第111回 まだ叶えていない夢

こんにちは、楳林です。朝晩の愛犬の散歩は寒さを感じますが、気持ちを引き締めてくれます。先週のエクササイズは「あなたにとって2004年をどんな年にしたいのかを漢字で表してみてください」でしたね。1通紹介します。

「『備』と『築』といった感じでしょうか。今のところはというレベルですが、後厄、節目の年、そして新しい人生へ向けて、ステップするために体を準備する年になるのかなという思いがあります。まず『備』は現状を十分に把握して、必要なもの、足りないもの、自分自身のこと、環境、それらについて、変化のために備えをしたいです」(Mさん、ソフトウエア開発SE,41歳)。

「『築』は今年取得したITコーディネーター補から補をとっていけるようにスキルの向上をし、人脈や今まで知らなかった世界とのつながり、自分への自信となるべきものなどを築いていくべき人生にしたいですね。いくつかの資格取得にもチャレンジしたいし、人生を考えた上での自分の仕事を目指した転職できる環境も築きたいですね」。

40代は仕事人生としても一番油の乗る時期ですが、同時に人生の後半戦への折り返し点でもありますね。今まで捨ててきたものを拾いなおす面もあるようですね。

ところで、先週の半ば、帰宅途中の駅の売店でPHP1月号の特集「人生は、何度でもスタートできる」がつい目にとまって珍しく購入、電車の中で呼んでいるうち、ハッと気づかされたことがありました。それは萩原朔美さんの「挫折はチャンス」というエッセイを読んでいるうちに引き出されてきたのです。

萩原さんは私と同じ年で、多摩美術大学教授ですが、それ以上に映画作家、写真、版画などで活躍されています。その彼が毎年、自分の生徒に「いったい自分は何がしたいのかまだよくわからないんだ」といっているそうなんです。

ムムッと感じたのは次の文章でした。「それというのも、私は何者かになりたいとか、こんな仕事がしたい、と思ったことがなかった。いや間違い。たった1度だけ思ったことがある。小学4年生の時だ。画家になりたいと思った。親にも先生にも言った。しかし中学3年間で教え方に反発して絵を描く気力を失った。それ以来、何が自分にとって最適な仕事かが見当たらなくなったのである」。

萩原さんはその後、ジャズバンドを組んだり、寺山修二の主宰する劇団に入ったがいずれも挫折。30代から雑誌の編集、広告制作、テレビ企画などを手がけ、今は大学の先生。でも「どこかにまた次のやり直しが自分の身に起きるのではないか、と思っているのかもしれない」と語っています。

このエッセイを読みながら、ふっと「自分もそうじゃないか」という思いが浮上してきたのです。

「そう、作家です」。確かに小学校4年から高校生まで、自分の心を占めていたのはそれなんです。でも段々、諦めていって、心の奥で「無理だ!」と言っている自分がいまだにいるのに改めて驚いてしまったわけです。

確かに今まで新聞記者を皮切りに色々職業を体験し、現在はキャリアデザイン研修やコーチングという割と自分に合っているし、気に入った仕事をしている。メルマガも書かせてもらっている。でも近いところにいるようで、「まだ遠いんだな」という思いがしてきたのです。

「もしかしたら、人にはそれぞれ、『これしかない』という仕事というか世界が1つだけ与えられているのかもしれないな」。その時、直感的に思いました。まるで故郷のような感じです。「それは無理だ」と心の奥で半ば諦めながらも、諦めきれないでいる世界がみなさんの心の中にありませんか。まだ叶えていない夢が心のどこかで呼んでいるような気がする時がありませんか。

この正月は、中学2年の期末試験の最中、夢中で読んだロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」を読むことにしました。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたにとって忘れられない1冊の本って何ですか」