの辛い体験を通じて「自分が本当にやりたいことは何か」といった自分の人生目的やヴィジョンを見出す契機にもなるのです。

年功制度が崩れる中で、キャリアの問題として、今後トランジションの問題をもっと積極的に受けとめ、感情面での解消だけでなく、人生目的やヴィジョンを見つけるための「トランジションセミナー」などがもっと日本で普及する必要があると思っています。

特に40代というのは、中年への過渡期というこの年代そのものが大きな転機の時期です。「人生80年時代」といいますが、「あと30年余りをどう生きるか」「死ぬまでにこれだけはやりたいということはなにか」という問いそのものを「人生の後ろから」見るようになってくるのが特徴です。

Hさんに関して、もう1つ、有名な説なのでご存知かもしれませんが、役に立つと思われる視点を紹介したいと思います。アブラハム・マズローというアメリカの学者が欲求の5段階ということを言っています。これは人間の欲求が「生理的欲求」に始まって、それが満たされるとより高次の「安定」、「親和」、「自尊」、そして「自己実現」の欲求へと向かうという説です。

私自身、40代に「本当にやりたいこと」を探していたら、経済的にかなり追い詰められ、欲求がいつのまにか「安定」への欲求に戻ってしまったことがあります。その時感じたことは「これまでの人生で自分は本当の意味で貧しさを体験していなかった。それをいま味あわされているのか」でした。

そして気づいたことがありました。それは、「経済的に安定したら、自己実現へ向かおう」ではなく、「自己実現、つまり本当にやりたいことへ向かう中で、それ以外の欲求も結果としてついてくる」ということでした。

今回はすっかり中年編になってしまいましたが、Hさんの課題は実は若い人にも共通していることなのではないでしょうか?

ということでこのコラムを読んでくださっている皆さんに次週のエクササイズです。

●「これだけは人生でやり遂げたいと思っていることは何ですか」

第12回 愛する仕事を見つけ、今ある仕事を愛そう

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたのライフキャリア(人生とキャリア)を考える上で、大切にしている事は何ですか」でしたね。

今週も何通かの興味深いメールが届きましたが、先ず1通紹介させていただきます。

「ライフキャリアという言葉が、しっくり来なくて、むむむ、と悩んでしまいます。人生=キャリアでなく、人生→職業なんだろうなぁ、職業はあくまで通過点である、のような感覚で捉えると、大切にしている事は、『自分の直観、人生の流れに正直に乗っかる』事なのかな」(Tさん、32歳)。

今回はいつもの倍近い回答が寄せられました。ですので他の幾つかも簡単に紹介させていただきます。

「ネットワークを広げること、学び、そして継続」(青空さん)
「生き生き出来る仕事、バランス、コミュニケーション」(Hさん)
「失敗も次ぎにつながる有益な失敗にすること」(別のHさん)
「本当にやりたいことかどうか考え、実行する勇気を持つこと」(Sさん)
「仕事、恋愛、趣味をバランスよく楽しむ」(Aさん)

これらはあなたの価値観や視点に関係するものです。ですので、例えばこちらを宣言文にして壁に張る等を今日から実践してみてください。また、1つ質問があります。「あなたが大切にしていることからみたら、今抱えている課題は、どんなふうに見えてきますか?」

ところで、私は先週テンプスタッフ主催のキャリア大学に参加し、米国のキャリアカウンセリングのリー・リッチモンド先生(元全米キャリア開発協会会長)とコー・アクテイブ・コーチングの榎本英剛さんのお二人の講演、対談を聞きました。若干専門的な内容ではありますが、エクササイズに関係するので、今週はこちらの内容を紹介をしたいと思います。

ちなみに、私自身のベースは10年余り学んだヴィジョン心理学ですが、日本マンパワーでキャリアカウンセリングのCDA資格を取得した後、榎本さんにコーチングを学んでいます。そして、それぞれに魅力を感じています。(このコラムは上記3つからの学びと私のキャリア経験から書かれています)

リッチモンド先生については、昨年末、偶然、先生の著書『SOUL WORK』を購入し読み始めたばかりだったので、なにか共時性を感じました。魂とキャリアを結びつけるということですが、元全米キャリア開発協会の会長さんなのに、こういうタイトルをつけられる社会になっているんですね。いまだ日本の企業、大学では魂とかスピリットとついただけでも拒絶されますよね。

「キャリアは仕事だけでなく、家庭、余暇、学習、生活を全て含みます」とこともなげに語る先生は、とてもふくよかで元気でした。スピリットを受け入れると、本当は日常の生活と溶け合い、自然さを取り戻すものなのだと改めて思いました。

榎本さんはコーチングについて「個人の自己実現をサポートするためのシステム」と定義した上で、「自己実現とは、何かを手に入れるということではなく、常にその人が瞬間瞬間、ベストを発揮し、生き生きしていること」という指摘が特徴的でした。夢とかビジョンについても「達成することが大切なのではなく、今の自分に弾みや方向付けを与えてくれるだけでも十分役割を果たしている」に榎本さんの思いを感じました。

またコーチングが目標達成や行動変容、問題解決に役立つという見方に対しても、例えば組織目的が優先して「本人が置き去りにされがちだ」として「どう個人の成長、学びに結び付けていくかが大切」であることを強調しているのが印象的でした。

ところでリッチモンド先生の『SOUL WORK』の副題はこんな内容なんです。

あなたが愛する仕事を見つけよう。
あなたが今もっている仕事を愛そう。

とても重要なポイントだと私は思います。ここには分離感がありません。でも本当にやりたい仕事を見つける最良の道が描かれています。変な話なのですが、ヴィジョン心理学には、男女の三角関係から抜け出る方法として、「どっちかを捨てるのでなく、両脇に置いて、ただ成長にコミットして前に一歩進んだ時、真実の相手があなたと共に前に進む」というのがありますが、これも分離感なしに手放していく方法なのです。

