第32回 冷凍保存した才能を溶かす

こんにちは、楳林です。暑くなってきましたね。先週のエクササイズは「あなたが嫌っている人、どうしてもやりたくない仕事、それを嫌っている理由は何ですか?」でしたね。今週も幾つかの回答を紹介させていただきます。

「どうしてもやりたくない仕事は自営業。理由は実家が酒屋を営んでいて小さい頃から寝る暇もないほど働いている両親の姿を見て、自営業だけは嫌だと思い、大手企業に就職しました」(Sさん、33歳)。

Sさんは「4年前まで仕事、遊びに熱中してきましたが、ある仕事に失敗し、自信をなくし、以来鬱々とした日々を送っている」そうです。が、その中で、さらに自分の意識のより深いレベルで「自分の思い通りに人を動かし、利益を得てみたい」という欲求があることにも気付いておられます。そして多分、それが自営業だということも。

MITのエドガー・シャインのキャリアアンカー(キャリア指向性)という考え方を紹介したいと思います。これは仕事や職業から見た人生の価値の方向性から生活、安定、マネジメント、専門性、創造、挑戦、独立、奉仕の8つのカテゴリー(領域)に分けてその人のキャリアタイプの傾向を見る方法です。が、そのうち、創造、独立の2つの資質をSさんに感じます。

でも多分、両親と自営業をセットで嫌っているため折角の自分のキャリア指向性を拒絶してしまい、自分らしさが発揮できないでいるように思います。

さて、深層心理の視点から見ると、「嫌な人や仕事」がある場合、人は大体、批判しながら同じ事をやり続けるか、あるいは「それだけは絶対やりたくない」という思いの中で、それに代わる補償行為をやるそうです。

補償行為というのは、例えば「約束を守らないのが嫌い」な人は、とにかく約束だけは絶対に守ろうと犠牲的に努力するようなことを言います。しかし、批判しながら補償行為で逆のことをやろうとも、その人の意識の奥に「自分も約束を守らない人」という観念が潜んでいるのです。そして実は他人と同じ位、実は自分自身をも責め続けているのです。

ところで「何故よりによって嫌な人や仕事が身近にあるのだろか」と思うことはありませんか。それは決してネガテイブな出来事ではないのです。それは、嫌な人や仕事の意味を解き明かすことによって、埋もれていた自分の資質、才能や時には自分のビジョンを見出すきっかけにもなるからです。

ある意味であなたが自分の才能やビジョンを、本当に必要とするまで長い年月、あなた自身の冷蔵庫に冷凍保存して来たのです。その冷蔵庫を開ける鍵はあなたの体験の中にのみヒントがあるのです。そして冷蔵庫から出して溶かす時が来たと考えてはどうでしょうか?

「男性の補助と入力作業の総務という仕事が嫌い」というNさん(27歳)はその理由を探っていく内に「客観的な理由より実は気分として嫌なのだ」「男性と同列にならない悔しさ」といった感情に気づき、さらに深い意識に「プライドとトップでいたい、特別な存在でいたい、というペルシャ猫のような顕示欲がある」ことまで気づかれました。素晴らしいプロセスですね。

ユング心理学の視点で云うと、あなたが戦っているのはあなたの中の男性性と女性性で、両方を受け入れて統合していくに従い、気品溢れる女性性が開かれるように思います。そんな魅力的な女性を周りは補助に使うでしょうか。

またNさんだけでなく、何人かの方が理由を探るうち、自分の中に特別意識があるのに気付かれましたね。一人一人が自分の資質とビジョンを花開かせていけば誰もが特別な存在(ヒーロー、ヒロイン)になりますが、それはもう特別とすら言えません。一人一人が欠かせない価値を持っているのですから。

ということで今週のエクササイズです。

●「長い間冷凍保存してきたあなたの資質、才能、ビジョンは何ですか」