第83回 恐れからチャンスへ

こんにちは、楳林です。先週のエクササイズは「これまでの自分を変えるチャンスを含んだ新たな始まりやチャレンジに直面していたら、ぜひ紹介してください」でしたね。先ず1通紹介します。

「今このときが自分を変える新たなチャレンジの時だと思います。会社が倒産するまでは、愚痴や文句を言いながらも、何気なく働いていて、ほとんど考えることがありませんでした。今は自分が何をしたいのか、何をすべきかを無理やりにでも考えざるを得ない状況です」(Sさん、35歳)。

Sさんは「まだ、不安だらけの上、漠然としか考えがまとまっていませんが、チャレンジのときではあると思います。ただ行動できないため、チャンスを逃しつつあることも事実ですが」と現状を率直に話してくれています。倒産前後を除き、ほぼ毎回、回答してくれているSさん、行動にまだ結びついていなくても変化のプロセスは着実に進みつつあるのを感じます。

もう1通。「先日、モバイル用のパソコンを買いました。通勤途上や営業車での移動中の時間を有効に活用したいと思い、購入に踏み切りました。得意先で営業提案を行うのにかなり便利ですし、帰社途上に営業日誌を作成できるのも時間の有効活用につながります。このメールも帰宅途上の地下鉄の中で書いています(笑い)」(Oさん、23歳)。

実は私も研修に持っていけるモバイル用のパソコンの購入を以前から考えながら、未だに機種で迷って(という理由をつけて)踏み切れないでいたところです。ですから、Oさんの1つの決断が、直ちに仕事のリズムを変え、時間の有効活用につながっていることにとても刺激を受けています。

「得意先の前でカバンからノート型パソコンを取り出すと、かなりインパクトを与えるようで、それも気に入っています(笑い)」というOさん、それだけでも自分が前より自信を持って、前向きになったと思いませんか!1台のパソコンだからといって、バカに出来ないですよね。

ところで先週、私はある大手企業のキャリア研修をメインの講師として担当する中で、面白い体験をしたので紹介したいと思います。

それは82回で紹介した私にとって苦手意識のある現実重視のプログラムです。しかも相手はある業界のトップ企業で研修内容に対する要求も厳しく、すこし前からかなり緊張していました。研修前日に、相手先企業の研修責任者からの無理な要求に、久しぶりに私は投げ出したくなる位の怒りを思わず感じました。

そういう時はいつもそうするように、帰宅後、近くの大きな公園で大声を出して怒りを発散させました。これですっきりした気持ちで寝れると思っていたのですが、1時間ぐらい寝た後、急に目が覚め、その後、頭が勝手に動き出し寝られなくなってしまったのです。「これは下手をすると朝まで寝れないかも」という焦りでますます目がさえてきました。

しかし、何とか心を落ち着けようと思い「今、何を感じているのか」と問いかけ自分の感情をチェックしてみました。そして、私が感じていた感情は怒りの下にある恐れであることがわかりました。今回のチャレンジに対して、恐れがいっぱいあったのに、それを感じないようにしてきたわけです。そこで、私は決意しました「よし、この恐れと恐れている自分を認め、受け入れて挑戦するぞ!」と。

その決意から30分も経たないうちに、焦る気持ちが消え、意識がまどろみはじめました。と、まどろみ中で、私の左手が意識とは無関係に動き、私自身の顔をサッとなでました。しかし、それは、実際は肩が少しだけ動いただけなのです。そして、不思議なことに、さっきまで感じていた「恐れ」の感情がきれいに吹き飛んでいました。今思うと、恐れを振り払おうと夢の中の左手が勝手に動いたのかもしれません。本当に不思議な体験でした。

翌朝、朝食をとりながら、相手先企業の研修責任者に対し、感謝の気持ちすら出てきました。彼はきっかけを与えてくれただけなんです。「怒り」はこの研修に対する「恐れ」を感じないようにする防衛網に過ぎなかったからです。

その日の研修は、まだ宿題はいろいろ出ましたが、気持ちの上では余裕を持って取り組むことが出来ました。恐れが消えると、けっこう人は勇敢なものです。そしてこの一連のプロセスの鍵は「よし、チャレンジするぞ!」と本心で決めることにあったように思えます。

昔から人一番怖がり屋の私は、これまでもいろんなやり方で恐れに対処してきました。恐れがなくなることはありませんが、マインドへの働きかけ方は少しずつうまくなってきたように思えます。

チャレンジが大きいほど、一方では失敗するかもしれないという恐れがあります。逆に言うと、恐れは大きなチャンスを隠していることになりますね。だから恐れに気づいたら、もう半分チャンスが近づいたようなものなのです。

ということで私を引き合いに出してのエクササイズです。

●「これまでの自分を変えるチャンスを含んだ新たな始まりやチャレンジに直面していたら、ぜひ、紹介してください」