仕事と男女関係もライフキャリアから見たら、同じ次元のテーマなのです。転職とか三角関係という変化の時期は、実は自分が新しいステップに成長するチャンスの時と言えるのです。ということで次週のエクササイズです。

●「あなたには今どんな変化の時、つまりチャンスが来ていますか」

第11回 ライフキャリア元年

みなさん、新年おめでとうございます。楳林です。

年末年始どのように過ごされましたか。昨年末のエクササイズは「2002年にあなたが実現したいことは何ですか」でしたね。1年の計でご自分なりに実現したいことを祈願された方も多いでしょう。

今週も、いつものやり方で、頂いた解答を紹介させていただきます。

「仕事と私的の両方です。仕事の面では、営業から、折衝・作成、納品、保守の一連の仕事の流れを、人任せでなく自分自身で完了させ、自信につなげたい。私的な面では30代前半、結婚を考えています」(Sさん)

Sさんはキャリアの面でもパートナーシップという人生のプロセスにおいても、ある意味で自立のときを迎えているようです。なお、この2つは仕事と私的(あるいは家庭)というように、これまでの日本社会ではわけて考えるのが一般的ですよね。

でも、本当にそうなのでしょうか。パートナーシップ、あるいは家庭を持つということもキャリアと考えてみるとどうなるでしょうか。

年の初めにあたって、“ライフキャリア”という、1つの視点を紹介したいと思います。キャリアと人生を統合する、あるいはキャリア=人生、人生=キャリアという視点です。

例えばちょっと振り返ってみてください、3,4歳の頃には「僕、大きくなったら電車の運転手さんになるんだ」とか「白馬に乗る騎士になってお姫様を救おう」(笑)とか、中学、高校生頃には「将来は小説家になる」とか、とにかく小さい時から現実はともあれ、キャリア志向としての人生は続いているわけです。

ところが、社会人になるといつのまにか会社組織に取り込まれて、仕事と家庭が分離し、しかも年功制度の下で誰もが「仕事は60歳定年で終わり、老後はライフプランで年金生活」なんていう単調な人生。少なくとも表向きですが(本当は個々人違った人生を体験しています)、これが高度成長期の恵まれた日本人といってよいでしょう。

年功制度が崩壊する中で、「キャリアは自己責任で」とか成果主義、市場価値という形でキャリアがテーマになっています。しかしこれはキャリアが再び、個々人の人生に戻りつつあるということではないでしょうか。しかもかつては、特定の階級とか少数の人にのみ許された「この人生で本当にやりたいことは何ですか」という問いかけを全ての人が受けとめる時代になっています。

ライフキャリア論は、すでに米国ではキャリア開発の新理論として企業レベルでもかなり広がり始めています。が、日本ではアカデミズム、産業界でもまだほとんど紹介されていません。その要因としてライフキャリア論がかなりスピリチュアリテイ(精神性)が重要なカギを握っている事にあるような気がします(私の解釈ですが)。

言ってみれば、日本社会はずっと、精神性のテーマをビジネス、学問の世界だけでなく生活レベルでも避けて来たといっても過言ではありません。でも、人生の目的とかヴィジョンというのは極めてスピリチュアルなものなのです。そしてキャリアというのはちょうど精神性と現実の間に橋をかけるものと言っても良いと思うのです。

私は、第1回目に「人は誰でも自分のビジョンと才能を持っており、それを現実化していく答えを知っている」というのがコーチングの大前提だということをお伝えしました。が、このスキルや才能は、こうした精神性、あるいは人間観みたいなものをベースに持ってこそ役に立つものだと思います。また転職とか中高年からの再就職、あるいは在宅ビジネスなど多様な仕事の形態、それらもライフキャリアの視点から見直してみるとどうなるでしょうか。

そして、今問題になっている構造改革も本当は企業レベルでなく、私達自身のキャリアに対するの意識変革なしには難しいのではないかと私は考えています。

そんなわけで、私なりに2002年を「ライフキャリア元年」と位置付けることにしました。そして、今後は、このライフ=キャリアという観点でこのコーナーを執筆していきたいと考えています。

では今年最初のエクササイズです。

●「あなたのライフキャリア(人生とキャリア)を考える上で、大切にしてい ることは何ですか」

第10回 楽しさがビジョンを呼び込む

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたが楽しいときはどんな時ですか、そしてその楽しさを職場で感じるために何をしていますか?」でしたね。

何故このテーマを取り上げたかというと、楽しさ、つまりワクワクした感じを持っている時に、人はアイデアや創造性が湧いてきたり、職場のコミュニケーションも滑らかになるからです。

さて今週も、幾つかの回答の中から一つ紹介させていただきます。

「自分とは違う考えを持っている人の話を聞いているときが最近は楽しい。入社3年目で海外販売部に属しています。顧客は韓国です。出張以外では直接会うことが出来ませんが、こちらから情報などを提供すると、彼らも私の知らない情報を教えてくれます。そうしたやり取りがいまは楽しいです」
(Aさん)

Aさんはギブ・アンド・ギブンの精神で楽しさを共有しているようですね。今度は社内で身近に接する同僚、上司の方に対しても情報交流をやってみてはどうでしょうか?関係性がもっと良くなったり、意外な発見があるかもしれません。

他のみなさんも趣味やいろんな場面で楽しんでおられますね。ただ、やはりというか、自分の職場や仕事に関しては「職場で楽しいことなんて考えても見なかった」「仕事は大変なもの、としか思って見なかった」という発言が目立っていました。

たとえ現実の職場が楽しくない場合も、ちょっと自分にとって楽しい場面を思い浮かべながら、そのエネルギーで職場や仕事に向かい合ってみてはどうでしょう。それだけでも新たな気づきや発見があるかもしれません。そして“いま、ここ”の場所、仕事、人間関係のつながりを保ちながら、さらに「本当にやりたいこと、ビジョン」へとつながっていくこともあります。

