第88回 過去未定、未来決定

こんにちは、楳林です。研修が続いて寝不足状態が続いています。先週の課題は「キャリアを通して実現したい興味や大切にしたいことは何ですか」でしたね。以外に難しかったのか、今回は回答が少なかったですね。1通紹介します。

「私のキャリアを通して大切にしていきたい思いは『誠実である』ということです」(Nさん)。

Nさんがその思いを持つようになったのはお父さんの影響だそうです。「私の父は自分にも他人にも『筋が通っていないことは許さない!』と言う人です。自営業をしていますが、とても商売上手とはいえません。しかし、『馬鹿正直』とも言えるような父を慕ってくれる人は多く、『父に頼めば安心だ」といって、仕事を持ってくる人はたくさんいます」。

「そんな父の姿を見て育った私は、『父のように誰にでも誠実でありたい』という思いが仕事を進める上で強くあるように思える」というNさん。現在デザインの仕事をしているそうですが、「例えば自分の作ったものに上司からOKが出たとしても、それが自分の中で納得のいくモノでない時は、時間の許す限り納得のいくものを作るように心がけています(それが出来ず、悔しい思いをすることもありますが…)」と語っています。

私の亡くなった職人肌の父とも似ていますね。もっとも私は以前はそういう父に強烈に反発したものですが、今は頑固だった父をほほえましくさえ感じます。そして自分もずいぶん父親に似てきたのを感じています。

ところで、先週のコラム・ジョブで「ああ、時間を戻せるなら、あの瞬間に戻りたい」「しかし、そんな風に思っても、時間は絶対に戻らない」「だからもう絶対にミスはしない、と誓う」という文章にとても興味を覚えました(編集長のコラムを題材に使ってごめんなさい)。

ミスだけでなく、よく恋愛などでもこんな感じを持つのではないでしょうか。でも往々にして同じミスを2度、3度とやってしまうものです(私自身、そうでしたから)。

ではこれを乗り越える方法はあるのでしょうか。1つの方法を紹介したいと思います。キャリアともとても関連があると思うからです。

「過去未定、将来決定」―最近読んだ「成功への心の扉」(著者はジェームズ・ストロベリーズ)に出ていた言葉ですが、私は納得!という感じがしました。

常識的には、過ぎ去った過去はもう変えられないが、未来はまだ起きていないから未定だけれどがんばろうということですよね。編集長の書いた感じですね。ではそれとはまったく逆の「過去未定、未来決定」ってどういうことでしょうか。

過去の出来事、例えばミスや失敗、挫折感あるいは逆に成功したこと、楽しかったこと。それぞれを別の視点から見直してみることによってまるで違った世界が見えてくる時があります。あのミスがあったからこそ、大きなミスを防ぐことが出来たとか、成功が後の失敗の原因になったとか、失恋のおかげで今の彼女に出会えたとか、です。

通常の見方で言えば、過去の出来事は、その時持っていた価値観や、大切にしていたことリンクしています。この価値観の連続性という観点に立つと、未来にも同じ状況が待っている公算が強い。

しかし一方で、自分の価値観や大切にしていることや考え方に気付き、場合によってはそれを変える選択をすることで、過去の見方が変わる事もあります。そしてそれと共に、自分の望む未来をしっかりイメージすることによって、未来を選択する可能性が高まります。この視点に立てば、過去は常に未定であり、そこに新たな意味を見い出すことによって、未来を新たに選択・決定できるということになります。

これってキャリアをデザインする時に行う自己分析や職務の棚卸の本当の狙いとも似ていませんか。単に忘れかけていたものも思い出すためにやるのではなく、固定的になっていた自分自身と過去の職務を新たな目で見直し、生き生き感を取り戻すことによって、新たなキャリア選択の道を見つける事が出来るのです。

こうしてみると、「過去未定、未来決定」というのは個人だけではなく歴史全体の柔軟な見方にも通じるような気がします。

ということで今週のエクササイズです。

●「過去の見方を変えながら(積極的な意味を見い出しながら)、 2003年後半、あなたが実現したいことは何ですか?」