第127回 サンテグチュペリと私

こんにちは、楳林です。庭のタンポポや雑草が一気に成長してきました。でもイラクでの3人の人質事件が重くのしかかっています。

先週、1つの記事が目に留まりました。「星の王子さま」を書いたフランスの作家で、第2次大戦中の1944年7月31日、コルシカ島の連合軍基地から偵察飛行に出たまま消息を絶ったアントワーヌ・ド・サンテグチュペリの墜落地点が特定された。仏マルセイユ沖で見つかった航空機の残骸が、製造番号からサンテグチュペリ搭乗機と断定されたためだーという記事です。

私にとっては思い出深く、また自分のキャリア観の原点にある作家なのです。そこで今回は彼について触れてみたいと思います。私が彼の本に出会ったのは28歳の時。当時私は、新聞記者として福島県内を車で飛び回っていましたが、同時に自分探しの真っ最中でもあったのです。

そんな時期、偶然、本屋さんでサンテグチュペリの「星の王子さま」を手にしていました。いつの間にか童話に縁のなくなっていたのに、気がつくと、買っていたのです。それはとても不思議な感覚として今でも覚えています。

で、驚いたのです。何だか自分の体験に似ていたからです。そこで「人間の土地」「夜間飛行」「南方郵便機」「戦う操縦士」「城砦」など彼の著作を片っ端から買ってきて読み耽りました。「書いてあることの多くを自分は内的体験している」「一体これは何なんだ!」。

彼は郵便飛行の最中、サハラ砂漠で墜落事故を起こし、喉の渇きと戦いながら救いを待つ中で何かをつかんだのでしょう。彼の本を読んでいた頃、私は取材で駆け回りながら、一方では恋愛に悩んで“愛の砂漠”にいたり、山形県内の山中で車の30メートルの転落事故(奇跡的に無傷でしたが)を起こしたり、ともがいていた自分にとって、次の一文はぴったりの感じでした。

「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだ」「家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」(星の王子さま)

また、下北半島の恐山を1人旅していて自殺願望の女性に出会ったのもその頃でした。

「しかし今宵、わが愛の砂漠のうちを歩みながら、私は涙に濡れた一人の少女に出逢いました。・・・そのとき、彼女の苦悩が私の目を奪ったのです。主なる神よ、もし彼女の苦悩を拒むなら、私は世界の一部を拒むことになり、私の仕事を完成したことにはなりますまい。もちろん私の目的から逸脱してよいというのではありません。しかし、あの少女もまた、世界のしるしなのです」(城砦)。

彼の著書から私が1冊の本を選ぶとすれば「人間の土地」という小冊子です。そこには不時着した砂漠での体験を通して獲得した彼の人間観や自然と人間の関係、そして友愛や職業の意味などが伝わってきます。私にとってのキャリアやコーチングの源にある考えとほとんどつながっています。

「僕を悩ますのは、その凸でも、凹でも、醜さでもない。言おうなら、それは、これらの人々の各自の中にある虐殺されたモーツアルトだ。薔薇を育てる園丁はいても、少年モーツアルトを育てる園丁がいない」「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、初めて人間が作られる」(人間の土地)。

これは半分冗談ですが、ある時彼の年賦を見ていて気がついたのです。彼は1944年7月31日に亡くなり、私は2年後の7月31日に生まれている。当時は彼の魂の一部を自分が引き継いでいるような感じさえしたものです。もっとも後に7月31日生まれで同じことを言う人がけっこういて恥ずかしくなりましたが・・・(笑い)。

いずれにしても彼は作家である前に、最後まで飛行機家として生きたんだなと思います。先週の記事をそんな意味で私にとっては感慨深いものでした。

さて、約2年半続いた、キャリアコーチングも、いよいよ次回が最終回となりました。そこで次週のエクササイズです。

●「あなたにとって、このキャリアコーチングは、何だったでしょうか?」