以前こんなことをやったことがあります。5,6人で輪になって1人1分間、順番に自分のやりたいことやビジョンを語ります。それを4,5ラウンド続けると、いつのまにかワクワクした感じが出てきて、しかも他の人のビジョンに刺激を受けて、突然、「やりたかったこと」が浮上してきたことがあります。

「やりたいこと」というのは決して分離したものではなく、共感や繋がりを感じるもののようです。実は、私がこのキャリアコーチングでやりたいのも毎回のレッスンを通じ、みんなのビジョンや夢が刺激し合いながらつながっていく事なのです。

ところでこのコラムもあっというまに10回目、しかも今年最後になりました。10という数字は数秘学では初めの1、次のステップの始まりを予感させます。

来年の新しいステップを始める前に、キャリアに関して1つのエピソードと視点を紹介したいと思います。それはエイブラハム・リンカーンのキャリアです。簡単に紹介すると、

1831年 ビジネスに失敗する
1832年 立法府議員に落選
1833年 ビジネスで2回目の失敗
1836年 神経衰弱に苦しむ
1843年 下院議員選挙で落選
1855年 上院議員選挙で落選
1856年 副大統領選で落選
1857年 上院議員選挙で再び落選
1860年 大統領に選出

リンカーンはその後、暗殺されてしまいましたが、彼は落選というプロセスを通して学んできたように思えます。最近、“失敗から学ぶ“式の本が日本でもよく出ていますが、リストラされ失業しようと、キャリアには失敗ということはないのだと思います。

ある米国の心理学者は「キャリアはRight or Fail(正しいか失敗か)ではなく Right or Left(右か左か)なのだ」と、ジョークのように言っていますが、キャリアにはそんな余裕が大切のような気がします。

来年1年、あなたは右に行きますか左ですか?ということで、次週のエクササイズです。

●「2002年の1年間にあなたが実現したいことは何ですか?」

第9回 キャリアの根っこにあるもの

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「今、あなたのご両親や兄弟姉妹に対し、あなたがしてあげたいことは何ですか?」でしたね。

先週述べたように、これをテーマにしたのは、子供時代にとって家族は世界全体であり、自分の思いや夢、あるいはキャリアの出発点などが潜んでいるように思えるからです。

さて今週は、特に心に残った2つを紹介させていただきます。

「ちょうど最近家族と距離が縮まってきたところです。子供の頃の家族は不幸せでした。ずっと父と母が別れれば良いと思っていました。でも最近、父が出した結論は母とずっと暮らしていくというものでした。父もだいぶ性格もまるくなり、努力しています。私も二人が仲良く暮らしていけるように後押しし、兄夫婦と自分と両親の4つのグループの距離が縮まる努力をする。昔うまくいかなかった家族だからこそ、よけいに気をつけて、建設的に、冷静に進めていこうと思います」(29歳、Yさん)。

「特に母親を抱き締めたいなぁ。68歳位になるのですが、いまだに夫婦喧嘩して、飲んだくれてぶつぶつ過去を振り返って泣いていることがあります。そんな時、ただ側にいてあげるだけしか出来なくて、ちょっとでも近づこうものなら、『あんたに何がわかる!』。でも、そんな母親も普段は取ってもお茶目でかわいい。中学まではカウンセラーになって、家族を何とかしたい、と思っていました」(32歳、Tさん)。

小さい男の子、の女の子の懸命に生きている姿が目に浮かんできます。家族を何とかしたいという思いが、自分の価値観や嗜好性、強み、才能として育まれ、さらに夢、ヴィジョンの原型になっているようです。

Yさんは小さい時からエンターテイメント(芝居・ダンス・映画)と科学に興味を持ち、仕事以外にボランテイアで理数科教育の活動を行い、フェスティバルの出展や講義も10年以上の趣味として続けている方です。Tさんも小さい時の思いが職業相談という仕事に繋がっているだけでなく、まちづくりのNPOに参加し、地域の人達とのワークショップを楽しんでいます。

Yさんは、小さい時の2つの興味をキャリアとして見ています。私も同感です。冷静な目とエンターテイメントとが家族という世界を支えるために必要なスキルだったのでしょう。また、Yさんは「人は生まれた瞬間から選び取ったわくわくの集合体なのかもしれない、ということを思い出した」とメールをくれました。

私自身、遅れて40代に入って自分探しの旅を始めたとき、3歳で祖父母に2年間預けられたことが自分の原体験となり、孤独感や両親への恨み、あるいは仕事に距離感のある原因になっていることに気づき愕然としました。しかし、数年癒しを続けているうちに、遠くから家族を見守っていたことが、社会や人間に対する観察力やビジョンの一体感への指向が養われたことに気が付き、今度は感謝の気持ちすら出てきました。

私は、新聞記者、エコノミスト、そして今はキャリアデザイン関係の企業研修やキャリアカウンセラー、キャリアコーチという仕事を通じ、ある意味で今も子供時代を楽しんでいます。そして、挑戦や選択のたびに成熟していくのだなと思えるようになっています。

さて、ちょうど今テレビではオランダのフェイエノールトに移籍したサッカーの小野伸二選手が「サッカーをするのは楽しいからだ」と言っていました。そう、「楽しさ」もキャリアにとっての1つの大きな鍵だと思います。

ということで次週のエクササイズです。

●「あなたが楽しい時はどんな時ですか。そしてその楽しさを職場で感じるために何をしていますか?」

第8回 あなたのキャリアのルーツを探る

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「今、あなたがしたいキャリア上の選択は何ですか」でしたね。

何故これをテーマにしたかというと、「選択」ということを意識することによって、「今、キャリア上で何が課題なのか」「本当にしたいことは何か」あるいは「現在の仕事に関して何を感じているか」などを感じることができるからです。

さて今週も先ず、例によって一つ紹介させていただきます。

「今私がしたいキャリア上の選択は、リーダーとしてのキャリアをつけることでしょうか。30代になって、そろそろ人を使って仕事を進めたり、ユーザーとの設計などの折衝をすることを選択したいです。でないと仕事をしているという実感がなくなってきているからです」(34歳、Sさん)。

