第37回 キャリアとマネジメント

こんにちは、楳林です。サッカーが終わったら、今度は暑い夏の到来ですね。先週のエクササイズは「あなたの心の中や職場において、相対立しているものを統合した時、現れてくるものは何でしょうか?」でしたね。今週も1通の回答を紹介させていただきます。

「相対立しているものは大人の自分と子供の自分です。大人と子供の間でバランスが取れていないと思います。この二つの間でちょうどいい位置に立てた時、素直に自分が求めるものに手が伸ばせ、何をするにも感じていた圧迫感を感じなくなると思います」(Cさん)。

Cさんは自分の中に自由な感覚の子供と、社会とか常識を気にする大人の対立から行動が窮屈になっている自分を何とか開放しようという気持ちが感じられます。その2つをバランスさせるというのも大切なプロセスだと思います。そこで質問です。「圧迫感なく、素直に自分が求めるものに手が伸ばせるようになったら、何をしてみたいと思いますか?」。

さて、今回のテーマである「統合」というのは、バランスの先にある状態です。例えば子供の部分と大人の部分が統合されるに従い、本当の意味での「成熟さ」が出てくるように私は思っています。でも「統合」というのはとても難しいテーマです。

私の場合、前回でも多少紹介しましたが、ある中堅企業の新任の管理職の方を相手にマネジメントとキャリアデザインの両方を一緒に行う研修を実施しています。そのせいもあり、もう2ヶ月ぐらい、自分の中でこの「マネジメント」と「キャリア」がずっと頭から離れない状態が続いています。

私のキャリアを振り返ってみると、新聞記者時代は企業取材が中心でしたし、その後、経営戦略などの企業研修をやった経験もあります。が、ここ10年くらいは「企業の成長」より「個人の生きがいやキャリア」に関心が移ってきました。それだけに「もう一度この2つのテーマをやり直しなさい」というメッセージが来ているように思えます。

1回目の研修が終わって2,3日たった朝、直感的にひらめいたものがありました。それは「個人にとってビジョンや価値観を大切に自分のキャリアをデザインする時代に来た」ように、「ビジョンや価値観を本気で大切にする企業しか成長できない時代に来ているのでは」という視点です。

そして、その日のうちに出会った1冊の本があります。「隠れた人材価値-高業績を続ける組織の秘密」(著者はスタンフォード大学のチャールズ・オラリー、ジェフリー・フェファー両教授)。この本の内容を一言で言えば「高業績をあげ続けられる会社の成功の鍵は、人材獲得競争に勝ち抜いたからではなく、現在いる全ての社員の持っている真価、潜在能力を存分に引き出し、活用していることにある」というものです。

成功例として米サウスウエスト航空など8社をケースに取り上げ、その共通の要因として、「わかりやすい価値観があり、しかもその価値観が経営戦略や社員への投資、情報の共有化、チームを基盤としたシステム、そして報酬などの経営慣行と一貫した整合性を持っている」ことをあげています。

要するに価値観を単なる飾りやタテマエでなく、本気で実践している企業が成功しているのです。ある意味でそういう企業は「人は誰もがその人なりのビジョンと才能を持ち、それを現実化していく答えを持っている」というコーチングの基本哲学を実践しているような感じすらします。

「そんな企業が日本にあるのかな」と思われるかもしれません。でもこれからの時代、価値観が経営のあらゆる面で一貫した整合性を持つよう努力する企業でないと、成長し続けるのは難しいと思うのです。

そう考えると、キャリアを選択していく上でもどんな企業を選択するかということは大きな比重を占めそうです。ということで今週のエクササイズです。

●「あなたはどんな価値観を一貫して大切にしている企業で働きたい(ある いは創業したい)ですか?」