第69回 トランジションの隠れた選択

こんにちは、楳林です。日増しに春が近づいてくる感じですね。先週のエクササイズは「あなたが今、自分の周りで何らかの転機、危機に直面しているとしたら、そこにどんなチャンスを感じますか?」でしたね。何通か紹介します。

「米国でようやく生活や仕事に慣れたところで、ある日突然主人を亡くしました。人生の目標を失って一旦日本に帰りましたが、『このまま私の人生が終わってもいいのか』と数ヶ月間自問自答した後、米国に戻りました。まもなく主人の6回目の命日ですが、今はそのおかげで自立し、独立心が養われ、ちょっとやそっとのことで動じなくなりました」(Sさん)。

Sさんはこの経験から「どんな転機や危機も、それらは後に何らかの力になる、決して無駄になることはない。必要な試練と思い前向きに受け止めることにしています。『また、チャレンジするチャンスを与えてくれてありがとう』って思うと、いやなことも何とかなりますよ!」。

「自分の勇気、可能性を試せるし、自分を信じるというチャンスですね」というのはTさん(コンタクトセンターのスーパーバイザー、38歳)。

Tさんは「2年前から契約社員として働いていた会社との契約が切れるときに、これから設立するA社に来ないかという誘いがあった。仕事の内容は魅力的だったが、いつ設立されるかもわからない。生活もあるし他社もいくつか受けながらまっていたら、B社に5年契約で入社することが決まった。しかしたとえA社が立ち上がらなくても、自分が本当にしたいと選んだのだから後悔しない、自分の可能性を試したいと、B社をお断りし待つことにした。5ヶ月の待ち期間はかなりの辛抱とストレスがあったものの、あのときの決断は間違っていないと今は確信できる」と言います。

“待機”というのは、自分から行動を起こせないだけに、時にはとてもつらいものですが、意識を変革する上では実は強力な方法です。受け取るとか自分を信頼できるというのはまさしく最高の成果だと思いますよ。

ところで人生の転換期(トランジション)とかキャリア転換についての質問もいくつかありますので、私自身も体験し、その前後に学んで役に立った3つの理論を1つずつ3回にわたって紹介したいと思います。

以前書いたことがありますが、Sさんと同様、私も40代前半に突然、7歳の息子を病気で亡くし、仕事にも意欲を失って23年努めた新聞社を退職、2年間のブランクの後、再就職した研修会社で出会ったのがウイリアム・ブリッジズのトランジション3段階論です。

第1段階は「何かが終わる時」です。離婚、リストラ、失恋、最愛の人を失うといったネガティブな体験だけでなく、入学、結婚といったお祝いするような体験も含まれます。それまで慣れ親しんだ人間関係や場所や、環境を失ったり離れたりして目標や意欲を失なったり、混乱、恐れや怒りなどの感情を体験します。

第2段階は「ニュートラルゾーン」です。昔の現実の終わりを受け入れつつも、次の方向が見えないまま、まるで宇宙の孤児のような寂寥感、空虚感にしばしば襲われます。私がブリッジズに出会った時で、おかげでその後起きてくる内的変化やプロセスに直面することができました。

この段階を抜ける方法が実は自分のミッションやヴィジョンを見つけることだと気づいた時、人生で直面するトランジションの深い意味や意義を多少なりと理解できるようになったんです。

そして第3段階は「何かが始まる時」です。何かが具体的に始まる前から、なんとなく予感できます。出会いとか再就職とか、をです。私もそのころからキャリアカウンセリングやコーチングを勉強するようになりました。50代に入ってからも何度かミニ・トランジションに直面しますが、それを新たなチャンスとして受け止めれるようになったと思います。

もう1つ、体験で気づいたことは、リストラとか失恋とか「何かが終わる」数ヶ月前に、実は潜在意識で「終わる」を選択していたことでした。つまりトランジションすら、自分のどこかで選択している、ということなんです。何のためにトランジションを選択したのか?それに気づけば、もっと深い転機の意味が見えてくると思います。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたが体験中(した)のトランジションを振り返った時、その体験を 自分で用意したと思うことはありませんか?」