リーダーにも色々なタイプがありますが、これからのリーダーは自分なりのビジョンを持って、部下をエンパワーしていくことがますます必要になっていますね。そこで質問です。「今、自分がリーダーであることを選択し、リーダーになっている自分を感じてください。あなたは仕事や職場に対してどのようなやりがいを感じますか。あなたはどんなタイプのリーダーだと思いますか」。そこからあなたなりのヴィジョンや才能が感じられるかもしれません。

ところで、自分の適性がよくわからなかったり、自分の才能、資質に自信が持てないという方にかなり有効な方法があります。それは自分の両親、兄弟姉妹の方との関係性の中から自分のキャリアというものを見直すというやり方です。例えばご両親やご兄弟という身近な方と職業やキャリアのことを話すということも非常にプラスになるはずです。

こんな例があります。地域の役所の 事務をしているSさん(37歳)は、自分が本当にしたいことや能力が何か、をずっと模索していましたが、それと同じくらい彼女にとっての課題は両親、弟に対し反発心が強いことでした。この両方を変えたいと決心してコーチングを始めて、すぐ2つのチャンスがました。1つはそれまで二人で旅行することのなかった両親に自分も含めての3人で初めて旅行をすることになったことです。彼女は自分から一泊二日の温泉旅行を計画するだけでなく、旅費も全額負担しました。そしてそのわずかな旅行期間中の3人の会話や触れ合いを通じて、「自分が両親に愛されていること、自分が家族につながりと平和を持ってきた」のを感じ、それが自分のビジョンにつながっているのに気づきました。

もう一つの出来事はその後、普段何かと距離感のある弟さんが結婚式を挙げることになり、彼と新婦を本当に祝福出来るようになるにはどうしたらよいかを考えているうちに、自分で二人の絵を画いてプレゼントしようと思い立ちました。結婚式までの3週間、納得のいくまで何枚もの絵を画き続けているうちに、弟にも新婦にも親密感を感じれるようになり、無事、結婚式当日2人の絵をプレゼント、二人にとても感謝されたそうです。

きっと絵を描き続ける中で無意識にある弟さんへのブロックを溶かしていったのかもしれません。それだけでなく、絵を画いたり、体を使って表現することが小さい時に好きだったことを思い出し、アートセラピーを習うことにしました。彼女にとって、自分の将来の方向が、家族との絆を取り戻すことと表裏一体の関係にあったようです。

子供にとってある時期まで、家族は自分の世界、宇宙のようなものです。そしてその家族の課題を何とかしたいという思いが、もしかすると自分のキャリアビジョンや才能の原点にあるのかもしれません(その時はたいがい失敗して、自分のビジョンや才能を忘れてしまうのでしょう)。

ですから「自分の適性がわからない」「何をしていいかわからない」という時には、今の時点で物理的精神的に離れてしまっている家族と何かつながりを取り戻す行動やコミュニケーションを取ることが、自分の適性、適職を見つける上でとても役立ちます。

ということで次週のエクササイズです。

●「今、あなたが両親や兄弟姉妹に対し、あなたがしてあげたいことは何ですか?」

第7回 あなたにとってキャリアとは?

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたにとってキャリアとは何ですか?どんなイメージを持っていますか?」でしたね。

何故これをテーマにしたか。それは、キャリアの捉え方が色々ある中、少なくとも今の時点で自分にとって「キャリアとは何か」を明確にしておくことが、前に進む上で必要だと思ったからです。

さて今週も何通かの興味深いメールが届きましたが、例によってまず1つ紹介させていただきます。

「キャリアとは、作るものではなく、時間が過ぎた後に自然発生的についてくるものだと最近思うようになりました。物事に取り組む前に、心に描くキャリアイメージはあるものの、実際取り組み出すと、あれこれ考えるゆとりなく、必死に前に進みます。どのような結果であれ、ふと気がつくと、取り組んだ事がキャリアとして自分にくっついてきます。計画性は大切ですが、私の場合は、取り組んだ結果が身について、次の機会への鍵となっています」(女性、32歳)

そうですね。普段はあまりキャリアと意識しないのかもしれませんね。でも、あなたが時間をかけて一歩一歩努力しながら、自分に身につけてきているのを感じます。

そこで質問です。「あなたにとって今、次の機会とは何ですか?そしてこれまで身につけてきたキャリアがどのように活かされそうですか?」

今回は他の方の回答も幾つかご紹介したいと思います。

「一つの事に精通しているだけでなく、多方面の知識も広く知っているT字型人間になること」(Sさん、34歳)「キャリアとは、自分の価値感を満たすための手段。そしてキャリアのイメージは、“名詞”(職業の名前)ではなく、“動詞”(何をしたいか)であり、また“選択”でしょうか」(Oさん、32歳)「無職です。やりたい仕事がわからないので、キャリア以前です」(Hさん、23歳)。

ところで前回もそうでしたが、今回もHさんのように「自分の適職は何か、どう生きていくか」を模索している人が多い気がします。就職情報誌などで具体的な転職やキャリアアップなどに関する記事が目立つのと対照的ですが、この二つの流れが並行しているようです。

ところで米国では90年代に入ってからリストラなどを契機に「ソウル・サーチング」(soul searching)が広がっています。会社任せにするのではなく、自分の人生を見直し、意識のより深いレベルで自分の本当にやりたいこと、ビジョンを見つけようとする事です(今でも米国のホームページに沢山見かけます)。

私自身も40代に入ってからそういう旅を始めた一人ですが、キャリアというものをもっと内なるもの、あるいは生涯にわたる展開という視点で見ていく時代に来ていると思います。ですから無職、あるいは失業というのも、キャリアのプロセスと見られたらどうでしょうか。

私の知人にもこんな例があります。ソフト設計技術者だったNさん(37歳)は20代後半に仕事を辞め、それからずっとアルバイトをしながらスピリチュアルな活動をしていましたが、最近、その両方から足を洗い、本格的に再就職活動に取り組み始めました。

電機工学科を卒業したNさんは「自分のビジョンを社会の中で現実化して生きる以外に生きていくことは出来ないことがやっとわかった」と、まず一度捨てたソフト技術設計からやり直すことを選択、再び企業訪問をしながら、一方では好きな音楽活動を再開しています。

“自分探し“をして気がついたらもう30代後半。ハンデイは大きそうですが、80歳生涯現役のこれからの超高齢社会を思えばまだ、折り返してもいません。大切なことはその時々の自分の選択をしっかりやることです。

ということで次週のエクササイズです。

● 「今、あなたがしたいキャリア上の選択は何ですか」

第6回 キャリアって何ですか?

