第66回 大切にしたいあなたのものさし
こんにちは、楳林です。先週は福島市に出張しましたが、寒波の直撃を受け、久しぶりに“しばれる”ような寒さや地吹雪を体験しました。先週のエクササイズは「あなたにとってこれまでの失敗や挫折の体験で役に立っていることがあったら紹介してください」でしたね。何通か紹介します。
「アメリカ系の大学で授業が厳しく、成績も辛く、おまけに卒業が遅れ、水面下で持ち上がっていた通信社への就職の話もなくなってしまいましたが、自分に向いているものを必死に探しまくったことで幅広い教養が出来、面白い仕事をするために努力するようになりました」(Mさん、四捨五入すると30歳)。
Mさんはこれまでに清掃、販売、編集、経営企画、議員秘書、経理など10近い職種を経験しているそうです。「せっかくであった理想の上司が突然退職してしまうなど挫折の連続でしたが、そのお陰で会社に頼らず、ことの本質を見抜いてどこでも通用するという、昔の目標をかなえつつあると思います」。
現在は経理や広報を経営的な観点から見られるシステム屋さんで見習い中だそうですが、将来は自ら起業してもよさそうな感じがします。10年後くらいのビジョンを描かれてはどうでしょうか。
もう1通。「失敗と思っていることは、学生時代に海外留学や旅行をして見聞を広めておかなかったこと。未練が残っているので近いうちに計画しています。“挫折”に関しては人間関係ですね。他人の心を思いやることが苦手なのでいろいろ失敗しますが、最近心に刻んでいるのは『私に何かをもたらすのは、人である』ということです。まず身近にいる人を大切にしないと・・・・」(Iさん)。
Iさんは雑誌の編集をされており、「本格的に創刊準備となってきて、忙しさも今までの2倍という感じです」というように久しぶりの回答ですね。「今年は仕事とフラメンコに集中して頑張っています」ということで安心しました。私も気が多いほうですが、やはり絞込みが大切ですね。
ところで、先日、有楽町駅近くの国際バザー展を覗いているうち、ネパールの商品を飾っているところで1冊の本が目に入り、思わず買ってしまいました。「ネパールー旅の雑学ノート」(著者は平尾和雄氏)という少し古い本です。実は平尾氏(君といったほうがいいでしょう)は、私の大学時代の同級生なんです。
同じ社会学科でも、私は社会学、彼は文化人類学でしたが、クラブは同じワンダーフォーゲル部の仲間でした。私ものんびり屋でしたが、彼は一種、ボヘミアン風で親しいというよりはちょっと気になる存在でした。
大学卒業後、彼は普通の会社に就職しましたが、1年足らずで退職、そのままネパールへと旅立っていきました。5年位して「ヒマラヤの花嫁」という本が出版され、ネパールの女性と結婚し、タトパニ村で宿屋を開業している話が出ていました。その5,6年後、ネパールの事情で、奥さんのスルジエさんと一緒に帰国した直後に一度、仲間と一緒に会ったことがあります。
彼はちっとも変わっていませんでした。一時は日本に住むことも考えたそうですが、スルジエさんが日本の風土に合わないとかで、再びネパールに戻りました。スルジエさんと生きることが彼の選んだ人生だという感じがしました。その後、風のうわさで彼の消息を聞く程度でしたので、今回、7年前に出版された、この本を懐かしく読むことが出来ました。
今回、彼のことを取り上げたのはエピローグの一文を紹介したかったからです。
「僕が一番伝えたかったのは、雑多な情報や知識ではなく、その見方だったような気がする。自分の属する文化がフツーでまとも、よその文化は特殊で異常、という座標軸を取り外さない限り、異なる文化に触れても何も見えてこない。まして『進んでいる・遅れている』とか『優れている・劣っている』とかいったゆがんだものさしをあててしまったら、さまざまな無尽蔵の宝の山を見逃してしまうことになると僕は思う。」
前回、私は「キャリアには、成功も失敗もないのです」と書いた直後だっただけに、彼をとても近く感じました。現在はフリーのジャーナリストをしているそうですが、ネパールが彼のライフキャリアの泉のような気がしました。
ということで今週のエクササイズです。
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