第118回 キャリアデザインとジョブデザイン

こんにちは、楳林です。このところ、ある大手企業の30歳の社員を対象に、

「キャリアデザイン研修」が続き、かなり疲れました。今日は代休を取って暖かい冬の日差しの中、愛犬のゴンと散歩したり、のんびりした1日を過ごしています。

30歳前後といえば、入社7~10年位、実務能力、コミュニケーション能力など職業人生の基礎工事の出来を確認する一方、これからの10年、どんな分野でもリーダーシップ、問題解決能力、そして専門性を積み上げて職業人としての自分を確立していく大切な時期ですね。

でも安定した企業で働いているせいか、キャリアに対する関心は、企業やこちらの思うほど高くはなさそうです。一度、転職でもするとガラッと変わるのでしょうが。ただ、「これが本当にやりたいことか」「今のまま、ずっと同じ仕事をしていっていいのだろうか」といった悩みはかなりの人が抱えていてホッとします。

私の30歳前後の時と変わらないな、と思うからです。私だって「キャリア」という捉えかたを、したのは40代後半からでしたから。

ところで最近の若い世代の「キャリアデザイン研修」に関わっていて、1つの大きな変化はキャリアデザイン以上にジョブデザインを重視する企業が増えてきていることです。今回はこのことについて触れてみたいと思います。

従来のキャリアデザイン研修というと、30歳,40歳,50歳という人生の節目において、これまでの職業人生を振り返って、自分の強み、弱みを確認するとともに、「本当にやりたいこと」つまり自分の価値観やキャリアビジョンを明確にして、将来のキャリア目標と行動計画を立てるというのが基本でした。

これに対し、ジョブデザインを重視する考えは、慶応大学教授の高橋俊介さんが書かれた「キャリア論」の中で主張している主体的ジョブデザイン行動中心の「キャリア自律」の考えがきっかけになっているようです。

変化の激しい時代にあって、従来のキャリアビジョンに方向でのスキル開発行動では、時代に対応しないばかりか、人材流失のリスクを高めるだけだと批判しているのが特徴です。

ジョブデザインという考えは、「誰でもやりがいややる気が出るように仕事を設計する」という意味で、1950年代に単調労働に対する批判が始まりです。現在でもやりがいと職場生活の充実という面で重要な視点といえます。

代表的な理論にハーツバークという人の「満足―不満足要因説」というのがあります。これによると、仕事そのものについて「作業が複雑で挑戦的内容を持つこと」がやる気を誘発すると言っています。もう1つ大切なのは仕事そのもの以外に、達成、承認、責任、成長、能力発揮(創意工夫)の5条件がそろった状態を“自律性”といい、人間は本来自律的に仕事をするのが好きな存在であり、そのとき強い満足感を得るといっています。

ちょっと難しい話になりましたが、ジョブデザインは特に経営側で社員の自立性を高めるための環境整備、あるいは組織改革やマネジメント改革がないと5条件がそろう状態はなかなか実現しないなあ、という感じがします。

それを抜きにして社員に主体的ジョブデザイン行動を期待するのは、ちょっと片手落ちでは、という気もします。半面、個人のキャリア形成は普段のジョブデザインを飛び越えてキャリアデザインだけですと、やはり”青い鳥症候群“に陥る恐れがありそうです。

以前紹介した(第82回)米国のキャリア学者、リッチモンドさんは「あなたが愛する仕事を見つけよう。あなたが今もっている仕事を愛そう」と言っていましたが、後半部分がジョブデザインにあたりますね。でも前半部分の「あなたが愛する仕事を見つけよう」という視点も大切です。要はこの2つにどう橋を架けるか、というのがこれからのキャリアデザインのポイントのような気がして、研修のたびに強調しています。

現在の仕事が嫌だから転職を考えている人たちには、今一度、これまでの仕事を通してのジョブデザイン行動を考えることが必要な気がします。そして社内キャリア形成を目指す人は、ジョブデザインをしながらも、節目ごとには視野を広げて10年くらい先の出来事に対するキャリアデザインをぜひ描いてもらいたいですね。

要はいずれにしろ「自分の人生観をしっかり持つこと」「どんな生き方をしたいのか?」どんなライフスタイル?」「何を1番、大切にしたいのか」といった問いをしっかり受け止めた上で、自分のジョブデザイン、キャリアデザインをしっかり描くことだと思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「職場で1番改善しなければならないことで、将来あなたのキャリア開発にも役立つことって何ですか」