第71回 キャリアトランジション
こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「レビンソンの視点から見直したとき、気づいたことはありましたか?」でしたね。今回は30代、40代の回答が目立ちました。
「私は昨年9月末、それまで8年間在籍した某私鉄会社を31歳で退職し、家業の電気工事屋を継ぐ予定で、現在中小企業向けの経営研修(1年間コース)を受けています。自営業の家に生まれ、以前から大企業組織には違和感を感じていましたが、本社の根拠のない“偉さ”や事業部間抗争、顧客より出世志向の企業風土などに愛想が尽き、本社への異動になって3ヵ月後に辞表を提出していました」(Mさん)。
Mさんは「本社異動直前の昨年3月末に行われた“30歳研修”でレビンソンの話を聞き、人生の転機を感じた」そうです。きっとその時に決めていたのでしょう。「実際に不動産開発(前職)から下請け工事屋(家業)への転職は難しいことを痛感していますが、現在通っている学校を『意識的に勝ち得たモラトリアム』として今後の人生を考えている最中です」というMさん、家業を継ぐというより、新しい業を起こす位の気持ちで取り組まれているのかもしれませんね。
「30代の焦燥感、自分の可能性が狭まってくる感じにぴったり当てはまっている感じがします」というのはITアウトソーシング会社で人事・総務担当のFさん(30歳)。「先日、転職先の最終面接に挑みましたが、どうもしっくり来ないというか、自分の中に違和感があり、こちらから辞退した」そうです。
「数ヶ月前までは、『1人で生きていけるだけのキャリアを持たなきゃ』とがんばっていたが、いざ転職の決断を前にした途端、『会社ではほどほどに仕事をして、余力を司会の仕事や勉強のために使うほうが、自分の求めている“働く姿”だ』ということに気づいた」Fさんは「転職願望は、自分の可能性を見極めることへの焦燥感から来る“悪あがき”だったのでしょう」と自分を笑えるようになったのは素晴らしいことですね。
プロジェクトYでコーチングに取り組んでいるTさん(38歳)は「20歳前後、30歳前後にもありましたが、今またトランジションの時期に来つつあります。今まで仕事が突き出た分、家庭をおろそかにし、長男にひずみが出てきた感じです。ここで長男ととことん向き合ったほうがいいと思うのですが、仕事も新たな目標があるので捨てられないし・・・・」というジレンマに立っているそうです。
「自分の感情中心で、長男の感情を大切にしていない自分が見える中で、今、自分の勇気、可能性を試せるし、自分を信じる、ということがどういうことなのか、じっくり考えていかねばならない」というTさん、仕事も続けながら、長男さんにコーチングを使ってみてはどうでしょうか。
さて、トランジションの3回目はナンシー・シュロスバーグの「キャリアトランジション(キャリア転換)」を紹介したいと思います。
ちょうど数年前、私がキャリアカウンセリングの講座で勉強中に彼女の著者が日本語に翻訳されて「選職社会―転機を活かせ『原題はOVERWHELMED(圧倒されて)』」が出版されたので、日本で彼女の講演を聴くことが出来ました。
この「キャリアトランジション(キャリア転換)」とは、、「人生はさまざまなキャリア転換の連続で、それを乗り越える努力と工夫を通してキャリアは形成される。だから、、それを上手に自己管理(キャリアマネジメント)できるように行うことが大切だ」というものです。
彼女は、まずトランジションの起こり方を
[1] 予期していなかった(していた)出来事(解雇、失業、昇進など)
[2] 自己決断して起こした(しなかった)出来事(転職、異動、結婚など)
[3] 人間の発達プロセスの中で起きた(老化、定年退職など)
の3つに分類し、その影響度、タイミング、持続性、自己コントロールという4つの視点を踏まえて分析していきます。
たとえ突然の出来事に困惑、呆然としたとしても、少しでも適切な対応を冷静に取れると彼女は言います。具体的には4つのリソース(状況がどうか、自分自身の理解、周囲の支援、転機を変える戦略)をしっかり点検し、活用することによって、リストラといったライフキャリアの危機すらも、キャリア形成の好機として捉えていくのです。
私は、シュロスバーグの視点に対して、当初は余りにクールでシステム的な感じがして抵抗感がありました。しかし、日本ではまだどの世代もリストラなどのトランジションに振り回されている現状を見るにつけ、「キャリアを単なる職業ではなく、人生というもっと深い意味で捉える中で、トランジションを好機と見る視点と戦略的な対処法が必要だ」という思いから、もっと日本で取り上げる時だと痛感しています。
ということで今週のエクササイズです。
●「キャリアトランジションに直面したら、あなたが支援を求めるのは誰ですか?」
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