第64回 俯瞰(ふかん)のスキル

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「あなたにとっての”思いやりのあるわがまま“って何か、ちょっと挑戦してみてください」でしたね。

今回は回答の多くが内容が深く、いずれも「うーん」と考えさせられるものばかりでした。

まず、1通のメールをご紹介します。「自分のゴールをつきつめること、諦めないこと、正直になること、自分に言い訳をしないこと。自分の最善にしがみつき、やり抜くことだと思います。それには大変な決心と責任がついてきます。でも自分がベストを尽くし、自分のために幸せにならない限り、周りの人を幸せにしていき、思いやる余裕は出てこないと思うのです」(Hさん、35歳)。

Hさんは日本の法学部でアメリカ法を学び、金融、メーカーでの営業を経て、元々望んでいた米ロースクールへ留学。マスターを修得後、無職になりながら現在もアメリカで弁護士資格取得を目指しているそうです。

「学位はとりましたが、現実は甘くなく、仕事はなかなか見つかりません、違う職種で、仕事を見つけて落ち着きたい気持ちはものすごくありますが、でも自分の選んだ道にしがみつこうと思います。あきらめず、わがままになり、アンテナをフルに張って、戦闘態勢でいようと思います。きついですが」というHさん。きっと努力は、実ると思います。頑張ってください!!

また、Hさんには、いくつか質問が浮かびました。「1年後、2年後、さらに5年後の自分をイメージして見てください」そして、「何をしていますか?どんな場所で、どんな服装で、どんな仕事と生活をしていますか?休日はどんな楽しみ方をしていますか?」「そこから何が得られていますか?経済的な面、精神的な面、健康面、家庭生活では、人間関係では?どんな充実感が得られていますか?」「そのとき自分が大切だと思うキーワードは何ですか?」なんて質問です。

そして、未来の自分に尋ねてみてください。「あなただったら、現在の状況をもっと楽に超えていくために何をしますか?」。こんな風にイメージを広げていくことはとても大事なことなのです。Hさんだけでなく、是非読者の皆さんも自分に当てはめて考えてみてください。

さて、もう1通。「思いやりのあるわがまま、と聞いて思い出すのは社会人になってから、医学部に入りなおして、今もなお医者になるべく励んでいる友人のことです。彼自身も、そのことはある種のわがままであることを認識していますが、それでもがんばっているその姿に周りは応援せずにはいられません。そしてわがままの方向性が明確で、その先にきっと達成されるという責任がつくのと、達成されればきっと良いものが出来る、みたいな感覚が共有されているのかも」(Aさん、30歳)。

Aさんは、ご自身のこととしてデッサンについて書いてくれています。それも、面白いので取り上げさせてもらいます。「私が絵を好きになったのは、とっても変わり者の美術の先生にデッサンを学んでからです。対象物の構図を決めて、配置を決めて、白と黒でとらえたり、面でとらえたり、とだんだん形になってきたら、一度すべてを消して、また違ったアプローチで描き進めたり・・・。この手法は目からウロコものでした。自分のキャリアをこのデッサンに置き換えてみると、大局→細部→大局を繰り返しているようです」

なるほど。さて、Aさんのメールを読みながら、私はコーチングの「俯瞰のスキル」を思い出しました。これは、たとえば、苦しい状況に直面した時、例えば鳥になったつもりで、上空から下界を見下ろしてみると、物事の全体像や人生のプロセスが、渦中に居た時とは異なる視点から見るきっかけを与えられるというものです。

Aさんの美術の先生は「紙の中に対象物が埋まっていて、それを掘り起こすように描きなさい」とも言っているそうです。これはちょうど「俯瞰によって、厳しい状況の中に、時には自分のビジョンや生き生きとした人生のイメージを再び思い出す」ことに近いような気がしたのです。

俯瞰のスキルは、「メタ思考」にも似ています。これは「自分が今、何を、どのように考えているかをより高い視点で見る」ことです。今の仕事で悩んでいたり転職などキャリア上の問題に直面した時、こうしたスキルを使って視点を変えてみると、けっこう楽に越えることが出来ると思うんですよね。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが直面している課題を、少し上空から見たとき、どのように見えますか」