こんにちは。楳林です。先週のエクササイズは「自分の未来、というか本当の自分に少し遊び心をもってあだ名をつけて見ませんか。そしてそのあだ名を通し、あなたが大切にしていることを考えてみてください」でしたね。

何故これをテーマにしたかというと、具体的なイメージを通して、普段忘れがちだった自分の大切にしていることや価値感がそこに反映されるからです。そこにジョークでも含まれていると、深刻にならず、けっこう楽しみながらその感覚に入っていくことが出来ます。

さて、先週の問いにお答えいただいたメールの中から、例によって一つ紹介させていただきます。

「あだ名を“青空”に決めました。子供の頃から自然科学に興味があり、 『空はなぜ青いの?』といった疑問をじっくり考えるのが好きで、将来の夢は物理学者になって宇宙飛行士になることでした。もう一つ理由があります。私がネガテイブな気持ちになるときはたいてい、雑多な事に気をとられ混乱して、『木を見て森を見ず』といった場合ですが、そんなときシンプルな青空は私に『鳥の視点』と『抜けるような青さ』から『まっすぐ』「誠実さ」を私に思い起こさせてくれそうです」(29歳の青空さん)。

とても爽やかで、シンプルだけど深いあだ名ですね。鳥の視点のときは羽をはばたかせながら青空のもと実際に飛んでいる感じになってみてはどうでしょうか。それに「青空」はビジョンというよりはあなたの存在そのもののような気もします。

これまで研究所、海外協力隊、雑誌の編集、塾講師といろんな職業を体験していますね。挫折とか失意とかあったようですが、質問させてください。「鳥になって下界を見るように、これまでの主に仕事や人間関係の体験を振り返ってみた時、何を感じますか。そしてそのプロセスを通じて何を求めて来たと思いますか」。

私も以前、失業中にカナダでインデイアンのビジョンクエスト(ビジョンの探求)に参加して山の中で5日間断食したとき、イーグルとつながった体験をしました。そして自分もイーグルの羽根をゆったり羽ばたかせながら下界を飛んでいるイメージを感じたとき、「自分にとって自由というのが大きなテーマなのだな」と思ったものです。

ところでこのエクササイズに回答を寄せてくれる方のうち何人かの方が転職を繰り返したり、時に無職の状態で自分の進むべき道を模索されています。そこで今回は回答を寄せていただいたもう一人の方を紹介させていただきます。

「現在、無職です。無職の状態はとても複雑な気持ちで、時に自分が社会から必要とされていないような感じや不安に襲われたりしますが、一方で近所の店の人やバスの運転手さんなど身近な人達が一生懸命働いているのに心を打たれたりします。自分が働いていた時は、時間に追われそのような細かいことに目が届きませんでした。どのような仕事についてもそれを忘れてはならないと自分に言い聞かせています」(35歳、Sさん)。

人生のある時期に転職を繰り返したり、失業をしている状態はある状態が終わり、新しい状態が始まるまでの中間段階、どこにもアイデンテイテイを持てない不安定な時期です。挫折感や焦り、絶望感など辛い感情を体験し、時に“宇宙の孤児”のような感じすら持ちます。ちなみにこれをトランジション(人生の移行期、転機)といっています。

でもそんな辛い体験にしっかり向き合うことが、けっこう自分にとっての大切なことやヴィジョンを思い出すきっかけをつかむチャンスにもなります。

終身雇用制や年功制が崩壊する中で、企業にキャリアビジョンやライフビジョンを任せず、自己責任で自分のキャリアを伸ばしていく時代にあって、キャリアトランジションを体験することはとても貴重な体験だと私は思っています。

そしてみなさんの回答を見ながら、改めてキャリアって一体なんだろうという気がしています。例えばよくキャリアアップといいますが、単に職業上のレベルなのか、そのためのスキルアップなのか。失業とか転職はキャリアと どう関係するのだろうか?先に進むためにここでキャリアということをもう一度見直しておきたいと思います。

そこで次週のエクササイズです。

●あなたにとってキャリアとは何ですか?どんなイメージを持っていますか?

第5回 本当の自分にあだ名をつけよう

こんにちは。楳林です。先週のエクササイズは「あなたが小さい時から好きだったこと、得意だったことは何ですか?それをこれからのキャリアにどう活かしたいですか?」でしたね。

何故これを取り上げたかというと、小さい時に好きだった事をやっているときには、わくわくしながら楽しく、しかも真剣にやっているからです。誉められでもすると、ますます好きになって、けっこう得意分野にもなります。例えばお絵描きとか砂いじりとか、その時何故それが好きになったのかは偶然のように思われるかもしれませんが、その時描きたかったもの、作りたかったものが、案外自分のビジョンの原型を見せてくれる事が少なくないのです。そのメッセージを受け取ったとき、自分のキャリアビジョンも生き生きとしてきます。

さて、先週の問いにお答えいただいたメールの中から、いつものように一つ紹介させていただきます。

「小さい時から得意と呼べるものは無かった気がします。好きなことといえば物を作ることでしょうか?物を作る工程ではなく、完成させ思った通りに出来あがったときの達成感が好きだったと思います。高校は機械科、専門学校は情報処理ときて、今は情報処理の仕事をしていますが、やはり、プログラムやネットワーク、DBの構築などが好きです」(34歳、忍者さん)

