第79回 人生のパターンを超える

こんにちは、楳林です。連休は、どのように過ごしましたか。私は今回の連休は珍しく遠出せず、自宅で日ごろおろそかになっていた庭の草刈りや犬の散歩に精を出しました。

さて、先週のエクササイズは「あなたの抱えている人間関係での課題が解消すると、キャリア上、どんなメリットがあると思いますか」でしたね。1通紹介します。

「『嫌いな人、苦手な人とでも普通に接する』というのが私の人間関係での課題だと思っています。いったん相手をそう思ってしまうと、途端に顔を見て挨拶が出来ない、“報連相”が出来ない、無表情で受け答えをしてしまい、自分自身も嫌なやつに変身してしまいます」(Fさん)。

Fさんは、これが解消すると、「視野を広く持て、違う視点を知ることができると思います。また1つの目標に向かって、結果を出すことが出来、それが自分自身のキャリアの1つになるだけでなく、誰に対しても分け隔てのない人に変わり、リーダーとしての要素の1つが身に付くのでは」というメリットを感じているそうです。

ただ「ずいぶん前から治さなければと思っているが、一向に治せていません。先ずは基本的に顔を見て挨拶をすることから頑張ってみたい」というのが目下のFさんの決意のようです。

ちょっとイメージしてみて下さい。そのメリットが今、得られているとしたらどんな感じがしますか?周りはどんな風に見えますか?目の前にコミュニケーションの難しい人を置いて、その感じを持って近づいて行って、相手に感謝の言葉を伝えたら、相手は何と言っていますか?そんな風にです。

ところで、最近私にとってうれしいニュースがありました。それは、3ヶ月前、突然、脳腫瘍で入院した職場の研修講師のTさん(61歳)が元気に復帰したことです。そのプロセスでの気づきを紹介したいと思います。

Tさんは60歳の定年まで外資系企業3社で営業と人事の管理職を経験し、半年前から私と机を並べて同じキャリアデザインの研修講師をしていました。

「自分のこれまでの体験を通して人の生きがい再発見のサポートをするのは本当にやりがいがあるね」と目を輝かせはじめた時の発病だっただけに、私もショックでたまりませんでした。

そんなTさんが入院した2,3日後、私は明け方、ハッと思い出しました。Tさんが、若かりし日、商船大学に入って船乗りになる夢を持っていた事。しかし、やむをえない事情で自分の夢を断念したと言う話をです。「さあ、自分の夢を実現しよう」と燃えていた矢先の挫折感は、青年Tさんにとって大きかっただろうな、と思った事をです。

そして、その時の状況は、今回の状況と似ている、と私は直感的に感じたのです。もしかしたら、Tさんが自分の人生を研修で語っているうちに、眠っていた夢がよみがえろうとしているのでは、と。それが腫瘍という形をとって現れたのではないか?と。

普通に考えたら、これは、もちろんとんでもない発想です。が、そのとき私にはそう思えたのです。そして、手術直前のある日、私は彼にFAXでメッセージを送りました。

「青年の時にあった人生のパターンを超えて、夢を取り戻すチャンスです。 腫瘍は、敵ではなく、あなたの夢をもう一度思い起こさせるきっかけなの かもしれません。」―― FAXは、そんな内容のメッセージでした。

それから2ヵ月後、Tさんは頭髪はまだ短いながらも元気に職場に復帰しました。一緒に昼食をとりながら、Tさんは「あのメッセージを見て涙が出た。そして手術前の不安を取り去って勇気を与えてもらったよ。本当にありがとう」と言ってくれました。

そんな訳で、私は今回のTさんの件で、改めて病気も含めて人生の厳しい出来事は、何かその人の人生のパターンを超えたり、未完了のことを完了させるチャンスを与えてくれている、という事を再確認したように思えたのです。

そして、何か吹っ切れて仕事に取り組むTさんに、ライフキャリアの成長が続いているのを感じています。

ということで今週のエクササイズです。

●「あなたの体験した出来事から気づいた人生のパターンがあったら紹介し てください」