第78回 もう1つのアイデンティティ

こんにちは、楳林です。まるで春を飛び越えたかのように、急に暑くなってきましたね。先週のエクササイズは「3つの原則のどれかを実際に体験したり試していたら、ぜひ紹介してください」でしたね。1通紹介します。

「1つ目の『実地に試す機会を探すこと』では、自分が何をしたいのかという事を数年前から考え出し、そのために資格試験に挑戦したり、自己啓発の本やセミナーなどに何度か参加しています。まだ何がしたいのかという答えは出ていませんが、少しずつは、こうしていくべきだという道筋は見えてきた気がします」(Sさん、36歳)。

Sさんは2つ目の「新しい人に出会う」についても、「仕事以外で年に2回程度、異業種交流会に参加するようにしています。また仕事やネット仲間の知人や友人など、初めて会う機会がある場所(飲み会など)には参加するように心がけています。新しく知り合った人と話していると、こんな考え方もあるかと気づかされたり、仕事の紹介などのおいしい話を時々頂いたりいただいたりしています」などの努力をしているそうです。

Sさんはまさに試行錯誤し、学習しながら自分のワーキング・アイデンティの再構築と自分に合ったキャリア転換への過程にある感じですね。3~5年後の自分の姿を少し想像してみてはどうでしょうか。

ところで,最近、私の回りや知り合いで、せっかく、自分の志望する、やりたい仕事や業務に就いているのに、職場の同僚、上司あるいは部下との人間関係がうまくいかないために、肝心の仕事が行き詰ったり、リーダーシップが発揮できず、中には転職すら考えるようなケースが出て、ちょっと気になっています。

なぜこれを取り上げたかというと、この人間関係というのが、前回取り上げたワーキング・アイデンティティと関連があるからです。

「アイデンティティ」とは、「自分であること」「自分らしさ」といった意味がありますが、広島大学の岡本裕子助教授によると、このアイデンティティには2つの軸があるそうです。1つは「自分が何になっていくのか」という「個」としての自立、自己実現の達成という軸、もう1つが「自分は他者の役に立つのか」という関係性に基づく軸です。

つまり、同僚や上司と良い意味でうまくやっていくとか、逆に後進、部下をうまく指導できるとかという組織の人間関係を肯定的に発達させていけるかどうかということですね。

ところが、若い人では、職場の人間関係が深まるにつれ、それ自体がつらい、なじめない人がけっこういます。また中年以上では、これまでの年功制の中で「寄らば大樹」とか「会社人間」になっている人ほど、個としての自立と部下の育成といった関係性の両方の課題に対応することが難しくなってくるようです。

実は私自身、若い時、“離人症”というか、集団の中で息苦しさを感じたり、自然に振舞えないことにけっこう悩んだ時がありました。最初に人に接することの多いマスコミの仕事を選んだのは、自分の弱点を何とか克服したいという気持ちがそこにあったのかもしれません。そういう動機が自分のキャリア形成に影響しているわけです。

いずれにしろ、この人間関係のテーマは、キャリア上の問題とか課題の根底にあるような気がしています。同僚、上司、部下との関係を良い意味で変えていくことは、自分のキャリアの発展とも深く関係しているようです。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたの抱えている人間関係での課題が解消すると、キャリア上、どん なメリットがあると思いますか」