忍者さん、毎回、宿題に応募していただきありがとうございます。情報処理関係の仕事に堅実に取り組んでおられ、そろそろリーダー的な役割を果たす段階にきておられるそうですね。だからこそ、自分のキャリアビジョンを持つことがとても必要な時期にきていると思います。

ところで私が一番興味を持ったのは、あなたが自分につけた「忍者」というあだ名です。もしかしたら何気なくつけたのかもしれませんが、堅実で地道に努力されながら、どこか忍者のように自分の姿を隠しているような気がしてなりません。「忍者」というのはあなたが意識しているより、もっと深い意識であなた自身の本質を現わしているかもしれません。

そこで質問です。「あなたは忍者のどこが好きですか?そもそも忍者って何ですか?そしてもしあなたが“現代版忍者”なら今のあなたにどんなメッセージを伝えたいですか?」

さて、自分の未来の姿とか、これがヴィジョナリ-な姿だと思えるあだ名をつけるのは、とても大きな効果があるときがあります。

こんな例はいかがでしょうか。一級建築士の資格を持っているAさん(30歳)は、勤めている建築設計事務所のプロジェクトを遂行する方です。ユーザーのニーズに応えたい自分の思いと、予算内で手堅くまとめることを要求する会社の指示の間に挟まって落ち込むこともしばしば。将来独立する事も含めて、自分なりのキャリアビジョンをしっかり持つ必要性を痛感していました。

そんなときに、偶然目にとまり気になりだしたのがレオナルド・ダ・ヴィンチの芸術作品とその生き様。そのことをコーチングのテーマで話しているうちに、突然ひらめいたのが自分の名前にちなんで「レオナルド・ダ・伸」というあだ名をつけること。それ以来、彼はダ・ヴィンチに関する本や作品に触れる中で、「創造性に対する意欲こそ自分のキャリアビジョンだ」という確信を自分のあだ名を通して深める努力を続けています。

最近は「ダ・ヴィンチだって注文主との間で葛藤を持ちながら制作したに違いない。きっとそれがかえってよかったのではないだろうか?」と語れるようになってきています。

なお、私が自分につけたあだ名は「ハゲマスター」です。とても気に入っています。以前、コーチングのセミナーで未来の自分に尋ねたときに、フッと出てきました。でもその時は、マスターという言葉に気兼ねしてか、うかつにも「禿げ」にしか意識が向かいませんでした。その後、「励ます」ということが私にとっての人生の課題だということに気づきました。以前の私は常にネガテイブな批判から始めていたものです。本当に偶然って面白いですね。「ハゲマスター」というあだ名を思い出すたびに、即、ビジョンの感覚に入ることができます。何事もプラスに考えようですね(笑)

ということで次週のエクササイズです。

● 「自分の未来、というか本当の自分に少し遊び心を持ってあだ名をつけてみませんか。そしてそのあだ名を通し、あなたが大切にしている事を考えてみてください。」

第4回 ビジョンを見つけようという決意の大切さ

こんにちは。楳林です。先週のエクササイズは「あなたは5~10年後、どこで何をしていたいですか」でしたね。

ビジョンというのはあなたの夢、思いといったものでまだ漠然としていますが、情熱の源のようなものです。ビジョンを土台にしてキャリアゴールを持つと、エネルギーを集中することができ、プロセスに対する理解や気づきも早くなり、課題もハッキリしてきます。

でも日常に追われていると、将来を描くということはなかなか難しいかもしれません。またその機会もなかったかもしれません。それでも今回、幾つかのメールが届きました。その中から、一つ紹介させていただきます。

「年齢、性別、国籍、立場などが全く異なる層の人達を“つなぐ“仕事をしたい。必ずしもグローバルなものでなくてもよく、小さな地域コミュニテイ-の中でもよいし、ひとつの組織の中でもよい。人が他人を理解する、理解しようと努力するプロセスに興味がある。“つないだ“結果をアピールする媒体も何でもよく、出版物かWebか、または民間の政策シンクタンクみたいなものを組織できたらいいなと思います」(20代女性の方)。

自分と全く違う人達同士が理解し合い、つながっていく事をサポートしたいというのは、あなたにとって本当に大切なこと、あるいは価値観のように感じます。きっとヴィジョンに近いのでしょうね。今の時代、一番欠けていることだと思います。でも、キャリアゴールがまだあいまいな感じがしました。ですので、一歩前に進むためにこんな質問をしてみたくなりました。「あなたがつながりや理解しあえると感じるのはどんなときですか」また、もう一つ質問させてください。「理解し合えると感じれる場所から現在の職場を眺めたとき、今の職場であなたが出来る事は何ですか?」

ところで、かなりの人は自分の夢やビジョンを抜きにして具体的なキャリアゴールを描こうとしているようです。それではゴールが絞れ切れなかったり、せっかくゴールを描いても、達成したいという意欲が持続せずに挫折するケースが少なくありません。また、現在の仕事に燃えるものを感じないため、自分の適性が見えなくなり、悩んでいる人も多いようです。

ですからキャリアゴールを描く前に、時間をかけてでも、もう一度、自分が大切にしている(いた)こと、夢とか思い、ビジョンをしっかり確認、再発見して欲しいと思います。それがキャリアゴールとしっかり繋がってきた時、ゴール達成への情熱とプロセスからの気づきが多くなるはずです。

こんな例があります。Eさん(37歳)は20代後半までチラシ広告のデザインを担当していましたが、社内外の人間関係のもつれなどが原因でその仕事を辞め、その後10年近く建設現場の交通整理をしていました。しかし、もう一度自分の本当にやりたいことを見つけようと決意した矢先、彼の父親からホームページ作りを頼まれ、文章やデザインを考えているうち、少年時代から絵を書くことが好きだった事やデザインに対する情熱を思い出し始めました。

