第62回 いも虫から蝶へ

新年おめでとうございます。楳林です。年末年始どのように過ごされましたか。私は広島の実家で3日間のんびり過ごしたり、「今年をどんな年にしようかな」と考えながら、そろそろ仕事の準備を始めたところです。

ちょうど1年前、年の初めにあたって私は2003年は「ライフキャリア元年」と位置づけました。これはキャリアと人生を切り離して考えるのではなく、たとえば個人が生涯学習とか人生80年時代に取り組む中でキャリアを考える時代の幕開けという意味を込めていたわけです。

その後、私が関係する企業研修でも「ライフキャリアデザイン」というプログラムが着実に増えてきています。経済環境は新卒の就職難とか中高年のリストラといった厳しい状況が続いていますが、それも人生上遭遇する予期せぬ出来事として受け止めていく中でキャリアは形成され開発されていくように思えます。

正月早々、古い友人のSさん夫妻の訪問がありました。といっても私達夫婦よりはずっと若く、ご主人が40代前半、奥さんは30代半ばといったところでしょうか。私が感心するのは、ご主人はコンピューター関連会社でソフト開発の技術者ですが、結婚以来ずっと2人でカウンセリングや心理学の勉強を続けていることです。

最近は2人でリアリティセラピーのワークショップに参加しているほか、勉強中のフォーカシング,マイクロカウンセリングなどの話題が次々に出てきます。今の仕事から、どうやって「将来は2人でカウンセラーになる」というキャリアチェンジを実現していくか、一生懸命取り組んでいる姿勢が伝わってきました。

私が「新聞記者から転職して今年が10年目、何か新しい始まりの時だね」という話をしたら、彼らも「私たちも結婚10年目、転機の年になりそうですよ」。そういえば年賀状の何通かでも「結婚10年目」とか「海外生活10年目」という知らせがあったのを思い出しました。みなさんにとって何か10年目のテーマというのはありますか?

ところでこの休み中、1冊の本を夢中になって読みふけっていました。バーバラ・マークス・ハバードという未来派の女性運動家が書いた「意識的な進化ー共同創造への道」という本です。

バーバラさんの本の中で面白い話があるので紹介したいと思います。それは私たちの状況を「いも虫から蝶への変化」に似ているという視点です。いも虫が繭を作るときには、先ず成虫原基という組織が発生して、まだ形成されていない蝶の青写真を形にしようとする。しかし、当初はいも虫の免疫システムがこれを異物とし攻撃しますが、ある段階で成虫原基が成虫細胞になると、新しい雛形を作り、古い免疫システムは停止し、いも虫の体は蝶の形に変身していきます。

いも虫から突然蝶に変身していくと思っている方もおられるでしょうが、実際には、長い間、さなぎの状態がありますね。何だか自分たちも長い間、「さなぎの状態にいたのでは」という思いがこの10年という月日を振り返った時に強く感じたこともあって、バーバラさんの本を紹介させていただきました。

ちなみにバーバラさんの本のテーマはソーシャル・ポテンシャル・ムーブメントを伝えることです。かって人間の欲求段階を説明したアブラハム・H・マズロー らが人間はより大きく成長できると言う考え方に立って「ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント」を展開しましたが、さらに「すべての人々が人生の目的と意味を見つけていく共同体の実現」を目指そうという視点です。

現在の経済・社会システムは世界的な環境汚染、飢餓、貧困、経済不況などに直面し続けています。その中で絶えず新しい教育とか社会システムが浮上しますが、復古的で保守的なやり方、つまり古いいも虫の免疫システムによって攻撃され、依然古い構造を維持しているのが現状だというわけです。しかし、その状態はもしかしたら「いも虫から蝶」への生みの苦しみなのかもしれませんね。

1人1人の個人も組織、社会も案外似たような状況にあるのかもしれません。そんな思いを持ちながら新しい年が始まりました。

そこで新年最初のエクササイズです。

●「この10年を振り返った時、その先にある、あなたにとっての今年の課 題は何ですか?」