第38回 戦略的なキャリア形成

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたはどんな価値観を一貫して大切にしている企業で働きたい(あるいは創業したい)ですか?」でしたね。先ず1通紹介させていただきます。

「最近、米国の化学会社に転職しましたが、この会社を選んだ理由は[1]人種や性別、年齢による差別がなく、あくまで人物本位で評価してくれる[2]これにより、社員を使い捨てにしたり、単なる歯車として扱うのではなく、一人一人を大事にし、温かくアットホームな会社、という印象を受けた」(Sさん)からだそうです。

Sさんは米国で転職されたようですが、日系企業の場合、日本女性であることが大きなハンデイと感じていたのに、この会社では逆に「セールスする上で他社と異なり目立つこと」という見方をしてくれたことを会社を選んだ3番目の理由としてあげています。

Sさんはこれまで大手総合商社のセールス・マーケティングから始まって、日系企業のプロジェクトのコーディネーションや大学の講師など多彩なキャリアを体験してこられています。今回の転職候補になった会社のほとんどが以前の会社でのSさんの顧客だったことから「人生どこでどのようにつながるかわからないので、常に全力投球、誠心誠意で働くことの大切さ」を再認識されているようです。

Sさんは、この会社を選んだ3つの理由は同時に「会社の価値観であり、その価値観を選んだ」とはっきり認識されています。もう一つ加えれば、多分Sさんの価値観でもあるのでしょう。「全力投球、誠心誠意」というのももともとSさんの人生への姿勢だと思います。それらがキャリア上の体験を通してさらにしっかりと自身が認識していっているようです。

Sさんの転職時の回答とは別に、既に長く勤めておられる方の回答も2通紹介します。「『サービスがいいから』『安いから』『安定しているから』というだけでなく、お客様や取引先に無条件で人間的に信頼されたら最高」(Nさん)「理想主義かもしれませんが、企業のトップが、企業理念について、もう誰も止められないくらい、とうとうと話せる情熱を持ち続け、それが戦略・会計処理等すみずみまで首尾一貫している会社」(Kさん)。

ただ、お二人とも、この視点から現在勤めている会社を見直した時、「コストダウンや効率化、アウトソーシングなどが進む中で、お客様とのつながりが、どんどん失われていっている」(Nさん)「入社した時に惹かれた企業理念が、あまりにおざなりになって、もうけ重視になっている」(Kさん)という葛藤に直面しているようです。

そんな時、多くの人は「それが企業の現実さ」「うちの会社も同じ穴の狢さ」と諦めて屋台で愚痴をこぼすか、もう少し燃える場所を見つけて転職していきます。少数の方は何とか会社を変えたいという意志を持ち続けて努力する人もいるでしょう。

しかし、キャリアの形成と深層心理から見たとき、こんな視点もあります。「その会社の状況は反発しながらも、実は自分の深層や価値観の現在の状態を見せてくれている」という視点です。とするならば、ただ会社を悪者にしたり、自分が被害者になるのではなく、自分もそうであるとまず受け入れることです。その上で、大切にしたい価値観を自分も会社も共に取り戻す(WIN-WINの関係を作る)ために何をしたらよいかを考え実行することです。

その時、日常の職場や仕事上で起きる問題や壁と感じることは、実は単に問題処理のためだけにあるネガティブなものではなく、自分も会社も大切にしたい価値観を取り戻していくチャンスとしてあるということです。そして、それが戦略とも言えますし、自分のキャリア形成にも繋がるのです。

ですからSさん、Nさん、Kさん、そして皆さんにとって、これから直面する問題、課題は、チャンスとして取組んでいった時、戦略的なキャリア形成の実現に繋がるのかもしれません。

という事で今週のエクササイズです。


●「今あなたの周りで起きている問題は、あなたにどんなキャリア上のチャンスを与えようとしていますか」