「20代後半で未完了にしたところからやり直す決意をしたときから、Webデザイナーになるというのが自分の数年後のキャリアゴールだとハッキリつかめてきた」と語るEさんは、今、現在Webスキルの習得に懸命に取り組んでいます。また、「建設現場の10年が人間関係の修業の場になったことという意味では、決して無駄ではなかったし、HP作りを通じて父との対話が復活したこともキャリアを考える上で貴重だった」とも語っています。

今、キャリアのことで悩んでいたり、失業している方も、その状態が決して無駄ではないということが彼のケースからもおわかりだと思います。大切なことは、もう一度自分のビジョンやキャリアゴールを見つけようと選択、決意することなのです。

それでは次週のエクササイズです。

●「あなたが小さい時から好きだったこと、得意だったことは何ですか?そして、それを これからのキャリアにどう活かしたいですか?」

第3回 キャリアビジョン、ゴールを明確にする意味

こんにちは。楳林です。先週のエクササイズは「あなたは今の仕事(状態)で何を学び、あるいは何を卒業しようとしていますか?」でしたね。

何故この問いかけをしたかというと、“いま”“ここ”にこそ、あなたの全てが凝縮してあるからです。全てとは過去から未来まで、そしてプロセス全体が含まれているのです。重要なのは、このことにどの位、気づいて、いまを生きているかということになります。

さて、先週の問いにお答えいただいた幾つかのメールから、今週はこちらの方のメールを紹介させていただきます。先週お伝えしましたように、偶然性を大切にした選定方法で選んでいます。

「1つは,仕事という限定された人間関係の中で,自分と自分でないものを知る。2つ目は“昨年同様”が求められる半官半民の職場で自分の感覚を生かした仕事を主張することで、生きた屍になるまいと思っています」(I.Y)

非常に哲学的なコメントですね。今の職場の中で仕事の意義や自分を大切にしながら生きておられるのを感じます。

ただ、ちょっと気がついたのは、自分と他者、官と民、生と屍といった対立する表現の多いことです。では、こんな質問はいかがですか。「職場のリーダーとして今後どのような仕事を手がけ、どのような職場にしたいですか?」

何故こんな質問をするかというと、これだけの気づきを持っているからこそ、そろそろ批判者の位置から一歩前に出る時のように思えるからです。今までの位置からちょっと抜け出して、理想と現実を統合できるようなビジョンを持って行動できる、ビジョナリ-なリーダーを目指してはどうでしょうか。

今回いただいたメールから皆さんが一所懸命生きているのを感じることが出来ました。でも何か波間でもがいているようです。しかし、波に逆らうのではなく、波をうまく活かしながら進むサーファーのように、波を活かしてください。ですが直面する現実の課題や変化を積極的に活かしていくためには、キャリアビジョンやゴールをしっかり持つことが大切になります。

ビジョンといえば紹介したい人がいます。ある人材派遣会社に勤めているYさん(30歳)は、典型的なビジョナリ-なタイプの女性です。米国の大学に留学してアメリカ手話を勉強した彼女のキャリアビジョンは人種、文化を超えたコミュニケーションツールとして米国手話を日本に普及させ、ろう者の人たちの教育とキャリア開発に貢献することでした。そして、彼女は、ボランテイア活動を続け、今年始めにやっと社長を説得して一事業部として「アメリカ手話講座」をスタートさせました。

10月の第2期には早くも16クラス(生徒150人)の規模に発展、米国の先生も2人参加するほどの勢いです。5年後には学校法人に昇格させ、そのマネジメントをするのが彼女のキャリアゴールとなっています。

「急にクラスが増え、授業の進捗状況の把握や先生とのコミュニケーションが不足する恐れが出てきた」という課題に対し、彼女の出した対策案は、一人で背負うのでなくスタッフを育てると共にマネージャーとして権限を委譲していくことでした。ビジョン、ゴールが明確になると一週間の出来事に対する気づきは本当に深く、そして早くなってきます。今、彼女は走りながら、マネジメントを本格的に学びつつあります。

そんな彼女のキャリアは周囲から見ていても非常に躍動感に溢れる素晴らしいものとなっています。ですので、私はぜひみなさんにもそんなキャリアビジョンを手にしていただきたいと思います。

それでは次週のエクササイズです。

●「あなたは5~10年後、どこで何をしていたいですか?」(あなたのキャ リアビジョン、キャリアゴールです)

● それがわからないから前に進めないんだという方には「あなたの人生は あなたに何を伝えようとしていますか?」という問に答えてみて下さい。

第2回 実現したいことと今の仕事に橋を架ける

こんにちは。楳林(うめばやし)です。先週のエクササイズは「この人生で、あなたがこれだけは実現したいと思うことは何ですか」でした。何故この問いを最初に持ってきたかというと、あなたの夢とか志とかヴィジョン、さらにあなたの人生の目的に繋がるものだからです。それをどう現実化するかということがこのコーナーで大切にしたい点なのです。

先週、皆さんに質問を投げかけたところ、さっそく何人もの方からメールをいただきました。そこで、今後は、返信いただいた方の中から、毎回お一人を紹介させていただき、一言コーチングしていきたいと思います。なお、紹介するにあたっては次のようなルールを作らせていただきました。

編集長がいただいたメールにランダムに番号をつける。で私の頭に浮かんだ番号のメールを紹介することにします。これは偶然性を大切にするためです。個人個人の課題や問題は、深いところで繋がっていたりするものなので、こういう風にすると意外にも多くの方にとって重要な課題があぶりだされたりするものなのです。ですので、他の方も脈絡に関係なく、直感を使って私の質問に回答してみてください。(メールは字数制限上、要約させていただくことがあります。)

さて、先週の問いにお答えいただいた幾つかのメールから、今週はこちらの方のメールをご紹介させていただきます。

『僕は今、リフレクソロジーの教壇に立っている。それまでの仕事=背広=営業=PC関連から解放されて。人にとって大切な事を実践する方法とカウンセリングの知識を教る事によって、自分の心が潤い、生活が癒されるのだ。金銭や時間に追われることなく人に喜ばれて生きる毎日。これ以上の生活を望むのは贅沢を言い過ぎではないか?』

新しい人生を勇気を持って選択された方ですね。私の周りでもアロマセラピーとか催眠療法とかを勉強しても、経済的なことや将来を考え、なかなか踏み切れないでいる人がいます。ですので、いただいたメールの内容がよくわかります。ですが、例えばこんな質問はいかがですか?これ以上の生活があるとしたらどんな生活ですか?あなたにとって贅沢って何なのでしょうか?

ちなみに、いただいた皆さんの回答は、「全ての方を紹介したいな」と思うくらいに素晴らしく「実現したい(した)こと」を語ってくれていました。でも気になったのは、同時にブレーキをかけている感じがしたことです。「不安」「ねばならない」「べきでない」という言葉が目についたのです。エゴの声とか自己制限的な思考です。それをしっかり見つめる視点もありますが、それをちょっと横に置き「実現したいこと」に意識を向けてください。

そしてあたかも「今それが実現している」と感じながら、今の仕事、の状態を眺めてみてください。今の仕事、状態をどのように感じますか?今の仕事で、何か実現したいことと関係のある事はありませんか?そして実現している状態と今の仕事(無職も含めて)を一本の線で結んだ時、何か新たにやっておきたいことや課題はありますか?例えば、人間関係とかキャリア上のスキル習得とか・・・?

もしかしたら,「生活のため」とか「合っていない」と思っていた今の仕事、その状態も実はあなたにとってベストの選択をしているかもしれません。

こんな例があります。検査機器会社の営業スタッフをしているM子さん(36歳)は今の仕事が嫌で、アロマセラピーの資格を取得、仲間でその事業化に取り組んでいました。が、最近、年内に新しい検査機器のマーケテイング調査をまとめるよう命じられました。

初めはうんざりしていたM子さんですが、はっと気がついたというのです。

「今まで会社の外で悪戦苦闘してきたけれど、やっとわかったわ!この会社で学ぶことが自分の夢を実現する足がかりになるんだわ」と。彼女は来年にはこの会社を卒業しそうです。私は、キャリアとは結構こんなものなのかもしれないなと思ったものです。

それでは次週のエクササイズです。

● 「あなたは今の仕事(状態)で何を学び,あるいは何を卒業しようとして いますか?」

次週はこのエクササイズを受けて、どんなことが考えられるのかをみていきたいと思います。 このエクササイズに関するご回答は cn@en-japan.com までメールをお願いいたします。次回内容に皆さんのメールを反映させていきます。※送付時には簡単な自己紹介(職種や年齢等)もお願いいたします。

第1回 はじめに。そして、エクササイズ開始

コーチングという言葉をお聞きになったことがあると思います。

コーチングは「聴く」ことを中心とした対話を通じ、クライアント自身が隠れた課題と答え(気づき)を引き出し行動を向上させることをサポートしていく手法です。このコーナーではこのコーチングの手法を活用し、あなたのキャリア開発をお手伝いしていきたいと考えています。また、これを読むことで、あなたが部下の方のキャリア開発を行う際にも役立つ内容にもしていきたいと思っています。

私は、日経新聞社での記者を経て、現在は、外資系の研修やコンサルテイングをする会社でキャリアデザインの研修やキャリアカウンセリングを担当している者です。今週から始まるこの「キャリアコーチング」のコーナーでは、私が企業研修やキャリアカウンセリング、コーチングをする中で出会ったケースを紹介するとともに、毎週1つの質問をしていきます。

今日は、こんなケースを紹介しましょう。私がコーチンングをしたYさん
(35歳)の話です。彼女は数ヶ月前、「会社の仕事に生きがいを感じていない事、自分の能力に自信がないが、もっと自分に合う仕事を見つけたい」ということでコーチングを行いました。

「本当に好きなこと,興味のある事は何ですか・・・」私が、そんな問いかけを何度もしているうちに、彼女は、色(カラー)、つまり服や花の色の話しになると生き生きとした声になることがわかりました。「じゃあ色を使った仕事で何が浮かびますか?」「花屋さんとか染め物教室、服や小物、室内のデザインとか・・・」そんな風に、いろんな職種が彼女の口から出てきました。私はさらに質問をします。「では、どうしたらなれると思いますか?」

そんなやり取りをしているうちに彼女の中で浮上したのは、「まずカラーコーデイネータ-の資格を取る」ということでした。そのことが解ってからは、試験準備のための学校を選択するという決定まであっという間でした。

「5~10年後には未来の夫の仕事のデザインを引き受けながら、自宅をベースにデザインやカラーヒーリングを楽しんでいます」―これがその後明らかになった彼女のキャリアビジョンです。そして、今は、このビジョンに向け、カラーコーデイネーターになることと将来の結婚相手を見つけることの2つの行動が同時進行しています。

今回こんなケースを紹介したのは、「人は誰でも自分のビジョンと才能を持ち、それを現実化していく答えを知っている。ただ忘れているだけだ」ということをお伝えしたいからです。たとえ今ビジョンが見えなくても,それが、確かに自分にはあるという方向性を信じ、今直面している日々の課題に向き合った時、逆にその課題が自分のビジョンのヒントを与えてくれるものです。

このコーナーでは、皆さんに毎週エクササイズとして1つの質問を提示いたします。エクササイズは是非、ご自身で書き出して見てください。もしこのエクササイズに関してご意見や回答を見て欲しいという方がいましたら、cn@en-japan.com までメールを下さい。読者の方からいただいたメールを反映させていきたいと思います

※送付いただく際には簡単な自己紹介(職種や年齢等を書いてください)

では、今週のエクスサイズです。

● この人生で,あなたがこれだけは実現したいと思うことは何ですか。 自由に記述してみてください。

次週はこのエクササイズを受けて、どんなことが考えられるのかをみていきたいと思います。